ヘイゼル・ブランカ
ヘイゼル・ブランカがエクセル・バイオの一員になってから、彼は多忙を極めた。
まず彼はエクセル・バイオへの手土産とばかりに、自ら団長を務める暗殺組織「永遠の輝き団」を使い、敵対勢力の暗部を殲滅した。ヴィクトールが煮え湯を飲まされ続けた「探索者の手」もヘイゼル・ブランカ自身の手により壊滅している。諜報活動に於いて元「永遠の輝き団」は、武力に長けている分「探索者の手」を凌駕する。ヘイゼルが仲間になった時点で「探索者の手」は無用となったのだ。
さらにISCOのCUEOクワメ・アビオラとヴィクトールの暗殺を「永遠の輝き団」に依頼した、とある国家の諜報部もヘイゼル・ブランカは標的とした。こちらは壊滅させるのではなく、事実上トップの人物数人を暗殺したのだ。あえて警備が厳重な人物を暗殺することで「どんな人物でも暗殺できる」と暗にアピールした形になった。「永遠の輝き団」がエクセル・バイオの傘下に入ったという情報は、瞬く間に裏社会に広まる。期せずしてエクセル・バイオは裏社会をも牛耳ったこととなった。
一頻り暴れたヘイゼル・ブランカは、エクセル・バイオの地球での研究拠点である「妖精」に籠ることとなる。彼の能力を最新の科学にて解析するためだ。
超心理学やスピリチュアル学は、実用サンプルが少ないが故にまだまだ発展途上にある。超心理学界の最高峰である「ノヴァ・サイキック・アカデミー(Nova Psychic Academy)」の研究でも、後天的に身に着けられるのはESP能力までで、PK能力は推測の域を出てはいなかった。しかしヘイゼル・ブランカはESP能力だけでなくPK能力も最高の使い手だ。何しろ彼はESPとPKによる「瞬間移動(Teleportation=テレポーテーション)」も使えるのだから。PK能力を科学的に解明し誰にでも後天的に再現可能となれば、宇宙時代に於いて人類は新たなステージへと到達するだろう。元アカデミーの助教授が中心となり、ヘイゼル・ブランカの解析チームが結成された。
解析チームは最初にヘイゼル・ブランカのPSC(Psycho Strands Code=魂糸符)を解析した。通常、人間のPSCは白い玉のようなPN(Psycho Nucleus=魂核子)が128個並んだ糸のような形状をしているが、ヘイゼルのPSCは糸が何本も複雑に絡み合った「縄」のような状態であった。何故か1本だけ黒い糸が絡んでいるようにも見えるのだが。
「おそらく、それがボマー・・・いや、グレイ君のPSCだろう。グレイ君の魂は、まだ私と同化してはいないのだ。この肉体の持ち主なのだから、クローンを作ることによって、復活できるかもしれないな」