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ファウスト ~FIRST HEROS~  作者: 地理山計一郎
第3章「因縁の好敵手編」
23/38

第20話「全員敗北 Part.1」

今回は回想だけだった5人の敵の本格登場です!



「ファウスト、その意味を知れ!」


ガント警察長は私に向かって叫ぶ。私は、最初は驚き、冷静さを少し失っていたが、冷静さを取り戻し、フッとため息をついた。


「・・・・で、何をしに来るんですか?その5人・・・・わざわざニューヨークまで・・・・」

「・・・ファウスト。相手は少なくとも50名以上の者を死に至らしめた超危険人物。それがニューヨークに向かっている。目的はわからんが、そんな危険人物を、放置しておくわけにはいかない。だが、軍隊は動けない。『たった5人を相手に為す術もなく負けました』などになったら、アメリカのメンツに関わる!だが、警察の装備じゃ奴らには勝てない・・・」


警察でも、軍隊でもダメ・・・そして、私がここに呼び出された理由・・・・ここから導き出されるのは・・・・


「・・・じゃあ・・・・」


私が答えを言う前に、ガント警察長が言い始めた。


「その通り!だからこそ君達に任せたいのだ!」

「えええええっ!!?」

「さらに言うなら、君達ヒーロー達は格闘技を武器にしている。一方、今話した5人も格闘技を武器にしている。正当な表の格闘技と、裏の格闘技・・・・表と裏!これは白格闘技と黒格闘技の全面戦争!小規模だが、大規模な戦争になるぞッ!!」

「・・・・」


その後、しばし部屋に静けさが残り・・・・私は言った。


「・・・・警察長・・・無理矢理すぎませんか?」

「自然だ!!」



一方そのころ・・・・今日は休日ということで、みんなそれぞれ違うことをして楽しんでいる。

ロックはというと・・・・


「よーし、始めるか!」

「おう!」


ロックは地下でバルトロとスパーリングをしていた。とは言っても、バルトロはプロレス、ロックはピットファイティング(喧嘩殺法)だが。

まず、バルトロが先制を仕掛ける。ロックはバルトロの顔面に拳を喰らわせる。だが、そこは元レスラー。攻撃をものともせず、ロックを掴んだ。


「うぉぉらぁぁぁっ!!」


ロックを掴んだバルトロは、そのままバックドロップを繰り出す。しかし、ロックは頭を激突させないよう、床に両手を付け、そのまま両脚でバルトロを蹴り、その反動で跳び上がる。そして、リングロープでホバリング。


「ダァァァァッ!!」


ロックは空中からバルトロに殴りかかる。しかし、バルトロもバカではない。バルトロは襲いかかってくるロックに、拳を喰らわせ、突き飛ばす。

プロレス技の一つ、ナックルパート!バルトロの力なら普通のパンチでも威力がある!


「くっ!」


ロックは殴られながらも床に着地する。


「やるなぁ、バルトロのおっさん!」


そう言ったロックは、鼻から血を流した。


「っと・・・・」

「少し休むか。鼻拭けよ。」

「ん・・・」


バルトロに言われ、ロックは鼻血を拭き、その場に座り、休憩に入った。


「しっかし、どうしたんだ急に。俺とスパーリングしようなんてよ。」

「ああ・・・・実は俺、一応おっさんからボクシングを教わってはいるんだけどよ・・・・それだけじゃ、なんか強くなれないような気がするんだ。おっさんには何回やっても勝てねぇし・・・・だから俺は考えた。」


ロックは指をパチンと鳴らすと、自分が考えたアイディアを話し始めた。


「ありとあらゆる格闘技をパクリまくる!だからアンタを呼んだんだ!プロレスのいいところをパクリまくってやる!それが終わったら、次はロバートから空手をパクる!」

「ハッハッハッ、若い奴らしいな!」

「俺は本気だぜ!絶対強くなってやる!」


ロックは本気だ。本気で様々な格闘技の長所をパクり、私に挑もうとしている。パクりはあまりよくない気がするが・・・・私も人の事は言えないな。


「それもいいけどよぉ、お前、メアリちゃんとは上手くいってんのか?」

「な、なんだよ急に・・・・メアリは関係ないだろ・・・?」


メアリとのことを聞かれ、頬を赤く染めた。


「なんだ、まだコクってないのか?」

「出来るか!大体、告白なんて度胸いるし・・・・失敗して変な目で見られたらイヤだし・・・それに、アイツ、メフィストやリンとばっかりいるし・・・・」

「ったく、戦いの時は度胸ある癖にこんな時にヘタレかよ。」

「う、うるせーな!もう一度!もう一度スパーリングだ!」


ロックは照れ隠しにもう一度スパーリングをしようと構えた。と、その時、トレーニングルームと階段を繋ぐドアが開いた。


『?』


二人はドアの方に目を向けると、そこには・・・・

「ルーク・エイマーズ氏に・・・・会いたいのだが・・・・」

武装集団を壊滅させた者の一人、カスパールがそこに立っていた。


「ああっ?なんだぁてめぇ・・・おっさんに何か用か?」


ロックはリングから降り、カスパールにガンを飛ばした。しかし、カスパールはそれにビクともしない。


「ファウストの正体が、ルーク・エイマーズ氏だということは知っている。そして、お前らのこともな。ロック・オルグレンに、バルトロ・アゴスティーニだな。」

「俺達のことも知ってやがんのか・・・!!」


バルトロは自分の正体が知られていることに驚いている。しかし、ロックはそれに怖じ気づかず、まだカスパールにガンを飛ばす。


「・・・なんでもいいけどよぉ・・・顔ぐらい見せろよな、コスプレ野郎。」


ロックはカスパールがロボットだとは分からず、コスプレをしていると思っていた。


「お前らが言えたことか?悪いが、これはコスプレでは・・・・ないッ!!」


その瞬間、カスパールは拳を突き出した。ロックはそれに気づいて後ろに下がってよけようとした。だが、カスパールの拳は逃げるロックを感知したのか、手首が20cmほど伸び、拳がロックに直撃し、ロックは殴り飛ばされた。


「がっ・・・・!!」


ロックは喰らう直前に肌を鋼鉄化させたが、それでも高速で繰り出されてカスパールの伸び縮みする拳はかなり威力だった。


「てめぇ、身体が機械でできてんのか・・・・なら、俺には好都合だ!」


バルトロはニヤリと笑うと、自分の両手に紫色の火花を発現させ、「磁力操作」のアーツでカスパールを引き寄せた。


(このまま投げ飛ばして・・・・!!)


バルトロはそのままカスパールを捕まえ、投げ飛ばそうと目論んだ。だが、カスパールは読んでいた。手首からビームブレードを起動させ、バルトロの左手を斬り飛ばした。


「・・・・!!」

「バ、バルトロのおっさん!!」


バルトロが呆然と斬られた自分の左手を見ていると、カスパールに首を掴まれ、逆に投げ飛ばされ、壁に叩きつけられた。


「がはっ!!」

「『鋼鉄化』に『磁力操作』・・・・俺に対抗できうるアーツだから、どんなものかと思ったが・・・・とんだ期待外れだな。」

「・・・ッ!!」


ロックはカスパールの一言に怒りを覚えた。やられたことに怒ったのはなく、ヒーローである自分とバルトロが舐められたことに腹を立てたのだ。


「この・・・・!!ブリキ野郎がァァァァァッ!!!」


ロックは後ろからラリアットを繰り出し、さらにそこからカスパールの頭部を掴んで床に叩きつける。何度も、何度も、何度も・・・・!


「これで終わるかよてめぇ!!」


ロックはそう言うと、肌を硬質化させ、カスパールの上に馬乗りになる。そこからタコ殴りにしようと拳を繰り出す。だが、その瞬間、カスパールの胸の装甲が開いた。するとそこから、多数の銃口が飛び出した。


「!!」


ロックが驚いた瞬間、銃声が鳴り響いた。カスパールの胸の弾丸が一斉に放たれたのだ。


「かっ・・・あっ・・・・!!」


ロックは肌を硬質化してはいたが、超至近距離であったため、弾丸は硬質化された肌を突き破っていた。しかし、弾はロックの皮膚の表面で止まった。


「うっ・・・!!」


ロックは後ろに倒れた。防いだとはいえ、衝撃によるダメージは大きかったようだ。


「不用意に近づきすぎだ。」

「て、てめぇ・・・・!名前はなんだ・・・!?」

「カスパール。この場で貴様らを殺してもいいが・・・・それでは"アイツ"は満足しない・・・・今日はこれで失礼する。」


カスパールはそう言うと、その場からゆっくりと立ち去って行く。


「~~~~~ッ!!ウオオオオオオオオオオッ!!」


ロックは悔しそうに顔を天井に向けたまま叫んだ。



ロックとバルトロがスパーリングを始めた時と同時刻・・・・私を含めた他のメンバーにも接触する影があった・・・・


一人目・・・・


「父さん、お久しぶりです。」

「おう、元気にしてたか?ロバート。」


ロバートはこの日、自分が住むアパートに父親が来ていた。ロバートは日本茶を父親に出し、座布団を敷いて正座する。


「どうだ、精進してるか。」

「はい!もちろんです!実家を離れてからも欠かさず修行を積んでおります!」

「はっはっはっ、そうかそうか。ところで・・・・孫の顔はいつ見せてくれるんだ?」


父親がそう言った瞬間、ロバートは啜っていたお茶を勢いよく吹き出した。


「な、何をおっしゃるんですか!?」

「母さんが孫の顔を見たがってるぞ。俺としても、お前に次ぐ雷同流の後継者が欲しいところだからな。」

「と、当分その予定はありませんから!」


ロバートがそう言ったその時、部屋のインターフォンが鳴り響いた。


「だ、誰だろ・・・・父さん、ちょっと失礼。」


ロバートは一言断ってから席を立ち、玄関のドアを開けた。


「はーい・・・・って、リンさん!?」


ロバートの部屋に尋ねてきたのは、リンだった。


「元気?」

「な、なんでリンさんが・・・・?」


ロバートがそう尋ねると、リンはムッとした表情を見せ、ズカズカとロバートに近寄っていく。


「ちょっ、ちょっと!近いですよ!?」

「人にご飯作らせておいて、その言い草はないんじゃないの?」

「ご、ご飯・・・・?」


リンは鞄に中からナプキンにくるまれた手作りの料理を突き出した。


「アンタ、この前みんなでご飯食べた時、『リンさんの料理っておいしいなぁ~、こんな料理が毎日食べられたら幸せだろうな~』って言ってこっちのこと、チラチラ見てたでしょ!」


リンに言われ、ロバートはその時のことを思い出して顔を赤く染めた。


「そ、そうでしたっけ・・・?」

「そうよ!」

「はっはっはっ、なんだ、彼女いるじゃねぇか!」


ロバートとリンのやりとりを見て、ロバートの父は笑った。


「はあ?」

「ち、違いますよ父さん!この人はただの友達です!」

「お父さん・・・・?この人が、ロバートのお父さん?」

「え、ええ・・・」

「申し遅れました・・・・私はロバートの父、雷同安慈と申します。」


ロバートの父、安慈さんはリンの方へ正座をし、挨拶をした。

安慈というその人は、爽やかなロバートとは似ても似つかないごつい体格の男だった。空手家らしいといえば空手家らしい体格だが。


「ど、どうも・・・・」


安慈さんにつられ、リンも正座した。


「リン・チ・チャンと申します。流派は龍北青拳です。」

「龍北青拳・・・・!まさかこんなところで、再びその名前を聞くとは・・・・!!」


安慈さんはリンの流派を聞いて驚いているようだ。


「父さん、知っているのですか?」

「おうよ!若い時、その使い手と戦ったことがある。龍北青拳は龍の如き強き拳と、美しくしなやかな動きが特徴の中国拳法の一派だ。俺でも苦戦したぐらいだ。」

「父さんが苦戦するほど・・・・そんなすごい拳法を使っていたんですか、リンさん。」

「って言われても困るけど・・・・」

「さーて、ここでくっちゃべるのも何だし・・・・ロバート、少し稽古付けてやる。」

「はい!」


安慈さんはそう言いながら、その場を立ち上がり、ロバートにそれに続いて立ち上がる。


「あれ?安慈さん、その足・・・・」


その時、リンは安慈さんの左足に違和感があることに気づいた。安慈さんの左足をよく見てみると、銀色だった。比喩表現ではなく、本当に銀色なのだ。まるで機械のような・・・・


「ああ、これか・・・・」


安慈さんはズボンの裾をめくり、その足を見せた。


「こいつは義足だ・・・」


なんと、安慈さんの左足は義足だった。


「義足・・・?どうして義足に?」

「あれは・・・・俺がまだ若かったころだ。まだロバートが生まれて間もないころ・・・俺は一人の男と戦った。そいつは最強と謳われた剣豪だった。俺は『空手と剣術、どっちが強いか確かめたい』って気持ちでそいつに挑んだ・・・・が、結果はこのザマだ。確か、仮面を付けた男だったな・・・・」

「仮面・・・・」


「仮面の男」・・・リンはそれを聞いて、頭の中に過去の映像が流れた。5年前、リンの家族を殺したのも仮面を付けた男だった。


「確か・・・宗方宗次って言ってたな・・・・今は逮捕されてムショで生活しているらしいが・・・・」


と、その時、またしても部屋のインターフォンが鳴り響いた。


「?・・・今日は客が多いな・・・・」


ロバートは再び玄関へ向かい、扉を開けた。すると、そこには巨大な男が立っていた。


「だ、誰ですか、あなたは・・・・?」

「ここに、雷同安磁がいると聞いた・・・・」


男はそう言うと、ズカズカと部屋に入った。


「お、おい!」


その男はサムライ風の鎧に、仮面を付けた屈強な身体と高い身長を持った男だった。


「!!」


リンはその男を見た瞬間、背筋が凍った。


(サムライの・・・仮面・・・!!)


リンの脳内に再度過去の映像が流れた。それは事件の目撃者が、警察に証言をしている場面だった。「リンの家族を殺した男は、サムライ風の仮面を付けた屈強な男だった」・・・・

それに当てはまる男が、目の前に現れた!


「まさか・・・こいつが・・・・!?」

「よぉ・・・久々じゃねぇか。宗次・・・まさか出所してるとは思わなかったぜ。」

「・・・老いたな、安慈。あの時とは大違いだ。あの時にトドメをさしておけばよかった・・・」

「はははっ!言ってくれるじゃねぇか!どうだい、立ち合ってみるか?久々に・・・・」

「・・・・ククククッ・・・!」


その時、安慈さんの申し出に、宗次は笑った。


「武道家って奴ぁ・・・・とろけそうなほど甘い・・・・!立ち合いたいというのなら、黙って仕掛ければいい。このようにッ!!」


宗次はその一言を言った瞬間、腰に下げた刀に手を触れた。

その行動に、安慈さんは身構えた。


(刀を抜くか!?それとも刀は囮か!?)


安慈さんは 次に来る行動を予測し、対応しおうと、反撃の体勢を建てる。だが・・・・次の瞬間、宗次は安慈さんでも予想してなかった行動に移った。

それは、刀の鞘を持った状態で勢いよく前に突き出したのだ。さらにそのまま刀の鍔を指で弾く。弾かれた勢いによって、刀は自動的に鞘から抜かれ、大砲のように発射される。


(なにッ!?鞘を砲台に・・・・!!?)


安慈さんはこれに対応できず、勢いよく飛んで来た刀の柄を思い切り喰らってしまった。刀の柄といえど、勢いよく放たれれば、威力はある。

安慈さんはこれを喰らい、その場に倒れてしまう。安慈さんに衝突した刀は宙を舞った。それを、宗次はキャッチし、安慈さんを踏みつけ、刀の切っ先を向ける。


「・・・・!!」

「二度目の敗北だ。・・・腕もなまったか、安慈・・・・」


宗次は安慈さんを睨みつけたかと思うと、刀を鞘に収めた。


「今のお前では・・・この俺を敗北させることはできない・・・・!!」


宗次はそう言うと、その場から立ち去ろうとした。


「待ちなさい!」

「?」


リンの叫びに、宗次は振り向いた。


「あなたに一つ聞きたいことがあるわ。5年前・・・・ベトナムの食堂で、ある一家を殺したことは覚えてる?」

「ベトナム・・・・もう500人以上は殺したから、あまり覚えてはいないが・・・・確かいたな、そんな奴ら。」

「・・・・ッ!!」

「もういいだろう。俺は失礼する・・・・」


宗次はそう言うと、ロバートの部屋から立ち去った。


「父さん!」


ロバートは安慈さんの元へ駆け寄った。


「大丈夫ですか?!」

「ああ、大丈夫だ・・・・しかし、宗次の奴、刑務所にいたのに腕がなまっちゃいねぇ・・・!」

「あれが父さんの足を斬った男・・・・!」


ロバートと安慈さんが話している中、リンは低い声で笑い始めた。


「フフフッ・・・やっと、見つけた・・・・!!」


先ほど宗次が言った「確かいたな、そんな奴ら」・・・・リンにとって、この一言だけで充分だった。その一言が、家族を殺した張本人だという証拠になる。

リンは両親の仇に出会えたことに喜びを覚え、ニヤリと笑いながら拳を握った。



二人目・・・


「う~ん、実にいい天気だねぇ。これも、君みたいなカワイイ子とデートしてるおかげかな?」

「もう!ルイスったら、口が上手なんだから!」


ルイスはカワイイ女の子とのデートを楽しんでいた。そのデートの途中、自然公園を女の子と歩いていた。


「いやいや、嘘じゃないよ。だって君みたいなカワイイ子を放っておくなんて・・・・絶対できないもの。」


ルイスはそう言って、優しい笑みで微笑むと、女の子に顎にそっと触れた。


「ああ・・・ルイス~~!」


ルイスのその行為にときめいた女の子はルイスの腕にしがみついた。さすがはルイス・・・生まれつきの美形も手伝って、女の子の扱いに慣れている・・・・


「ハハハッ、じゃこれから二人っきりになれる場所に行こうか。」

「二人っきりに・・・?」


すると、ルイスは女の子の耳元に口を近づけ、耳打ちを始めた。


「そっ!二人だけで・・・・楽しいことを・・・ねっ♪」


ルイスは蕩けてしまいそうな甘い声で女の子をさらにときめかせた。


「ルイス・・・行くっ♪」

「フフッ、今日は寝かさないよ。」

「寝たくな~い!」


ルイスと女の子はイチャつきながら、自然公園の道を歩く。すると、ベンチのある通りにさしかかった。ベンチにはルークと同じくらいの細身の男が新聞を読んで座っていた。ルークはそれを気にせず、ベンチの前を通り過ぎようとした。


「!!」


その時、ルイスは殺気を感じた。


「伏せて!!」

「キャッ!!」


ルイスは女の子の頭を掴み、自分と一緒に地面に伏せさせた。

それと同時に、新聞を読んでいた男が、新聞を投げ捨て、懐から手裏剣を取り出し投げつける。

ルイスは寸前のところで伏せた為、手裏剣はルイスには当たらず、向こう側の木に突き刺さった。


「な、なに!?今の・・・・!!?」

「・・・早く逃げて!」

「えっ?」

「早く逃げろ!!」


ルイスは怒鳴り声を上げ、女の子を逃げさせた。


そして、ルイスは立ち上がり、手裏剣を投げてきたその男と対峙する。

その男は、忍者のような服に身を包み、その上に小さいながらも鎧を身に着けている。さらに顔が見えないように、頭には兜を、口元には布を付けている。


「ちょっとちょっと・・・・デートの邪魔してなんのつもり?そんな忍者のコスプレまでして。」

「コスプレではない。忍者だ。」


男のその一言に、ルイスは面を喰らい、ポカンと口を開けた。


「プッ、ハハハハハハッ!!驚いた!この世には超おバカな人がいるんだね!OK、名前聞いて上げるよ。せめてもの情けで。」

「・・・甲賀。」

「コウガァ?随分変な名前だねぇ、この辺の人じゃないってことは確かだけど・・・・悪いけど、デートの邪魔をされた以上・・・・アンタを許すわけにはいかないな!!」


ルイスは啖呵を切り、甲賀に近づいて蹴りを繰り出す。

しかし、甲賀はこれを片手だけで防いだ。


「!!」


ルイスはそれに驚きながらも、続けて下段、上段、中段へと続けざまに攻撃する。だが、攻撃は全て防がれてしまう。しかも片手で・・・・


「ッ!!僕を・・・・舐めんなァァァァァァァ!!」


ルイスは跳び上がり、甲賀の顔面に向かって回し蹴りを繰り出す。しかし、甲賀はこれを上半身を後ろにそらしてかわす。


(これは予測通り・・・!)


ルイスは回転した反動を利用し、さらに後ろ回し蹴りを繰り出す。だが、甲賀をこれも読んでいた。片手で蹴りを防ぐ。


(バカが・・・!律儀に防ぐからだ!!これは僕らしくないけど・・・・頭突きだ!!)


ルイスはそのまま頭突きをかまそうと、頭を突き出した。だが、甲賀はこれをも読んでいた。

次の瞬間、ルイスの腹部に強い衝撃が走った。


「がっ・・・・!!」


甲賀はルイスの腹に鋭い掌底を叩き込んだ。腹をえぐられるような痛みを受けながら、ルイスは吹き飛ばされ、距離を離された。


「こ・・・の・・・・!!どうなっても知らないからな!!」


ルイスは怒りを露わにし、両手に炎を宿す。


「フレイム!」


そして、その炎を甲賀に向けて飛ばす。


「さらに、スプラッシュ!!」


続けて両手から凄まじい水流を放つ。


「ボルテクス!!」


続けて突風。


「グランド!!」


最後に地面を叩いて甲賀に無数の岩をぶつける。


「僕の奥の手・・・・『エレメントフォース』だ!これ喰らって生きてた奴は・・・・!?」


ルイスは、自分の奥の手を出し、甲賀を倒せただろうとタカをくくっていた。だが、次の瞬間、その気持ちは急速に沈んでいった。


「なるほど・・・・似ているな。俺の術と・・・・」


なんと、甲賀は無傷だった。ひるんでなければ、焦っている様子もない。


「な、なんで・・・・!?」


これには流石にルイスも焦りを見せ始めた。


「修羅忍法、幻影防壁陣!忍術によって自分自身の影を操作し、壁を形成し、それを使って防御した。」


甲賀はそう言うと、自分の影を動かして花や動物といった形を作ってみせた。


「に、忍術・・・・!?」

「"スポンサー"から・・・・変幻自在の攻撃を繰り出す者がいると聞いて来たが・・・・所詮、ガキはガキか。」

「ッ!!」


甲賀はルイスを罵倒すると同時に、その場から立ち去って行く。ルイスは追いかけることが出来なかった。追いかけたところで、今の自分では奴には勝てない・・・・そう確信していた。


「うおおおおおおおおおっ!!!」


ルイスは叫んだ。自分自身の弱さ、相手との格差、その悔しさの全てに対して叫んだ。



3人目・・・・


「とうとう、見つけた・・・・ゲイン・・・・!」


ジャッジは写真を片手に影に隠れながら、ある人物を監視していた。その人物はゲイン・・・・宗次、甲賀と同じく、刑務所を脱走した死刑囚の一人だ。

ジャッジはゲインに対して、どうやら因縁があるらしい。


「動きなし・・・か。」


ゲインはビジネスホテルの一室に泊まり、ジャッジはそれを隣のビルの屋上から監視していた。ゲインの部屋の窓はカーテンをして中が見えなくなっている。が、ジャッジはそれを見越して熱源を探知するセンサーを搭載したバイザーを装着していた。これがあれば、中の様子が見えなくても、監視が可能になる。


「必ずブッ殺してやる・・・・!じわじわと、ゆっくり、ねぶるように・・・・生まれたことを後悔するぐらい・・・!」


ジャッジはブツブツと小言を呟きながら部屋を監視する。だが、この時、ジャッジは気がつかなかった。監視に集中しているせいか、はたまた気配がなかったのか、背後から近づく者がいることに・・・・


「だ~れを殺すって?」

それは、ゲインだった。


「!!」


ジャッジは背後から近づいたゲインに気付き振り向いた。ゲインとの距離はかなり近く、相手の肩に届くぐらいの距離に近づかれていた。


「チッ!!」


ジャッジは先手必勝とばかりに蹴りを繰り出すも、ゲインは後ろに跳んでそれをよけた。


「っと・・・・おいおい、心外じゃないの。俺のこと監視してたみたいだから挨拶しようと思ったのに・・・・わざわざ熱源センサーまで使って♪」


ゲインの口ぶりから、監視には前々から気づいていたのか?と、ジャッジは予測した。


「・・・いつから気づいてた?」

「空港に着いた時。ホテルに着くまでお前、俺にストーキングしてきたろ?ヒヒッ、俺でなきゃ気づかないね♪ヒヒヒ・・・」


ゲインの口調に多少の怒りを感じながらも、ジャッジは気持ちを落ち着かせ、ゆっくりと口を開く。


「・・・そうかい、筒抜けだったってことか。だが、どうやって監視の目をすり抜けた?確かにお前は一回部屋から出たみたいだが・・・・」

「ヒヒッ、買い物から帰って来た後、他の部屋の奴を一人脅して俺の部屋に移動させたのさ。そうすりゃ、お前は俺が部屋から帰って来たと勘違いするだろうからな。」

「なるほどね・・・・勉強ンなったよ。」

「それよりホラ・・・・」


すると、ゲインは手に下げたスーパーのビニール袋から、オニギリを取り出した。


「日本産のオニギリ。近所のスーパーマーケットにあったんだ・・・・温めてもらったから、まだ温かいぜ。」


ゲインはそう言うと、まだ温かいオニギリのパッケージを開け、ジャッジに差し出した。


「・・・どーも。腹が減ってたからちょうどいい・・・・なっ!!」


ジャッジはオニギリに手を伸ばすフリをして靴のカカトに仕込まれたワイヤーで縛り付けようと、足を振り上げる。


だが・・・

「おいおい・・・」

足が振り上がる直前、ゲインは片手で足を受け止めた。


「!!」

「人の親切はありがた~く受け取るものだぜぇ?さぁ、冷めない内にッ!!」


ゲインはニヤリと笑うと、ジャッジの顔面目掛けてオニギリを叩きつけた。


「ほ~ら、よ~く味わって~♪」


ジャッジはマスクを被っているため口には入らず、無理矢理押しつけられたオニギリは潰れて原型をなくし、ご飯粒がポロポロとコンクリートの床に落ちていく。


「~~~~ッ!!野郎ッ!!」


ジャッジは内ポケットから拳銃を抜くと同時にゲインの腕を振り払った。そして、拳銃を構える・・・が、ゲインの姿が消えていた。


「じゃーなマスクメーン!!ウヒャハハハハハハハハハハ・・・・・!!!」


屋上の向こう側からゲインの声が聞こえる。向こう側から屋上の下をのぞき込むが、下には誰もいない。

恐らく、ゲインはここから飛び降りたのだろうと、ジャッジは予測した。そして、それと同時にジャッジの心に深い怒りが燃えだした。あの時、殺せるチャンスがあったのに殺せなかったことへの、己の未熟さ・・・ジャッジはそれをしかと噛み締めた。



そして、最後の一人・・・・


「フゥ、警察長も大げさだな。戦争だなんて・・・・いくら相手が強くても、戦争なんて起こるもんか。」


私は路地裏に入って、誰にも見られないように変身を解き、帰路に入った。


「パパーーーー!!」

と、前方から娘のメアリが走ってきて、私に飛びついて来た。


「おっと・・・!」


私はよろめきながらもメアリを抱き止め、下に降ろす。


「メアリ、どうしたんだ?」

「もう終わったかな~って思って迎えに来ちゃった。」

「ハハハッ、ありがとう。じゃあ一緒に帰るか。」

「うん!」


メアリは笑顔でコクリと頷くと、私に一緒に帰路についた。

その道中、メフィストが声をかけてきた。


『おい、ルーク!』

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」


私は慌ててポケットからケータイを取り出し耳に当てた。


「急に声をかけないでくれ。カモフラージュも大変なんだから・・・・」


私が変身していない時にメフィストと話す時は、壊れたケータイを耳に当てて話しているのだ。じゃないと独り言してる変な奴だって思われるからな。


『そんなことより、今日の飯は大盛パスタなんだろうな?』

「あー・・・・まぁ、大盛ではないけど、作って上げるよ。好きな奴。」

『大盛じゃないのか・・・・まぁいい。それじゃあカルボナーラにボンゴレとイカスミとミートソースとそれに・・・・』

「多いわ!最低でも2つにしろ!」

『イヤだ!それじゃ足りない!』


私とメフィストは口喧嘩の一歩手前まで言い争い始めた。すると、隣にいたメアリはクスクスと笑い始めた。


「ん?どうした、メアリ?」

「ううん、なんでもない。ただ・・・こんな日がずっと続けばいいなって思っただけ。」


メアリはそう言うと、優しく微笑んだ。それを見て、私も思わず微笑んだ。


「・・・・ああ、そうだな。」


私はそう言って、メアリの頭を撫でた。正直言うと、私もメアリと同じ気持ちだった。

この先、みんなとずっと一緒にいられるのなら、どんなに幸せか・・・・だが、いつかは別れの日が来るのかもしれない。

例えばリン・・・あの子の復讐が終わったら、私達の元を去るかもしれない。それにメフィストも・・・・だからこそ、今はこの幸せを噛み締める必要がある。そして、その日に備えて覚悟をしておかなければ・・・・


「!」


その時、私の視界が遮られた。目を瞑っているわけでも、その場に倒れたわけでもない。目の前に誰かが立ったのだ。私は上を見上げ、その人の顔を見た。

その男は、185cmの私の身長を軽々と超えるほどの高い身長と、私よりも屈強で鍛え抜かれた筋肉を持つ巨漢で、黒いマントと角の生えた兜を被っていた。


どこかで聞いたことがある?それは当然だろう。なぜならこいつは・・・・さっき警察長から聞いた、5人の内の一人・・・王牙だからだ。


そして私は、知ることになる。王牙・・・最強と呼ばれた男と私の、実力の差を・・・



敗北らしい敗北をしていなかったルーク達の敗北・・・いかがだったでしょうか?まぁ、リンは戦ってませんでしたが・・・(笑)


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