21 地下都市の被害
いよいよ最終回です
小惑星の影響は、地球だけではない。
濃厚な大気を持たない火星も、少なからず小惑星群の軌道変更の被害を受けていた。
「リフト11に影響あり。リフト12からドールを回して修復を!」
「いやいや待て。新たな修復に回すよりは、一つでも復旧作業を急いだ方が良い。内部からの気密対策と漏電対策のみにして、現行の修理を優先しろ」
直撃しなくても、近くに落ちただけで衝撃が来る。
機材の損傷や建材の変型など、影響は少なくない。
考えられた地下都市には、複数の出入り口が用意されている。
そして、被害を分散する為にも、蜘蛛の巣の様に放射状に配置されているが、広範囲に及ぶソレは確立論的に被害件数を増やす。
勿論、地下掘削の道具も有るので、新たな出口を作るのも可能だが。
被害を受けた出入り口は、多数あるものの一部に過ぎないが、放置する訳にもいかず、順々に修理されている。
先日の様な脱出者が無ければ、屋外作業用人型端末であるドールは、普段は、この様な作業に回される事が多い。
個体数も専門職も数が限られるので、フル稼働に近い。
「いつになったら降らなくなるのかな?」
「数は違うが、建設当時から降っていたらしいぜ。衛星からの警報も有るから、貴重なドールを失う心配は減るがな」
修復作業に新たに加わった者が言う通り、利用価値が高く、精密なセンサーを内蔵したドールは、貴重品だ。
屋外作業が無くなることは、無いだろうが。
「地球は、もっと酷いらしいぜ」
「見た見た。ニュース報道映像なんて、映画のシーンかと思ったくらいだぜ」
このMoA近郊に落ちる隕石など、多いと言っても一年に数個だ。
それも小さい。
影響を受けた大半の小惑星は、軌道を太陽側に落とした物だ。
かと言って、外側にある火星に影響が無い訳ではないが。
「まぁ、向こうに比べれば、火星は平穏だよ」
「そうだな。作業も安全にできるし」
「地球に残した家族が心配だなぁ」
「そうだな」
屋外作業をしていた二人は、宵の明星として見える地球へと、想いを寄せた。
◆◆◆◆◆
地球の政府シェルターやMoA協力者のシェルターは、地下深くにあり、火星開発の技術を利用しているので、被害は少ない。
とは言え、シシュフォス落下の影響は、シェルターの一部内部崩壊などあり、死者すら出ている。
ここの動力は、地下水脈を冷却に使った原子力発電が有るため、半世紀以上は大丈夫だろうと言われている。
既に予想されていた連鎖地震にも、被害の阻止は出来ないが、復旧の準備ができている事だけでも大きい。
シェルター内に用意されていた、電動重機が瓦礫を撤去し、処理を開始している。
屋外の修復に、火星のドールは使えないが、リモートコントロールの重機は20世紀後半から実用型されているので、それが使われた。
懸念された長期避難の為に起きるビタミンD不足も、サプリメント在庫に加えて、庭園エリアの照明に紫外線ライトを混ぜる事で解決している。
MoA関係のシェルターならば、避難も50年は大丈夫だろうと言われている。
しかし、他のシェルターは違う。
全てのシェルターを救うことは無理だ。
よって、可能な範囲を確実に救う努力と工夫と決断が、必要だ。
つまりは人類の全滅を避ける為に、多数を見捨てる行為。
生き残る為には、平等や多数決による民主主義も道徳も意味をなさない。
可能性を調べ、無駄になるかも知れないのを前提に準備し、行動する者だけが生き残る。
政府や社会が何とかしてくれると他力本願な者は、非常時に騒いだ時点で障害として処分されるし、しなければ全体の危険が増すだけだ。
あとは『運』。
今回の隕石は、オーストラリア南洋へと落ちたので、アメリカやヨーロッパへの被害は、比較的小さい。
やはり世の中、一番大きな力は、運とタイミングだ。
「シドニーからの最後の通信は、断末魔だったな」
「オーストラリアは全滅だろう」
世界有数の固有種を持つ大陸も、巨大小惑星の衝突には耐えきれない。
確認は取れないが、既に生物は居ないだろう。
オーストラリアだけではない。
吹き上げられた有害物質により、世界中に災厄が降り注いでいる。
生き残れる人類は、1パーセント前後だろうか?
「プロジェクトMoAに反対する議員が居なければ、もっと多くの国民が救えたものを・・」
新たに大統領になったチャーリー・サバラスはシェルター内で眉間にシワを寄せている。
ただ、反対派が間違っていた訳でもない。
あの時点で、隕石やシシュフォス等の落下は確実では無かったし、充実したシェルターを増やすには、増税が必要だ。
来るか来ないか判らない災害への増税には、間違いなく反対する国民が出るだろう。
それは、結果的にプロジェクトMoAの障害になりかねない。
せめて、火星のプロジェクトだけは成功させる為には、事を荒立ててはならなかった。
「全ては結果論。全ては運か!」
大統領は、月面基地から送られてくる報告を見ながら、溜め息をつく。
「人類は滅ぶのか?生き残るのか?」
本文は、これで終わりです。
この後、人類が滅びるか?復活するかは・・・・
オマケの資料集があります。




