結局金かっ!
ぐ〜〜っすり寝ていたのを取り戻すべく、スマホを取り出してDIYレシピを開いてみる。まずはこのダサいシリーズを作ってから活用方法を考えねばっ!
できればこの寝心地の良くないキャンピングベッドから卒業したいし、段ボール棚からも進化したい。
「って……。木の枝で作れるのはショボいあみとショボい釣り竿だけぇ?ショボい斧は木の枝だけじゃなくて石もいるのか……。」
とりあえず木の枝を拾いまくるか……。
テントを出て手近な所から枝を拾っては……や、枝を拾うのはいいけどどこにしまえばいいのこれ?
どうしたものかと考えていると、枝が服のポケットにひっかか……引っかからずに吸い込まれた。
「お?これはもしやの異世界定番の収納魔法的なアレですか?」
しこたまに拾った枝をポケットに当てると一瞬にして吸い込まれていく。
ちょっと面白い。
手近な枝がなくなったので散策も兼ねて共有スペースを目指して歩いているとこだぬきが歩いている。
こいつはどっちのたぬきだろう……。
「やぁ、やぁ、ユリさん!島の暮らしにはなれてきましたか?何かわからないことがありましたらいつでもお尋ねくださいね。ちなみに、雑草を抜いて共有広場のテントにいるポンキチに渡していただければ買取を行っています。数は少ないですが買い物もできますのでいつでも利用してくださいね。」
なんだと!?
雑草がお金に!?
道具作ってる場合じゃないじゃん!抜こうぜ雑草!殲滅させようじゃありませんか!やれる限り抜こうじゃありませんか!
とりあえず、テント周辺の雑草くまなく抜いてみた。ついでに後ろの川に至るまでも一通り抜いたし、何ならテントから共有広場までガッツリ抜いた。寧ろ道ができた!
「おや?ユリ殿!」
地面ばかり見ていたけどどこからか声をかけられて視線を上げるとすぐそばにアーサーさんが意外と近くにいた。
どうやら彼は桃を集めていたようで上を向いていたらしい。踏まなくてよかった〜と冗談めかして言われたけど洒落にならないから!
ライオンさんのアーサーさんに踏まれたら致命傷だから!と密かに恐怖を覚え、周囲を気をつけながら草抜きしようと心に誓う。
「ユリ殿が雑草を抜いてくれるおかげで視界も良好になって景観が良くなりました。おまけに歩きやすくなったのでありがたい。」
褒めてもらえるのは素直に嬉しいのでニコニコ笑って、それぞれまた自分の作業に没頭し始めた。
まだ時間な余裕がありそうなので視界にある雑草をたどって崖まで到達。流石に崖の上はひっこ抜けなくてなぜか泣く泣く諦めた。
作業に没頭するあまりもはやアーサーさんがいたことすら頭の隅からスポーンと抜けて人間草刈り機のごとく、私の視界に雑草がなくなり共有広場までやってくると、視界に細い足が見えた。
抜いた雑草をポケットに仕舞って上を見上げるとそこにはヒノカさんが立っていた。
「やぁやぁ、ユリ!機能は姿を見なかったから心配したよ。でもその姿を見るに大丈夫そうだね!だけど……。」
手を差し伸べてくれたヒノカさんは、私の手を取るとゆっくりと立たせてくれた。そして大きな片手で私の両手をまとめて包むと、空いた片手をそっと近づけて私の頬をなでた。
それはガラス細工か何かを触るようにそっと慎重な優しい手付きで、そんなことされたのはあとにも先にも初めての私は顔中に体の熱が集まるほど恥ずかしくてドキドキするのに、なぜかヒノカさんから目を離せなかった。
「ユリは俺たち獣人と違って華奢で脆くて心配になる。頼むから無理はしないでくれな?」
今にも泣き出しそうな顔を向けられて私はただうなずくだけで精一杯だった。
「でも、ユリが頑張ってくれたおかげでだいぶ歩きやすくなったよ。……そうだ!お礼って程でもないんだけどこれやるよ。今日は釣り竿作ったからずっと釣りしてたんだ。焼いて食べるとうまいんじゃないかな?」
そう言いながら渡されたのは2尾の魚のエラに枝を突き刺したものだった。
「鱒ですね。」
「おう!大漁だったんだ。しっかり食ってよく休んで明日また顔見せてくれよな。ゆりの顔見ないと落ち着かないんだ。じゃぁ、また明日な!」
気障か!?天然か!?
顔が暑いのはきっと夕日のせいだけじゃないと思う。
はぁ〜!人たらしか!?ヤバい!クラっとしたじゃないか。きっと貧血のせいではないと思う。深呼吸でもしないとやってられない。
なんとか顔と呼吸を落ち着けて共有テントの中に入ると子狸と大狸がいた。
「やぁやぁ、ユリさん調子はどうですか?」
「おかげさまでなんとかやってます。ところで、雑草を買い取ってもらえるって聞いたんですが……。」
「ええ、ええ!もちろんです。そこのポンキチに申し付けてください。……ところで、テントの使用料として1万ポコーかかるのですが、お支払はいかがされますか?」
「え?!お金取るの!?」
ポコーとはどうやら通貨単位らしい。たぬきのお金だからか!?ポンポコじゃないだけマシと思うべきなのか!?
と、いうかお金って!
勝手に転生させておいて!?
持ってるわけ無いじゃん!?
「またまた〜ユリさん。……え?」
「え?」
謎の沈黙をしたあとに何故かこの大狸本気で困惑はじめおった。
「ま、まぁ、ないものは仕方ないですから少しずつ払っていただければよろしいですよ。」
あ、目そらしやがった。
って!結局金かよっ!