表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/403

フェノーメノ・モンストローゾ(2)

「やはり、あなたは私の騎士(ナイト)でしたね。・・・グレイ」

「ここは俺に任せろ、ヴィクトール」

 少女のような笑みを浮かべるヴィクトールに、力強い笑顔で応えるグレイ。光明が灯ったかのような空気を、黒いローブの骸骨の笑い声が切り裂く。

「フハハハハハ。これだよ、これ!!この『絵』を待っていたのだ!!」

 霊体は声を出せないはずだが、骸骨はテレキネシスで空気を振動させることで声にしていたのだ。

「半信半疑だったが、確信に変わった。さあ、『絵』の続きを見せてくれないか?」

 ゆっくりと近づく黒いローブに対し、ヴィクトールの盾のごとくグレイが両手を広げた。

「行かせないぞ」

「用があるのは君だよ、ボマー」

 黒いローブがグレイを覆い、骸骨がグレイの体に吸い込まれていった。

 ヴィクトールは知っている。骸骨がグレイを乗っ取ろうと憑依して、逆にグレイに取り込まれてしまったことを。しかも2回も続けて、だ。テレポートすら会得し完全覚醒したグレイならば「怪物の仕業」と呼ばれた骸骨を吸収できるだろう。霊力はグレイの方が上だと、ヴィクトールの霊感が伝えている。・・・しかし。

 静かなる攻防。グレイの体内で魂の喰らい合いが繰り広げられているのだが、外からはわからない。ただグレイが目を瞑り黙って立っているだけだ。


 1分が5分にも感じられる中、グレイはゆっくりと目を開ける。

 ヴィクトールは即座に理解した。・・・グレイが負けたことを。


「私の念願は叶った」

 涼やかな笑顔で呟くグレイの姿にユリとリリー、ゼーも、グレイの敗北を悟った。ヴィクトール以外の3人は、危険を感じ身構える。

 ヴィクトールは一瞬だけ悲しそうな顔を見せた後、無表情のままグレイを乗っ取ったフェノーメノの前に立った。そして穏やかな笑みを携える。

「あなたの『念願』とは何ですか?『最後』に教えてもらえますか?」

 最後。ヴィクトールは「死」を悟り、運命として受け入れ、抗うことをやめた。

 クローンの体を複数手に入れ、魂の緒を繋ぐことで「不死」になったヴィクトール。しかし一つしかない肝心の魂を喰われてしまっては、間違いなく「死」が訪れる。グレイの魂を喰らい肉体を乗っ取ったフェノーメノに対抗する術を、グレイを失ったヴィクトールは持ちえない。抗いようがないなら、受け入れるしかなかった。

「私の・・・念願・・・いや『悲願』と言ってもいい」

 フェノーメノに殺気は感じられない。

「ヴィクトール・クローネル殿・・・私は、君に、仕えたい」

「え?」

 真剣な表情のフェノーメノに、ヴィクトールは驚きを隠せない。

「私の悲願は・・・ヴィクトール・クローネル殿の仲間となり、共に生きることだ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ