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ファウスト ~FIRST HEROS~  作者: 地理山計一郎
第3章「因縁の好敵手編」
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第34話「鋼鉄の誓い」

スポンサーの連絡を受け、ルーク達は屋敷の前へと集まった。


「ようやくメアリを助けられるな・・・どれだけ待ったことか・・・!」


その時、屋敷の玄関ドアからスポンサーが出てきた。


「お~、これはこれは・・・ヒーロー達が勢揃いだな~、子ども達もきっと大喜びだろうなぁ。」

「・・・君の冗談を聞きにきたわけじゃない。」


スポンサーの挑発的な発言に、ルークは怒りを滲ませ、拳を鳴らした。


「メアリはどこだ!」

「そう喚くなよ。お嬢ちゃんは屋敷の中にいる。どこにいるか、見つけられるかな~?」


スポンサーは懲りずに挑発的な発言を取った。すると、それに怒りを覚えたジャッジは拳銃を抜き、銃口を向けた。


「てめぇのくだらねぇギャグを聞きにきたワケじゃねぇんだ。さっさと言いな!」

「・・はぁ、まったくジョークっていうものが・・・・」


スポンサーはため息をつき、よそ見をした。すると、それと同時にジャッジが拳銃の引き金を引き、スポンサーに向けて弾丸を放った。


「わからねぇんだなァ・・・」


その時、スポンサーはよそ見をしながらも手を突き出して弾丸を掴んだ。そして、それを見せびらかすように地面に落とした。


「弾丸を・・・!」

「あの野郎・・・ホントに人間か!?」

「さーて、こっからがメインイベントだ!主役は5人のヒーロー達!景品は屋敷のどこかに囚われたお嬢ちゃん!そして、立ちはだかるは・・・・」


スポンサーはニヤリと笑ったかと思うと、指を鳴らした。すると突然、スポンサーの周りと屋敷の周りに四角い穴が無数に開いた。


『!?』

「こ、こいつらは!」

「あの時の・・・!」


ルーク達が驚いている間に、四角い穴から現れたのは以前、ロック、ジャッジ、レオナが戦った「デストロイドβ」と同じ姿をしたロボットだった。


「ようやく量産に成功したぜ。名付けて『デストロイドγ』!この大軍勢がお前らの相手だ。じゃ、俺は屋敷の中でダンナと待ってるぜ。チャオ♪」

「ま、待て!」


スポンサーは屋敷の中へ入り、ルーク達はそれを追おうとした。しかし、目の前にデストロイドγ達が立ちはだかった。


「チッ、まずはこいつらか・・・!」


立ちはだかるデストロイド達を前に、ルークとロックを除く3名が各々武器を装備した。


「・・・みんな、悪いが私はショートカットをさせてもらう。」

「あ?」


ルークはクラウチングスタートの体勢を取り、思い切りデストロイド達に向かって全速力で走った。


「目標確認・・・排除、開始。」


デストロイド達は走ってくるルークを補足し、片腕のマシンガンを起動した。その瞬間、ルークはジャンプし、デストロイドの一体の頭を踏んだ。そして、それを踏み台にしてさらに空高く跳び上がった。


「メフィスト!ブーストだ!」

『よし!ウェイブブースト!!』


両足から「音波」のアーツで音波を発射し、ジャンプの速度と高度を上げ、屋敷の3階の部屋に突っ込んだ。


「・・・よし!」


窓ガラスを突き破り、ルークは部屋に着地する。辺りを見回し、敵がいないことを確認し、部屋を出た。


『・・・』


ルークの行動を見ていた他のメンバーはキョトンとしていた。


「なんというか・・・」

「無茶やりやがるなぁ。」

「さすがは御父様・・・・」

「まぁいい。こっちはこっちで片付けるぞ!」


ジャッジはそう言って、肩に抱えたバズーカ砲を構え、デストロイドの軍勢に向かって発射した。

弾道はまっすぐデストロイド達に向かって飛んで行き、見事に着弾。爆発と爆風で多くのデストロイドを巻き込んだ。


「すっげ・・・」

「なんだかんだ言って、ジャッジも凄いわね・・・」

「レオナとロックは2階、俺とリンは1階を探す!敵はロボットだ!遠慮なくブッ壊してやれ!!」

「よっしゃ!!」


ジャッジの号令の下、ロック達は敵陣目掛けて突っ込んだ。


「目標・・・補足。」


数体のデストロイドがリンに狙いを定め、目の前に立ちはだかった。


「!」


デストロイドが攻撃に入ろうとした瞬間、リンは懐から鉄扇を取り出して広げ、素早く近づいてデストロイドの関節部を撫でるように鉄扇を触れさせ、関節部を切り裂いた。

リン個人の力だけでは、デストロイドとの正面衝突は不利。しかし、装甲のもろい箇所を狙うように戦えば、リンにも十分に勝機がある。リン自身もそれを理解して間接を狙ったのだ。


「うおおおおおおっ!!」


対しロックの方は、力任せな乱暴な戦い方で対峙していた。


「ドリャッ!!」


硬質化した体を使い、デストロイドの頭を掴んで思い切り頭突きを放ち、

「ヌオ~~~ッ・・・セイッ!!」

腕を思い切り引っ張ってもぎ取り、それをそのまま武器として振り回す。


さらにデストロイドの足を掴み、ジャイアントスイングの如く振り回して、自分の周りの敵を一掃した。


「パワーだけなら誰にも負けねぇ!!来るなら来いやァ!!」

「ロック・・・張り切ってるな。私も、メアリの為にッ!!」


ロックの鬼気迫る戦いぶりに身震いしたレオナは負けじと、デストロイドに突っ込んで言った。


「第1形態『ランスロット』!」


錬金術で鉄の球を槍に変え、目の前の敵をなぎ払った。その時、後ろからデストロイドが襲いかかってきた。


「第4形態『ガラハッド』!!」


レオナは槍を巨大な盾に変え、攻撃を防ぐ。その後、すぐさま盾で突進し、デストロイドをそのまま背負い、投げるように地面に叩きつける。


「第2形態『トリスタン』!」


今度は盾を弓矢に変えた。地面に叩きつけたデストロイドを踏み台にして跳び上がり、宙から光の矢を乱射し、デストロイドの体を貫いた。


「決まった・・・!」


レオナは得意気に笑った。


「おい、射線開けろ!」

「はい?」


レオナはジャッジの声を聞いて顔を横に向けた。横を見てみると、ジャッジがバズーカ砲をこっちに向けて構えている。そして間髪入れずにバズーカを発射した。


「わーーーーっ!!?」


レオナは寸前のところで逃げ出し、級地を脱した。

バズーカの弾は着弾し、多くのデストロイドを破壊した。


「命中。」

「こ、殺す気ですかアンタはっ!?」

「大丈夫だ、狙いは外した。」

「鬼だこの人・・・!!」


ジャッジはレオナを無視してバズーカに弾を装填する。


「お前ら!今から俺が道を作る!道ができたらそこへ突っ込め!!」


ジャッジはそう言ってバズーカを屋敷の玄関目掛けて発射した。

弾はまっすぐ飛んでいき、玄関扉に激突し、破壊した。


「今だ!」


次の瞬間、ジャッジ達は走り出し、周りの敵は無視して屋敷へ直行した。

当然、デストロイドはそれを追いかける。しかし、ジャッジは屋敷に入ると同時に手榴弾を投げた。

手榴弾が爆発し、辺りが爆風に包まれる。


「今のうちだ!いくぞ!煙幕が効くかわかんねーけどな!」

「よっしゃ!来い、レオナ!」

「命令しないでください!」


ロックとレオナは手榴弾の爆風煙幕が張られている内に屋敷の2階へ上がった。


「私達も行くわよ!」

「ああ・・・だが、ただでは行かせてくれなさそうだ。」


ジャッジは呟きながら辺りを見回した。1階の廊下から数体のデストロイドがゆっくりと迫ってきていた。さらに、爆風煙幕が晴れ、外の敵が迫ってきた。


「こいつらを片付けないことには始まらないな。リン、俺の武器使うか?」


ジャッジはそう言うと、ポケットから拳銃を取り出し、リンに差し出した。


「いや、大丈夫。持って来てるから。」


リンはそう言いながら服の胸元に手を入れ、中から三節に分かれた棒を取り出し、1本の長い棒を作った。


「棒術・・・」

「これだけじゃないわ。」


リンは棒の真ん中に隠されたスイッチを押した。すると、棒の先端から長刀状の刃が飛び出し、反対側からは鋭いトゲが何本も飛び出した。


「メフィストが開発した『マルチスティック』。私用に作ってくれたの。先端はアタッチメント式で色々変えられるんだけど・・・開発中で今はこれだけなんだって。」

「はぁ、そりゃあ凄いが・・・名前ダセェな。」

「そんなこと言ってる場合じゃないわ!」

「・・・だな。」


リンはスティックを構えた。同様に、ジャッジも両手に銃を装備し、向かって来るデストロイドに向かって銃口を向けた。


「ターゲット確認・・・排除開始。」


「銃声・・・本格的に始まったみたいッスね。」


そのころ、2階にある空き部屋にメアリとシンがいた。シンは縄でメアリを拘束していた。


「もう・・・なんで拘束するの?」

「メアリちゃんはあくまで人質ッスから。人質なら人質らしくしないと。」


シンはそう言って、メアリの腕を後ろに回して縛りつけ、さらに足を縛った。


「・・・ねぇ、どうしてこんなことしたの?」

「・・・・決まってるでしょ、金の為だ。」


シンは少し間を置き、語尾の「ッス」を言わず、真面目に答えた。


「お金の為に友達を、ジャッジおじさんを裏切ったの?」

「・・・いいかい?メアリちゃんは世間知らずだから言ってるんだろうけど、貧乏人ってのは金がないと生きていけないんだ。世の中、金が必要なんだ。金自体が暴力で、権力なんだ。」


シンはため息混じりに答えた。それは世の中の理であり、納得できうるものでもあった。恐らく、ほとんどの人間がシンの話を聞いて、うんと頷くだろう。


しかし、メアリは、

「そんなの違う。」

「はい?」

「お金は確かに大事だけど、それよりもっと大事なものがあるって、パパが言ってた!それは、お金じゃ買えないものだって!」

「・・・・・」

メアリの言葉に、シンは無言になった。


そして、脳裏に故郷韓国にいる弟と妹の姿がよぎった。金より大事なもの・・・シンにもそれはあった。だが、それで腹が一杯になるわけがない。シンは故郷の弟と妹への想いをひとまず忘れ、銃を握りしめた。


「だから・・・シンさんだって、きっと・・・!」


メアリは話を続けようと口を開いた。


「ちょいと、黙っててくれる?」


シンはメアリが言うよりも早く、メアリの口にガムテープを貼り付けた。


「ッ!?~~~ッ!!」


メアリは「これ剝がして!」と叫んだが、口を塞がれてしまったため何も言えなかった。

と、その時、部屋のドアが蹴破られ、吹き飛んだ。


「!」

「見つけたぞ、メアリ!」


ドアを蹴破ったのは2階を捜索していたロックとレオナの二人だった。


「どうも・・・お久しぶりッスね、二人とも。」

「シンさん・・・!」


シンの姿を見て、二人は怒りを滲ませた。


「シンさん・・・!俺達を見て何か言うことねぇのかよ?」

「ん~?」


シンは顎に手を当て、眉をひそめながらじっくりと二人を見つめた。


「ああ、二人とも仲良くなったんスか?」


シンはニコッと笑い、答えた。その瞬間、シンの答えに怒りが爆発し、ロックとレオナは飛び込み、攻撃を仕掛けた。ロックは硬質化した両拳、レオナは錬金術で作った双剣でだ。


『違ェよ、ボケッ!!』


二人は声を揃えて仲が良いことを否定し、シンに攻撃した。

しかし、突然二人の攻撃は遮られた。


『!?』


二人の目の前には、鮮血のように赤い壁がシンを守るように立ちふさがっていた。


「俺も、スポンサーさんから『アーツ』をもらったんですよ。破裂(トジダ)!!」

『!!』


シンは叫んだと同時に、赤い壁が風船のように破裂し、二人を吹き飛ばした。


「くっ・・・!アーツだぁ?てめぇ、なんのアーツを貰いやがった!?」

「今見せますよ。」


シンはそう言うと、懐から病院で輸血に使われる輸血パックを取り出した。


「?」


二人はそれを見て首を傾げた。すると、シンはパックにナイフで穴を開けた。


血溜(ピ・サイダ)!」


シンの叫びとともに、パックの中の血液が手のひらに集まった。


「何!?」

「血が集まってやがる!」

「俺の能力は『血液操作』。血であれば自由に操ることができ、どんな物でも作れる。例えばこんなのも・・・刀剣(カル・コム)!!」


シンは血液を操作し、真っ赤な二振りの刀を作った。そしてそれを逆手で持ち、すぐさま二人に斬りかかった。


「くっ!」

「チィッ!!」


ロックは両腕で、レオナは武器で攻撃を防いだ。


「舐めるなァッ!!」


ロックは硬質化した拳でボディブローを腹のど真ん中に放った。


「がはっ!」


ボディブローは不気味なほどに見事に決まり、シンは吐血した。

血を吐く・・・それはシンに取って攻撃の合図と同じだった。攻撃の為にわざと攻撃を喰らったのだ。


「っしゃ!」


ロックはシンがわざと攻撃をくらったことに気づかず、素直に攻撃が当たったことを喜んでいた。


「血を吐かせていいんですかねぇ?血針(ピ・パヌル)!!」


シンは床に付着した吐血を針に変え、ロックの眼球目掛けて発射した。


「ロック、危ない!第5形態『アグラヴェイン』!!」


レオナは錬金術で双剣を鎖分銅に変えて投げ、ロックの体を巻いて自分の元へ引き寄せた。

レオナのファインプレーで血の針はロックには当たらずに通り過ぎた。


「っと・・・!すまねぇ、レオナ!」

「いえ。しかし、なんて厄介な・・・!血が武器になるなら、迂闊に攻撃できない・・・!」

「来ないんですか?だったら、こっちから行きますよ?」


その一言とともに、シンは素早い動きで二人に近づいた。


「速い!?」

「シャッ!」


シンは掛け声を上げて血の刀を振るってきた。レオナはそれを、鎖を使って絡め取った。


「取った!」

「そういうときは声は出さない。」


シンはレオナに忠告すると、刀を絡め取った鎖を逆に引っ張った。


「うわっ!」

跳び後ろ回し蹴り(ティオティッチャギ)!!」


鎖を引っ張られ、レオナがバランスを崩したところに、振り向き様に直線的に足裏で腹を押し蹴った。

レオナは腹を蹴られ、叫ぶ間もなく吹き飛ばされ床に転がった。


「くっ・・・!」

「て、てめぇ・・・女に手ぇ出すなんて最低だぞ!」


シンがレオナに手を上げたところを見て、ロックはわなわなと拳を震わせた。


「大丈夫ッスよ、顔には当ててないッスから。でも、人の心配してる余裕はないでしょ?血針(ピ・パヌル)!」


シンは血の刀の一部を折って液体に戻し、針に再構成。ロックに向けて飛ばした。

ロックは腕を盾にして防いだ。硬質化した体に、針などは通らなかった。


「俺の体にそんなの効くかよ!」

「じゃあこんなのは?血爪(ピ・ソントプ)!!」


シンはそう言うと、刀を元の血液に戻し、両腕両足に纏い、鋭い爪に再構成した。

血爪を装備するやいなや、すぐさまロックに向かって攻撃を始めた。

爪による素早い攻撃とテコンドーによる怒濤の蹴りの連続・・・ロックの力任せな戦い方とは相性が悪かった。


(クソ・・・!攻撃が速い!)


ロックはシンの連撃に防戦一方だった。しかし次の瞬間、ロックはシンの攻撃をよけた。


「!」


よけた、というよりは不意にバランスを崩したせいでよけられたと言った方が近く、しかもバランスを崩したことでシンの攻撃は空振りに終わっていた。しかし、ロックにとってこれはチャンスだった。


(今だ!)


ロックは心の中で叫び、お返しとばかりに攻撃を繰り出そうとした。しかしその瞬間、シンの両手足に装備された血爪から刃が飛び出し、ロックに向かって伸びた。


「!?」


ロックは咄嗟に後ろによけた。


「・・・そんなのアリかよ。」

「当然。」


シンが得た「血液操作」のアーツ、それは攻撃範囲が無限に広げられる力とも言える。

例えば、血爪を纏った状態で突きを繰り出す。相手が横によければ爪の横から刃が飛び出し、後ろによければ爪が伸びて突き刺さる。


「はぁ・・・はぁ・・・なぁ、シンさん。」


攻撃をかわし続け、疲れから息を切らし始めたロックはシンに尋ねた。


「アンタ、ジャッジ先生とは付き合い長いのか?」

「・・・何が言いたい?」

「答えろよ!」


問いに答えようとしないシンに、ロックは怒声を上げた。


「・・・ああ、長いよ。3年間・・・あの人の専属の情報屋としてやってきた。・・・でも、それもこれも、俺が大金を手にする為だ。」

「!」

「俺は絶対に一番の金持ちになるんだ!そして、今まで俺や兄妹を笑いやがった奴ら全員、見下してやるんだ!そのためだったら・・・人殺しだって!!」


シンはその叫びとともに血爪で攻撃を繰り出した。


「くっ!」


ロックは腕を掴み、攻撃を止めた。しかし、シンの勢いは止まらず、そのまま床に押し倒された。


「ロック!お前にもわかるだろ!ストリートチルドレンとしての少年時代を生きてきたお前なら・・・親に捨てられることがどれだけ苦しいのか、わかるだろ!!」


シンの叫びを聞き、ロックは脳裏に自分自身の過去を思い浮かべた。


物心ついた時には親はおらず、周りは薄汚れた建物と自分と同じ、身よりのない子どもばかりだった。食べ物を得る為に生ゴミを漁るのは日常、人から物を奪い、暴力を振るうのは当たり前、服はボロボロで薄汚れているのは当然のこと・・・幼いながらも、ロックは理解出来ていた。自分が「弱者であること」、「普通の人とは差がありすぎること」を理解していた。


「・・・わかるよ。俺だって、普通の暮らしなんて送ってない。気持ちはわかるつもりだ。」

「!」


ロックの答えに、シンは一瞬力を緩めた。


「ドリャッ!」


その隙を突き、ロックはシンを蹴り飛ばし、立ち上がった。


「でもな!俺は、絶対・・・みんなを裏切らない!!」

「何・・・?」

「ルークのおっさんが俺を拾ってくれた・・・俺に、生き場所をくれた!友達も、仲間もできた!だから・・・俺はそれを守る!メアリを助けて、みんなも守る!!この体で!!」


叫ぶとともに、ロック自身に気迫が立ちこめた。まるで覚悟を決めたかの如く、その瞳には迷いなどなく、構えもブレがない。


(なんて気迫だ・・・!あれがこの前までのロック?)


ロックは思った。

ルークと出会っていなければ、今の自分はなかった。弱いままの自分でいたかもしれない。しかし、ルークや皆が自分を強くしてくれた。ならば自分はその恩返しに、皆を守ると誓ったのだ。


「叫んだだけで、強くなると思うなよ!」


シンはそう言って、爪を尖らせ、ロックに向かって行った。

それと同時に、ロックは修行中にジャッジから言われたことを思い出した。


『ロック、お前はいつも感情を表に出しすぎる。戦闘の時はいつでもクールになれ。』

(いつでも、クールに・・・)


ロックは息を整え、冷静さを保ち始める。

すると、シンが爪を振るって攻撃してきた。


『後、お前は動きが固すぎる。動きはもっと緩やかに、最小限に抑えろ。攻撃の時も、防御の時もだ。』

(動きは緩やかに、最小限!)


ロックは来た攻撃を、まず相手の腕を取り、背中に回り込むように攻撃をかわし背後に回る。


「チッ!」


シンは攻撃をかわされながらも、さらに攻撃を続ける。


『殴るだけじゃ脳がねーぞ。相手の攻撃を受け流すことも戦略の一つだ。受け流せれば、カウンターに繋がる。カウンターで相手の腕を取って骨を折ってみろ。地味だが効果的だ。』

(攻撃を・・・受け流す!)


次の攻撃の瞬間、ロックはシンの腕を取って、攻撃を受け流した。


「何!?」


さらにそのままシンとともに床に倒れ、足をかけて4の字に固めた。


「そらっ!!」

「ぐっ、がぁぁぁぁぁっ!!」


ロックはそのまま腕の骨をへし折り、シンは悲鳴を上げた。


「そんでもって・・・!!」


ロックは腕を折られた痛みに苦しむシンを無理矢理立たせた。


「これがッ!俺のッ!!」


ロックはシンを立たせたと同時に硬質化した拳での連続パンチを食らわせた。


「新しい技ッ!!」


パンチの連撃を受け、フラフラの状態になったシンのみぞおち目掛けて拳をギュッと握った。


「メタルバンカー!!」


ロックは叫びとともにみぞおち目掛けて渾身の拳を放った。その一撃は、まるでパイルバンカーのように凄まじく、シンの体にその威力がめり込んだ。


「がっ・・・ぐあああああああっ!!」


一撃を食らったシンは吹き飛び、窓を突き破って外へ吹き飛ばされた。


「へへっ・・・これだけ吹っ飛ばされれば、血を操作できねぇだろ!」


ロックは吹き飛ばされたシンを見て得意気に笑い、腰に拳をついた。


「まさか・・・そこまで計算していたんですか?」


レオナは、まさか頭の悪いロックが計算しながら戦っていたのかと思い、本人に問いかけた。


「えっ?・・・あ、ああ、そうだぜ!決まってんだろ!?俺はやる気になれば頭良いんだよ!」


しかし、実際のところ何も考えていなかったロックは慌てて誤魔化そうとした。


「・・・何も考えてなかったな?」


だが、レオナにはとっくに図星だと気づかれ、ため息をつかれた。


「でも、見直しました。」

「?」


レオナはため息をついてすぐ、笑顔を向けてロックに手を差し出した。

しかし、それが何を意図しているのかわからなかったロックはまごついた。


「握手ですよ、握手!本当ならこういう場合はキスの一つでもするんでしょうが・・・・私は男なんぞにキスしたくないんで、握手です。」

「・・・ああ、そう。」


レオナの発言に苛立ちを覚えつつ、ロックはレオナと握手を交わした。


「相変わらず、変な奴だな。同い年の奴にも敬語使うし。敬語じゃなくてため口でいいだろ。俺とかは全然気にしないぜ。」

「そうで・・・そうか。なら、今からそうするよ。ロック。」


レオナは一瞬敬語で返事をしかけたが、すぐにため口で話した。


「んー!んー!」

「やっべ!メアリ忘れてた!」


二人は唸り声を上げるメアリの声を聞き、メアリのことを思い出し、すぐさま駆けつけ、口を塞いでいたガムテープを剝がした。


「メアリ、忘れててごめんね!今解くから!」


レオナは急いでメアリを拘束していた縄を解いた。


「ふぅ・・・レオナー!!」


メアリは縄を解かれて一息ついた、かと思いきや、レオナのことをギュッと抱きしめた。


「はいっ!?」


いきなり抱きつかれて、レオナは甲高い声を上げた。


「助けてくれてありがとー!」

「あぁ・・・天国にいる気分だ・・・・!」


大好きな人に抱きしめられ、レオナは天にも昇ってしまいそうな感覚に歓喜した。


「あっ、そうだ。ねぇ、ロック!」

「ん?」


メアリに呼ばれ、ロックはメアリの方へ顔を向けた。

すると、メアリはロックの頬に顔を近づけ、キスをした。


『!?』


メアリの突然の行動に二人は驚き、ロックは顔を真っ赤に染め、レオナはあんぐりと口を開け、唖然とした。


「えへへ、助けてくれたお礼!ロック、かっこよかったよ!」

(メアリが、俺にキスを・・・!しかも、「かっこいい」って言ってくれた・・・!!)

「い、生きててよかったァァァァァァァ!!」


ロックはひそかに好意を寄せているメアリのお礼とキスに感激し、感激のあまり滝のように涙を流した。


「貴様ァーーー!!」

と、その時、レオナがロックに襲いかかり、床に押し倒した。


「なんて羨ましいことを・・・!!お前のことを見直すんじゃなかった!!」


レオナはロックの体の上に馬乗りになり、自分がメアリにキスされなかった悲しみと怒りに燃え、ロックの頬を引っ張り始めた。


「いでででででっ!!引っ張るんじゃねぇ!このペチャパイ女ッ!!」


ロックも負けじと、レオナの頬を引っ張り始めた。


「なんだと、このムッツリ男!」


二人は幼稚な悪口を言い合いながら喧嘩を始めた。その様子を見てメアリは・・・・


「わーっ!二人とも、いつの間にこんなに仲良くなったんだね!」

『違ーーーう!!』


メアリのズレた解釈に、ロックとレオナは声を揃えて叫んだ。



しかし、3人は・・・否、ルーク達は気づいていなかった。この屋敷に監視カメラが隠されており、ルーク達の行動が監視されていることを・・・・

そして、その行動を監視している者は・・・スポンサー。


「あの小僧・・・レベルがまた上がりやがった・・・!こいつは中々の食わせ者だなぁ・・・あのベトナム娘と、マスクの殺し屋も中々のレベルだ。そして、ルーク・エイマーズ・・・クハハハハハ・・・!誰が一番、レベルが高くなるか、楽しみだァ・・・!」


屋敷の地下にある秘密の部屋・・・王牙達も知らないスポンサーだけの部屋。監視カメラの映像を確認しながら、スポンサーは不敵な笑みを浮かべるのだった。


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