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ラノベ作家志望の異世界修正  作者: 獅子堂零
コルテスダンジョン
14/16

豹変と使命

ベースキャンプの設営を終え、第二グループと第三グループの到着を待つ間、俺は半ば無理やりだがシェルとゴルタスとナーベの三人と飯を取らせるよう伝えた。

三人とも不思議そうにしていたが、文句を言わずに三人囲んでミカの作ったスープを飲んでいた。


(あれで多少は仲がよくなればいいが……会話のひとつもしねぇな)


サーベルの手入れをしながら三人の様子を見ていたが、まるで合コンの始まる前の微妙な静けさが漂っていた。


「せんぱい、ミカの特性スープ、お持ちしたっす!」

「おう、ありがとな」


スープを持ってきたミカは俺のとなりに座ると、ふーふーとスープを冷ましながら飲み始める。


「それにしてもせんぱい。どうしてあの三人を一緒のパーティーにするんすか?」

「まぁな、ちょっとばかし事情があってだな」

「事情っすか?」

「あぁ」


俺はスープを一口啜る。

うん、オレの嫁になって毎日作って欲しいくらいの旨さだ。

男の独身には旨すぎる代物だな。


「あいつらは……そうだな……」


シェルの固定パーティーになるんだ、なんて言えるはずもないので、適当な理由をつけてあしらうことにする。


「……そう、シェルを抜かすと、ゴルタスとナーベはソロで活躍している奴らだ」

「……はっ、そういえばそうっすね! 意外な共通点っす!」

「だから、今回の討伐でパーティーの良さと動き方を学んでもらおうと思っているんだ。悪くない考えだろ?」

「流石せんぱいっす! 心の底から尊敬するっす!」


ミカは拳をぐっと握りしめて目を輝かせていた。

ふぅ、どうやらうまく行ったようだな。


「あっ、せんぱい、口元汚れてるっす。ミカが拭いてあげるっす!」

「そうか? なら任せよう」


ミカはハンカチを取り出し俺の口を拭う。

誰かに口回りを拭いてもらうのって、何だか恥ずかしいな、なんて思っていると、ミカが口を開いた。


「……血吸ブラド。今、嘘つきましたよね?」


その言葉で、俺は何とも言えない恐怖を覚えた。

ミカの目に光が灯っていなかった。


「ミ、ミカ?」

「もう一度聞きます。嘘、つきましたよね?」


その言葉に圧倒され、俺は恐れおののいてしまう。

だがよく聞くと、ミカの声でないことがわかった。


「……お前は誰だ?」

「……流石、血吸ブラド。我々の創造者ですね」


ミカではない誰かは俺の顔を掴む。

その手はひどく冷たかった。


「創造者? つまりお前は、俺の作品の……」

「……そうですね。そこまで分かっているのなら、大体は察するでしょう。我々の目的、そして願いを……」

「……先程の質問だが、その通りだ。俺は嘘をついた。主人公の仲間になるから、いち早くパーティーとして行動してほしかったからだ」


光の灯っていないミカの目をしっかりと見据え、はっきりとそう答えた。

ミカではない誰かは俺の目をじっと見つめ、小さく息を吐きながら手を離した。


「真実と捉えました。先程の無礼な立ち振舞い、申し訳ありません、創造者よ」

「産みの親に対する言葉遣いじゃない気がするのだが……まぁいい、お前は誰だ? 俺はどうしてここにいるんだ?」

「……今はすべてを語るには時間はありません。ですが、また会うことがあるでしょう。その時に、すこしづつ伝えましょう」


ミカではない誰かはそう言って俺にもたれかかってきた。


「お、おい」

「私は『虚言』、嘘に特化したチート持ちです」

「『虚言』? ……てことはお前は!」

「また、()()()()で会いましょう、我々の創造者」


『虚言』はそう言って静かに目を閉じた。


(何で『虚言』が……まさか!)


「……コルテスダンジョンだけじゃ、終わらないってか……」


『虚言』。

それは、血吸ブラドの最新作『チーターズ』に登場するキャラクターだ。

嘘を使いこなし、あらゆる事象を覆すことができる能力なので、『虚言』の元の性格も性別も不明な設定のキャラクターだ。


そんな『虚言』が出てくるのは、先程も言ったように、最新作である第5番目の作品だ。

奴は『次の世界』と言った。

となると導き出される答えは……


「……5つの作品(世界)の修正かよ……」


ここに来て、ようやく俺がこの世界にやって来た理由がわかった。

かつて駄作と切り上げてしまった作品の完成のために、俺はここに来たのだ。

『コルテスダンジョン』が無事に完結しても、その次の世界に異世界転移してしまうのだろう。

そうしたとき、また、『作者権限』を用いて世界を完結させなければならないのか……


通りで『作者権限』何て言う能力が与えられたわけだ。

要は、自ら産み出した作品(世界)に直接入って、作品(世界)を完結させなければいけない、ってことか……


「……やれやれ、とんだ試練だな」


俺はミカを抱いたまま、上を見上げた。

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