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03 エリア51

途中から、並走する飛行機が有るのは不思議に感じていた。


ほぼ真夜中についた空港では、窓の外の様子が違っていたのだ。


タラップの途中で周りに目にしたのは、旅客機ではなく戦闘機や貨物機。


「ここは、いったい何処なの?」


答えは、タラップを降りた先で待ち構えていた女性士官が口にした。


「ミス ルーシー・サバラス。ようこそ、ネバダ・ホーミー空港へ。教育担当のマーシュ・ガーランド中尉であります。よろしくお願いします」

「ネバダのホーミー?エリア51?なんで、こんな所に?」


秘書のパティの方を見ても、頷くだけで、返事をしてくれない。


「ミス サバラス。御荷物をお預かりします。宿舎へ御案内しますので、こちらの車に御乗り下さい」

「ちょっと、パティ?」

「行ってらっしゃいませ。御嬢様」


半ば無理やり荷物をもぎ取られ、車に乗せられるルーシーに、秘書のパティは笑顔で手を振っている。


「まさか、宇宙人に身売りさせられるんじゃないわよね?」

「まぁ、似た様な物かもしれませんよ」


同乗した中尉が、笑いながら返すが、ルーシーは笑えない。

エリア51とは、軍が宇宙人と接触しているとか、地球製UFOを製造しているとか言われているいわく付きの基地だ。


案内された宿舎は、飛行場から更に離れた施設だった。

トンネルを通ってきた地下駐車場のでよくわからないが、恐らく地下施設なのだろう。


車も軍用ハマーのボディだが、明らかに電動自動車だった。


通路にも、部屋にも窓がなく、所々がエアロックの様になっている。


部屋は、上級士官の個室なのだろうか?かなり広く、ユニットバスもあった。


「明朝、マルハチマルマルに御迎えにあがります。健康診断の後に食事となり、説明会がありますので、御用意ください」

「あのう、これは何の行事なんですか?」

「明日の大まかなスケジュールは、その紙に書いてあります。プロジェクトの詳細は、明日の説明会で御話しがあります。では、失礼致します」


取り付く島もなく、中尉は部屋を出て、部屋はロックされた。

室内には、冷蔵庫や簡易キッチンなど一通り揃っているので、不便は無さそうだが、完全に外部とは遮断された空間だ。


「兎に角、シャワーを浴びて寝よう」


既に時間は23時を回っている。

ルーシーは学生モードから、高官令嬢へとスイッチを切り替える為に、シャワールームへと向かった。




◆◆◆◆◆



冷蔵庫に、糖類の飲み物や食品が無かった理由は明確だ。


迎えに来たガーランド中尉に連れられて、翌朝一番の健康診断は、CTスキャンに脳波から虫歯から、血糖値や検便まで、精密な検査が行われ、薬品の投与や歯の治療スケジュールまで告げられた。


食堂には軍人は勿論、ジュニアスクールに通う様な子供から、きゃしゃな老婦人まで居る。


「ダメだわ。私と同じ民間人みたいな人を見ても、傾向が掴めない」


見たところ、強制されている訳では無さそうだが、年少者と大人は別々に集まっている傾向がある。

それぞれに、幾つかの集まりになって、話ながら食事やお茶をしている。


子供達は足が上がらないとか目が回るとか身体的な話をしており、大人達は専門用語混じりの話をししている様だった。


近くで食事をしているのは、ガーランド中尉の様に教育担当の兵士なのだろう。


「・・・以上が、この食堂の利用規定です。消費した分はブレスレットを通して記録されますので、配給規定以上を消費すると、ペナルティや配給制限がかかりますから注意して下さい」


室内着と共に渡されたブレスレットは、時計や位置情報端末の他に、非接触形のプリペイドカードの様な役目もするらしい。

食品のポイントは、市場の単価とは基準が違う様に見える。


「一番安い栄養食品は、このクロレラジュースって奴ね?味も最低だけど」

「ユーグレナも、栄養バランスが良いですよ」

「ユーグレナって、微生物のミドリムシですよね?」


ルーシーは成分表示とネーミングを見て悩む。


「タンパク質が欲しいなら、このホッパービスケットが安いですね。牛肉ステーキの十万分の一ですから」

「ホッパーってバッタやイナゴよね?牛は年に一回食べれるか食べれないかって計算になるんだけど?」

「誕生日に食べる人が多いみたいですね」

「何なの?ここの食生活は?」


騒ぐルーシーを笑いながら、ガーランド中尉はホッパービスケットをかじりながら、ユーグレナジュースを飲んでいる。


「馴れれば、なかなか美味しいですよ」

「イギリスに戻りたぁ~い!」


初日の朝から、ホームシックだ。


「食欲が無いなら、無理に食べろとは言いませんが、この後は説明会がありますので、そろそろ移動しましょうか?」


ガーランド中尉に促され、中央通路へと向かう。

この辺りは自動ドアが多いが、見慣れた透明ガラスのドアではなく、金属製の特殊な開きかたをするドアだ。


幅が10メートルほどある中央通路も、定期的に非常扉が降りてくる様なスリットが付いている。


連れられて来たのは、椅子とモニターのあるだけの狭い部屋だ。


「ビデオ等で説明が有りますから、しっかりと見て下さい。時間は一時間ほどですがトイレは大丈夫ですか?外で待っていますから、何かあったら呼んで下さい」


厚い扉が閉まり、言われるままに個室に入り、椅子に座ると自動でビデオモニターに電源が入った。


『ルーシー、元気か?突然の事でビックリしていると思う』


モニターに映し出されたのは、ルーシーの父親である、チャーリー・サバラスだった。


「ダディ。これは何なの?」

『予定通りに帰国してくれれば、時間をとって説明できたんだが、お前がタダをこねるから、こんな手順になってしまった』

「ちゃんと話してくれれば、私だって」

『私は国を離れられないし、この内容はパティ達にも詳細は話せない。勿論、電話やメールでも伝えられない国家機密の一部だから、それは無理だったんだよ』

「だからって・・・」

『もう、時間が無いんだ』


ルーシーは、自分の都合ばかりで、相手の立場を考えていなかった自分を自覚した。

父親は、一般人と違う『大統領補佐官』と言う仕事をしている特殊な人間だ。


『端的に言うならば、お前には火星へ行ってもらう』

「火星?って、なんで?」


続きは明日の12時に掲載します。

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