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カナリアの国①

推敲無し。まとまったら一つにします。

・-・・・ -・-・ -・・-- -・---

 心が落ち着かないまま自室に入り込む。

 それまでの道程は快適であることが心臓に悪かった。

 あっけない。

 この一言に尽きた。

 料理室に来た二人、洗濯をしにいった二人、他にも使用人がいるはずだが、誰とも会わず……メイオールに会うことも想定していた私に「誰もいない」というのは衝撃的すぎた。 夜が忍び寄り、窓からの光が月光に変わる頃に扉をノックされる。

「はい」

 メイオールかと返事をした。

「お食事をお持ちいたしました」

 少しの間、この声はメイオールではない。

「どうぞ」

 落ち着き、低く、冷たく、声の持ち主は扉を開けて私に一礼をすると、左扉を開ききり、夕食が並ぶカートを押して現れた。これまた見たことのない使用人だった。

 髪は、茶のはいる黒で瞳は切れ長の黒光彩、鼻筋が綺麗で終着点の唇は薄く小さく、漆黒の使用人服と比べると人形のような雰囲気を持つ、綺麗な女性だ。

「本日、使用人長メイオール様が急病の為、わたくし、レガ・ガル・センシルがお持ちいたしました」

 抑揚のないまま恭しく述べたレガは細身の体で背を折り、私の返事を待っている。

「……ああ、ありがとうございます、レガ」

 私は、少しばかりの衝撃の中で思う。どこかでメイオールは味方になってはくれないかと期待していたのかもしれない。一番近くにいて、一番触れ合って、一番に私のことを気に掛けてくれる。それに嘘はないと思いたかった。

 レガはカートを押しながら私の机に、水、パン、スープ、焼いた肉を少し、肉という豪華なものを乗せた皿を並べ、また一礼してから一歩下がる。

 さすがに粥ではいけないと感じたらしい。

 質素な食事は〝すべては平等です〟と謳う国の模倣のようで少しだけ嗤いがこみ上げた。きっとメイオールは急病ではない。

 山を下りた六人が盛大なるもてなしを受けたのを信じるとして、あの使用人たちの話で振る舞われた料理、他の献上品が、こんな質素な食事であるはずはない。

「今日も美味しそうね、ありがとう、レガ」

 一歩後ろに控えるレガに笑いかけると彼女は無表情で、しかし視線は鋭く、ゆっくりと一礼した。

 話し合う気はないらしい。

 レガにも初めて会う。もしかしたら見かけたことや世話をされたことがあるかもしれないが、馬鹿な私は忘れている。

 パンを千切り、口に入れ、スプーンでスープ掬い口に含み柔らかくする。咀嚼してフォークをとって……フォークがない。

「レガ、フォークがないわ。ど」

 どうしましょう、と言いかけてやめる。いつもの私であるなら首を傾げて「どうすればいいかしら」と判断を他人に任せるところだ。つまり何も考えてない馬鹿な娘。

「フォークがないの、持ってきてくれないかしら」

 少しだけ変化を見せてレガを見る。

「申し訳ございません。本日、山を下りる際に全て持ち出されており、遺憾ながら担当の使用人が処理をするのを忘れ、一本もフォークがないのでございます」

 そんな訳がない。

 流石に、それはない。

 昼に出会ったマルケルはスプーンを使い、粥を食べていたし、予備のも含めて全て持ち出されるなんて聞いたことがない。

 ああ、〝どうすればいいかしら?〟とメイオールと付き人に言った過去、慌てながらもにやけていたのは「おかしな子」と思われていたのだろうか。

「……そう」

 手で食べる教育はされていない。

 レガは、なぜこんな食事を用意したのだろう。メイオールの指示だろうか、それとも彼女自身の嫌がらせかもしれない。

 悩む。ここでの動作で何か感づかれるのはいけない。

 パンを一千切り、口に含む。

 愚かでいればいい、昼間、ケーレスに言った言葉だ。

 このまま愚かな食事をしてもいいのだろうか。肉を食べないでいいのか。下町でも〝豪華〟と言われる肉は、外から来た商人からしか手に入らない高級品で、それを食べない私は「食べれなくて悲しいわ」という人間? それとも「仕方ないわ」と片付ける人間?

「ねえ、レガ」

「……なにか」

 くるりとレガを見ながら言うと、やや間を置いて返事をくれる。一応、彼女も使用人という立場、そして神の前ならばメイオールが傍にいない限り、フォークを運び忘れてしまっただなんて、結構な無駄と思う。

 喉を鳴らして口に出す。

「本当にフォークがないのね?」

「……申し訳ございません」

 見た目、レガは細い植物のよう。会釈するたびに葉が揺れるような不思議な感覚におそわれる。私は瞬きをしてから机に向き直る。

「お肉は贅沢だわ。メイオールが用意してくれたのかしら」

「……お食事のご用意だけ承っております」

 ふうん、と声に出さずに言う。フォーク、フォーク、メイオール。これだけ追求してもレガの言葉は、どこか他人事のくせに目は鋭い。

「……国民たちも食べているかしら、お肉は外部の商人からしか手に入らないものね」

 そう言いながら、パンを薄く平べったく千切り、一つの肉塊をパンで包み込むと口にした。

 ちらりと見たレガは大きく目を見開いている。

 反応を見る限りだとレガは、わざとフォークを忘れた。そしてこんな食べ方をするとは思ってはいなかった。

「勿体ないもの。私が元気でいなければ国民たちも元気でいられない。そうでしょう、レガ?」

 今度は振り向き、レガの返事を待つ。

 もしレガがメイオールの傘下だったとして、この事態はメイオールに伝わるだろう。しかし急に私を試すことをメイオールがするだろうか。なら、事の一端はレガが作り出したものかもしれない。

 明日になれば判明することに気づいた私は、厄介そうなレガという使用人を見ながら、ごくりと喉をならして肉を飲み込んだ。

「……誠に、誠でございます。神がおわす国において貴女様のお力が全て」

 レガは右足を一歩後ろに、トンと鳴らしてからスカートを持ち上げると深々と一礼をし、目には光を湛えていた。

「ねえ、わたくし、レガが好きになったみたい。明日から食事はレガが運んできてくれるようにメイオールに頼んでもいいかしら?」

 その言葉にレガは一礼のまま、

「わたくしに、できることがあればなんなりとお申し付けください」

 食事は進み、それ以上は言葉を交わさず終わりを迎えた。

 ごちそうさまと口にすればレガは素早く食器を下げ、水差しを置くと「これで」と出て行ってしまった。

 少し興奮気味だったけれどもレガは大丈夫な人だろうか。今からメイオールに報告しにでもいく、かな。そう思いながらも綱渡りをしている私に選択権は少なく、しかも一つでも間違えれば綱が切れてしまうという危ないものだ。

 水を飲み、心が静かになっていく。

 明日は早い。寝る支度をしてベッドに引きこもろう。

 いつもなら支度をしてくれるメイオールは、きっと仮病で元気だなはず。

 云々と考えつつ、花を摘みに行ったあと思い通りにベッドに潜り込み天蓋を見る。

 美しいと思っていた天蓋は、所々破れているし色褪せている。毎日が幸せに感じていたのに今は疑うことしかできない。

 心が静かになれど、底の淀みは増えていく。

――このままではいけない。

 ずきん、と頭に痛みが走る。

――このままではいけない。

 また、これだ。

――妬ましい

――恨んでやる

 声が二重三重にも頭の中で響き合う。

――呪ってやる

――許さない、許さない!

 遠く、体の底から声が聞こえてくる。大小、男女の声かもわからない言葉たちが私の体を蝕み。吐き出される。

――このままではいけない。

――呪ってやる、呪ってやる

――そう、呪う。

 ベッドの中でのたうちまわれど声は、ずっと永遠に思えるほど湧き出しては消えていく。

「また、これ」

 前にも苦しめられた言葉の反響に頭を抱えて息苦しさがこみ上げ、鼻も口も使えない。早く呼吸をしなければ死んでしまう。

 意識が落ちていく。ざぶん、そんな音をたてて私の体は水に包み込まれていった。

プロット

メイオールが仕事でいない間、神は家を探索しはじめる

噂などに聞き耳をたて情報を収集しながら

六人の賢者がどういう生活をしているのかを知る

そして神の使徒たる人たちがいることを知った

疑問は増えた私は、どうにか蔵書庫のように遠くへいけないかと模索する

レガとの出会い

協力の申し出に家から出る際はレガが取り計らってもらえることになった

なぜならメイオールは使用人という立場から外れ豪遊三昧をし、男共の侍らしていたからだ

レガが階級が下の騎士団に掛け合ってメイオールが常に私を監視できないようにする

オネイロス側山中を探す私は小屋を見つける

小屋には少女がいた。魔法を顕現したことにより両親が家に差し出したのだ

本物の神をみる少女は喜び、城下街やルルヤの話を持ち出す

会いに来たのはお忍びだと伝えて六人が何をするか見守ることにした

次の日、少女はもういなくなっていた

レガから聞くと六人の賢者が少女をケール湖に連れて行ったらしい

間引きを見る私。ベッドにこもり、終わり

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