題名「見えない月をつかまえるはなし」
「あーきよこい。来るならこい。」
満月を背に口ずさむ。
お酒の効果もあるだろうが、単に1人バースデーが虚しいだけなのもある。
「秋は恋の季節〜。大きな餅をツキナガラー。」
酒を煽る。と言ってもこれノンアルなんだよねー。
ぐいっ。プハー。ぐいっ。
「この世の終わりはいつじゃろか?この世が終わるの今じゃろか?」
ごくっ。ふぅー。
今日は誕生日だと言うのに・・・。1人なんてな。ごくっごくっ。くぅー。染みるねぇー。
紫芋のタルトなんて食べてたらもうね。ケーキに蝋燭はひーふーみー。大きいのは三つ。ひーふー。小さいのは二つ。つまり32才。と言うことになる。
外には相変わらず赤い雪がちらほらと。コップに一個雪が入る。・・・飲めたもんじゃない。コップを洗って一杯飲み干す。ごくっごくっ。ちょっと待て今何杯目だ?缶缶は10個ほど転がっている。むむぅ。たったの10杯か。ならまだ飲めそうだ。缶を開ける。ぷしゅ!
おっとっと。こぼれそうだ。ゴクッ。寂しげに見つめてくるなよ?月なんてもう見えないんだから。ふー。もし月が見えるとしたらそれは・・・天国しかないな。酔ってるらしい。少し寝ようか。窓は・・・まあ閉めなくてもいいか。今は秋なんだから。秋が終わるなんてことがあるわけがない。だからとりあえず今は寝よう。これからのことなんてわからない。寝る=明日になる。だから。月は見えない。だからつかまえることもできない。グーーーー。。。すーすー。
コップには月。秋は月をつかまえたのだ。
見えることはない空虚な月を。
完