第5話「運命を好む男」
中国拳法の使い手、リンが仲間になってから早1週間・・・・私は悩んでいた。
「うーむ・・・」
「どうしたんだ?おっさん。」
ロックが声をかけてきた。この日、ロックは私と勝負しようと家に来ていた。
「いや、スーパーヒーローになると決めたはいいが、果たして1人でやっていけるのかどうか不安になってな・・・・」
「ふーん、おっさんならいけんじゃねーの?」
「そう簡単に言ってくれるな・・・前にメアリから借りた『ヒーロー論の全て』と『ヒーローの心得』を読むと、意外と大変そうでな・・・それを全部1人でこなせるかどうか・・・・バットマンとスパイダーマンの苦労が分かる気がする・・・・」
私は愚痴をこぼしながら顔面をテーブルに突っ伏した。
「はー、大変だな。でもよぉ、そんな大変なら、1人だけじゃなくて仲間と一緒にヒーローになればいいんじゃねーの?おっさんの仕事仲間とか・・・・」
「それはちょっとなぁ・・・ん?」
ロックの発案を聞き、私の頭の中で、いいアイディアが生まれつつあった。
「そうか・・・・その手があったか!なんでこんなことに気づかなかったんだ!?」
「?」
私はグッドなアイディアを思いつき、その夜、我が家にロック、リンを招いた。
「2人とも、よく来てくれたな。」
「別に、なんか重大な発表があるんでしょ?」
「ああ。オホン・・・」
私は咳払いをし、深く息を吸い、重大発表を開始した。
「今日呼んだのは他でもない。実は・・・・ヒーローチームを作ることに決定した!」
「イエーイ!!」
私が発表したと同時に、メアリは拍手を送った。
「ヒーロー?」
「チーム?」
「そう!色々考えたんだが、この街の人々を守るには、私一人では手が足りない・・・・そこで、ヒーローチームを作れば街全体を守ることができる・・・・そう思ったんだ。」
「あー、なるほど。」
「そうすれば、アンタの負担も減るし、何かあれば助け合えるものね。」
「その通り!と、いうわけで・・・・」
ロックとリンが理解してくれたところで、私は2人の肩をぽんぽん叩いた。
「頼んだぞ、2人とも!」
私は2人の肩を叩きながら満面の笑みで言った。
『・・・・・えっ、ええええええええええええ!!?』
2人はしばし沈黙し、顔を見合わせた後、大声で叫んだ。
「待て待て待て待て!!聞いてねぇぞそんなこと!!」
「そうよ!大体私には仇討ちだってあるし・・・・!!」
2人はあまりにも突然のことで理解が追いつかず、取り乱し始めた。それは無理もないことだ。
私は2人を落ち着かせようと、説明に入る。
「ロック、これは君の為でもある。私としては、君をいつまでもストリートチルドレンとしての道を歩ませたくはない。普通の人間を歩ませたいんだ!君だけじゃなく、他のストリートチルドレンにも・・・・そのためにも、私達と一緒にヒーローになるべきだ!」
私がそう言うと、ロックはたじろいだ。どうやら迷っているようだ。もちろん、ロック自身もストリートチルドレンの身に満足しているはずもない。彼の心は揺らいでいるはずだ。
私はそれに対する決定打となる事を、続けて言った。
「それに、ヒーローになって一緒に行動するようになれば・・・・いつでも私と勝負できるぞ。」
「よし、わかった!」
「即答!?」
私の一言に、ロックはすぐさまヒーローになることを承諾した。
私は続けて、リンの方へ顔を向け、説明を開始する。
「リン・・・君を家族を思う気持ちはわかる。私が綺麗事を言っても、君には関係ないかもしれない。だから、私なりに考えた結論として・・・・手伝ってもいいか?君の仇討ちを。」
「えっ・・・?」
私がそう言うと、リンは唖然とした顔を見せた。
恐らく、私が仇討ちを否定すると思ったのだろう。もちろん、私自身仇討ちはよくないことだと思っている。だが、私が無理に言っても、リンには届かないだろう。だから逆に考えて、私が手伝ってやろうと思ったのだ。その代わり、条件付きだが。
「その代わり・・・これだけは約束してくれ。人殺しは絶対にしないと、約束してくれ。」
「・・・・・」
リンは沈黙した。恐らく、ロックと同じく悩んでいるのだろう。だが、ロックほどではなかったが、すぐに返事が返ってきた。
「わかった、約束するわ。」
「リン・・・ありがとう。」
「ヒーロー活動している内に、仮面の男が見つかるかもしれないしね。」
リンも承諾したところで、私に側のテーブルに向かい、次の本題に入った。
「実は・・・・後もう1人、ヒーローになる者が欲しい。」
「もう1人?3人で充分だろ。」
ロックは最もらしい意見を述べた。
「確かにその通りだが、これはメアリの意見でもある。」
「うん!だって、4人いないとファンタスティック・フォーにはなれないんだよ!」
「えっ?」
ロックはメアリの言葉に、思わず声を上げた。メアリは続けて言った。
「あのね、ファンタスティック・フォーは4人いるからファンタスティック・フォーなの!3人じゃファンタスティック・フォーにはなれないの!だからこそファンタスティック・フォーは・・・・!!」
「わかった!わかったから!ファンタスティック・フォーの素晴らしさはわかったから!」
リンは力説するメアリの口を押さえ、説明を止めさせた。
「ようするにだ・・・・『4人寄ればもんじゅの知恵』だ!!」
私はメアリが言いたかったことを要約してみせた。
「そう!それ!!それが言いたかった!!」
『イエーイ!アハハハハハハハ・・・・!!』
私はメアリが言いたかったこと言い当てることができたことに喜び、メアリは自分の言いたかったことが私に理解してくれたことに喜び、私達親子はハイタッチをし、手を繋いで部屋の中をスキップした。
『・・・・』
その横で、ロック、リン、メフィストの3人は蚊帳の外で冷たい目でそれを眺めていた。
「ねぇ、正しくは『3人寄ればもんじゅの知恵』じゃないの?」
リンはメフィストに耳打ちし、ことわざの真偽を確かめた。
『いや、あいつはミトコンドリア並の頭脳しかないから、多分わかってないぞ。』
メフィストは小声で呟き、私を罵倒した。
「さて、その4人目なんだが・・・・まだ決まっていないんだ。ヒーローになるからには普通の人じゃダメだし、かと言って若すぎても年寄りすぎてもダメだし・・・・なかなか見つけられなくてな・・・・」
私は悩みながら語ると、ロックが手を上げた。
「ロック、どうした?」
「いや、最近スラム街で滅茶苦茶強い奴がいるってストリートの奴らから聞いたんだ。なんでも、そいつはブラジルから来た黒人らしくて、カポエイラって格闘技を使うらしい。」
「ほぉ、カポエイラ・・・・」
カポエイラ・・・・その言葉を聞いて、私の格闘家としての心がうずいた。
カポエイラとは、その昔、黒人奴隷が看守に武術だと気づかれないようにダンスに見せかけて修練した格闘技だと伝えられている。その攻撃の要は主に足技。踊りのような動きで華やかに舞い、蹴りを喰らわせる・・・・一度でいいから戦ってみたいものだ。
「そいつは他人から依頼を受けて、その依頼に見合った報酬をもらって生活してるらしい。所謂何でも屋ってやつだな。で、いつも酒場でポーカーをやってるらしい。しかも、かなり顔がいいみたいで、女にモテるんだとさ。」
「なるほどなるほど・・・・よし、その男に会ってみよう。」
私はカポエイラ使いの男に会うことに決め、ロックの案内の元、私達はスラム街へ向かった。
1時間後、私達はスラム街へたどり着いた。街に足を踏み入れた時から、なんともいえないような不吉な雰囲気が漂っている。治安の悪さなのか、はたまた土地柄なのかはわからないが、私達はカポエイラの黒人がいるという酒場へ向かった。
「おっさん、こっちだ。」
ロックは道案内をしながら、私達を裏通りへ連れていった。
すると、裏通りへ入ったと同時に街全体の不吉な雰囲気がさらに強まった。
「これは・・・・」
裏通りは表通りと違って、人が多かった。しかし、楽しそうな雰囲気はなく、どこか殺伐とした空気を感じた。
私達が入ってくるなり、周りにいる住人達はギロリと私達の方を睨んだ。
・・・私がヒーローコスチューム姿になっているせいかもしれないが。
「・・・メアリ、絶対に離れるんじゃないぞ。」
「う、うん。」
私が警告すると、メアリは私の腕をギュッと掴んだ。
「ここを通りゃあ、もうすぐだぜ。」
ロックはそう言って、足を速めた。すると、向こうから声が聞こえてきた。
「えーっ!?本当にあのストーカー、ぶっ飛ばしてくれたの?」
「うん、もちろんさ。君に迷惑をかけるようなストーカーなんて、イチコロさ。」
「すっごーい!!」
どうやら男性と女性の声のようで、両者ともまだ若い印象を受ける。
私達はそこへ少しづつ近づいてみると、ベンチに座っている白人女性の前に、ルックスのいい黒人の男が立ち、楽しそうに話していた。
黒人という割りにはそこまで肌は黒くなく、どちらかと言えば褐色に近い肌の色だった。
私達は物陰に隠れて様子を見ることにした。
「ホントにありがとう!じゃ、これ・・・・」
女性はお礼を言うと、バッグから財布を取り出し、男に金を渡そうとした。
「いいよ、お金はいらない。」
しかし、男はそれを押し返すように断った。
「えっ?でも・・・・」
「いいっていいって!サービスだと思って、ね?じゃあね!今度会ったらデートしてよ!」
男はそう言うと、女性に手を振って去り、目の前にある酒場へ入って行った。
「後を追いましょ!」
リンはそう言って物陰から出ようとした。
「待て!」
私は少し声を上げ、リンを引き留めた。
「大人数だと、逆に怪しまれる。私が一人で行ってくる。その間、メアリを頼んだぞ。」
「ああ。」
「わかったわ。」
二人は頷きながら返事を返し、私はメアリを二人に任せ、酒場へ入った。
酒場の中は、外とは違って賑わっており、大盛況といった感じだった。私は店内を見回し、黒人の彼を捜した。彼はすぐに見つかった。店の奥の方で、両脇に女性を囲みながらポーカーをしている。
「あそこか・・・・」
私はゆっくりと彼の方に近寄っていく。近づくにつれ、その席の方から声が聞こえてくる。
「へっへっへー、これでまた僕の勝ちだね。」
「クソ!ガキのクセにやるじゃねーか・・・・」
「ルイスってばまた勝っちゃった!」
「格好いい~!」
ルイス・・・・どうやらそれが彼の名前らしい。ルイスの両脇にいた女性は、ルイスの勝利に喜びつつ、抱きついた。
「次勝ったら、なんか買ってあげるよ。」
「ホント!?」
「嬉しー!!」
どうやら次の勝負が始まるようだ。その前に、私は彼らの前に出た。
「ちょっといいかな。」
「ん?おじさん誰?」
「私も参加させてもらってもいいかな?」
私はゲームへの参加の許可をもらおうと、ルイスに声をかけた。
「・・・別にいいよ。来る者は拒まずだからね。」
少し間を空け、ルイスは承諾した。
「ありがとう。」
私は一言礼を言い、ルイスと勝負していた男と席を交代した。
「で、いくら出す?僕は20ドル出す。」
「うーむ・・・・5ドルで何が出来るかなぁ。」
そう言いながら、私は財布から5ドル出し、テーブルに置く。すると、低い金額だったからか、ルイスは苦笑いを浮かべ、両脇にいる女性2人はクスクスと笑い始めた。
「ははっ・・・タクシーでおうちに帰れるよ。」
ルイスはそう言うと、トランプを配り始めた。
「僕が親ね。あっ、言っとくけど、負けても泣かないでね。」
「もちろんだよ。」
私は返事をしながら、配られたカードを手に取った。私の手札は6、6、6、5、8・・・・スリーカードだ。私はとりあえず、5のカードを手に取り、場に捨てる。
「ところで、君は今何歳なんだ?かなり若く見えるが・・・・」
私は新しいカードを引きながら言った。
「18歳。一応大人だよ。」
ルイスはそう言いながらカードを2枚捨てた。
「いくら若いとはいえ、ギャンブルばかりしてたらその後の人生はダメになるぞ。」
「おじさんに言われたくないね。いい歳こいてコスプレしてギャンブルなんてさ。」
こう言われては返す言葉がない・・・・と言っても、私はそこまで気にしてはいないが。
私はもう一枚カードを捨て、またカードを引いた。
その時、
「あっ、そういえばある人が言ってたな・・・・『ファウスト』って奴が、僕の事を探してるって聞いたなぁ・・・・」
ルイスのその言葉に、私の手は止まった。そして次の瞬間、ルイスはテーブルを蹴飛ばし、私ごと吹き飛ばした。
「ぬあぁ!!」
私は突き飛ばされ、床に転がるも、すぐに起き上がった。
「キャーーーーーー!!」
「な、なんだ!!?」
「何が起こった!?」
周りから悲鳴と困惑の声がこだまする。
「普通の人なら今のでフラフラになってるのに・・・・どうやら、『ファウスト』ってのはアンタみたいだね!」
ルイスはそう言いながら、カポエイラの構えを取った。私もボクシングの構えを取り、臨戦態勢に入る。
「おっさん!大丈夫か!?」
店から響く悲鳴を聞き、ロック達が駆けつけた。
「おじさんの仲間?ここじゃ迷惑かかるし・・・・外まで追い出してあげるよ!!」
ルイスは叫ぶと同時に右手のひらを開いた。すると、彼の手のひらに風が発生し始めた。
「か、彼の手に風が・・・・!?」
『この気配・・・・まさか!』
「吹っ飛べ!!」
ルイスが右手をかざすと、そこから凄まじい風が吹き、それを巧に操りながら私とロック達を店の外に吹き飛ばした。
「うわああああああああああ!!」
店の外まで吹き飛ばされた私達は倒れ、尻餅をついた。
「あいたたた・・・・」
「なんなのよ今の・・・?」
「俺達だけ吹き飛ばされたぞ!」
「メフィスト!彼は悪魔に取り憑かれてるのか?」
私は立ち上がり、彼を睨みつつ、メフィストに呼びかけた。
『いや、取り憑かれてはいない・・・・』
「じゃあ、継承型か?」
『それとも違う!奴の指輪を見ろ!』
メフィストにそう言われ、私はルイスの両手を注視した。見てみると、ルイスの右手人差し指には指輪がはめられていた。
『あの指輪に悪魔の力が宿っている!それに加え、私の考えが間違ってなければ・・・・!』
「こんなのもあるよ!そーらっ!!」
ルイスはアッパーを繰り出すように腕を振り上げた。すると、それと同時に地面に炎が走る。
「今度は炎!?」
『チイィッ!』
私は両手を前に出し、メフィストの形態変化で盾を作り、炎を防ぐ。
「へぇ、アンタもアーツが使えるんだ。だったら遠慮はいらないよね!!」
ルイスは今度は両手を前に突き出す。すると今度は高圧の水流が飛び出した。私はそれを盾に変化した腕で防ぐ。しかし、水流の力は凄まじく、押されてしまう。
「くっ・・・!なんて凄まじい水流だ・・・!」
「水は高圧で発射すれば鉄だって切れるし、壁に穴だって開けることができるんだよ!」
「だったら・・・!」
その時、ロックは私を踏み台にし、盾の後ろから飛び出した。そして、体を硬質化させる。
「俺の体も切れるかよぉ!!」
「さーて、どうかな!!」
ルイスは左手をシュッと少し上に上げた。すると、地面から土の柱が伸び、ロックに向かって飛んできた。
「何ッ!?ぐわああああ!!」
柱に激突し、ロックは地面に倒れた。
『やはり・・・!奴のアーツがわかった!奴のアーツは"四元素"!!火、水、風、土の力を操る能力だ!』
「よ、四元素だと・・・・?」
『そうだ!だが、このアーツを持っているのは・・・・ソロモン72柱の一角、ボティスのみ!なのに・・・・なぜあの小僧が・・・!?』
メフィストがルイスに疑問を持っていると、ルイスはニヤリと笑い、構えを解いた。
「へー、そこの悪魔、結構詳しいんだ。じゃ、ちょっとだけ教えちゃおうかな。この指輪は、ブラジルにある僕の実家で見つけたんだ。パパが言うには、お祖父ちゃんが昔ギリシャに行った時に見つけたものらしいんだけど・・・・僕は興味本位でこの指輪をはめてみたら・・・・この力が手に入ったんだ。条件付きだけどね。」
『そうか・・・・それでその力を・・・・だが、貴様のようなガキにその力は使いこなせんわ!』
「本当にそうかな?」
ルイスはそう言うと、両手に風を宿し、それを両足に持って行く。
「風よ・・・足に宿れ!」
ルイスはそう言って風を両足に装備した。
「足に風を・・・!」
「シャッ!」
ルイスは私の方へ向かってジャンプした。すると、驚いたことにルイスは助走もつけていないのに2mほど跳躍し、私に蹴りを繰り出す。
「くっ!」
「そらそらそら!」
私は攻撃を受け止めるも、また蹴りを繰り出してくる。しかも今度は連続だ。風の力で宙に浮き、宙から連続の蹴りを浴びせる・・・・単純だが、恐ろしい技だ。
私は負け時と拳を突き出すも、ルイスは宙を蹴って後ろに回り、回し蹴りを喰らわせる。
「ぐあっ!」
「ルーク!」
リンは手助けをしようと、ルイスに向かって蹴りを繰り出そうとした。
「待て!」
「!!」
私は攻撃を防ぎながら叫び、リンを止めた。
「この子の相手は私がやる!」
「でも・・・・!」
「大丈夫だ!心配するな!」
「・・・ッ!わかったわ!」
リンは力強く返事をした。
しかし、この滞空時間をどうにかしなければ、勝機はない。ならば、目には目を・・・・足技には足技を!
次の蹴りが来た瞬間、私は後ろに跳んでよける。すると、ルイスは追撃しようとさらに蹴りを繰り出す。
「ドラゴンダイブキック!!」
その時、私は助走をつけてジャンプし、飛び蹴りを繰り出した。私とルイスの蹴りが激突し、その威力が相殺され、私達は互いに地面に倒れた。
「あ、あれって、私の『龍飛脚』!?」
リンは私の攻撃を見て驚いている。それも仕方ない。私は彼女の技を使ったわけだからな。
「ま、まさか、人目見ただけで・・・・?」
「そう!パパは一度見た技はカメラみたいに全部記憶してるの!しかも、それを使うことができるんだよ!」
「す、すごい・・・」
メアリの言う通り、私は一度見た技は全て覚えており、しかもそれを自分のものにできる!
前も、プロレスの試合をテレビで見た時、オクトパスホールド(卍固め)を習得することができた。
「ドラゴンガトリング!!」
続いて、私はリンの技である、左足を軸にし右足で連続の蹴りを繰り出す「龍連脚」を繰り出した。
「チッ・・・!炎脚!!」
対してルイスは右足を軸にし、炎を纏った左足で連続の蹴りを繰り出す。
私達の蹴りは互いにぶつかり合う。
「す、すげぇ!おっさん、ボクサーなのに足技もできんのかよ!」
「でも、足技においては彼の方が上みたい!蹴りの速さ、キレ、正確さ・・・どれをとっても一級品だわ・・・・!」
リンが言うように、私の蹴りよりルイスの蹴り技の方が上だった。私はボクサーで、拳を主体にした格闘技。故に足技は使っていない。対し、ルイスの方は足を主体にした格闘技の為、私より遙かに上。
「そりゃ!!」
ルイスは連続蹴りの打ち合いに競り勝ち、私を蹴り飛ばした。
「くっ!やるな・・・」
蹴り飛ばされた瞬間、私は地面に両手をつき、そのまま軽く後ろに跳んで両足で着地する。
「足がダメなら・・・・こいつだ!」
「はぁ?プッ、僕相手にそんなので戦うつもり?」
私はボクシングの構えをとった。すると、それを見たルイスは笑い捨てた。
「おじさん、さっきまでの僕の攻撃見てなかったの?僕は遠距離からも攻撃できるし、蹴りだって滅茶苦茶強いんだよ?おじさんに勝ち目ないと思うけどな~」
ルイスの言い分は確かにもっともだ。だが、私はそれを鼻で笑った。
「フッ、君は口だけの男なのかな?」
「・・・なんだと?」
私の一言に、ルイスの顔は険しくなった。私はさらに続けて言った。
「そういうことは勝ってから言うことだ。勝ってもいないのに言うのは、自分に自信がないか、自分を弱いように見せたくないか・・・・そのどちらかだ。」
私が言い終えると同時に、ルイスは険しい表情をしながらニヤリと笑った。
「オーケー・・・・ゴングを鳴らしたのはアンタだ!!悪く思うな!!」
ルイスはそう言うと、両手に炎を発生させ、手のひらを前に突き出し、巨大な火炎を発射した。
私はダッキング・・・身を低くしてかわし、そのままルイスに向かって突進する。
「この・・・野郎!」
ルイスは次に風の力を凝縮した弾丸を飛ばした。私はそれを横にステップしてかわす。
ルイスはさらに風の弾丸を飛ばすも、それも次々と、私はかわしていく。そして、私はパンチが彼に届く範囲まで近づいた。
「くっ・・・!ぼ、僕がそう簡単に、負けるわけない!!」
ルイスは私の頭を蹴り上げようと、足に水を纏い、足を振り上げた。しかし、それは私には当たらなかった。
私は紙一重で蹴りをかわし、カウンターでルイスの顔に私の拳をたたき込んだ。
「がはっ・・・!!」
ルイスはうめき声を上げながら地面に倒れた。
「君の敗因は、最後まで自分のアーツに頼ったことだ。」
私のルイスに送った言葉に、当の本人はフッと笑った。
「・・・・あーあ、負けちゃったか。これも、"運命"なのかなぁ・・・・」
「運命・・・?よくわからんが、君もすごい実力者だったことは確かだ。その証拠に、君の蹴りはなかなか痛い。」
「それって皮肉?」
「気を悪くしたのならすまない。みんな、終わったぞ!」
私はメアリ達に向かって大声で呼んだ。それに従い、メアリ達は私の元に集まった。
「おっさんすげぇぜ!」
「見事なカウンターだったわね!」
ロックとリンは私に賛美を送ってくれた。すると、ルイスはリンとメアリの姿が目に止まり、口笛を吹いた。
「ねぇ、そこのかわいいお嬢さん。僕の看病してくんない?後、デートして。」
ルイスは突然2人をナンパし始めた。
「ごめん、私男にあんまり興味なくて・・・・スパイダーマンなら別だけど。」
「まともに返事しなくていいわよ、こんな奴に。」
「ねぇ、お嬢さん達、名前は?」
ナンパに失敗しても、ルイスはめげず名前を聞き始めた。
「私はメアリ!」
「・・・リンよ。」
「リンにメアリ・・・・いい名前だね。で、そっちのいかにも頭悪そうなお坊ちゃんは?」
ルイスはそう言ってロックを指差した。
「なっ、何ぃっ!?俺がアホだと!?このナンパ野郎!!」
ロックは怒り、寝転がっているルイスの胸倉をつかみ、むりやり起こした。
しかし、ルイスの態度は余裕そのものだった。
「あれ?頭悪いって自覚あるんだ。」
「てめぇ~~~!!」
ルイスの一言でロックの怒りはさらに増し、今にもケンカが起きそうな空気になっていた。
「コラ!ケンカはやめなさい!」
私は2人の間に入り、ケンカを止めさせた。
「はいはい。」
「いつかブッ殺してやる!」
ルイスは余裕そうに腕を組み、ロックは悔しそうにルイスを睨んだ。
『おい小僧!なぜ私達を狙った?さっき、"ある人"と言っていたな?そいつは誰だ!?』
「別に、僕はそこまで知らないよ。ただ、その人が『君の命を狙っている奴がいる』って言って、メフィストの写真を見せたんだ。」
「それで私を倒そうと・・・・それで、写真を見せたそいつの名は?」
「名前は・・・本名は言わなかったな・・・・でも、そいつは自分のことを『スポンサー』って呼んでた。」
「スポンサー?」
『スポンサー』・・・・テレビやラジオと言った番組の提供者のことだ。
しかし、なぜ自分から「スポンサー」と名乗ったんだ?本名のはずはないし、何かの暗号かコードネームなのかもしれない。
「僕が知ってるのはそれくらいだね。もういい?」
ルイスは話を終え、そのまま帰ろうとした。
「っと・・・待ってくれ!もう一つ聞きたいことがある!」
私はもう一つだけ聞きたいことがあり、ルイスを引き留めた。
「?」
「店に入る前、女の子と話してただろ?その時、女の子は君にお礼を渡そうとしていたのに、君は断った。なぜだ?」
「・・・受け取れないよ。」
ルイスは少し間を置いて、返事をした。
「あの子、両親を亡くして、ベビーシッターのバイトをやってるんだけど・・・・自分が食べていくのがやっとなんだ。そんな子からお金なんて受け取れないよ。」
ルイスが金を受け取らなかった理由を聞いた私は、少しホッとした反面、嬉しかった。
こんな若者が久々にいたことが。
「そうか・・・・なら、素質は充分にあるな。」
「へ?素質?」
「そう!ヒーローとしての素質だ。」
「はい?」
私の言葉に、ルイスの声は裏返った。
「私達と一緒に、ヒーローとして仕事をしてみないか?」
「いやいやいや、言ってることがよくわかんないですけど。」
ルイスは否定したが、私は話を続けた。
「君は、あの子を助けたかったんだろ?それと同じように、君の力でより多くの人を救うことができる。人助けは気持ちいいぞ~!」
「そりゃあ、女の子を助けたいっていうのは男の本能っていうか・・・・人を助けるのは・・・まぁ、嫌いじゃないけどさ・・・・」
「・・・考えがまとまらないようだな。なら、決心ついたら、この住所まで来なさい。」
私は考えがまとまらないルークに、家の住所を書いたメモを渡した。
「は、はぁ・・・」
「それじゃ、また会おう!みんな、家に帰るか。」
私はルイスに別れを告げ、みんなと一緒に帰路についた。
「全く、ちょっとひやひやしたわよ。」
「まぁ、おっさんならあんな奴楽勝だぜ!」
「パパ、怪我してない?」
「ああ、メフィストがいるからな。」
『ふん、こっちがダメージを負っていることを忘れるなよ!』
私達が去った後、ルイスはポツンと店の前に突っ立っていた。
「か、勝手だなぁ。あのおじさん。」
「ルイスー!」
「ルイス!今の何!?マジック!?」
ルイスが突っ立っていると、店の中から先ほどルイスの両隣にいた女性2人がルイスの元に駆けつけた。
「あー、まぁ人には言えないことってあるじゃん?」
「えー、何よそれー!」
「そんなことより、ルークったら怪我してるじゃない。私がゆっくり・・・治療してあげる♪」
女性の内の1人が色っぽい仕草でルイスを誘う。
「お~、いいねぇ。でも、大したことないよ。ありがとね、心配してくれて。あっ、あのさ、ちょーっと変なこと聞くけど、僕がヒーローになったら嬉しい?」
「えっ?なーに突然?」
「んー・・・もしもヒーローになる運命だったとしたら、それを受け入れるべきだと思う?抗うべきだと思う?」
ルイスは突然、返答に困りそうな質問を2人に投げかけた。
「そうねぇ・・・なんとも言えないけど・・・」
「でも、ヒーローなんて面倒じゃない?悪党退治とか疲れそうだし。」
「そうそう。それに人助けしてもお礼言わない奴いそうじゃない?お金にもならなさそうだし・・・・」
2人はヒーローにとってのデメリットを述べた。しかし、2人の言葉を聞き、ルイスはニヤリと笑った。
「なるほど~!じゃあ、それに抗うのも、運命?ってことで、じゃあね!」
「あっ、ルイス!」
「どこ行くのよ~!」
ルイスは2人の静止を振り切り、その場を走り去った。
翌日、私の家にロックとリンが集まった。
「・・・あいつ、来ないなぁ。」
ルイスは来なかった。昼過ぎまで待ったが、来なかった。
「仕方ないさ・・・・無理強いするわけにもいかないだろう・・・・」
私は少し落ち込んだ。来ないパターンも予想していたが、本当に来ないとなるとショックも大きい。
「よし、私達だけで始め・・・・」
その時だった。家のインターフォンが鳴り響いた。
「あっ、私出る。」
メアリはそう言って玄関の方へ向かった。
「はーい!・・・・あっ!」
少し間を置いて、メアリの驚く声が聞こえた。
「パパ。」
「?」
私は呼ばれて振り向いた。
そこにはメアリと・・・・その後ろにはルイスがニヤリと笑いながら立っていた。
「へへっ、来ちゃった。」
「来てくれたのか!」
「まぁね。女の子にモテそうだし?」
「それでも・・・嬉しいさ!ありがとう!」
私は喜びのあまり、彼の手をギュッと握った。
「どういたし・・・あいたたたたたた!!」
どうやら力を入れすぎたようで、ルイスは痛がり始めた。
「あっ、すまん。」
私はパッと手を離した。
「もう・・・・僕はルイス。ルイス・セナ・オリヴェイラ。」
「私はルーク・エイマーズ。」
「ルーク・エイマーズ!?ボクシングの元世界チャンプじゃん!」
ルイスは私の名を聞いて驚きを隠せないようだ。驚くのも無理はないのかもしれないが、もう過去のことだ。
「もう昔の話さ。さぁ、みんな揃ったところで、会議を始めるか!」
こうして、私達に新しい仲間、ルイスが加わった。
そして、ここから始まる。私達のヒーロー活動と、新たな戦いが・・・・!!
レギュラーキャラ第3号登場!洋画とか海外ドラマとかには必ず出てくる黒人枠!とは言っても、ルイスは肌黒ではなく褐色ですが・・・
キャラのモデルは「名探偵コナン」の安室透です。褐色のイケメンというと、この人が真っ先に思い浮かびます。
今後登場する敵キャラのキーワードも出てきました。その敵キャラは自分の作品のキャラの中で一番好きなので、早く出したいです(笑)