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ファウスト ~FIRST HEROS~  作者: 地理山計一郎
第3章「因縁の好敵手編」
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第19話「新の敵!」

今回から第3章が始まります!スポンサーも出てきて、本格的に物語りが動き始めます!

やぁ、私はファウストこと、ルーク・エイマーズだ!今日の私達は・・・というより、私はある会社を訪れていた。


その会社の名は、「ギルバート・インダストリー」という名だ。この会社は近年、ロボット産業に力を入れている会社だ。しかも機械産業においてアメリカの中でもトップの業績を持っている。なぜ、私がここを訪れているかというと・・・・ついこないだ、ラリー刑事に1枚の写真を渡されたのがきっかけだ。


写真には結構前に私達が解決した銀行強盗事件で、強盗犯が使ったロボット「デストロイドα」の残骸の写真だった。ラリー刑事が言うには、デストロイドαに使われた装甲に「ギルバート・インダストリー」のロゴが入っているらしい。確かに写真をよく見てみると、会社のロゴが入っている。ラリー刑事、もしかしたらこの会社が"スポンサー"にロボットを売り、さらにそれを強盗犯に売った・・・・という推理をしているらしい。


私は「まさか」と思いながらも、その真意を確かめるべく、会社の社長ギルバート氏にアポを取り、ここを訪れたのだ。


「あのー、社長とアポを取りました、ファウストというものですが・・・・」


私はヒーローコスチュームで会社を訪れている。私は受付の女性に声をかけ、ギルバート氏に掛け合ってもらった。


「おまたせしました・・・では、社長室までご案内します。」


受付の女性はギルバート氏への連絡を終えると、私を社長室へ案内した。

社長室は20階建てビルの最上階。受付嬢は社長室のドアの前に立つと、コンコン、とドアをノックした。


「失礼致します。」


ノックした後、受付嬢はドアを開けて中に入る。私もそれに続いて中に入る。社長室には既にギルバート氏がフカフカしてそうな椅子に座っていた。


「社長、ファウスト氏がいらっしゃいました。」

「ど、どうも・・・・ファウストです。」


私はギルバート氏の前でたどたどしく挨拶をした。


すると、ギルバート氏はニコッと笑い・・・・

「あなたがファウストですか!まさか本物に出会えるなんて・・・・感激です!」

ギルバート氏はニコニコ笑いながら私に詰め寄り、私の手を両手で握った。


「わ、私のことを知っているんですか?」

「何を言っているんですか!私はあなたの大ファン!知ってて当然!それに、今やニューヨークで1番の有名人ですよ!」

「そ、そうなんですか・・・・」


私はギルバート氏の賞賛の声に照れくささを感じた。


「さっ、どうぞこちらへ!」

「ど、どうも・・・・」


私はギルバート氏の言われるがまま、ギルバート氏の向かい側の椅子に座った。


「君、下がっていいよ。」

「はい、では失礼します。」

「・・・・さて、今日のご用件は・・・・?」


受付嬢が部屋を出たのを見計らい、ギルバート氏は本題に入った。


「実は・・・・この写真のことなのですが・・・・」


私はギルバート氏に例の写真を見せた。といってもコピーだが。


「これは・・・・前の銀行強盗事件の・・・・」

「ええ、あのロボットの残骸です。そのロボットの装甲に、この会社のロゴが入っているんです。」

「・・・確かに・・・」


ギルバート氏は写真に映る会社のロゴを見つけ、低い唸り声のような声で呟いた。


「・・・・あの、こんなことは言いたくないんですが・・・・まさかと思うのですが・・・・その・・・・」


私は「犯罪者に兵器を売っているのではないか?」と言いそうになったが、流石にそれは相手に失礼だと思ったのと、ギルバート氏の行いを信じ、言うのためらった。


実はこのギルバート氏は、慈善家で有名であり、恵まれない子ども達や紛争で苦しむ人々への募金やチャリティー活動を中心に行っている。それと、この会社では銃火器といった兵器を開発してはいるが、それはあくまでも国の自衛の為だと言い切っており、他の国への侵略行為など眼中にないといった印象を受ける。


そんな人が犯罪者に兵器を売るわけがない・・・・私はそう思っていたのだ。


「我が社が犯罪者に兵器を売っている・・・と?」

すると、ギルバート氏は静かに呟いた。


「そ、それは・・・・」


私はギルバート氏の一言に戸惑った。ここで「はい」なんて言ったら失礼になるだろうし、「いいえ」と言っても疑われるだろう。

すると、ギルバート氏はキリッとした表情を見せ、私の顔を見つめた。


「ファウストさん・・・・私は、私はこのニューヨークを、アメリカという国全てを愛しているのです!」

「ッ!!」

「確かに、我が社は兵器を開発し、世間に公表してきました。ですが、それはこの美しいアメリカを守るためのものです!決して犯罪者の為のものではありません!」


ギルバート氏のその一言は、真剣な表情も相まって、私の心の奥まで響いた。

なんということだ・・・・まだ若いのに、こんな心根を持つ人がいるなんて・・・・


「・・・・感動しました!」


私は思わず涙を流し、ギルバート氏に拍手を送った。


「なんという愛国心・・・!!疑ってしまった私が恥ずかしい!申し訳ありません!私の鈍計でした!」

「それを言うなら早計です。」

「とにかく!私はあなたを信じます!これからも、アメリカの為に頑張ってください!」


私は涙ぐみながら、ギルバート氏と握手しようと手を差し出した。


「はい!もちろんです!」


ギルバート氏は私と握手を交わした。


「それでは、失礼致しました!!ごきげんよう!!」


その後、私は高らかに声を上げ、社長室を出て、会社を後にした。

ギルバート氏は悪い人間じゃなかった!ラリー刑事の考えすぎだったんだ!

私は安心感を持って家へと向かった。



だが、そのころ・・・・


「・・・・フン!バカな男だ・・・あんな戯言に騙されるとは。」


私が会社から立ち去った後、ギルバート氏は私のことを嘲笑っていた。あの演技は嘘だったんだ・・・・


「しかし・・・あいつの力は強大だぜ?しばらくは演技を続けていた方がいい。」


そこに、一人の男の声が響いた。


「・・・スポンサー、いつからそこにいた?」

「あいつが来る前からですよ、社長。そう怖い顔しなさんな!」


スポンサーと呼ばれた男は、見た目は紳士服を着て、顎に短い髭に短髪の一見紳士的な感じの男という印象だが、言動は全くの逆で、芝居がかったような口ぶりだ。


「『デストロイドα』の試作機に、我が社の装甲を使ったようだな。試作に我が社のものはあまり使うなと言ったはずだ。金がかかる。」

「そう言うなって!試作機だからこそだろ?いい物を作るには、いい材料を使う!そのためには金は惜しまない!それこそ物作りや研究の醍醐味だろ~?」

「知らんな。お前はただちに『デストロイド』の完成を急げ。」

「はーいはい。ロマンを理解してくれないのは、辛いものだね~・・・・それじゃ、チャオ♪」


スポンサーは芝居がかった言葉を吐きながら、その場を立ち去った。



私は、ギルバート氏とスポンサーが密会しているとも知らずに、家に帰宅した。


「ただいまー!」

「あっ、パパおかえりー。なんかご機嫌だね。」

「そうとも!」

「わわっ!」


私は変身を解いてメアリを抱き上げた。


「ギルバートさんは悪い人じゃなかったぞ!この国を愛するいい人だったぞ!ラリー刑事の考えすぎだ!愛国者バンザーイ!!はははははは・・・・!!」


私は笑い声を上げながらメアリを抱きしめながらクルクルと何回も回転した。


「う~っ、パ、パパ・・・・目が・・・回る・・・!」

「あっ、スマンスマン!」


私は目を回してしまったメアリを気遣い床に降ろすと、それと同時にメフィストがメアリを抱きしめた。


『ううっ・・・・私はルークの思想自体が気持ち悪い・・・・!』

「失敬な!」

「メフィスト、大丈夫?」

『なんとかな・・・・あー、それにしても温い。このまま寝たい。』


メフィストはそう言うと、メアリを離さないようにギュッと抱きしめる。


「もう!私は抱き枕じゃないよ?」

『貴様が言えたことか!今まで散々抱き枕にされたからな・・・・お返しだ!』


メフィストはただでさえ抱きついて距離が近いのにも関わらず、メアリの顔に自分の顔を近づてくっつけた。


「メフィストったら・・・・甘えん坊さんだね♪よしよし。」


メアリもメアリで、メフィストをペットをあやすかのように頭を撫でる。


サガナスとの一件以来、メフィストは変わった。私はみんなのことを名前で呼ぶようになったし、食べ物に関する文句も少なくなり、癇癪を起こすこともほとんどなくなった。

それと一番変わったところは・・・・メアリの側に自分から寄るようになったことだ。あの後、私はメアリから聞いたのだが、メフィストはアレクシアという女の子を目の前で失い、そのせいで人間を嫌うようになったらしい。もしかしたら、メフィストはメアリとアレクシアを重ねているのかもしれない。


とにもかくにも、相棒が変わってくれて、私としては嬉しいが・・・・


(私は今、何を見せられているんだろうか・・・・)


私はじゃれ合っている二人を見て、複雑な気持ちに駆られた。私の娘は、悪魔とはいえ男とじゃれ合ってイチャついている・・・・しかし、相棒のメフィストは成長し、人間に寄り添うようにはなった。これは父親として怒るべきか・・・・相棒の成長を喜ぶべきか・・・・

と、その時、下の階からロック達が上がって来た。


「あっ、おじさん帰って来てる。おかえりー」

「あっ!てめぇなんでメアリにくっついてんだよ!?」


ロックは怒鳴り声を上げてメフィストに詰め寄る。


『うるさい、私は眠いんだ。寝かせろ。』

「だったら自分で勝手に寝ればいいだろうが!!とにかく離れろ!!」


ロックはメフィストをメアリから引きはがそうと無理矢理引っ張り始めた。


『イ・ヤ・ダ!!私はここがいいんだ!!』


メフィストも、意地でも引きはがされまいと、メアリにしがみついた。


「コラ!二人ともやめなさい!メフィスト!年長者なんだから大人しくしなさい!」

『知らん!歳が関係するなら、私はすでに隠居のジジイだ!!』

「屁理屈こねるな!」


私はなんとか二人を説得しようとしたが、二人は依然として止める気配はない。

すると、メフィストにしがみつかれているメアリは、フッとため息をつき・・・・


「もう、しょうがないなぁ・・・・メフィスト!ワガママ言ってたら、もうパスタ作ってあげないよ?」

『なに!?』


メフィストは驚いた瞬間、メアリの体から手を離した。

「うおっ!?」

メフィストが手を離した瞬間、ロックは引っ張られた反動で後ろに転んだ。


『パ、パスタを盾にするとは卑怯だぞ!』

「どの口が言う。」

「あっ、そうだ。ルーク、さっきラリー刑事から連絡があったわよ。」

と、リンが私に言ってきた。


「ラリー刑事が?ギルバート氏の件か?」

「いや、違うみたい。なんか、ニューヨーク市警の警察長が、あなたに会いたいらしいわ。」

「私に・・・?とにかく行ってみるか。メフィスト、行くぞ!」


私はそう言って、メフィストの上半身に繋がっている下半身の代わりの尻尾(?)を引っ張った。


『ま、またか!また私に貴様の気持ち悪い思想を聞かせるつもりか!』

「今日大盛パスタ作ってあげるから。」

『よし、行くか。』


私の一言に、メフィストは抵抗を止め、スーツに変化して私に纏わせた。・・・なんというチョロさだ。


その後、私はニューヨーク市警にたどり着いた。入口の前ではラリー刑事が立っていた。


「ラリー刑事!」

「おう、悪いな。わざわざ来てくれて。」


ラリー刑事は私と喋りながら入口のドアを開け、中へ入る。私もそれに続く。


「いえ・・・・それにしても、警察長さんがなぜ私を・・・?」

「こっちが聞きたいね。お前なんかやったんじゃないのか?」

「そんな!私はそんなことしてないですよ!まぁ、若い時は警察の世話にはなりましたが・・・・」


私はラリー刑事と会話をしながら廊下を歩く。その間、私はなぜ警察長に呼ばれたのかを考えた。警察長といえば、警察の中でもトップの階級を持つ者だ。そんな人が私を呼ぶ理由は・・・・私達の今までの活躍を評して感謝状とか・・・・?考えれるのはそれぐらいだが・・・・


「着いたぞ。」


ラリー刑事の一言に、私は我に返った。私は警察長室の前にたどり着いていた。

ラリー刑事はドアをノックする。


「失礼します。」

ドアを開け、中へ入る。


「警察長、ファウスト氏をお呼びしました。」

「うむ、ごくろう。」


警察長はどっしりと構えながらソファに座っている。白髪にシワの多い顔が威厳を漂わせる。


「ラリー君、少し席を外してくれ。」

「はい。」


ラリー刑事は部屋を後にし、私は警察長の前のソファに腰掛ける。


「どうも・・・・ファウストです。」

「ニューヨーク市警、警察庁のガントだ。君達の活躍は聞いている。ニューヨーク中が君達の噂で持ちきりだよ。犯罪者にも恐れず立ち向かい、人々を救う・・・・まさしくヒーローだ!」

「い、いや~」


私は褒められて照れくさくなり、頭を掻いた。


「ところで、話は変わるが・・・・これを見て欲しい。」


ガント警察長はそう言うと、目の前にテーブルに5枚の新聞を広げた。


「?」

「これと・・・・これに、これ、これ、この記事。」


ガント警察長は5枚の新聞に載っているとある記事を指差した。その内の3枚には「死刑囚脱走」、残りの2枚には「イラクの武装集団、壊滅」と書かれていた。


「・・・物騒な記事ですね。」

「注目すべきはそこじゃない。この5件の事件は、全て2年前に起きている。」

「2年前?」

「そう、この事件はなぜかきっかり2年前に連続して起きている。それだけでも奇妙だが・・・・政府が送った潜入捜査官の話では、脱走した死刑囚3名と、武装集団を壊滅させた2名が、手を組んだという情報が入った。・・・・これがどういうことかわかるか?」

「はぁ・・・・」


私はあまりのスケールの違いにポカンと口を開けていた。銀行強盗や窃盗、バスジャックなどは頻繁に起こりやすいから、それほど驚きはしないが・・・・死刑囚脱走や武装集団壊滅となると、スケールが違う。強盗や窃盗がチャチに思えるぐらいだ。

ガント警察長はポカンとしている私をよそに、話を続けた。


「・・・・ここ数日中に、とんでもない奴らがここニューヨークに上陸する!今から、その5名のことを教えてやろう!」


そう言って、ガント警察長は5名の犯罪者達の説明を始めた。



最初の一人は、日本の富士樹海に建てられた、特別刑務所にいた。設置された超凶悪犯罪者を収容するために作られた牢に入れられ、そこで生活をしていた。


「聞いたか?アイツが殺した連中、死因がみんな斬殺らしいぞ。」

「斬殺?でも、確か現場には・・・・」

「ああ、現場に残された、アイツが使った凶器は・・・全部鈍器だ!」

「鈍器で人を斬り殺せんのか?」

「さぁな・・・・あの体格がくせ者だ。」


その男は一見、地味そうな男だった。だが、身長は高く、坊主頭に口髭、鍛え抜かれた肉体・・・・見た目だけでも強さが伺えるほどだった。


「しかし、この檻の中なら安全だろう。防衛庁から取り寄せた特別製で、ミサイルも跳ね返すらしい。」


男が入っている檻はガラスでできていた。ただのガラスではなく、ミサイルも跳ね返せる特別な物だ。その中にベッドや机といった日用品がある。


「無刀流・宗方宗次か・・・・」


その男の名は、宗方宗次(むなかた そうじ)・・・・無刀流と呼ばれる我流剣術の使い手だった。彼が殺した人数は500人は超え、その死因は全て刃物による斬殺。だが、狂気に使われたのは鉄パイプやハンマーといった鈍器のみ。


「・・・・君達。」


宗次は見張りをしていた警察官2人に声をかけ、立ち上がる。


「本当に鋭い武器はなんだと思うね?」


宗次は語りながら警察官の近くへ行く。


「う、動くな!動けば撃つぞ!!」


警察官2人はホルスターから拳銃を取り出し、ガラスの檻にいる宗次に向けた。


「・・・ハハッ、ミサイルも跳ね返すガラスに向かって、どうするつもりかね?」

「~~~~ッ!!」


宗次は2人を嘲笑うと、自分が座っていた椅子を持ち上げた。すると、宗次は不思議な行動を取った。構えたのだ。剣道の構えみたいに。持っている物が椅子にも関わらずだ。


「もっとも、私にはこのガラスも窓ガラスには変わりない・・・・例えば、両腕に力を込め、得物そのエネルギーを伝える・・・・」


宗次は、スッと両手を挙げて椅子を振り上げる。


「ガラスから離れろォッ!!」

「すると・・・・」


宗次は警察官の警告を無視して進める。


「まるで窓ガラスのように・・・・!」

宗次は一気に椅子を振り下ろし、ガラスを四角形になぞる!すると、ガラスは見事に四角形に斬られた!


「・・・・!!?」

警察官2人は驚きから何も声を出せずにいた。


「ねっ?」


宗次がそう言うと、斬られたガラスは床に落ち、粉々に割れた。


「今なら当たるよ。」

「!!」


宗次に指摘され、警察官は銃を構え直す。だが、遅かった。宗次はそれよりも早く、椅子を振り下ろしていた。すると、警察官の頭から股間にかけて線が走り、そこから血が噴き出した。


「かっ・・・・」


警察官は断末魔を叫ぶ間もなく、死亡した。


「ひ、ひいぃぃぃぃ!!」


もう1人の警察官は、その惨状を見て、恐怖を感じて思わず逃げ出した。だが、後ろを向くと、そこには宗次がいつの間に立っていた。


「凡人というのはいつもそうだ・・・つまらん勝利をもたらしてくれる。」


そして、宗次はその警官も殺し、刑務所を脱走した。



二人目・・・・二人目は宗次と同じく日本人だが、韓国の刑務所に収容され、絞首刑による死刑が行われる予定だった。部屋には執行人2人と銃を装備した兵士が2人・・・・兵士は、もしも受刑者が逃げだそうとした時の為の保険である。


「では、最後に言い残すことはあるかね?甲賀君。」


絞首台に立たされ、目隠しをされ首に縄を掛けられた細身の男・・・・名は甲賀。日本人で、ある体術と魔術を体得している。


「忠誠を誓った主の為に生きたい。」


甲賀はニヤリと笑いながら執行人の質問に答えた。


「・・・・あはははははっ!!今時そんなことを考える奴がいるとはなぁ・・・だが、残念ながら君の願いは叶わない。」


執行人はスッと手を上げた。その合図で、もう1人の執行人は壁のスイッチを押した。その瞬間、甲賀の足元の床に穴が空き、甲賀の首が吊り下がり、首が絞まり始めた。


「がっ・・・・!!」


始めの数秒はもがいたが、すぐに甲賀はぐったりとうなだれ、両手両足をぶらりと下げた。そして、そのまま動くことはなかった。


「・・・・あっけないものだな。」


執行人はそう言ってポケットからタバコを取り出した。と、その時だった。ふと甲賀の方に目を向けたが・・・そこに甲賀の姿がなかった。煙のように姿が消えたのだ。


「!?」


執行人は全身に汗を掻きながらヤツの姿を捜した。甲賀はすぐに見つかった。処刑台の上だった。甲賀は死んではいなかった。死んだフリを装っていただけだった。


「縄抜けの術・・・」


ボソリと呟くと、甲賀はまたも姿を消し、部屋にいた兵士2人の背後に立ち、2人の肩を叩いた。


「どうした?緊急事態発生だぜ。」


甲賀はそう言うと、そのまま兵士2人の首の動脈の切り裂き、殺した。目隠しされているにも関わらず、その攻撃は綺麗に動脈のみを切っていた。しかも自分の爪のみで。


「銃を抜け。」

「・・・・ッ!!?」

「撃ってみろ。甘んじて受けてやる・・・この目隠しも外さない。」


甲賀は執行人を煽ってみせた。執行人の方は、自分と相手の戦力の違いをわかっていた。絞首刑に耐え、即座に素早く行動して兵士2人を殺す・・・・常人ができることじゃない。


「~~~~~ッッ!!」

「影縛り!」


執行人は腰から拳銃を引き抜いた。だが、それと同時に甲賀は妙な行動を取った。両手を合わせ、そのまま小指、薬指、中指を握り、印のようなものを結んだ。そして、何かの用語のような物を叫ぶ。すると、執行人の動きが止まった。


「か、身体が、動かない・・・・!?」


執行人は金縛りにあったかのように、身体が動かなくなった。

そして、甲賀はそこへ近づき、爪で兵士と同じように動脈を切り裂き、殺した。


「残念だったな、凡人諸君。」


甲賀はそう言うと、受刑室を後にし、刑務所内に保管されていた甲賀の装備を取り返し、刑務所を脱走した。



3人目・・・・場所はカナダの障害者用の刑務所・・・・


「ふあ~あ、この時間は暇だよなぁ・・・・」

「文句言うなよ、仕事だろ?」


時間は深夜・・・・刑務所内では警官2人が警備室で刑務所内を写している監視カメラの映像を確認していた。


「コーヒー買ってくるわ。」

「ああ。」


警官の1人がコーヒーを買いに警備室を出た。

それから30分後・・・・その警官は戻ってこなかった。


「ったく、遅ぇな・・・・コーヒー買うのにいつまで掛かってんだよ・・・・」


警備室に残った警官は愚痴をこぼしながら、スマホのゲームアプリを起動し、仕事をサボり始めた。

と、その時、激しいサイレンの音が鳴り響いた。それは火災報知器のサイレンだった。


「な、なんだ!?」


警官は思わず立ち上がり、戸惑い始める。そして、監視カメラの映像を確認する。すると、その中に一つだけ映像が映っていないものがあった。


「2階の調理室・・・・!」


場所は受刑者達の食事を作る調理室・・・・警官はすぐにそこへ向かった。

調理室にたどり着くと、中はもう火の海だった。さらに、冷蔵庫の中の食料は食い荒らされ、揚げ物用の油は無くなっていた。


「おい、大丈夫か!?」


その時、もう1人の警官が戻ってきた。


「おお、お前か!急にサイレンが鳴ったと思ったら、調理室が家事に・・・・ッ!!?」


警官は同僚が戻って来たと思い、後ろを振り向いた。だが、その瞬間、警官は腹にナイフを刺された。


「お、お前・・・・あいつじゃない・・・!!」


その瞬間、警官はナイフを突き刺した男が、先ほどコーヒーを買いに行った同僚ではないとわかった。なぜなら、ナイフを突き刺したその男は、警官の服を着てはいるが、刑務所の中でも有名な受刑者だったからだ。


「ゲイン・・・・!!」


ゲインと呼ばれたその男は、甲賀よりも細い身体をしており、身長もそこまで高くもなかった。だが、その男の顔は悪魔のようで、口は耳まで裂けており、両目は三白眼でかなりつり上がっている。


「イヒッ♪」


ゲインは強く掴むと、そのまま横に斬り払うように引き抜いた。


「がふっ・・・・!!」


警官は血を吐くと、そのまま床に倒れた。


「ヒヒッ、イイ顔!警官ブッ殺して変装した甲斐があったぜ。」

「あ、あいつも・・・・お前が・・・・」


ゲインの一言に、コーヒーを買いに言った同僚は、ゲインに殺されたことがわかった。


「看守諸君世話になったッ!!俺はここを出るッッ!!」


ゲインは叫び声を上げると、調理室から持ち出した油を撒き始めた。


「ゲ、ゲイン・・・・!!」

「わかるかね、警官君。俺はね・・・・もっと人を殺したいんだよ!!ひゃははははははははっ!!」


ゲインは笑いながら調理室にも油を撒いた。すると、火は油に引火し、炎は廊下へと続いた。


「残念だったなぁ~、看守諸君。俺は誰にも教えていないことがある・・・・例えば、人の行動を予測できること・・・!!」


ゲインは笑いながら刑務所を後にした。刑務所はゲインの付けた火で燃え上がり、刑務所内全域を燃やしたらしい。受刑者、看守を巻き込み、多くの死傷者が出た。



「す、すごい・・・・」

私はガント警察長の話を聞いて戦慄した。この世にそんな奴らがいるなんて・・・・思いもよらなかった。

「後2人・・・・ここからが武装集団を壊滅させた2人だ。」



4人目・・・・そいつは人ではなかった。かといって、動物でもなかった。


イラクの紛争地帯・・・・そこでは戦いの勝利に、武装集団の兵隊達が宴を上げている。


「我らの勝利だーーー!!」

『おーーーーーっ!!』

「運命の神は我らに微笑んでいる!!このまま奴らを全滅させ、我らの正義を証明するのだーーー!!」

『おーーーーーっ!!』


そこに、1人の影が現れた。


「おいっ!貴様ら!」


その声に、兵隊達は気付き、後ろを振り向く。そこには1人の男らしきものが立っていた。顔と身体はローブに隠されて見えないが、身長は170cmもない低身長で、声はそれに似合わないような低い男の声だった。


「なんだ?このチビは・・・・」

「俺らになんか用か?おチビちゃん。」


男は兵隊達に尋ねられると、懐から何かに踏みつぶされ、ぐちゃぐちゃになっている花を取り出した。


「・・・なんだ?この汚い花。」

「さっきの戦場でこれを踏みつぶしたのは、お前達か?」

「ああっ?」

「花を潰したのはお前達かと聞いている。花というものは、小さいがその美しさを保ち、死す時まで意味を持ち続ける。お前達人間の汚い思想とは違い、花というのは尊い存在なのだ。」

「何ィッ!?」


男が煽ると、兵隊達はいきり立ち、銃を構えた。


「我々よりもそのチンケな花の方が地位が高いというのか!?」

「その通りだ。少なくとも、お前らの正義よりも上だ。」

「この・・・・言わせておけば・・・・!!構うことはない!やってしまえ!!」


武装集団の隊長らしき男が叫んだと同時に、男はローブを脱ぎ捨て、隊長に投げつけ、視界を眩ませた。


「この・・・!っ!!?」


ローブを剥がした隊長は、とんでもないものを目にした。それは男と思わしき者の正体だった。その者の正体は、メタル色の両腕、胸、肩、両脚に、黒の頭と素体、ごてごてに装飾された装備・・・・その者は全身が機械でできたロボットだったのだ。


「な、なんだ、きさ・・・まっ・・・・!?」


隊長の有無を言わさず、ロボットは手首のつけ根から四角形の砲身のようなものがせり出し、ギュンッ!とビームブレードが展開され、そのまま隊長を真っ二つに切り裂いた。


「た、隊長!!」

「な、なんだ貴様は!?」

「俺の名は・・・・魔弾の射手(カスパール)。お前達を殺す者だ。」


カスパールはそう言うと、背中からミサイルポッドを射出し、ミサイルを一斉に発射。兵士達にミサイルの雨を浴びせる。


『うわああああああああ!!』


ミサイルの雨を浴びた兵士達は、次々と倒れ、息絶えていく。運良く死を免れた兵士は、カスパールの手で息の根を止められる。1人残らず人間を狩り、殺すその姿は、まさしく死神とも呼べるものだった。


「終わったか・・・・」


カスパールは全ての兵士を駆除したのを確認し、武器を体内に収納した。


「死体を埋めて、その上に種を蒔けば、いい肥料にはなりそうだな。」


カスパールは死体を肥料にしようと、殺した兵士達を埋め、その上に花の種を蒔いた。


「お前はいいな・・・意味を持っていて・・・」


カスパールはそう言って、種を蒔いた土を撫で、その場を立ち去った。

4人目の名はカスパール。別名、「殺人マシーン」・・・・・



最後の5人目・・・・そいつの過去は一切不明。名前はあるが本名ではない。その本名は不明。ただわかっているのは・・・・地上最強の人間であるということのみ・・・・


イラクの前線基地に近づく一人の男がいた。その男は2mを超える身長と筋骨隆々の肉体を持つ巨漢で、黒いマントと角の生えた兜が特徴だった。


「そこの男!止まれ!」

「ここがどこだと思っている!?」

「前線基地・・・・であろう。」


男は兵士の疑問に答えると、両手を横に広げた。すると、男の両手に淡く光る渦のようなものが現れる。


「羅刹掌・・・・!!」


男は小さく呟きながら、両手から赤色の空気の弾のようなものを飛ばし、門番の兵士を吹き飛ばした。

そして、そのまま門まで近づき・・・・


「フンッ!!」


自らの拳で鋼鉄の門を打ち破り、門を破壊した。


「し、侵入者だ!!」

「攻撃用意ー!!」


基地上部に設置された対空砲が、男に向けられる。


「撃てぇッ!!」

対空砲が放たれ、男は直撃を受けた。だが・・・・

「その程度か。」

男は無傷だった。


「バ、バカな・・・・!!戦車だ!戦車を用意しろ!!」


基地の司令官の指示で、戦車が導入された。全部で3機・・・・一人の男、それも武器も持っていない男に戦車3機だ。


「撃てぇッ!!」


戦車の砲身から弾が発射され、男に直撃する。だが・・・男はまたしても無傷だった。しかも、土埃もついていない。


「な、なぜだ・・・!?」

「羅刹掌!!」


男は手から空気弾を放ち、戦車を1機破壊した。そして、破壊された戦車の砲身を持ち・・・・


「うおおおおおおっ!!」


砲身をやり投げの槍の様に投げ、もう1機の戦車に突き刺さる。そして、破壊されたもう1機の戦車を踏み台にして跳び上がり、拳を振るって3機目の戦車を叩き潰した。


「化け物か・・・!?あいつは・・・・!!?」


男は、破壊した戦車を両手で持ち上げた。


「ムンッ!!」


そしてそれを司令官のいる司令室に向かって投げつけた。


「ッ!!」


司令官は逃げようとしたが、遅かった。司令官は投げつけられた戦車に押し潰され、そのまま即死。


「し、司令官が・・・・!!」


残された兵士達は困惑し、腰を抜かしている。


「残った兵士に告ぐッ!!命が惜しければ、ここにある武器を全てよこせ!!そして、伝えるのだッ!!この俺の強さを!俺に逆らうことへの愚かさを!そして、恐怖を伝えろッ!!我が名は王牙ッッッ!!この名を国中に伝えるがいいッ!!」


その男の名は、王牙。特殊な拳法を身に着けた格闘家であり、「鬼」と恐れられている・・・・



「世界最強の男・・・・」

「調査官の情報では、この5人は手を組み、協力関係を作り、さらには組織をも作り始めているとのことらしい。そして・・・・このニューヨークに向かっている!!ファウスト、この意味を知れッ!!」


ここからだ・・・・ここからが、私達「パラディンフォース」と5人の戦士との戦いの始まりだった・・・・!



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