ホムンクルス計画(2)
大型の人型ロボットにホムンクルスの人体組織を融合させるという「ホムンクルス計画」を、ヴィクトールはユリとリリー、佐藤洋子の3人に話をした。機密事項ではあるが、3人は必ず「ホムンクルス計画」の中核をなす人物になる。しかし計画を話した理由は他にもあった。
《ヨーコは自分のクローンをどう思っていますか?》
《・・・どう?》
クローンは佐藤洋子の体組織から生み出された分身だ。とはいえ容姿は自分とは似ても似つかないし、自分が手塩にかけて育てたわけでもない。正直に言えば「何とも思わない」といったところか。しかしそれをヴィクトールに正直に言ってもいいものか。嘘はつきたくないし、でも幻滅されるかもしれない。佐藤洋子は答えに窮する。
《ロボットに人体の神経組織を融合させるのです。ヨーコのクローンは生きたままバラバラに解体され、部品のように機械へと組み込まれていくのですよ?ヨーコは気になりませんか?》
《・・・・・・》
佐藤洋子からの返事がないことで、ユリとリリーは絵面を想像していた。クローンとは言え自分の分身がバラバラにされるのだ。手足だけでなく、頭部も解体されるだろう。リアルに思い浮かべると吐きそうになる。
《あ、そういう意味で聞いてくれたんですね?だったら、全然オッケーです!!ジャンジャンバラバラに使ってやってください!!》
あまりにも陽気な答えに、ユリとリリーは絶句した。ヴィクトールでさえも意外な答えにキョトンとしていた。テレパシーでのやり取りだから気付かれないが、ヴィクトール自身が自分の呆けた顔に赤面してしまうほどだった。
《・・・コホン。それならば、後はヨーコ自身の問題ですね。訓練をしましょうか。実験も兼ねて》
《実験・・・ですか?》
《はい。ホムンクルスに憑依しても魂の緒はつながりません。霊媒師に憑依するのと同じことです。ということは、時間制限が生じるのではないかと考えています。時間制限があるのか確認するための実験も併せて行います》
《それはどのような内容になるのですか?》
《24時間。私、ユリ、リリーの3人が24時間、ヨーコのクローンに憑依して生活します。24時間、何事も無ければ実験は成功ですね》
《私が24時間、みんなの考えを耐えれば合格ですか?》
《ヨーコの方はあくまでも『訓練』です。ヨーコが辛くなったら、実験は中止します。実験は他のホムンクルスでもできますから。それに『耐える』だけでは合格とは言えないでしょう。将来的には万単位になるかもしれないのですから》
《万・・・それは・・・》
《耐えるのではなく、無効化できるようにしてください。頑張ってくださいね、ヨーコ。期待しています》
《はい!!頑張ります!!》