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科学とオカルトの交差点(Gravity Ghost Gear開発史)  作者: 高戸 賢二


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相談

 ヴィクトールはCROUN(クローンによる複製オペレーション連合ネットワーク=Clone-based Replication Operations Union Network)の定例会議のために、ISCO本部内に臨時開設されたCROUN事務局を訪れていた。今回の会議では「ホムンクルス計画」を議題にする予定だ。ホムンクルス計画が「宇宙開発」寄りになるか、それとも「軍事目的」寄りになるか。宇宙時代の分岐点になるだろう。ヴィクトールの願いとしては、平和的に宇宙開発を主目的としてほしいところだが。

《総帥様、今お時間よろしいですか?》

 ユリからテレパシーが入る。

《どうぞ》

《ヨウコさんのことなのですが、精神的に不安定のようで部屋から出てこないことが多いのです。ホムンクルスの件で、相当、落ち込んでいるようで・・・》

 佐藤洋子はホムンクルスの母体として選ばれ、エクセル・バイオの研究室に転籍までしたのにも関わらず、肝心な「ホムンクルス計画」からは外されてしまったのだ。失格の烙印を押されたようなものである。理由が佐藤洋子の優れた能力によるものから、誰も彼女を責めたりしない。それが逆に彼女を追い詰めてしまったようだ。

《先日は『死んでしまいたい』と小さな声で呟いていました・・・何とかしてあげられないでしょうか?》

 仮に佐藤洋子本体が死に至ることがあれば、佐藤洋子のクローンがホムンクルスとして優秀な商品となりえるのは間違いない。とはいえ佐藤洋子を知る、誰もそんなことは思うことすらないだろう。ヴィクトール以外は・・・

《ヨーコの望み・・・いや『幸せ』と言い換えましょう。ヨーコの幸せは『ヨーコのクローンがホムンクルスとして採用される』ということで間違いないですか?》

《・・・はい。おそらく》

《それは命を賭してまで、願うものなのですか?》

《・・・『死んでしまいたい』と漏らすほどですから、そうかもしれません》

《ならば話は簡単です。ヨーコのクローンに憑依した際に流入してくる思考に、耐えればいいだけなのですから》

《そ、そんな!!そんなことをしたら、ヨウコは壊れちゃいます!!ヨウコのクローンは50体いるのですよ!!50人もの思考が流れ込むなんて、正気でいられるわけありません!!死ぬより酷いことに・・・》

《・・・それが『命を賭す』ということではないですか?》

《!!》

《・・・人の幸せというものは多様なものです。決して他人には理解できません。ヨーコが望むのであれば、私はヨーコの意志を尊重します》

《・・・》

《幸せへの手段を失い、屍のように生きるのも。幸せへ挑み、志半ばで命を失うのも。どちらを選んでも、私はヨーコの意志を尊重し、背中を押します》

《で、では、私が『ヨウコが生きることが私の幸せ』だと言ったら、総帥様は、私とヨウコさんのどちらの幸せを尊重するのですか?》

《意志の強さですね。ユリの幸せが『ヨウコが生きる』ことならば、ヨーコに考えを改めさせるしかありません。私は誰の意志でも尊重します。相反する意思ならば、自ら勝ち取るしかないでしょう。私は私の価値観を押し付けるつもりはありません》

《・・・相談に乗っていただき、ありがとうございま》

 律儀に礼を述べたものの、ユリの悔恨を含んだ感情が伝わる。語尾まで言い終わらないうちにテレパシーが途切れたのが、何よりの証拠だ。


「エクセルシオン・バイオメディカル総帥、ヴィクトール・クローネル様。そろそろお時間なので、会議場まで起こしいただきたく」

 ノックと共に、男性の声がドアの外から聞こえる。

 ヴィクトールは顔色一つ変えずに、会議場へと足を運んだ。



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