第1話第1終演 本気のストリートダンスステップ
「応急処置したと言えど、微妙に痛むなぁ〜…」
止血して、包帯を巻いた左肩を摩りながら言った。
「…ごめん…人型だと、銃はまだ慣れてなくて…」
すりすりと柊も、肩を擦りながら言ってきた。
何だこの可愛い生き物は…
「いやいや、別に柊を責めてないよ、むしろ無事でよかっ…おわっ?!」
呑気に、話しながら歩いていると、2人同時に1人の人に当たった。
なんだこやつ、気配感じなかったぞ…
「すいませ━」
謝ろうとした瞬間、その人の腰あたりから光るものが…
「ッ!」
«ズガッ»
何かが切れる音がした。
「わぁっ!?」
「がっ…」
柊を押した俺の手は、
「うっ…がっ…」
肩から吹っ飛んでいた。
俺は余裕なく、肩を押さえながら、ヨロヨロと、二、三歩後ろによろめく。
「ッチ…」
舌打ちして、やつも距離をとっていた。
「てめぇ…研究組織の野郎か……」
睨み、ニヤケながら言った。
「回答は出来ないと言っておこ……なっ!?」
何がが、襲いかかった。
«ガギィンッ…»
「………」
…あ、何かじゃねぇ、
「ぐっ…ぬわぁっ!?」
吹っ飛ばされる相手…というか…
「あ、あの〜柊〜?…」
キレて、獣人化している柊に、恐る恐る声をかける。
「………」
あ、ダメですねこれ、マジギレですね…
「けっ…なんなんだガキぃ!」
と、ヤツがとんでもないことをほざいた。
「あ、おいバッ━」
「ッ!!!!!」
«ドゴッ、ガギッ、バギッ………»
柊さんがボコボコに、してくれている間に、さっさと自分の腕を回収し、強引に付けようとした。
と、その時、
«パチンッ»
唐突に、指パッチンの音が響いた。
その音の方向を見た。
「医療系賞金稼ぎ、ジークフリートの参上だぁ!」
ででん!とでも、効果音が鳴りそうな感じで、堂々とオッサンが立っていた。
身長180…なんぼだっけか、まあいいや。
俺はそのオッサンに対して、
「るっせぇぞおっさん、回復は助かるけど。」
冷たい態度を取っておく。
「…はぁ、相変わらず冷たいなぁ、ラルスは〜…」
だる〜んと、抱きついてきた。
ん!?
「ひゃぁっ!?…抱きついてくるなぁ〜!?」
背中から来おってからにこいつ…
「いいだろ〜がよ〜、俺らの仲だろ〜?」
「耳元で囁くなこそばゆい!あと胸を触るな!?」
等と、遠慮なくセクハラしてきやがってぇ…ふざけおって本当…
「つれないね〜」
「そのノリに連れる奴はあんまいないだろ…いい加減離れろ!」
と言っても、抱きついたまま離れない…この変態誰かどうにかして…
「最近金田城も依頼で忙しくしてんだ、こっちゃ暇なんだよ。」
「知らねぇよ離れろ…」
しばらく抵抗しても離れなかったので、
「ったく…んで、なんで居んの?おっさん」
観念してそのまま話す。
マジデ、ジャマ、コイツ。
「あぁ、賞金首がこの辺で出るって話だったんだが…外れだったな、近所の誰に聞いても、もう居なくなってるって話だったぜ。」
残念残念、とおどけて言ったので。
「ふへへっ、ざまぁな。」
と、煽るように(自己流)言ってやった。
…なんか自分が子供になった気分だ…
「…ふぅ…終わった。」
ふと、達成感が漲った声と、
「あ…が…」
完全にボコされた後の、アイツ…分かりずらいから、被害者Aと呼ぼう。
「うい、お疲れさん。」
「…ラルス…その後ろの、何?…」
獣人のまま、ギロっと後ろのエロおじを睨んでいる。
お、どうやらまだ暴れ足りないようだ…
「…あ、柊よ、まぁ話せばわか━」
「━にゃぁッ!」
可愛い掛け声とともに、ジークに襲いかかった。
ジーク…まぁ、良い奴だったよ。
柊が暴走している間に、
「お〜い、お前、誰に指示されて来た?」
情報を仕入れとこう。
「…へっ、言わねぇよ…というか、てめぇ自身わかってんじゃねぇか?」
「はぁ…どーせ、あの研究機関だろ?全く、未だ俺を狙ってんのかよ…だったら、てめぇを生かしとく理由は無いな。」
拳銃を構え、被害者Aに向ける。
「…ん?…」
不意に空に何かを感じたので、見上げると、
「…ヘリ?」
ヘリが数機向かってきている。
…え?ヘリ?
「へへへ…来たか…」
また不敵に笑ってやがる。
「GPSか、なんかか…めんどくせぇことするなぁお前も。」
不敵に笑う被害者A……
«パスンッ…»
サプレッサーに包まれた銃声が、静かに鳴る。
「さぁて、ちょっと本気出すかなぁ〜…」
パーカーの袖を捲り、髪をかきあげる。
「あれ?…」
「お〜い、ラルス、何やってんだ?…」
お、どうやら今更気づいたらしい。
ったく、じゃれあいも程々にしろってんだ。
「いや、何、気にすんな、ちょっと、お客が来たらしい。」
左目を光らせ、
(行くぞ、鬼神)
念じた。
(やれやれじゃのう…)
頭に響いた声と共に、
«バギギギギ…»
宙を裂くような音と、衝撃波がヘリを襲った。
「んでもって…」
ヘリの居た方向に、右手をかざし、
「すぅ〜〜…ッ!!」
能力を使う。
すると、辺りにチラばろうとしていた、ヘリの残骸が全て鉄粉と化す。
「おぉ〜…」
「圧巻…だな…」
後方2人が声を漏らす。
周りへの被害は出さず、目標だけ排除、完璧な仕事ぶり…というか暗殺ぶりである、どっちが暗殺者かわからなくなってきた。
その一方で、
「うっ…づがれだ…」
その当事者は、ふらっとぐらつき、
「ラルス!?」
「やれやれ…」
倒れるのであった。