フェノーメノ・モンストローゾ(1)
「あなたは・・・フェノーメノ・モンストローゾですね?」
「ご名答」
佐藤洋子のホムンクルスに憑依したフェノーメノ・モンストローゾが不敵な笑みを浮かべる。一度相対したヴィクトールはともかく、霊感の強いユリとリリー、ゼーはフェノーメノの霊力に圧倒されていた。3人とも無意識のうちに数歩下がっている。しかしリリーが声を荒げた。
「あっ!私のホムンクルス!!」
フェノーメノが憑依した佐藤洋子のホムンクルスは、主にリリーが憑依していたものだった。
「ほう?この魂のない肉体は『ホムンクルス』なのか?君たちは錬金術を使えるのか?とても興味深いな」
「錬金術ではありません。詳しい説明は省きますが、誰にでも憑依できるクローンを『ホムンクルス』と私たちが呼んでいるだけです。真の意味でのホムンクルスではありません」
「それは残念だ。私はてっきり錬金術も科学として証明されたのかと思ったよ。まあ錬金術で作ったホムンクルスでは、ここまで人間そっくりにはできないがね」
フェノーメノは自分の体をペタペタと触り出すと、リリーが再び怒り出す。
「やめてよ!私のホムンクルスに触らないで!!」
「ほう?この肉体は君のモノなのか?なるほど・・・私でもわからない研究をしているのか。興味深い」
フェノーメノは会話をしながらも、体中を触ることをやめようとしない。
「おい!お前!!」
ゼーが叫ぶとフェノーメノが反応した。
「お前とは、私のことかな?」
「その体から出ていけ!!さっきからお前の考えが流れ込んできて、気持ち悪いんだよ!!」
「そうか、君か?先程から私の精神を覗き見しているのは」
「出て行け!!」
ゼーが幽体離脱して体当たりする。フェノーメノがホムンクルスの肉体から弾き出され、黒いローブを着た骸骨の姿をした霊体が露わになった。
《これは驚いた。君はかなりの霊力があるようだな。肉体から追い出されるなんて初めてのことだ》
黒いローブが大きく広がり、霊力による威圧感が増す。ヴィクトールですら立っていられずに、しゃがみ込んでいた。
《さて、宇宙では霊体のままだと霊力が持たない。肉体が必要だ。・・・ヴィクトール殿、君の肉体をもらおうか》
黒いローブがヴィクトールを包みだし、骸骨がヴィクトールに迫る。すでにヴィクトールは「妖精」でフェノーメノに魂の一部を喰われていた。これ以上は魂が失われてしまうかもしれない。
《させるかぁっ!!》
グレイがテレパシーで叫ぶ。
パーンッ!!
黒いローブと共に骸骨がヴィクトールから弾け飛んだ。
しゃがみ込んでいたヴィクトールの前には、地球にいるはずの小柄な青年が立ちはだかっている。
「・・・誰?」
「そんな、まさか・・・」
「テ、テレポート・・・?」
ゼー、ユリとリリーが驚愕の表情のまま固まっている。ヴィクトールだけが状況を理解していた。
「やはり、あなたは私の騎士でしたね。・・・グレイ」