第3話 うちあげじゃあい!①
«━おい、起きろ。»
…どうやら、俺は何かと悪い夢を見ないと、気が済まないらしい。
命令され、目を開けた先に写るは、
「…いつぶりの牢屋だよ…」
周りが固いレンガで囲まれた牢屋だった。
やけに鮮明である。
«━被験体:ラルス・リアム、早く出ろ。»
牢の扉が空いた。
……どうやら、俺が『能力』と『呪い』を付けられた日のことのようだ。
言わずもがな、俺の能力は視界内の鉄を操れる能力だ。
この能力は、俺の物じゃなかった。
俺が囚われていた…いや、『買われた』研究機関が作った能力だ。
その影響で俺の能力は消えた、いや、『呪いになった。』
つまり、俺の元の能力は『鬼神』である。
いやなんか変だな、鬼神が宿ってると言った方が楽か。
世界の理、能力は一人一つという、神が作った決まりを破ったせいか、鬼神を意のままに操れなくなった。
まぁ鬼神も神ではあるが、色々事情があるんだろう。
鬼神の方も、あまり力を使うと暴走する、という枷が着いた。
…こうなる前は自由だったなぁ〜…
━━━━━━…
「……頭いてぇ…」
今度は現実で、目が覚めた。
とある部屋の真ん中、机を囲んで、時計回りに、俺、柊、ジーク、師匠、美咲と並んで、
「…あ、そういや打ち上げで…」
寝落ちていた。
さぁ時を遡ってみよう…
完全にダウンしていた俺は、美咲に抱かれ、連れられ、そのまま部屋へ入った。
まぁまぁ高そうなマンションの、一部屋、言わずもがな広い。
美咲が靴を脱ぎ、俺も靴を脱がされ、中へ上がった。
そして、
「ふんっ!」
「…っあぅ…」
ソファへトスされた。
「ぐぅぁぅぅぅぅぁぁぅぅ…」
「はぁ…眠気の次は悔しさか…」
眠気と微妙な疲れ、そして悔しさに俺は唸っていた。
顔をソファ填めて…
「だっでぇ…あいつらクソ研究員共の顔見たら、どうしても抑えられないんだよぉ…」
ぼふぼふとソファにあるクッションを叩く。
八つ当たりじゃあ!
「だからってブチ切れてダウンしたらどうしようもないだろ〜…」
正論と共に美咲は立ち上がり、キッチンへ向かった。
「んぁ〜…みしゃき〜…ビールくれ〜…」
「グダるな…ん?」
不意にインターホンがなった。
「ラル、ビールやるから誰か確認してこい。」
「…は〜い…」
だる〜んと立ち上がって、何とか俺は玄関にたどり着いた。
「は〜い?…」
扉を開けると、
「ラル!…」
ちんまりと可愛いのが1人、
「よう、ラルス!」
なんか無性に腹が立つ、エコバッグを両手に4つ持ったじじいが1匹、
「すまんラルス、途中で会って連れてきてしまった…」
そして、申し訳なさそうにレジ袋を持っているクm…師匠。
「あ〜…」
回らない頭を回して返事を考えていると、
「お、柊ちゃん久しぶり〜。」
イケメン救世主登場、きゃ〜…この思考がバレたら死ねるな。
「あれ俺は…」
困惑中のジジイ1名、可哀想にな。
「久しぶり…」
そう言って抱きついて、
「のわっ…って、このタイミングで、抱きつくの俺じゃないでしょ…」
来た。
「相変わらず、仲良いな君ら。」
「よしよし、相変わらず可愛いな。」
頭をわしゃわしゃと撫でる。
「んへへ〜…」
幸せそうに笑う柊……なんて破壊力…
「…俺も久しぶりなはずなんだけどなぁ〜…」
「はいはい、荷物持ち、私が構ってやる。」
「金田城の優しさが身に染みるぜ…」
どうやら別でなにか始まっている模様。
深くは語らん、あの二人、案外任務も行ってるらしいしな…
「とりあえず皆中入れよ、疲れてるだろ?打ち上げだ!」
美咲が盛り上げ、
「「おー!!」」
素直に応じる若者2人。
「「…酒、買ってこようか。」」
酒カス2名…いや、
「俺行ってきますよ?」
1人追加、俺だァ!
「…私も行く。」
「了解、頼んだ。」
「それじゃあ、俺は飯でも作るかね…」
「手伝うぞ、美咲。」
それぞれ役割を持って、美咲と師匠はキッチンへ、俺と柊は近場の酒屋へ向かった。