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HERO-in(e)  作者: とーはく
5/5

第5話

※一般的な小説のように、文章を読み進めることにより映像が脳内を通過していく感覚とは異なり、このお話はいわゆる【脚本シナリオ】の書き方をベースにしております。

ですから、情景をイメージするには読み手様であるご自身が、脳内スタジオで舞台セットを構築し、カメラワーク等をこなす作業が必要となります。

簡単にいうと、読み手様はもれなくこのお話の脳内監督さんになって上映してくださいな。

誤解をおそれずに言うならば、今までの経験で、スマホで動画を撮り、要らない箇所をカットしたり動画編集した経験がおありでしたら、そうソレで十分にこの取っ付き難い物語を読み進める事が出来るはずです。


~主となる登場人物~

 ・一色茜莉イッシキアカリ・高校二年生

 ・ェアィン・茜莉の中の住人

 ・一色幸次イッシキコウジ・茜莉の父

 ・一色楓イッシキカエデ・茜莉の母

 ・富田菜津トミタナツ・クラスメイト

 ・宮下彩ミヤシタサイ・クラスメイト

 ・台場宗孝ダイバムナタカ・部活のコーチ

 ・ヴァイラス・宮下の中の住人

 ・野々宮京香ノノミヤキョウカ・スーツに眼鏡

 ・安西浩太郎アンザイコウタロウ・スーツにハーフっぽい

〇丸内動物園・園内・異空間・奥


   茜莉の視界に、右手に持った紫色の瘴気を纏った赤いスマホが見える。

茜莉(このスマホ……私の……中学の時のだ……)

   茜莉、視界を動かすと、私服の薄紅色のコートが見える。

茜莉(懐かしい……このコート、持ってたな……)

茜莉(そう……私、電話しなくちゃ)

   茜莉、慣れた手つきでそのスマホを操作して、右耳に当てる。

   スマホから音声アナウンスが聞こえる。

音声アナウンス《オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイバショニイルカ、デンゲンガハイッテイナイタメ、カカリマセン》

   茜莉、再びスマホを操作して、耳に当てる。

   スマホから音声アナウンスが聞こえる。

音声アナウンス《オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイバショニイルカ、デンゲンガハイッテイナイタメ、カカリマセン》

   茜莉、再びスマホを操作して、耳に当てる。

   スマホから音声アナウンスが聞こえる。

音声アナウンス《オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイバショニイルカ、デンゲンガハイッテイナイタメ、カカリマセン》

   茜莉、再びスマホを操作して、耳に当てる。

   スマホから中学時代の茜莉の声が聞こえる。

中学の茜莉ソンナニカケタッテムダヨ

茜莉「っ!?……誰?」

中学の茜莉《シリタイノ?ホントウハ、シリタクナイノニ?》

茜莉「あの時、学校で会った子でしょ?」

茜莉(ねえ?ェアィン)

 ェアィンの反応はない。

中学の茜莉ソウヤッテウソバッカリ

茜莉「ちょっと待って何の事?」

中学の茜莉キヅカナイフリヲスル

茜莉「一体、何を言ってるの?」

中学の茜莉《ダカラ、ワタシヲコロシタ!》

   右耳に当てたスマホから溢れ出て来た紫色の瘴気がが茜莉の頭を包み込む。

茜莉「うっ……!」

   茜莉の視界がブラックアウトする。


〇回想・丸内第三中学校・二年四組教室(午前中)


   教室に入って来たセーラー服姿の茜莉。

   自分の席に戻ろうとすると、蓮人が茜莉の席、椅子に座って手招きしている。

   茜莉、顔のない他の生徒達とすれ違いながら、自分の席である蓮人の横に来ると笑みを浮かべ語り掛ける。

茜莉「蓮人くん、隙あらば私の席にくるのやめてくんない?」

蓮人「いやさ、アカリン。今度の日曜日さ、空いてるよね?」

茜莉「うん。確か」

蓮人「動物園行かない?動物園」

茜莉「丸内動物園?あー、うん。いいね!行こっか~」

蓮人「じゃあ入園料はアカリンのおごりでっ!」

茜莉「ちょっとー!」

   茜莉の隣の席の彩、笑いあう二人に背を向け窓の方を見ている。


〇回想・アパレルショップ


   茜莉、冬服を悩みながら選んでいる。


〇回想・一色宅・台所(朝)


   茜莉、エプロン姿でサンドイッチを作っている。

   それを微笑ましく見守る母の楓。


〇回想・丸内動物園・入園口前(午前中)


   入園口の左側、薄紅色のコートとクリーム色のショルダーバッグを身に着けた茜莉は、続々と入園していく顔のない人々を   眺めつつ、スマホをチラ見する。


〇回想・丸内動物園・入園口前(午前中)


   入園口の右側で遠くを見つめる茜莉。


〇回想・丸内動物園・入園口前(午前中)


   入園口の左側で遠くを見つめる茜莉。


〇回想・丸内動物園・入園口前(午前中)


   入園口の右側でスマホのメッセージアプリをいじっている茜莉。

   【着いたよ。入園口だよ?】と送信する。


〇回想・丸内動物園・入園口前(午前中)


   入園口の左側で遠くを見つめる茜莉、スマホをチラ見して、遠くを見てため息一つ。


〇回想・丸内動物園・入園口前(午前中)


   入園口の右側でスマホのメッセージアプリをいじっている茜莉。

   【何かあった?大丈夫?とりあえず、入場しとくねー。】と送信する。


〇回想・丸内動物園・園内(午前中)


   檻の中に何もいない園内を茜莉がトボトボ歩いている。

   顔のない家族が楽し気に檻の中を見ている。


〇回想・丸内動物園・園内(正午)


   頭上高くある時計塔が正午を指して鐘の音を鳴らす。

   茜莉、バッグの肩ひもをギュッと両手で握ったが、すぐに力なく手を放す。

   ため息一つ、園内を歩き出す。


〇回想・丸内動物園・園内(午後)


   顔のないカップル、顔のない家族連れが檻の中の斜め上を指さしている。

   茜莉、歩みを止め、スマホをサッと出すと、慣れた手つきで【蓮人くん】へ電話する。

   呼び出し音がずっと聞こえる。

   茜莉、諦めて赤い受話器マークをタップして、もう一度、電話する。

   再び、呼び出し音だけがずっと聞こえる。

   茜莉、諦めて赤い受話器マークをタップして、スマホを握ったまま歩き出す。

   と、スマホの通知音が一瞬鳴ると同時に茜莉、スマホを見る。

   通知が来ており、メッセージアプリに彩からの画像が届いている。

   即タップして、画像を確認すると、蓮人と複数の女子がカラオケしている様子の画像である。

茜莉「……なんで?」

   スマホを持っている茜莉の手先が微かに震えている。

   茜莉、スマホを操作して、【蓮人くん】へ電話して右耳に当てる。

   スマホから音声アナウンスが聞こえる。

音声アナウンス《オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイバショニイルカ、デンゲンガハイッテイナイタメ、カカリマセン》

   茜莉、再びスマホを操作して、耳に当てる。

   スマホから音声アナウンスが聞こえる。

音声アナウンス《オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイバショニイルカ、デンゲンガハイッテイナイタメ、カカリマセン》

   茜莉、再びスマホを操作して、耳に当てる。

   スマホから音声アナウンスが聞こえる。

音声アナウンス《オカケニナッタデンワハ、デンパノトドカナイバショニイルカ、デンゲンガハイッテイナイタメ、カカリマセン》

   茜莉、再びスマホを操作して、耳に当てる。


〇丸内動物園・園内・異空間・奥


   紫色の瘴気を纏ったスマホで通話中の茜莉。

   その右耳のスマホから、中学時代の茜莉の声が聞こえる。

中学の茜莉《オモイダシテクレタ?》

   茜莉、答える。

茜莉「私……」

中学の茜莉ソウワタシ

   間。

茜莉「……あぁ、そうだったんだ。私、ここで思いを握り潰したんだ……」

中学の茜莉《ワタシハソウ。シンダノ》

   と、茜莉はスマホを落とすと、苦し気に胸を両手で押さえ、その場に座り込む。

   首筋に指の跡が付き、紫色の瘴気に侵食され、目元の周りまで侵食していく。

   茜莉の目から涙が溢れ出て、視界が狭まり意識が遠のいでいく。

茜莉(そう……私、消えてなくなりたかったんだ……)

   視界が真っ暗になる。

茜莉しっくりくる

中学の茜莉《ヨカッタ。ヤットシネルネ……》

茜莉うん……

   ェアィンの声が茜莉の脳内に響く。

ェアィン(一緒に――)


〇回想・ステルァンタナ星・ェアィン自宅(夕)


   ェアィンが扉を開けて自宅に入ると、恋人のィヴァが出迎え、抱きしめてキスをする。

ェアィン「ィヴァ!こうしてまた会えるなんて……!」

ィヴァ「お帰り!ェアィン!」

   ェアィン、鼻をクンクンとして、奥のテーブルに視線をやる。

   その小さなテーブルの上には数品の料理が置かれている。

ェアィン「全部僕が好きな料理ばっかりじゃないか!」

ィヴァ「勿論よ!まだまだ料理の途中なの。先につまみながら待ってて」


〇回想・ステルァンタナ星・ェアィン宅(夜)


   ェアィンとィヴァがテーブルを挟んで座って楽し気に飲食している。

   小さなテーブルの中央には湯気立つ料理と、端には空き皿が積まれている。

   酔って顔を赤くしたェアィンが向かいのィヴァに言う。

ェアィン「こんなに美味しい料理と酒はいつ以来だろう」

   グラスの酒を一口飲んで、ィヴァが答える。

ィヴァ「よっぽどまともな食事してなかったのね?」

ェアィン「いやいや、この料理が最高だからだよ!」

ィヴァ「ふ……。ありがとうェアィン」

   間。

   ェアィン、グラスの酒を飲み干し、テーブルに置くと言う。

ェアィン「いつも君とこうしたかったずっと。でも、奴……天魔を倒すまではと思って、今日まで生きて来た」

ィヴァ「……うん」

ェアィン「だけど、もしかしたらこれが……いや、次ここに帰ってくる時は奴を倒しこの世が平和になった時……」

   ィヴァ、俯きながら答える。

ィヴァ「……そうだね」

   間。

イヴァ「あ、匂いがしてきたね」

ェアィン「この甘い匂い……!」

イヴァ「ちょっと待ってて。焼き加減見て来るから」

   と、席を立つイヴァ。


〇回想・ステルァンタナ星・ェアィン宅(夜~深夜)


   テーブルの上の円形の焼き菓子が半分以上無くなっている。

   ェアィン、口をモグモグして、グラスの酒を飲む。

ェアィン「いやぁ食べたなぁ……」

ィヴァ「美味しかった?」

   ェアィン、右手の空グラスで焼き菓子をさしながら答える。

ェアィン「勿論!というか、ィヴァも食べてよ?全然食べてないじゃない?」

   間。

   ィヴァ、ェアィンの目を見つめて言う。

ィヴァ「ねえ、ェアィン。一つ聞かせて」

ェアィン「うん?」

ィヴァ「私の事……好き?」

ェアィン「勿論」

ィヴァ「他の誰よりもよ?」

   ェアィン、空グラスをテーブルに置き答える。

ィヴァ「勿論だよ」

   ィヴァの語気がやや高まる。

ィヴァ「私がもうここから何処にも行かないでって言ったら……行かない?」

ェアィン「……ィヴァ?」

   ィヴァの目から薄っすら涙が零れている。

ィヴァ「ェアィン……。どうしてあなたが行かなきゃならないの?」

ェアィン「……それは」

ィヴァ「なんで私がこんな辛い思いをしなきゃならないの?」

ェアィン「ごめん……」

ィヴァ「私、限界なの……。それが今日、改めて分かった。だからもうェアィンあなたは旅には行かないで!ここに私の傍にずっと居てよ!」

   間。

ェアィン「イヴァ。それはできない。仲間も待っている」

ィヴァ「仲間が待っている?だから?」

ェアィン「君に辛い思いをさせたのはすまなかった。平和を取り戻したら……」

   イヴァ、食い気味で言う。

ィヴァ「たった一人の人間も幸せに出来てないのに?出来るわけ?」

   ェアィン、困り顔。

ェアィン「それ……わ」

   と、ェアィンの視界が揺らぐ。

ェアィン「っ……?」

   椅子から床へとゆっくり転げ落ちるェアィン。

ィヴァ「ごめんね。ェアィン」

   イヴァ、倒れたェアィンを仰向けにし、一つキスをする。

ィヴァ「苦しいのは嫌でしょ?私もそう」

   イヴァの目の色が黒く染まっている。

   身動きが取れないェアィンが呟く。

ェアィン「……ィヴァ」

イヴァ「ダカラアナタヲ殺シテワタシモ死ヌワ……」

   と、イヴァはェアィンの首を黒い瘴気を纏った両手でゆっくり締め上げていく。

   ェアィン、苦し気に声を吐く。

ェアィン「す……かった」

   イヴァの黒い目から涙が溢れて、ェアィンの顔にも滴る。

イヴァ「アナタノソノ優シサガ!殺シタノヨ!」

   漆黒の瘴気を全身に纏ったイヴァ。

   ェアィンの唇が微かに動く。

ェアィン「す……ない」

   ェアィン、鈍げに両手を伸ばすと、イヴァをそのまま自分自身へ引き寄せ抱きしめる。

   イヴァがェアィンの腕の中で藻掻く。

ェアィン「一緒に――」

   ェアィンが発光し、イヴァ諸共に光に包まれていく。


〇丸内動物園・園内・異空間・奥


   茜莉の口が動いてェアィンが言う。

ェアィン「――生きるんだ!」

   と、茜莉の胸を中心とした発光が起こり、全身を包み、異空間全体をホワイトアウトさせる。


〇丸内動物園・園内・異空間


   ホワイトアウトの発光がさめると、茜莉の姿は変貌し、雄々しい金属光沢した白亜の剛体が崛起している。

   客も動物も居ない殺風景な目の前のキリンゾーン。

   そこに赤いスマホを持った、薄紅色コートとクリーム色のショルダーバッグを下げた女の子の人影がポツンと見える。

   俯いたその顔には濃い紫色の瘴気がかかっている。

   白亜の剛体の茜莉、ゆっくりとその子に近づいていく。

茜莉「今なら分かるよ」

   近づいてその子の前で、両膝を地面につけて屈む白亜の剛体の茜莉。

茜莉「私だったんだね……」

   と、その子を抱きしめる茜莉。

   瘴気が顔から晴れ、現れた中学の茜莉の目からも涙が零れる。

茜莉「あの最初の時のも……そうだったんだね」

   中学の茜莉の手から赤いスマホが落ちて霧散すると同時に、現実の空間へと静かに戻って行く。

ェアィン(僕も思い出したことがあったよ)

茜莉(え?)

ェアィン(何者だったのかを)


〇丸内動物園・園内・トイレ外(午後)


   茜莉の視界に現実の園内が戻り、キリンゾーンも賑やかである。

   その場でよろけて地面にへたり込む茜莉。

ェアィン(アカリン?)

   茜莉、すぐに立ち上がり、ジャージの土埃を払って答える。

茜莉(……大丈夫。そうだった!バスの集合時間だったんじゃ?)


〇バス車内・走行中(午後)

   

   車内は生徒で満席である。

   その中、窓側の席には茜莉が座り、その隣通路側には菜津が並んで座っている。

   菜津はウトウトしている。

   茜莉は流れる窓の外を見つめている。

   茜莉、ェアィンに語り掛ける。

茜莉(結局、ェアィンに助けられたね)

   脳内で答えるェアィン。

ェアィン(どう伝えたらいいだろうか……。あの時、僕の中で感情のリンクの様なものがあったんだ)

茜莉(感情のリンク?)

ェアィン(だから僕の方も大事な事を思い出せたよ)

茜莉(あれ?……そういえば、何か語り掛けがスッと入って来るような気がするけど?)

ェアィン(記憶と感情は切っても切れない関係みたいだね)

   間。

茜莉(えー!私、前のカタコト宇宙人みたいなのが良かったなぁ~)

ェアィン(え?どゆこと?)

   間。

   バスがトンネルに入り、窓ガラスに茜莉の顔が映る。

茜莉(私、死にたがりだったのかな……)

ェアィン(生きていく中で、時に生を捨てたくなる時もあるだろうね……)

茜莉(私が……私を……殺したがってるのかなって……)

ェアィン(アカリン。僕が必ず救うよ。どんな時でも)

茜莉(うん。ありがと……)

   バスがトンネルを抜ける。

ェアィン(一つ分かったことがあるんだ)

茜莉うん

ェアィン(間違っていなければ、僕には恋人がいた)

茜莉「――えっ!?」

   と、思わず口走る茜莉。

   眠っていた隣の菜津がビクッとして茜莉を見る。

菜津「……どしたの?」

   と問い掛ける菜津に、

茜莉「いやっ、何でもない!」

   と、恥ずかし気に答え、再び窓を向く茜莉。

   菜津、再びウトウトし始める。

茜莉(……どゆこと?)

ェアィン(断片的な情報と記憶が少しずつ繋がり始めているのかも……そんな気がする)

茜莉(ちょっと何言ってるか……)

ェアィン(そうだよね。僕自身が夢幻の中にいるようなモノだから……)


〇丸内高校・校門前(午後)

   

   バスが停まっており、そのバスから上下のジャージ姿に長靴、リュックを背負った生徒たちが次々と下車してくる。

   菜津、そして茜莉も降りて来る。

   と、茜莉を見つけたスーツ姿の野々宮京香ノノミヤキョウカが近づいて来て声を掛ける。

京香「こんにちは。一色茜莉さん?よね?」

   茜莉、一瞬固まりながらも返事をする。

茜莉「こ、こんにちは……。はい?……」

   後ろから近づいて来たスーツ姿の安西浩太郎アンザイコウタロウが、茜莉に言う。

浩太郎「先輩、女子高生ビビッてますってば。はい、一色さんコレどーぞ」

   と、イチゴ味の飴を茜莉に手渡してくる。

茜莉「え、あ?……ありがとうございます」

   と、受け取る茜莉。

京香「一色さん、お話いいかな?」

茜莉「え?お話?」

浩太郎「学校の方には許可を頂いておりますので、大丈夫ですよ」

   茜莉、ェアィンに問い掛ける。

茜莉(ェアィン……?)

ェアィン(……問題なさそうだけど)


〇丸内高校・面談室1(午後~夕)


   茜莉、机を挟んで京香と浩太郎が座っている。

茜莉「記憶障害ですか?私の?」

京香「そう。あなたもね」

   浩太郎、渋い顔をして隣の京香へ呟く。

浩太郎「先輩」

   京香、浩太郎の呟きをかき消す様に声の圧を少し強めて喋る。

京香「知らなかったかしら?この学校の生徒さん、記憶障害の子が割合多いのよね」

茜莉「あ、同じクラスに……」

京香「そうよね。その子も」

   浩太郎、呆れ顔で、

浩太郎「先輩」

   と言うと、言葉を続ける。

浩太郎「私たちは心理カウンセラーなんですよ」

   京香が大げさに頷く。

浩太郎「隕石事へ……事件で悩んでいる人のカウンセリングを学校側から依頼されましてね」

   京香、机に前のめりになり茜莉の顔を覗き込む様にして言う。

京香「一色さん。今、困っている事とか何でもいいの。私達に話して聞かせてくれないかな?」

   茜莉、京香の視線をずらして答える。

茜莉「思い出せない事が多いのは困ってます……けど……けど、大丈夫です。私」

   京香、体を起こして引き目線で言う。

京香「何か悩んでそうな顔してるけど?」

茜莉「……いえ。私よりも困っている人に時間を割いてやってください」

   


〇丸内高校・面談室前廊下(夕)


   茜莉が面談室から夕陽が窓から差し込む廊下に出て来ると、隣の面談室2から彩が出て来る。

   目が合う二人。


〇丸内高校・面談室1(午後~夕)


   浩太郎が神妙な顔で京香に話し掛ける。

浩太郎「先輩……」

京香「……そうね。コード369の子……でしょうね」

浩太郎「だって、あんな女子高生……が?予言とはいえ信じられません……」

京香「外れて杞憂で終わればそれでよし。しかしここまで実際にコード369案件はすこぶる順調に当たっているわ。皮肉にもね……」

浩太郎「厄災で世界に終わりをもたらすなんて……」


~第5話・終わり~

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