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HERO-in(e)  作者: とーはく
3/5

第3話

※一般的な小説のように、文章を読み進めることにより映像が脳内を通過していく感覚とは異なり、このお話はいわゆる【脚本シナリオ】の書き方をベースにしております。

ですから、情景をイメージするには読み手様であるご自身が、脳内スタジオで舞台セットを構築し、カメラワーク等をこなす作業が必要となります。

簡単にいうと、読み手様はもれなくこのお話の脳内監督さんになって上映してくださいな。

誤解をおそれずに言うならば、今までの経験で、スマホで動画を撮り、要らない箇所をカットしたり動画編集した経験がおありでしたら、そうソレで十分にこの取っ付き難い物語を読み進める事が出来るはずです。


~主となる登場人物~

 ・一色茜莉イッシキアカリ・高校二年生

 ・ェアィン・茜莉の中の住人

 ・一色幸次イッシキコウジ・茜莉の父

 ・一色楓イッシキカエデ・茜莉の母

 ・富田菜津トミタナツ・クラスメイト

 ・宮下彩ミヤシタサイ・クラスメイト

 ・台場宗孝ダイバムナタカ・部活のコーチ

〇丸内市街・デパート・ゲームセンター内・異空間

   黒い瘴気によって変貌した小道は、元の体格とはかけ離れた大きな体躯へと変貌しており、手を伸ばし駆けよって来た茜莉を威嚇する様に咆哮した。

   その咆哮によって、押し戻される様にして転び、へたり込む茜莉。

茜莉「うっ!……」

   黒い小道、茜莉に背を向けると、異空間で静止している森下と橋田の方へ歩みかける。

   茜莉、すぐさま立ち上がると、背中のバッグを自身の前に構えて、黒い小道へとタックルを仕掛けていく。

   トン!と、軽い音が黒い小道の左の膝裏でする。

   黒い小道、振り向かずに軽く左足で後蹴りをする。

茜莉「キャッ!」

   バッグごと蹴り飛ばされて飛んでいく茜莉。

   黒い小道の右手のカッターナイフが変貌し、黒く長い得物へと変化する。

   茜莉、仰向けになって、真っ黒な異空間の天井を見つめている。

   右の鼻腔から少し血が出ている。

   茜莉の体、少しずつ白く発光し始める。

茜莉「私……私っ!助けたいのっ!」

   その声と共に発光は一気に加速すると、茜莉の体は変貌。

   雄々しい金属光沢した白亜の剛体が崛起し、異空間の暗闇を一瞬、眩く真っ白に照らし出す。

   もれなく、空間内の黒い小道、森下、橋田と全ての人という人を照らし出す。

ェアィン「伝わったヨ。キミの心」

   黒い小道が振り向く。

   少し離れた距離で対峙する白亜のェアィンと黒い小道。

   間。

   ダッ!と、踏み出して、黒い小道はその距離を一気に詰め、ェアィンに切りかかって行く。

   大振りで繰り出した左右の二連袈裟斬り。

   それをバックステップで躱すェアィン。

   再び距離を置いて対峙する二人。

   黒い小道、一瞬、右上を見るような仕草をすると、左手を前、得物を持った右手を後ろに引くような姿勢で低く構えた。

   応じる様に身構えるェアィン。

茜莉(んっ!?)

   急に細かい足取りで詰め寄って来る黒い小道、広げた左手でェアィンの顔を掴む様に出していく。

   ェアィン、応じる様に右手でそれを弾くように動く。

   と黒い小道、その場で一瞬でしゃがみ、クルっと右回りで横回転すると、右手の得物でェアィンの右腿を狙った。

   その動きに、反応が間に合わなかったェアィン。

ェアィン「っ!」

   右腿に得物の切っ先の斬撃を受け、切創が出来る。

茜莉(痛っ!……)

ェアィン(スまなイ!)

   バク転を三回して間合いを取り身構えるェアィン。

   しかし、うまく立てずにバランスを崩してよろけて右膝をつく。

ェアィン「コれ……ハ!?」

   斬撃を受けた切創部に黒い瘴気が染み付き侵食し始め、ゆっくりと右脚全体を黒く染めていく。

   それを見た黒い小道、嗤う。

黒い小道「ハハハハハ!」

   同時に、茜莉の脳内に思考が流れ込んでくる。

小道((助けて……))

ェアィン「彼ダ。侵されていル」

   ェアィン、よろけながらも立ち上がって身構える。

茜莉(あの子、KASSEN経験者だよ……)

ェアィン「……」

茜莉(アィン、私に委ねてくれない?)

ェアィン「分かっタ。心をキミに重ねるヨ」

   声、ェアィンの声で茜莉口調になる。

ェアィン「ねぇ?君、部活かな?KASSENやったことあるでしょ?」

   嗤っていた黒い小道、スッとなり白亜のェアィンの方を見る。

ェアィン「だったらさ、こんな事やめない?君のその技術だって誰かを傷つける為に鍛錬したわけじゃないでしょ?」

   震え出した黒い小道、膝をつくと頭を抱え悶える。

   すると、黒い小道は右手の得物で自分の胸を刺そうとする。

   が、詰め寄ったェアィンのがその右手を掴み、すんでの所でそれを止める。

   肩を震わせ鳴く黒い小道。

   その黒い小道の顔の目の辺りから、透明な涙が落ちてくる。

茜莉(な……みだ?……)

ェアィン(ソうだネ……)

茜莉(彼、こんなの望んでないんだよ!やっぱり!)

ェアィン(ウン)

   黒い小道、膝をついたまま上を見上げ大きく咆哮すると、ェアィンの右手を振り払って、後ろを振り向きながら立ち上がり、歩き出す。

   その視線の先には、異空間で静止している森下と橋田の背中。

ェアィン(アカリン!この空間でもし彼らに何かあった場合、戻った瞬間、因果はその結末へと収束すル!)

茜莉(うん!止めればいいってことでしょ!)

ェアィン「分かったわ!」

   ェアィン、右脚を引きずるようにして、黒い小道を走って追う。

   そして黒い小道の右肩を右手で掴もうとした瞬間、上に跳躍して後方宙返りした黒い小道に背後を取られる。

ェアィン「しまっ!……」

   前方によろけながら、左側から後へ振り向こうとした瞬間、左腕に斬撃を受ける。

   ドタドタとしつつも姿勢を保ちつつ、後ろに引くェアィン。

   そのェアィンの背後には森下と橋田の背中が迫る。

   ェアィン、斬撃を受けた左腕を見る。

   斬撃を受けた切創部に黒い瘴気が染み付き侵食し始め、ゆっくりと左腕を黒く染め上げていく。

   茜莉の脳内に再び思考が流れ込んでくる。

小道((もうやだよこんなの……))

   茜莉、やや強い口調で脳内のェアィンへ問い掛ける。

茜莉(ねぇっ!アィン!!)

ェアィン(ウん!強くイメージするんダ!)

   得物を振りかぶって迫りくる黒い小道。

   ェアィン、右手で見えない刃を握ると、向かって来る黒い小道を先に捉える。

   そして左脚でダン!と床を蹴ると、

ェアィン「ハッ!」

   と、すれ違いざまに黒い小道の得物を切り落とすェアィン。

   床に落ちた得物、霧散して跡形もなく消える。

   ェアィンの方へと向き直って、咆哮する黒い小道。

ェアィン「知ってる?武具の破損はもれなく失格だってこと!」

   突進してくる黒い小道。

   ェアィン、見えない刃をスッと黒い小道の正中線を沿うように静かにおろす。

   その瞬間、黒い小道、一瞬ビクッと全身を震わせると、正中線から左右に半分に分断されて霧散する。

茜莉(き……消えた……)

   ェアィンの白亜の剛体を蝕んでいた侵食も霧散し消えて、右腿と左腕の切創も自然修復されていく。

   そして、真っ黒な異空間が揺らぎながら霧散し消えて、現実の空間へと静かに戻って行く。

 

〇丸内市街・デパート・ゲームセンター内(夕~夜)

   館内の照明が何度も点滅している。

   小道へと手を伸ばして駆けている茜莉と、それを振り返った姿勢で見ている小道。

   と、突然に館内の照明がバチッと消えて、館内は一瞬にして真っ暗闇になる。

   同時にゲームセンターの賑やかな光も音も途切れる。

   走って来た勢いそのままに、崩れる様にスッと小道を抱きしめる茜莉。

   小道の右手からカッターナイフが落ちる。

   そのカッターナイフは空で刃は付いていない。

   小道、戸惑った感じで、抱きしめている茜莉へと言う。

小道「あ、あの……?ど、どうかされました?」

   茜莉、静かに答える。

茜莉「ううん。ごめんね。急に暗くなったからつまづいちゃって……」

   茜莉、小道から手を離しスッとっ立ち上がる。

   間。

   館内に非常照明の小さなスポットライトが点灯し薄明かりが灯る。

   茜莉の視界の先、森下と橋田が、周りをキョロキョロしながら各々、別々の方向に歩いて行くのが見える。

   茜莉、小道を見て言う。

茜莉「逃げるな。って誰かは言うかもしれない。けど、私、回避することも立派な戦術じゃないかって。KASSENだってそうでしょ?」

   小道、ポカンとして茜莉を見て言う。

小道「あの……鼻血出てますけど……」

   茜莉、驚いて、手で鼻を覆いつつ、

茜莉「えっ……えぇ!?」

   と、顔を真っ赤に染める。

   小道、胸の内ポケットからポケットティッシュを出すと茜莉に渡す。

小道「使いかけですけど……良かったら」

茜莉「あ……りがと」

   茜莉、それを受け取り後ろを向くと早速、使って鼻血を拭う。

   改めて向き直って茜莉、

茜莉「お礼を言いたいな。私は一色。君、名前は?」

   と、問い掛ける。

小道「小道です……」

茜莉「小道君か。ありがとうね」

   茜莉、残りのポケットティッシュを胸ポケットにしまう。

茜莉「なんだか館内も停電みたいだし。帰ろっか?てか、ちゃんと帰れる?」

小道「馬鹿にしないでください……」

茜莉「ごっごめん……。そんなつもりじゃなくって……」

小道「……でも、なんだかおかしいんです。なんで僕、ここにいるのか思い出せなくて……」

茜莉「えっ?……」

小道「なんかこう……頭の中が白いんです。何か大事なことがあったような気がするんですが……真っ白になって……そこだけ……」

茜莉「……君?もしかして」

小道「あーいや。心配いらないですから。自分の家くらい分かります。そんなんじゃないです。ただなんか物凄く疲れてるだけだと思いますし……」

   と、女性の声で館内アナウンスが流れる。

女アナウンス《本日はご来館頂き誠にありがとうございます。只今、全館にて停電が発生しております。復旧まで足元などに気を付けてお待ちください。繰り返します。本日は……》  

小道「やっぱり停電だったんですね……」

   小道、落ちている刃のないカッターナイフを拾うとしばし見つめる。

   そして、胸ポケットにしまう。

小道「じゃあ、お姉さんも気を付けて帰ってくださいね」

   去っていく小道。

   その背中を見守る茜莉。

   茜莉、脳内のェアィンに語りかける。

茜莉(記憶障害……)

ェアィン(異空間との因果関係……そして感情と記憶の結びつき……いろいろと考えられるし考えないとだネ)

   と、茜莉のスマホの通知音が鳴る。

   茜莉、スマホをスカートのポケットから出し、画面を見る。

   スマホの画面には、楓からのメッセージで【ついででゴメン!コンビニでもいいんで修正テープもお願い!】とある。

   茜莉、ため息を付きながらスマホをしまうと、呟く。

茜莉「今度は修正テープかよ~」

   と、スマホに再び通知音。

   茜莉、スマホを見る。

   楓から500円の電子マネーが送られて来ている。

   そのメッセージを見るとポケットに戻す。

   茜莉、床に転がったままのバッグとドッグフードを手に取り薄暗い店内を歩いていく。


〇電車内(夜)

   茜莉、混みあった車内でドッグフードを右手に持ち、左手でつり革に掴まりながら、窓の外の夜景を見つめている。

茜莉(ねえアィン?)

ェアィン(ウン)

茜莉(さっきの彼、小道君。ちゃんと帰れたかな?)

ェアィン(ソうだネ)

   間。

   電車の走行音。

   電車同士のすれ違う音。

茜莉(私さ。ずいぶん冷静にしてられるなって)

ェアィン(……)

茜莉(本当だったら発狂してても別におかしくないのにさ。私ってさ、本当に私かな?……)

ェアィン(……)

茜莉(……ごめん。冷静になったら何だか自分が悪い白昼夢でも見ているんじゃないかって。信じて寄り添うべき柱がわかんなくて……)

ェアィン(キっと悪いのはボクだ。だからアカリンが信じた選択をボクは信じる。だから安心しテ)

茜莉……うん


〇丸内市街・繁華街・ビルの屋上(夜)

   隕石被害を受けたビルの屋上の端に金属光沢した漆黒の剛体のヴァイラスが一人立って下界の繁華街の景色を見つめている。

ヴァイラス「アぁ……いい臭いがするゼ……」

   ヴァイラス、ビルの端からスッと身を投げ出すと、夜の街の中に消えていく。


〇丸内市街・繁華街・裏路地(夜)

   薄暗い裏路地のネオン灯や飲み屋の看板、自販機の照明がチラチラっと点滅を繰り返し、そして消える。

   間。

若い女の声「キャアアアアアーーーッ!」

   と、どこからかする若い女の悲鳴。

   真っ暗な裏路地から制服姿にバッグを背負った彩が一人歩いて出て来る。

   その彩を追い越すように走って行く若い男一人。

   停電が復旧し、薄暗いネオンが宮下の顔を照らす。

   その彩の口には薄っすらと笑みが見える。


〇丸内市街・繁華街(夜)

   歩いていく彩の背中。

   パトカーと救急車のサイレンが街にこだましていく。


~第3話・終わり~

~用語~

 ・KASSENカッセン

  ⇒合戦とも。日本のスポーツチャンバラが海外で変化し、鎧の様なプロテクターや攻撃武器にヒットを感知するセンサーを搭載し、体の各部位に斬撃もしくは打撃によって、プロテクター同士を繋ぐ関節部分のパーツにある電磁ロック(ソレノイド)システムで、人体の関節の可動域制限を設け、よりリアルなチャンバラごっこと、複数人による同時対決で戦略を楽しむ歴史は割と浅いスポーツ、競技。

茜莉の高校は現在は進学校ではあるが、以前の商業高校時代に、このKASSENに力を入れていた経緯があって、女子の部活があり、元来生徒数が少な目な男子の部活はまだない。

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