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仄暗い水の底から②

推敲してません。

-・-- ・- --・--

 いつもは近くで『魔法』を姉の手のひらに展開していた。

 だけれど、今はマルケルという人に言われ、必死に石の道を辿る。一昨日、昨日と感じた温もり、道の端々に感じる。なんて温かな感情に包まれた石だろう。

 姉は、こんなにも〝愛して〟くれてる。

 本当は半信半疑だった。恨んで憎んで毎日、泣いた。どうして、ここにいるんんだろう、と。反抗すれば殴られ、笑われ、蹴られ、パンを食べることもできないほど口の中が血で一杯になった日もある。

 荷車に乗せられている時、いつも姉の声が聞こえていた。聞いていると心に澱む思いが消えていく。いつか、あの声が語りかけてこないだろうか。ここから助けてくれないだろうか。

 姉の体を通して放つ魔法は優しい。姉の想いを通して国民たちに放たれる魔法は優しくて、いつも泣いていた。

〝優しい〟が欲しかった。誰かじゃなく、姉から貰いたい。貰いにいきたい。

 でも、ここから逃げられない。逃げれば何があるかわからなかったから。

 他人の感情がわからなかった。外に出るのは国民たちが沢山いる日だけで、それ以外は、この部屋で過ごしていた。

 自分が痩せていることも汚いことも、姉の目を通せばわかる。

 一生、暗い部屋の中で暮らすのだろうか。でも、自分が生きている限り、姉は生きていける。

 僕にとって姉は『神様』だ。

 みなが言う神様じゃなくて、家族としての神様。唯一助けてくれるかもしれない神様。

 だから、僕に気づいた日。嬉しさと恐ろしさの二つの内、恐怖が膨らむ。

 嬉しいと心が言う。だけど頭の中は恐怖に支配された。

 僕を知ったら姉はどうなるのだろう、と。

 この部屋を作った司祭ネモレは、僕たちが双子であったことを憎んでいた。それこそ「殺せたら、どんなにいいか!」と叫んでは殴られる。

 世界の仕組みは自然と体に流れてくる日々、山が河が緑が太陽が語りかけてくれた。だからこそ、僕の存在が姉に伝わった時にどうなるか予測ができなかった。

 自然のことはわかる。けどれども、人間のことは、行動はわからない。

 笑いながら姉の手をとる人間の中には恨みを持つ人もいた。顔と心が反対で、あの『六人の賢者』と呼ばれる人たちの心も表面と内面が、言葉の裏側の違いが、いつも僕の心をすり減らし、暗い暗い場所に落とす。

 その中で姉は光り続けていた。信じ続けていた。

 偽りの暮らしでも、その優しさは本物だった。

 助けてほしい、でも、助けないでほしい。

 でも、でも、と繰り返す日々を姉の夢を見ることで、心を諦めずにいられた。欲張らずにいられた。会いたい気持ちを我慢できた。

 神様(あね)が生きていることが全て。

 まどろみの中で生きていた僕を助けてくれたのは、やっぱり、姉だった。

 恐怖した。見つけられた。見つけてほしくなかった。見つけてほしかった。

 扉が開かれ、あの声で呼ばれる日を、何度も夢を見ていた。それが現実になった日、自分のことよりも姉が恐ろしい目に遭うじゃないかと体が震え、一度も張り上げたこともない声を必死に出した。

 それは擦れ、姉に伝わっているかわからない。でも、にじむ視界に揺れる銀髪と黄色い服、求めていた声が響く。

『絶対に助けるから』

 ずっと夢見ていた言葉が聞こえた。

 嬉しい。

 悲しい。

 本当に叶った。

 夢かと怯えた日。次の日のに開かれた扉から聞こえた声が、顔が、本物で、頭を撫でられ頬をこする手が、初めて触れ合う温もりが、僕の為に怒る姉が、夢よりも違う現実に湧き上がる夢の残滓。

 それが〝壊れる〟

 目を瞑り、跡を追う。

 姉の意識に近づくほど闇が広がっていく。

『家』には初めて来た。はっきりとマルケルと姉ちゃんと呼ばれている人の気配は感じ取れる。その傍にいるはずの姉がいない。

 あるのは黒い水。

 それがマルケルの姉の腰ほど浸かっていた。

 いない。姉が、どこにもいない。

 マルケルは『引っ張れ』と言っていた。

 なら、この黒い水の中に姉はいるはずだけれど、僕は震えた。

 ケール湖の水だ。澄んだ水が黒く、月がでない日の闇夜、いや、それよりも深く、深く、底の見えないほどに澱んでいる。しかも手を浸けると姉ではない気配が沢山あるし、声が引っ切り無しに聞こえてきた。

 この意識たちが姉を別人に変えるもの。

 息を大きく吸う。一歩、間違えれば僕も取り込まれる。

 飛び込まずにはいられない。ここの底に失いたくない人がいるのだ。

-・-- ・- --・--


・-・・・ -・-・ -・・-- -・---

 体が落ちる。落ちる。落ちていく。

 ただただ落ちていく。

 声が、聞こえる気がする。

 しかし、形がない。声は聞こえるのに何を言っているかわからなかった。いつもの女性たちの声じゃない。

 もっと、沢山の……そうか、これはエルピスたちの声だ。騙され、感情を露わす前に湖に沈められた、無垢のまま死んだ人たちの声だ。

 でも私には聞こえない。誰かが優しく耳を塞いでいる。

 誰だろう。きっと、この人がいなければ私は言葉の渦に巻き込まれておかしくなっていたはずだ。

――目をあけてはいけません。

 エルピスを見つけようと目を薄く開こうとして止められる。

 この人は、誰だ。

 あの洋服箪笥にあるドレスの持ち主の誰か? 誰と問いかけても底につくまで、あの一言以外、何も言わなかった。

 とん、と背が地面を叩く。その時に体を舐めていた沢山の声は聞こえず、とても静かな場所についたことを気配で悟る。

 ゆっくりと目を開いた。

 闇。

 その一言だ。手も足も体も、そこにあるかわからない。ただ広がるのは黒一色。

 私は誰だ。

 耳を塞いでくれてた人は?

 なんで、こうなったんだっけ。

 マルケルとレガがいて、エルピスの話をした。

 いや、エルピスを殺そうとした時から、体中にどろりとしたものが這いずり回り、意識は「帰らなきゃ」の一つ。マルケルを見た瞬間に「伝えなきゃ」の一つ。ガヴァネスに、ケーレスにも「伝えなきゃ」いけない。

 この国は、呪う……壊す……呪う……壊して、壊して、壊して。

 無数の手が伸びてくる。誰もが何かを訴える。それが眠気を誘う。

 きらい、いなくなれ、こわせ、のろえ、うばえ、ころせ。

 女の人たちが耳元でささやく。

 さみしい、だして、こわい、でたい、かして、ころす、から。

 言葉は、私の重い体に染みつき、そこから体内に這入ってくる。

 眠い。溶けていく。私は、手はどこ? 足は? 私は何をしたかったんだっけ。

 声が聞こえる。暗闇なのに、背は地面についているはずなのに、底から手が伸びているんだ。

 この腕たちが私の中に這入ってくる。私を塗りつぶしていく。黒になる。

 あ、れ、誰かが、私の頭を撫でていた。この人の言葉はどれだ?

「……」

 何も言っていない? この人がさっきの人かわからない。ただ撫でる手は優しく、無言でも「大丈夫」と言われている気がした。

 じわりと体が侵食されていくのに、この人は大丈夫という。

 なんでだろう。ずっとここにいたら私ではなくなるのに、なぜ大丈夫だなんていうのだろう。わからない。暗闇を見ても顔は見えない。

――温かい。

 このまま身を任せてしまおう。忘れてしまいたい。

 周りにいる人たちが笑う。多分、笑っている。早く、早くと手を動かして私の中に這入ろうと必死に……あれ、体がある。手も足もある。

 私がいる。こんな黒の底に、私はいた。

 ここは、どこだろう。私はどこにいったのだろう。

「あ」

 ざぶん、と音がする。誰かが降りてくる。

 私の頭を撫でていた人が上を向いたのがわかった。

 この暗闇の中でも光る銀髪、薄紅の瞳、私ではない。私と同じ色を持つ人間は、この世でたった一人、

「ねえさま!」

 手が伸びている。手を伸ばす。手をとり、私たちは互いに抱きしめ合う。

「……ねえさま」

 そう私は姉で、あなたは私の弟。

 弟は息を乱していた。そうあの無数の声の海を越えてきたんだ。

「平気?……ああ」

 名前がない。私たちは名前がない。

「へいき、よかった」

 抱きしめて温かみを確認する。本物の弟だ。牢屋に入れられている時よりも、少しふくやかに見えた。

「もう、へいきだよ」

「うん、迎えに来てくれたんだね」

 くるくると闇の中で回る。ゆっくりと上に向かっている。

「んん、たすけにきたんだ」

「……そうだ、私、諦めようとしてた」

「いたかったね」

 うん、と頷いたら目から涙が出てきた。

「痛くても苦しくても私は前を向かなきゃ」

「ねえさま」

 弟の頬を撫でる。

「どんな結果になろうとも、ううん、全てを手に入れる。どんなことをしても」

 最善の結果なんていらない。甘えてはいけない。

 悪神と言われようと、私は〝この世界を壊す〟

「ここまで助けにきてくれて、ありがとう」

 現実に戻れば、まだ抱きしめられない。だから、浮上する心の中、想いの全てで弟を抱きしめた。

「うん」

 肩が濡れる。私もそうだよ、抱きしめたかった。ずっとずっと抱きしめていたい。

 声は聞こえない。その変わり、頭上から光りが揺蕩っていた。

「もうすぐだ」

「うん」

「もうすぐだから」

 猶予はない。私は強行手段に出る。

 新しい『神様』が生まれる前に、あの六人を押さえつけ、まずは一つ、彼らから取り上げるのだ。

 何百年と続いた国を変えるのは容易なことではない。それがわかるからこそ、私は六人から崩していく。一気には崩せない。崩す準備をする。

「まってる」

 そう言ったのは目の前にいる片割れだった。

「だいじょうぶ、まってる。まてるよ、いっしょだから」

 これから、どんな人間に会おうとも弟だけは絶対に傍にいてくれる。味方でいてくれる。

 温かい、とても温かい。

 額を合わせ、同じ顔を見る。

 あちらも私の顔を見ていた。

 笑顔になる。

「またね」

 弟の口からぽろりと零れる。その言葉は初めて会って別れた時の言葉だ。心が救われていく。暗い澱みから救われていく。なんて幸せなんだろう。

 ゆっくりと手を離し、私は水面から顔を、目を開ける。見慣れた天井だ。

 目を覚ましたことに気がついたのか、私の顔を心配そうに覗き込んだのはレガとケーレスの二人で、レガが気づいたようにどこかに行き、

「起き上がれる、かい?」

 なんか新鮮だ。あのケーレスが恭しい言葉遣いではなく、子どもに話しかける感じで私に言う。

 こくりと頷くけれど、肘に力を入れて少し体が浮いたところで止まる。その隙間からケーレスは腕を入れて私の上半身を起こし、膝に手を入れて持ち上げた。

「あ、う、え」

 言葉が上手くでないけれど、そこでやっと私は全身が濡れていることに気づき、二人を見る。瞬時にレガが濡れたシーツと、かけられていただろう毛布を取り上げて床に捨て、急拵えなのか何枚もタオルを敷き、私を座らせた。

「ケーレス様、支えていてください」

「わかりました」

 二言でレガは急いで目の前から消えた。後ろの方から箪笥を開く音がして、あ、着替えか、と思う。

 レガが持ってきたのは寝間着、いつぞや着た黒いワンピースだった。

「ぼくは水をとりにいきますね」

「はい」

 入れ替わり、ずぶ濡れになった洋服が脱がされていく。

「レガ……」

「声が嗄れています。無理に声を出さないでください」

「とても、多かった」

 小さな呟きにレガの顔が歪む。声を出したことか、それとも私から聞いた話から予想したのか。

 慣れた手つきでレガは私の服を脱がして、軽く体を拭いてから服を着せてくれた。ちょっとだけ笑う。本物の人形みたいだ。

 新しいタオルで髪を拭かれる。頃合いを見てかケーレスが水を持って顔を出す。 私は視線が波を打っていた。それを確認したケーレスはレガにコップを渡し、一歩下がる。

 水を持って差し出してくれたけれど腕が上がらない。

 それを見たレガは、優しく、そうコップの縁を私の口に添えて飲ましてくれた。

 喉が動く。

 澄んだ水が私の体を巡り、ここが現実だと教えてくれた。

「いま」

 目を動かす。夜かと思えば窓から光りが指している。

「夜が明けたばかりだよ」

 ケーレスは腕を差し出して腕の下と膝裏に手を通して私を持ち上げた。

 同時にレガが寝具を整え始めた。そうだよね、濡れていたんだもの。

「きみが眠りについた後、すぐに服が濡れて替えても替えても同じことが続くから、起きるまでレガとぼくで部屋の見張りをしていたんだ」

 騒動になっていないということは、誰も部屋に来なかったのか。

「マルケルは」

 声が戻ってくる。

「部屋に戻っているよ、彼がここにいたら怪しまれるから」

 そうだよね、爪弾きされているマルケルがここにいることが知られれば怪しまれるだろう。戻ってる、ということは私が頼んだことを実行して成功しているということだ。

「ケーレス様」

 レガの声がすると持ち上げられた体が、ゆっくりとベッドに沈む。

 体を起こしたくて力を入れると、察してくれたケーレスが背にクッションを挟んでくれた。

「今は寝た方がいい」

 ケーレスの言葉に私は首を振る。

「人知を超えることが起こったのですよ。寝てください」

 レガが私の手を取り握ってくれた。

 どうにか笑みを浮かべるとレガの顔が憂色を浮かべる。

「水を」

 隣に座り込むレガがコップを持ち上げ、一口、二口と飲んで肩の力を抜く。

「話は、聞けた?」

 ケーレスとレガに目を配らせる。ちゃんと私が話せたかどうか確認しなけらばならない。

「……ぽつり、ぽつり、語られておりました」

「ぼくも断片的にしかわからない」

 私は、こくりと頷いて小さくも正確に二人へ使徒のことを伝えた。そして眠りについた私のことを、声の話をする。

「……あとでマルケルにも伝える」

 その言葉にレガは頷き、私の手を持ち上げて震えている己の手と一緒に額に擦りつけた。ケーレスは、床を見ていたと思う。手は握られ行き場のない感情を必死に抑えつけているのだろう。

「私が思っていたよりも、現状が酷い」

 二人が私を見る。

「今日、ネモレを呼ぶ。繰り上げて広場に行きたい、と言う。そのあと」

 背を正し、熱をいれた眼差しで二人を見返した。

「宴を開きます」

 目を見張る二人に続けて、

「レガ、ケーレス、二人には騎士団に味方になる人物を探し、その人を含めて六人の隠遁場所と傘下にいる人を調べ上げなさい。私はネモレに会い、城下街のこと、宴を開くことを伝えます」

 ケーレスが口を開く。

「広場はわかるけれど、宴は?」

「……噴水広場では繰り上げ、予定のなかった配給をして、私が望んだことだと伝える。少しは信仰度が上がるでしょ。できるだけ馬鹿なふりはするよ」

 はっとレガが顔をあげる。何かを言いたそうだったがケーレスをちらりと見て、彼がいないところで話さないといけない。つまりガヴァネスからの伝言だ。

「宴には賢者たちの後継者を連れてきてもらう」

「後継者たちを?」

「前にメイオールから聞いた六人のあとを継ぐ子たちが私と同い年近くだと聞いた。なら、丸め込める。むしろ丸め込む。家や騎士団の賢者たちについている可能性が高い既存の人間から探すより、まだ六人の悪行をしらない人間を、こちらに引きずり込ませる方が手っ取り早い。城下街もわかればいいけれど、今は使徒を六人の手に渡さないことを優先します」

 二人は頷く。

「しかし、騎士団は」

「待ってください、ケーレス様、わたくしに心当たりがあります」

 震えが止まったレガは後ろを向いてケーレスを見る。

「お忘れですか? 騎士団には、騎士見習いにはハルナさんがいます。事が事でしたので伝えられませんでしたが」

 そして私を見る。

「彼女はハルナ・ホル・マティス。ルルヤさんの孫娘にあたる方です」

「……さぞ、私を憎んでるだろうね」

「ルルヤさんが家を去ってから、お会いしておりませんので様子はわかりかねます。しかし、ハルナさんならば、きっと」

 頷く。

「でも、なぜルルヤ殿の孫娘、ハルナ殿が騎士に?」

 ケーレスは新しい情報に疑問を呈する。

「女性は執事にはなれません。使用人よりも神の支えになる役目を騎士と判断されたようです」

 レガの言葉にケーレスは自分の太腿をとんとんと叩く。

「断定はできないが使用人はレガしか味方はいない」

 言葉を吐き出すケーレスは苦虫を噛み潰したような顔付きになる。

 彼はメイオールの別邸のことを知っているからだ。

「ぼくが騎士団に行くのは立場上、おかしい。ぼくができることは他の賢者の家探しと出入りをしているであろう人物を探すことぐらいだ。明日に広場の催しを開催するなら賢者に追従する人間が動くはず。それで軽く調べられる」

 私はケーレスの言葉に頷いた。

「でしたら、わたくしは先ほど申し上げたハルナさんと接触します。使用人が騎士の館に行くのは不自然じゃありません。あとマルケルに家を出入りする人間を洗い出してもらいます。できたら家を出入りする商人(メルカ)に話が聞けるかもしれません」

 ああ、なるほどとケーレスは呟いた。

「ごめんなさい、商人とは」

 レガが言う。

「はい、城下街にて神の献上品、民から寄せられた食料などを運ぶ役目を担う人です。これはバーネット様の管轄になりますが商人は街人から選出された、一般人に近しい人です」

「弟子ではないの?」

「はい。食料を運んでくる人間は毎回違います。どういう意図かわかりません。しかしバーネット様が国民全員と繋がっているとは思えません。あの方は参謀役ですがネモレ様、ヴォイス様とは違う、国民の糧を管理しています」

 少し考える。そういえば、他の賢者の役目は納得できる範囲にある。

 祭司のネモレは国民の相談役、医士のヴォイスは街で病の相談役、使用人はメイオール、騎士はシルウァヌス、門番のソヨト、それぞれの肩書きがあれどバーネットの役目を釈然としない。直前の動きがわかれば後々脅しやすい。

「そういえばソヨトは?」

 すかさずケーレスが答えた。

「門番のソヨト殿は、家の出入り、正面です。管理しています。前は立ち仕事をしていましたが、今は近くに小屋を作り、そちらにいるようです。六人の中で言えば彼が一番不透明ですが、何人か騎士を抱えているようで」

「それはシルウァヌスとは違う?」

「ええ、警護(シュヴァリエ)看守(シス)防衛(ナイツ)と違った別組織らしい、としか」

「他の騎士たちとの軋轢はある?」

 ケーレスは首を振った。

「……レガ、騎士団から情報を抜くことは」

「できるでしょう。騎士は大所帯です。後継者になる為に分裂しているはず、今の行いを知らずとも次代の賢者になりたい人間はいますから」

 二人を見て頷いた。

「今日は、このくらいだね。そろそろメイオールが来るころかな」

「……そうですね、一応は賢者の一人です。顔を出さないと面目が立ちません」

 ケーレスの言葉に、私は言い知れぬ気持ちになった。彼は自分の意思と反した行動をしている。それは何故か。見ている限り、私が動く前からメイオールと親しくしていた。

 理由があるはずだ。味方であるのは本当だろう。

 ケーレスの表情は見抜きやすい。仕草や癖がわかりやすいし、彼を問いただすよりもガヴァネスに聞いた方がいい。

「そういえばケーレス、何故こちらにいるの?」

 嫌なことを聞いたと思う。

「……彼女の動きを伝えないといけませんので」

 また苦しそうな顔をする。そして口調が変わった。

「ケーレス、こっちに来てくれる?」

 レガの隣に立ったケーレスの両手を引っ張る。

「なん、でしょうか」

 戸惑い。

「私はケーレスを裏切らない。この手は私の手、私の代わりの手。その体も全て余すことなく、私の役に立つ為のものだ。わかった?」

 私は彼の瞳を射抜くように見つめた。

 それに瞠目し、ケーレスは体をこわばらせる。

「もう一回、言おうか?」

 ケーレスの瞳は私を真っ直ぐ、私を見た。

「大丈夫だよ」

 肩の力を抜いて今まで知らなかった鋭い目が私を見返す。

「それでいい。私はあなたたちの神様なんだから」

 私が浮かべた顔は、二人にどう映っただろう。目を細め、口角を上げ、二人を愛しむ。

 解き放たれた言葉にレガはスカートを持ち上げて頭を下げ、ケーレスも頭を下げた。

「では、始めましょう」

  

カヴァネスに頼み込んで蔵書庫に入り、神の成り立ちと国について学ぶ


プロット『12の時-5』

他国の違いと国の仕組みがわかってきた私

噴水広場での交流でルルヤと誰か二人が見守っている姿を見かける

声をかけられないので、わかるように手をふった。

この日は六人の賢者は宴を開くという

一般の国民と自分たちは同じはずなのに

宴の前に弟に会いにいく私

拒絶されるが古代語(もう日本語でいいです)を謳う

蔵書庫の書物にあった言葉だ

弟を説得し、必ず助けると残して私は会場に戻った

お手洗いとレガに合わせてもらう

シスン・セルディル・エレブ・リナに出会う

それぞれ六人の賢者と関わりがある四人は、賢者を持ち上げる言葉を口々に言う

私は、こうして国がつくられていったのだと嘆く

四人に反発、それぞれにダメ出しをしていく

リナは反抗的

私は四人で戻らないと不審に思われると告げて

宴の席に戻っていく


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