フェノーメノ・モンストローゾ(4)
「わかるかい?君たち『エクセル・バイオ』は、私たち『永遠の輝き団』の理想を現実にしたんだよ」
フェノーメノに真っ直ぐ見られたヴィクトールは、フェノーメノの言葉を正確に理解できていない。
「私たち『永遠の輝き団』の理想の不死が、人間として人間らしく永遠に生きるということ。そして君たち『エクセル・バイオ』はクローン転生によって、人間として人間のままの不死を得た。さらに君たちが不死を得たのは、あくまでも過程だ。不死を目指したわけではなく、来るべき宇宙時代を見据えての結果なのだ。『永遠の輝き団』には不死を成し遂げた後のヴィジョンはなかった。故に私は君たちに憧れと敬意を抱いたのだよ」
「私たちの仲間になるだけなら、わざわざグレイを喰らう必要はなかったのではないですか?」
「・・・私には『未来視(Foresight=フォアサイト)』が備わっている。私が視たのは『オリジナルのクローネル殿の目の前で、ボマーの体を乗っ取ること』だった。時間も場所もわからないまま、未来視の条件をかなえるべく動いた。私の分体を眠ったままのボマーに喰らわせ、わざわざボマーを目覚めさせた。しかし、それが正しいかどうかはわからない。未来視は『未来を視た者の希望を叶えるもの』ではないからだ」
「運命、とでも言いたいの?」
ゼーが冷ややかに突っ込む。
「私は実験が成功した時点で、同胞十数人分の魂の集合体だった。その後、敵を退き、暗殺稼業の中でさらに百人以上の魂を喰らった。私の魂は並の人間の器では、憑依しても肉体が持たないのだ。有り余る霊力によって、肉体が崩壊してしまう。私の魂を受け入れられるのは、超能力者として優れた霊力を持つボマーしかいなかったのだよ」
「・・・必然、ですか」
「クローネル殿に『申し訳ない』と謝罪するつもりはない。ただ喰らった魂は私の記憶の一部となるのだが、ボマーの記憶は私の中にない。ボマーは私の中で喰らわれずに残っているような気がする。ならば君たちの技術で、将来ボマーを私の中から目覚めさせることも可能なのではないかな?」
「グレイは死んでいない・・・ということですか。わかりました。フェノーメノ・モンストローゾ、あなたをエクセル・バイオに迎え入れます」
「済まない、恩に着る。ただ『フェノーメノ・モンストローゾ』は通り名であり、私の名前ではない。人間として生きるのに必要な戸籍と名前を用意してはもらえないか?」
「それならば、グレイのために用意した名前と戸籍があります」
ヴィクトールは少しだけ間を開けた。
「ヘイゼル・ブランカ (Hazer Blanca)。あなたの新しい名前です」
ヘイゼル・ブランカ (Hazer Blanca)はシャア・アズナブル(Char Aznable)のアナグラムです。深い意味を持たせるつもりが、意味がないような気がしてきました。