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ラノベ作家志望の異世界修正  作者: 獅子堂零
コルテスダンジョン
5/16

募集と三角関係

『コルテスダンジョン』の連載がストップした主な原因は、俺自身の勢いが失速し、他の作品の構想に耽っていたこと、浅いストーリー内容、矛盾点や不可解な部分があったこと。

そして、重要な場面でのメインキャラクターの死亡等が『コルテスダンジョン』を未完のまま終わらせてしまった原因である。


シェルを救うためにストーリーを書き換えて登場させたエリュナは、第7階層のボス戦でシェル達を庇って命を落とすという設定だったが、後々彼女の存在が必要になる場面が多々出てきたことがあり、ストーリーが完全に行き詰まったのだ。

そんな彼女は、本来ならシェルの初めてのボス戦で共に共闘することでシェルの仲間になるのだ。


(さてと、彼女をどうやってシェルの仲間にするか……その前にシェルが確か仲間を募集するはずだよな?)


ギルドで冒険者登録を終えたシェルは、まずさきに仲間を募集するところから始まるのだが、Web小説での投稿なのでそこが丁度よく区切りのいい場面だったこともあり、次の話では既に仲間が二人出来ていたのだ。


(仲間になる詳しい過程を書いていたら、もっと人気が出たかもな……)


そう思いつつ俺はミカと共にパトロールを続けている。

多少の喧嘩沙汰はあったものの何事もなくパトロールを終えた俺は、ミカと別れギルドへと向かった。


「シェルのやつ、今頃仲間を募集している筈だが……」


ギルドが見えて来ると、一人の少年がなにやら看板の様なものを持って何かを叫んでいた。


「どなたか! 僕と! 仲間になってくださ~い!」


シェルだった。

シェルが学校の新入部員を募集する部活動の様な勧誘で道行く冒険者達に声をかけていたのだ。

予想外の行動に開いた口が塞がらなかった。


(なにやってんだあいつ! アホか!)


驚きと呆れで、自然とため息が出た。


(……こんなんでよく仲間が二人も見つかったもんだな)


その仲間はきっと、よほどの物好きなのだろう。

そんな設定にした覚えはないが、隠れた設定なのかもしれないな。


ともあれ、シェルの募集で仲間になるのは確か、ゴルタスとナーベだったはずだ。

ゴルタスはムキムキマッチョのハンマー使いで頼れる兄貴肌の大男。

ナーベは、先程の騒動でシェルが庇っていたあの少女で、ヒーラー兼魔法使い、つまり賢者である。

序盤にしては結構バランスのとれたいいパーティーになるように、大学の講義中に構想を練ったキャラクター達だ。


(あの二人のキャラクターとその性格を考えるのが結構楽しかったな。お陰でテストは赤点だったがな)


ギルド前のカフェでシェルの様子を見ながらコーヒーを飲んでいると、店員がやって来た。


「お客様、ただいま込み合っておりますので相席でもよろしいでしょうか?」

「あぁ、構わない」

「ありがとうございます。それではお客様、こちらへどうぞ」


店員のスマートな接客を見て感心していると、見覚えのある女性が俺の前の席に座った。


「お久しぶりですね、ブラドさん」

「これはこれは、『風切り』のエリュナ様じゃないか。こんなおっさんの顔を見ながらお茶でもしに来たのかな?」

「うふふっ、ご謙遜を。あなたはそれほど老いては見えませんよ」


シェルを助けさせたエリュナが、親しい感じで俺に話しかけた。

実を言うとエリュナを登場させたと同時に、この世界で付け加えた俺の設定の中に彼女が登場していたのだ。

彼女は俺のいた(ということになっている)パーティーの一人の妹で、俺が自ら彼女に剣を教えていたという設定なのだ。


「それで、今日はどうしたんだ?」

「えっとですね、あの少年のことなんですけどね……」

「シェルのことか?」


俺がそう聞くとエリュナはこくこくと頷いた。

……なんか、こういう展開に見覚えがあるのだが。

……ためしにカマかけてみるか。


「何だ? 好きになったのか?」

「えぇ! そそそ、そんなわけないじゃないですか! な、何をいっているんですかブラドさんは、あはは!」


顔を赤くして動揺している。

間違いない、シェルのことを好きになったな。

でも……


(シェル自身はナーベに一目惚れして、仲間に隠れながら交際するんだけどな。三角関係とかさすがに書きたくはない。つーかそもそも恋愛経験がないボッチなんだよ俺は!)


俺はコーヒーを一口飲んだ。


「まぁ、気になるならシェルの募集に答えたらどうだ? 案外いい関係になるかもな」

「そ、そうですね……ここのケーキを食べたら、行ってみようかな、なんて、あはは」


日和ったなこいつ。

俺はエリュナに別れと応援の言葉を送り店出た。


(まぁ、この世界は俺が手を加えなくても勝手に進むだろうし、三角関係になっても問題ないか)


そう思いながら俺はギルド前で募集を続けているシェルを眺めた。

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