斥候部隊と第6階層
ミカが目を覚ますした頃には残りのグループがボス部屋に集結した。
やはり中央のオブジェが気になる連中が多いらしく、ギルドマスターでさえヘカトンケイルの死骸をまじまじと眺めていた。
ミカはというと『虚言』が乗り移った記憶が無いらしく、目を覚ますと同時に慌てふためいていた。
「わあぁぁぁ! すすすいませんっす、せんぱぁぁぁい! まさか変なタイミングで眠っちゃったっすぅぅぅ!」
「落ち着け騒ぐなうるさい」
「ひどいっす! 三連暴言パンチっす!」
「なんだそれ?」
最初に心配したつもりなんだがな……
ともかく、ミカを落ち着かせてから出発の準備をする。
シェル達も仲良くなった……って訳にはいかないが、ぎこちないがなんとか会話する仲にまでなった。
ギルドマスターがオブジェの前に冒険者達を集め、これからの作戦を指示する。
作戦内容としては、ここにいる冒険者の半数を斥候部隊として作り第6階層に潜ると言うもので、残り半分はここで待機と言うものだ。
事前に斥候部隊の選別は終わっており、俺とミカとシェル達も第6階層に向かうのだ。
ギルドマスターが簡単に鼓舞してから、斥候部隊は第6階層の階段を下りていく。
今回は部隊の後ろ側を任されているので、最大限の注意を払いながら階段を下りていく。
第6階層はパーティーでの戦闘が必要条件の階層だ。
第6階層に登場する魔物はゴブリン、オーク、オーガなどのいわゆる人型の魔物が殆どである。
その魔物達の共通点としては、集団行動をとっているところなので、ソロでの攻略はほぼ難しいということになっている。
だからこそ第6階層以降のダンジョン攻略は必ずパーティーでないといけないのだ。
そんな冒険者泣かせの第6階層は、見るも無惨な惨状であった。
あちこちの壁や床には破壊光線の後が残っており、原型を留めていない死骸が散乱し、血と肉の腐った臭いが第6階層を埋めていた。
そして少し開けたところには、トグロの脱け殻を見つけた。
やはりボス部屋の脱け殻と比べるとデカイ。
「こいつは相当ヤバイかもな……」
「せんぱい、帰って一緒に寝るっす」
「却下だ」
トグロの脱け殻を横目に通りすぎ、斥候部隊はまずボス部屋へと向かった。
討伐するとはいえ闇雲に探しても時間がかかるだけなので、まず逃げ道を潰すようにボス部屋の確認をするのだ。
ここのボスはそう簡単にやられるとは思わないが、とりあえず脇目もふらずに進む。
どうやらまだ無事だったらしい。
第6階層のボス、ケルベロスは気持ち良さそうにグースカと眠っていた。
斥候部隊を半分に分け、トグロの探索を開始した。
ただでさえあんな大きな巨体だから、探すのは容易だろうと思ってはいるが、もし見つからなかったらのことを考えて『作者権限』を発動した。
タイミングとしては一時間後、斥候部隊が合流した直後にトグロとエンカウントするように設定する。
(よし、これで準備は万端だな)
エンターキーを押して承認させ、『作者権限』を閉じる。
直後、俺達の前にトグロが現れた。