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島の主になりました

 

 気がついたら真っ白な空間で椅子に座っていた。目の前には会議室にあるような長机。その机の向こうからそら豆みたいな瞳が4つこちらを覗いていた。茶色い毛皮に黒くて丸い耳一対の人形にも思えるそれは双子の子狸。奴ら曰く……。


 『ようこそ、佐々木百合さま。あなたはあちらでお亡くなりになりました。そこでこちらの世界に転生してもらうのですが、それにあたりあなたには獣人が移住するための島を整備してください。好き勝手にしていいですよ〜。』

 

 なんと……転生して島の主になるらしい。


 は?島?離島?アイランドだと?!


 ちょいちょい、そこのたぬぽんよ。なんでわたしが?


 あちら、と称されるのはおそらく日本で暮らしていたことを指すと思われる。都会っ子ではないが無人島で生活できるほどの野生児ではないぞ?


 しかし、ライトノベルを読み漁るのが好きな百合は、異世界転生ものが流行りであることも獣人萌えが一定数に受けていることも知っている。寧ろ好きだ。カモンもふもふ!


 そんなわけで『異世界転生』と言われて割りとすんなり受け入れられる。


 が!!


 島経営なんて聞いたことないぞっ!!


 どんな異世界転生だよ!


 『最初はお手伝いのために二人の獣人がいますので彼らと協力して素晴らしい島を目指してください。なお、島に住む獣人とは恋愛可能ですし、全員とハーレムでもいいですから安心してください。』


 や、それ逆に安心できないパターンなのでは……?


 いったい何人住むんですか獣人さん!?人間より体力凄いんですよね!?ハーレムなんて簡単に言ってくれますがそんなに相手できるほどの体力ないですよ!?なんせ引きこもりオタクでしたからね!自慢にもなりませんが……。


 『ではいってらっしゃいませ~。』


 ちょっとまてぇぇぇぇぇぇ!!


 と口にする間もなく……。


 気が付くと途切れた桟橋の上に立っていた。


 「説明が足りなさすぎるでしょうよ、たぬポン……。」


 思わず肩を落としてしまう。


 とはいえ、思わぬ異世界転生、しかも獣人もふもふが来るとなれば期待も高まるというものである。できれば狼がいい!人狼物は大好物だ。


 サラサラの長い尻尾と矜持を体現したようにピンと伸びた耳、力強い四肢。はよ!人狼はよっ!供給してください。出し惜しみなんていりませんよ!


 ふと、潮の香りを感じる。さざ波の音が耳をかすめて、ここがこれまでの日常ではないことを実感させてくれる。どこまでも広がる水平線など、テレビ以外で初めて目にする。


 「異世界っていうよりも本当にただの島なんだ……。」


 ぽつりとつぶやいて、強い太陽光に目を細める。


 「君が異世界から来た島の主?」


 「え?」


 気配もなく背後からかけられた声に間の抜けた返事だけを返す。


 よく通るバリトンの耳に優しい声だなとぼんやり思った。


 海から視線を外して振り向けば一メートルと離れていないそこに二人の男性が立っている。


 『ようこそユリさま。』


 あ、双子たぬきおった……。


 どうやら召喚放置のパターンではないらしい。


 『私は皆様のサポートをさせていただくポンキチと申します。』


 『同じくポンタと申します。早速ですが島の中央に拠点となる場所を用意しました。ひとまずはそちらまでご移動ください。』


 拠点ありスタートとは親切設計だな。と他人事のように考えてしまう。


 よく読み漁るもののパターンだと転生して森の中に置き去りにされていきなり野宿とか木の上で過ごすとかが多いか、いきなりチート能力発揮してあふれる財力で獣人奴隷ご購入という人道にも劣る行為な流れではないらしい。そもそも無人島?ともなれば金銭はいらないだろう。物語に比べて案内人がつくなどなんと親切なことか。


 ありがたや~。


 そそくさと移動を始める子だ抜きの背中を見送りつつ、どうしたもんかと考える。たぬきたちを追いかけたいものの、目の前の男たちが進路をふさいでいるので追いかけられない。


 お兄さんたち~見失っちゃうと怖いから移動してください~。


 「そうか、主はユリ殿というのですね。私はライオン族のアーサーと申します。これからこの島でお世話になります。」


 そういったのは屈強な体の持ち主。見上げないと視線も合わせられないほどだ。ふさふさの赤毛からみえるオレンジ色の丸い耳、意志の強い黒い瞳にスラックスの後ろを左右にゆっくり動いているしっぽの先にも赤毛の房に堂々たる姿はまさしくライオンといった感じだ。


 おお!獣人大好きランキング第二位の獅子にのっけから会えるとは!しかも赤獅子など萌えの権化!ありがとう!しかもかっこいいぞ!ありがとうございます!


 「ユリさん、俺はヒノカという。種族はダチョウだ。飛ぶことはできぬが足には自信がる。何かあればいつでも呼んでくれ。」


 ダチョウだと!?ちょっとまてこれは予想外。王道の斜め上じゃないか。しかし鳥類という大枠の意味ではありなのだろう。アーサーさんほど筋肉質ではないがすらりと背の高い細マッチョというとこだろうか。艶のある柔らかそうな長い金髪にくっきり二重の青い瞳。飛べないダチョウだからだろうか、翼のようなものは見えない。かわりに腰とお尻の中間あたりにふぁさっとみえる毛束。


 尾っぽということだろうか。応援団のぽんぽんのようなしっかり主張した毛束がある。


 整った顔立ちだが消して冷淡ではない。どこか人好きする印象がある。


 「ユリです。えっと……非力な人の身ではありますが頑張りますのでよろしくお願いします。」


 暗に過剰な期待をされてはこまると含めてぺこりと頭を下げれば、きょとんとした4つの瞳に見下ろされたのも一瞬で笑顔となる。


 「大丈夫だ。そのために我々がいます。」


 「一人で無理せずにいつでも頼ってくれて構わない。」


  二人に「さぁ行こう」と促される。


 どうやら私の含みを持たせた言葉は通じなかったらしい。残念だ。


 異世界でいうなれば騎士のような獣人二人にニヤニヤしそうになりながら……や、してたかもしれないが、とにかくたぬきたちを追いかけることにする。





ハマってるゲームを元ネタに色々構想しつつ書いてます。楽しんでいただければ幸いです。


更新は木曜日を予定してますが、ストック切れたら……お察し


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