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ファウスト ~FIRST HEROS~  作者: 地理山計一郎
第2章「出会いと過去の激闘編」
10/38

第8話「恋とヒーロー」

やぁ、みんな!ルークだ!突然だが、みんなは告白されたことはあるだろうか。異性からの愛の告白・・・現実でも、ドラマとかでも、思わずドキドキしてしまうよな。私?私は・・・最近だと一回だけあった。

では、今日はみんなにそのことを話そう。あれは、ニコラスの件が終わった1週間ぐらい経った時の話だ。


「はぁ・・・マジか・・・」


ルイスがぼやいている。その前にはクーラーボックスがある。


「どうしたんだ?」


私は側まで寄って話し掛けた。


「どうもこうもないよ!3日前に猫探してくれって頼んできた依頼人からの報酬!それが届いたんだけどさ・・・」


ルイスは説明しながら落胆していた。私は目の前にクーラーボックスを開けてみた。

すると、中にはおいしそうな魚が入っていた。


「おっ、おいしそうな魚だ!依頼人も嬉しいことしてくれるな!」

「はぁっ!?そこ喜ぶところじゃない!普通、依頼料に魚をよこす人いる!?そこは金一封でしょうよ!」


ルイスは珍しく怒鳴り声を上げた。


「・・・お金がなかったんだろ?」


私はキョトンとしながら返答した。


「バカ!バーカ!!昨日の依頼人なんか、お金の代わりにバスケットゴールなんてよこしたでしょ!?いるかっつーの!!これ一歩間違えたら契約違反じゃないの!?おじさんもおじさんだよ!?何でも屋とか探偵事務所みたいな仕事してんのに、なんで契約書とか作らないかな!作らないからみんな調子に乗って、どうでもいいような報酬持ってくんの!わかる!?」


ルイスはまくし立てるように早口で私に論説を聞かせた。


「うーん・・・街の人が喜んでるなら、いいんじゃない?」

「このバカリーダー!!」


返答した私に、ルイスは罵声を上げた。しかし、私にだって言い分はある。


「・・・いいか、ルイス。私達の仕事は金儲けの為にあるのか?」

「!」

「違うだろ?確かにお金は必要だ。しかし、私は金に目が眩む人間にはなりたくない。私達がやっているのは、地域に貢献し、街の力になり、人々を守ることだ。違うか?」


私の言葉に、ルイスは何も言えなくなった。


「それに、考えてみなさい。魚を送ってくれたということは、食費が浮いたってことだ!今日はムニエルが食えるぞ!」

「はぁ・・・わかったよ。もう文句言わない。受け入れるよ。」


ルイスは笑顔で言う私に呆れたのか、ため息をつきながら受け入れた。

その時、一人の女性が事務所に入って来た。


「おっ・・・いらっしゃい!」


私はにこやかにお客様に挨拶をした。


『いらっしゃーい!』


後ろにいるロック達もお客様に挨拶をする。


「今日はどんな御用事かな?相談?それとも依頼?」


私はお客様に近寄って声をかける。すると、お客様は私の顔を見るなり、何故か顔を赤らめ、モジモジし始めた。


「?」


私はお客様の行動に首を傾げたが、不思議とどこかで会ったような気がしていた。

歳はメアリよりもちょっと上くらいで、髪はボブカットで、背丈は低め、歯に八重歯、スタイルは年相応・・・どこかで見たような・・・


「君、確かどこかで・・・?」

「あ、あの時・・・わ、私を助けてくれた・・・」


お客様の辿々しい口調に、私は思い出した。あの時・・・私がファウストとして初めて助けた、チンピラ3人組に絡まれていた少女・・・この子はその時の子だ。

※第2話参照


「ああっ!あの時の子か!あの後、家には帰れたかい?」

「は、はい!」


私が聞くと、女の子は笑顔で返事をした。


「で、今日はどうした?」


と聞くと、女の子は突然顔を赤らめ始めた。


「あ、あの・・・その・・・」

「?」

「ファ、ファウストさんは!こここ、恋人とかいますか!?い、いなかったら、私とデートしてください!!」


女の子は顔を真っ赤にしながら叫んだ。


「・・・はい?」

私はあまりの意味不明さに首を傾げた。


「はい、お茶どうぞ・・・」

「どうも・・・」


私は女の子を事務所にある来客室に入らせ、ソファに座らせた。リンは女の子にお茶を出し、彼女の向かいの席・・・つまり、私が座っているソファの後ろに隠れるように座り込んだ。ルイスとロックも同様に。


「えーっと・・・まず、名前を聞いてもいいかな?」

「ジェ、ジェシカです・・・」

「よーし・・・ジェシカ、どうして私とデートしたいなんて言うんだ?その・・・君は何歳だ?」


私は本題に入りつつ、ジェシカの年齢を尋ねた。


「じゅ、18です・・・」


18歳・・・私の半分・・・これは、なんというか年齢的に非常にマズイ気がする。


「あの、こんなことは言いたくないが・・・私おじさんだよ?36歳のおっさんだよ?もっと、おっさんが自分の半分以下の歳の子とデートするというのは・・・」

「アレ?おじさん36歳だったんだ、意外と若いね。」

「エレメント・ガイ、黙っててくれ。」


話の間をルイスに入り込まれたが、私は注意をし、話を戻す。


「あー・・・もしかしてアレかな?デートの練習かい?学校やバイト先で気になる男性がいるから、その為に・・・」

「違います!」


話の途中でジェシカが突然大声を上げた。


「助けてもらったあの時から・・・私、ファウストさんのことが好きなんですっ!!」

『えーーーーーーっっ!!?』

私が驚くより先に、後ろにいたロック達が驚いて声を上げた。


「アンタ、マジで言ってんのか!?この人アンタの倍と歳あるおっさんだぜ!?」

「おまけに頭悪くて、筋肉とボクシングと体力ぐらいしか取り柄のない人よ!?」

「考え直した方がよくない!?もっといい人いると思うよ!?」


ロック達は本人である私がいるにも関わらず罵倒してくる。


「本人を前に失礼な・・・」


私は少し腹を立てたが、大人としてここは怒りを抑えた。


「まぁ、ジェシカ・・・君が好きだと言ってくれるのは嬉しいが・・・その・・・」


私はジェシカに、「私には子どもがいる、愛する妻がいる」と言おうとしたが、言えなかった。言うことで彼女を傷つけてしまうのではないかと思い、怖くて言えなかった。

しかし、言わなければ始まらない。私は勇気を振り絞って言うことにした。


「わ、私には・・・!」

「私、この街を出るんです。」

私が言おうとした瞬間、ジェシカが先に呟いた。


「えっ?」

「私・・・もうすぐ故郷のヨーロッパに帰るんです。だから、ニューヨークでの最後の思い出が欲しかったんです。でも、私は友達いないし、留学したから、両親はヨーロッパの方にいるし・・・!だから、せめて好きな人とデートがしたくて・・・!」


ジェシカはそう言って涙を流し始めた。それを見て、私は胸を痛めた。


「・・・わかった。」

『えっ?』

「本当ですか!?」

ロック達が驚きから声を上げ、ジェシカは喜び、笑顔を浮かべた。


「ああ。泣きながら頼まれちゃあ、断るわけにもいかないからな。」

「あ、ありがとうございます!」



こうして、私とジェシカはデートをすることになった。

翌日・・・


「・・・ねぇ、おじさん?さすがにそれは変じゃない?」

「職質受けそうだな。」

「仕方ないだろ!彼女がヒーロー姿の私がいいって言うから・・・」


ジェシカは元のルーク・エイマーズとしての私・・・つまり、ヒーロースーツを着ていない私より、ヒーロースーツを着た私とデートをしたいと言ってきた。

そのため、今日のデートにはヒーロースーツ。そしてその上に背広を着ている・・・率直に言って変な格好だ。

まぁ、正体を隠せるのは都合がいいが・・・


「でも、言わなくて大丈夫なの?おじさんは既に結婚してて子どもがいるってこと。まぁ、奥さんとは死に別れたけど・・・」

「うん・・・しかし、言ったら彼女を傷つけてしまうし・・・」

「まっ、判断はおじさんに任せますけど?僕が教えたデートの心得、キチッと覚えといてよ!一応メモも渡しておくよ。」


ルイスはそう言うと、ポケットからメモを取り出し、私に手渡した。


「あ、ああ・・・じゃあ、行ってくる。」

「頑張れよ、おっさん!歳の割にはまだいけるってとこ見せてやれ!」

「まっ、せいぜい頑張ってね!」

「かっこ悪いとこ見せちゃダメよ!」


みんな勝手なことばかり言って、私を送り出した。


「他人事だと思って・・・」


私はブツブツと呟きつつ、彼女との待ち合わせ場所に向かった。



待ち合わせ場所はセントラル駅の時計台。メアリの話だと、よくデートの待ち合わせ場所に指定する子が多いらしい。

待ち合わせの時間は10時・・・30分前にここに着いたから、時間はある。私は時計台にあるベンチに座って彼女を待つことにした。


待っている間、通りがかる人達が総じて私の方を見てくる。

やはりヒーロースーツの上に背広は目立つか。


「うーん・・・背広は余計だったかな・・・」

『まぁ、バカなお前にはお似合いだな。』

「メフィスト、うるさいぞ。」


私は軽くメフィストを叱り、缶コーヒーでも買おうと、座ったまま自販機はないかと辺りを見回した。

すると、私の視線の先にジェシカの姿が見せた。


「ジェシカ!」

私はベンチから立ち上がり、ジェシカの元に駆け寄った。


「遅くなってすいません。」

「いや、私も今来たところさ。それじゃ、行こうか。」


私はジェシカに手を差し出した。


「?」

ジェシカは私が手を差し出した意味が分からず、まごついた。


「どうした?せっかくのデートなのに、手を繋がないのか?」


私は微笑みながら呟いた。すると、ジェシカは顔を真っ赤にした。


「えっ!?で、でも・・・そんな失礼な・・・!!」

「デートに失礼も何もないだろ?君に顔を見せられないのは残念だけど・・・損はさせないつもりだ。今日は、君のニューヨーク最後の思い出に相応しい日にするよ。さぁ、手を取って。」

「・・・はい。」


ジェシカは頬を赤く染めながらも、私と手を繋いだ。


「じゃあ、行こう。」

私はそう言って、ジェシカの手を引いてデートを開始した。


(よし・・・!デートの心得その1、成功!)


ルイスがくれたメモに書かれた、「デートの心得その1 女の子には優しい言葉を掛けて接すること」・・・まずまず成功!


(ふあぁぁ・・・ファウストさん、格好良すぎるよぉ・・・!)


私の考えていることなどいざ知らず、ジェシカは私の掛けた言葉に蕩けているようだった。

即興で考えただけなんだがな・・・


しかし、私達二人はこの時気づかなかった。

ロック、ルイス、リンの3人が後ろから尾行していることを。


「へー、おじさん即興にしては中々いいじゃん!」

「そう?私さっきから気持ち悪すぎて鳥肌が止まらないんだけど・・・」

「あんなこと言えちまうなんて・・・!おっさんカッケー!」


・・・全く3人して仕事をサボって何やってるんだか・・・


まず私とジェシカは人気のデートスポット、「愛しき恋人」という意味のフランス語で書かれた喫茶店を訪れた。外にあるテーブル席に隣り合って座った。

リンの話だと、この喫茶店で自撮り写真を撮ったカップルは結ばれるというジンクスがあるらしい。本当かどうか定かじゃないが、他の席はカップルが多く、皆写真を撮っている。


「えっと・・・ぜ、是非、私と写真を撮ってください!」

「ああ、いいとも!」

ジェシカの頼みを承諾し、私は彼女を自分の体に抱き寄せた。


「ふぇっ?!ファ、ファウストさん!?」

私に抱き寄せられ、ジェシカは顔を真っ赤に染めた。私の体に彼女の鼓動が伝わってくる。


「カップルはこうするんだろ?周りもやってるんだし、恥ずかしいことなんてない。」

「で、でも・・・」

「ホラ、写真を撮ろう。私ケータイ持ってないから、君ので撮ろう。」

「は、はい・・・」


「はー、おじさん中々やるねぇ。」

「私だったらブン殴ってるわ。」

「女を抱き寄せちまうなんて・・・!おっさんスゲー!」


後ろで隠れて覗いている3人は先ほどとさほど変わらないことを口ずさんだ。


喫茶店で休憩した後、私達は次に行く場所で食事を取ることにした。

そして訪れたのはジェシカが前から行ってみたかったというブラジル料理の店だ。この店はルイスから聞いたことがある。なんでも、シュラスコ(ブラジル式BBQ)をビュッフェ形式で食べられる店らしい。


店に入って席につき、私達は料理を皿に盛った。


「ファ、ファウストさん、結構食べるんですね・・・」


ジェシカは自分が盛った料理の量を、私のと比べ驚いていた。ジェシカのは皿に5品ほどしか乗っていなかったが、私の方はその2倍は乗っていた。


「逆に、君の方が食べなさすぎるんだ。食べないと力が出ないぞ!」

「わ、私はこれぐらいがちょうどいいので・・・」


私とジェシカは食事を楽しみ、一通り食べた後、デザートを食べることにした。


「うん、このキンジンっていうのは美味しいな。ココナッツ味のプリンみたいだ。」

私はプリンみたいなキンジンというデザートを、


「このプジンジレイチコンデンサードも美味しいですよ!」

「・・・え、プジ・・・何?」


私はジェシカが口走った呪文のような言葉に声を上げた。


「プジンジレイチコンデンサードですよ。コンデンスミルクのプリンです。」

「なるほど・・・あっ、こっちのデザートも食べてみるかい?」

「いいんですか?いただきます!」

「はい。」


ジェシカの一言を聞いて、私はキンジンをスプーンですくい、スッとジェシカの前に差し出した。


「?」

「ほら、食べさせてあげるよ。」

「はひっ!?」


私の一言にジェシカはまたも顔を真っ赤に染め、声が裏返った。

しかし、この子は本当によく顔を赤らめる子だな。


「カップルはみんなこうするんだろ?」

「で、でも、スプーンが汚れちゃいますし・・・」

「なーに、ポケットにティッシュあるし、おしぼりもあるから大丈夫。ほら、食べなさい。」

「は、はい・・・!」


ジェシカは返事をすると、恐る恐る私が差し出したキンジンを食べた。


「お、おいしいです・・・」

「そりゃあ、よかった。」


・・・ルイスのメモに書かれた「デートの心得その2、時には大胆に!」・・・成功。


「うんうん!僕のメモ通りにやってるじゃん!」

「・・・ルイス、アンタ後で殴っていい?」

「えっ、なんで?」


ルイスがデートの際にいつも私のようなことをやっていると思い、腹が立ったのか、リンは「殴らせろ」と言ってきた。


「二人とも!そんなことより食おうぜ!肉食べ放題だぜ!」

二人をよそに、ロックは私の3倍はある肉の量をむさぼり食っていた。


『はぁ・・・』

そんなロックの様子を見て、二人はため息をついた。

「幸せそうね、アンタ・・・」

「?」


食事をした後、私達は次のスポットへ向かった・・・のだが、


(うーん・・・やっぱり言った方がいいよな・・・)


私はジェシカに本当の事を言うべきか迷った。彼女とのデートは楽しかったし、彼女は魅力的でカワイイ子だとは分かっている。だが、私には心に誓った人がいる。一生愛し続けると決めた人・・・マリアが・・・


「あ、あの・・・ジェシカ。」

「はい?」

「ちょっと来てくれ。」


私は決心し、ジェシカの手を引いて路地裏に入った。


「ファ、ファウストさん・・・?どうしたんですか?」

「実は・・・君に言っておかなければいけないことがある。私は・・・実は結婚してるんだ。」

「っ・・・!?」


私の告白に、ジェシカは言葉を失い呆然とした。


「妻は8年前に死んだ。だが、私は今でも彼女のことを愛している。だから・・・君と結ばれることはできない。」

「・・・」

「君とのデートは楽しかったし、君が魅力的で、とってもカワイイ子だとはわかってる。だけど・・・ごめん。」


私はジェシカに謝罪し、そのまま立ち去って別れようとした。だが、その時だった。

どこからともなく悲鳴が聞こえた。


「キャーーー!!誰かーーー!!」

「化け物だーーー!!」

悲鳴とともに破壊音が響き渡る。


「事件かっ!?すぐに行かないと・・・!!」

私は背広を脱ぎ捨て、現場へ向かおうと走り出した。


「待って!」

その時、ジェシカは咄嗟に私の腕にしがみついた。


「!」

「行かないで!」

「ジェシカ・・・」


ジェシカの目には涙が滲んでいた。そしてそれは、すぐ溢れた。


「ヒ、ヒーローなんて・・・どうだっていいじゃないですか!人を助けたってお金になるわけじゃないし、助けたってお礼を言われないことだってあるでしょ!?それに、ファウストさんがいくら戦っても、犯罪が無くなる訳じゃないんですよ!!」

「・・・・」

「だったら・・・誰か一人の為に戦う方がよっぽど楽じゃないですか!だから・・・わ、私だけの・・・!」


ジェシカが何かを言おうとしたその瞬間、私は彼女の口を塞いだ。


「それ以上は言っちゃダメだ。言ったら、ダメな人間になってしまうぞ。」

「ファウストさん・・・」

「・・・確かに、君の言っていることはもっともかもな。でも・・・これは私がやるって決めたことだ。誰に命じられた訳でもなく、ただ弱い人達を助け、守りたい・・・そう願った!ただそれだけだ!」


私はジェシカに向かって叫び、現場へ向かって走り出した。

これが私が自分で決めたこと。パドロとの戦いの時から決めたことだ。人に手を差し伸べられる、強さと優しさを持ったヒーローになること・・・それが、私がこの仕事を始めた意味だ!


「クハハハハハッ!!最ッ高だぜぇ!!」


私が現場に到着すると、そこには全身から武器が生えた怪人が立っていた。背中にはハリネズミのように生えたナイフ、両腕にはマシンガンが生え、まるでガトリング砲みたいになっている。腰には鎖が尻尾のように生えている。まるで武器人間!


「そこまでだ!」

「あぁん?」


私が叫ぶと、武器人間はこちらに振り向いた。


「お待たせ!」

それと同時にロック達も現場に到着した。


「てめぇらが噂のパラディンフォースか?格好いい名前じゃねぇか!だが、俺様の方が格好いい!俺の名は『ザ・デストロイヤー』だ!!」

デストロイヤーは高らかに自分の名を叫ぶ。


「うわー・・・自分で『破壊者』とか言っちゃうんだ・・・」

「ウチだって変わらんないでしょ。私なんて直訳したら『龍少女』よ。」

「と、とにかく!何の目的かは知らないが、大人しく刑務所に入って貰うぞ!」


私はデストロイヤーに指を差した。


「バーカッ!誰がてめぇらに捕まるかよ!俺様の力を見てみな!」

『体中に生えた武器・・・そうか、奴のアーツは「武器化」だ!自分の体を武器に変えることができる!』


メフィストが説明するのと同時に、デストロイヤーの指が拳銃の銃口に変わった。


「フィンガー・バルカン!!」

デストロイヤーは叫び、指の銃口から銃弾を放った。


「よけろ!」

私達は横に飛んで攻撃を避けた。


「キャーッ!!」

しかし、私達がよけたことで後ろにいた女性に銃弾が当たりかけていた。幸い、銃弾は当たらなかったようだ。


「・・・・!エレメント・ガイ、ドラゴン・ガール!君達は被害が出ないようにみんなを避難させてくれ!」

「わかったわ!」

「いいよ!了解!」


私が指示を出すと、リンとルイスはすぐさま行動に移った。


「スティール・キッド!君は私と来い!君の能力なら、奴の攻撃も効かない!」

「おう!任せとけ!」


ロックは自信から胸を叩き、体を硬質化させた。

これで、まずは私とロックでデストロイヤーを抑える。私ならメフィストの「形態変化」で攻撃を防げるし、ロックの「硬質化」も、奴の攻撃を防げる。

逆によけるぐらいしか防ぐ術がない、ルイスとリンは市民の救助に回らせた。

市民がいなくなった後に合流し、一気に奴を叩けば、勝機はある!それまで私とロックで持ちこたえる作戦だ。


「どぉぉぉりゃあぁぁぁ!!」

ロックは真っ先にデストロイヤーに突っ込み、拳を繰り出した。


「フィンガー・ナイフ!!」


デストロイヤーは両手の指全てを鋭いナイフに変え、爪のようにした。ナイフの爪でロックの攻撃を受け流し、爪で切り刻む。

しかし、硬質化したロックには効かず、逆にナイフの爪がボロボロになった。


「へへっ、残念・・・でしたァッ!!」


ロックはニヤリと笑い、デストロイヤーの顔面をぶん殴り、3mほど吹き飛ばした。


「ぐぎゃっ!!」

「ッ!」

デストロイヤーを殴り飛ばした瞬間、ロックは右拳を抑えた。


「どうした!?」

「あの野郎・・・殴られる瞬間に顔をサボテンみてーにしやがった!」


ロックの拳には針のような物が突き刺さり、血が流れていた。どうやら、デストロイヤーは殴られる瞬間に、顔をサボテンのように針まみれに変えたのだ。

そこにロックが勢いよく殴ったため、針が硬質化した肌を突き破って突き刺さったのだ。


「喰らえ!」

デストロイヤーは髪の毛を2、3本抜き、ナイフに変え、私に向かって投げた。


「!」

私は素早く拳を突き出してナイフをはたき落とした。


「相手が武器なら、こっちだって武器だ!メフィスト、腕を武器に変えられるか?」

『できるぞ。』


私はメフィストの「形態変化」で両腕を剣に変え、斬りかかった。

しかし、拳を振るうとついボクシングと同じ様にしてしまい、突きばかりになってしまった。


『どうした!?突きばかりじゃないか!』

「ぶ、武器の扱いには、慣れていない・・・!」

『バカ者ー!!武器の扱いぐらいしておけ!!』


メフィストは武器が使えない私を怒った。それをよそに、デストロイヤーは両手を鉄球に変え、私を殴り飛ばした。


「ぐわっ!」

「どうしたどうしたぁ?『パラディンフォース』のリーダーさんは武器もロクに扱えねぇのか?」

「くっ・・・!」

「だったら、本当の武器の扱い方って奴を見せてやるよ!!」


デストロイヤーは叫びとともに上半身全てからバズーカ砲、グレネードランチャー、ミサイルランチャーを生やした。


『!!』

それを見た瞬間、私とロックは総毛立った。


「これが俺様の最終兵器、究極犯罪(アルティメット・クライム)だ!!ハハハハハハハッ!!」

デストロイヤーは大声で笑いながら、生やした銃火器を一斉に発射した。


「う、うわぁぁぁぁぁ!!」

「マジでやりやがった!!」


銃火器の発射と同時に、私達は逃げ回った。いくら私やロックでも、ミサイルやバズーカはヤバイ!


「おっさん!これからどーすんだァ!?」

「奴に近づいたら逆に八つ裂きにされる!とにかく、走り回って攻撃の機会を・・・!?」


その時だった。私の視界に、ルイスとリン、それに瓦礫に挟まって動けなくなった老婆がいた。


「クソ・・!重い!」

「このままじゃ・・・間に合わない!」

「あぁ・・・あんた達、早く逃げな・・・こんな年寄りなんて置いて・・・!」


二人が必死で瓦礫をどかそうとする中、老婆は諦めから弱々しい声で呟いた。


「何言ってんのよ!そんなこと言われたらますます放っておけないわ!」

「そうそう、僕ら諦めが悪いもんでね!」

老婆が諦めそうになっても、二人は諦めず老婆を助けようとした。


「あぁ~?カモみっけ~!!」

そんな時、デストロイヤーは腹から巨大な大砲を生やし、ルイス達に狙いを定めた。


「マズイ!」

「キャノン砲発射ッ!!」

デストロイヤーはルイス達に向かって大砲を発射した。


「うおおおおおおおおっ!!」

私はいてもたってもいられず、放たれた弾丸の前に飛び込み、体を盾にして弾丸を受けた。


「ぬあああああああっ!!」

「おじさん!?」

「おっさん!」

「リーダー!!」


私は大砲の直撃を受け、爆発と爆風に飲まれた。


その光景を、こっそり覗いていたジェシカも見ていた。

「ファウストさーーーん!!」


「ハハハハハハハッ!!くたばったか、クソヒーロー!!」


デストロイヤーは勝利を確信し、高笑いを上げた。だが、その勝利の確信を切り裂くように、


「それはどうかな。」


私は静かに呟いた。


「へっ?」


デストロイヤーがマヌケな声を上げた瞬間、私は爆風の中から突然現れた。

爆発のせいでスーツが破れ、右目、胸、腹、左腕、右足が露出したが、命に別状はないし、ピンピンしてる。


「ひ、ひぃっ!!」


デストロイヤーはあの爆発で無事だった私に恐怖を覚え、逃げ出そうとした。私はすかさず彼の足を強く踏み、逃げられないようにした。


「この距離じゃ爆破はできないな!」

「な、なんでだ!?てめぇ、さっきのでなんで無事なんだよぉ!!」

「ヒーローだから、かな?」


デストロイヤーの疑問に、私は答えた。

そして、両拳を握り、両腕を弦の代わりにし後ろに引く。


「大砲のお返しだ。」

「う、うわああああああっ!!?」


デストロイヤーは叫び逃げようともがくが、それに構わず私は引いた腕を一気に放った。


「デビルス・ツインキャノン!!」

放った両拳はデストロイヤーの腹、みぞおちにぶち当たる。腹に拳をぶち込まれ、デストロイヤーは後ろに吹き飛んだ。


「ぐえええええっ!!」

デストロイヤーは悲鳴を上げて倒れ、やがて気を失った。


「・・・よしっ!無事解決!メフィスト、彼のアーツは吸収したか?」

『ああ、もちろんだ。このアーツはバカには渡せん。』

「全くだ。」

「ちょ、ちょっとアンタ!」


私とメフィストが話していると、後ろから先ほどの老婆が声をかけてきた。私がデストロイヤーにトドメを刺している間に、ロックが加わり、3人がかりで瓦礫を動かし、救出したようだ。


「大丈夫かい!?こんなばぁさんの為に無理しちゃって・・・」

「なーに、助けるべき人に年齢なんて関係ありませんよ!私はヒーローですから!」

「あ~、アタシが後20、いや30ぐらい若けりゃあねぇ・・・アンタにぞっこんだったろうに・・・」

「ハハハ・・・さぁ、ここは危ないですから、早く行って。」

「ああ、ありがとね!」


老婆はお礼を言うと、その場から走り去った。


「よし、みんな。この場は警察に任せて帰るか。」

『・・・・』


私はロック達に「帰ろう」と言ったが、3人は呆然としながら私を見ていた。


「どうした?」

「いやいやいや、どうしたじゃなくさ・・・」

「なんで大砲の直撃受けて生きてんのアンタ!?化け物!?」


どうやら3人は私が大砲の直撃を受けて無事でいることに驚いているようだ。


「私も驚いてるよ。でも、タフさには自信があるから・・・」

「タフすぎるっての!」

「に、人間って頑張れば大砲の直撃受けてもピンピンしてんのか・・・!俺も頑張らねぇと!」

「いや、この人が異常なだけだから!真に受けちゃダメでしょ!!」

『同感。私の体が盾になってるとはいえ、無事でいるお前の体はどうかしてるぞ。』

「そうかなぁ・・・」


私達が和気藹々(?)と話していると、その様子を見ていたジェシカはフッと笑い、気づかれないように立ち去った。


数日後・・・


「おじさん!ジェシカちゃんから手紙が来たよ!」

「手紙?どれどれ・・・」


私はルイスから手紙を受け取り、読み始めた。


「ファウストさんへ 私とのデートに付き合っていただいて、本当にありがとうございます。フランスに来てまだ少ししか経っていませんが、とても充実しています。友達もすぐ出来ました。

話は変わりますが、実はファウストさんに謝りたいことがあります。あのデートの時の、路地裏での出来事です。あの時言った、私のワガママ・・・ファウストさんはそれに怒ることも、私を殴ることもなく宥めてくれましたよね。今思うと、あの時ファウストさんが私のワガママを肯定してくれなくて良かったと思ってます。もし、肯定していたら、私はダメ人間になっていたかもしれません。

そして、私、あの後のファウストさんの戦いを見てました。敵はすごく強そうで怖いのに、それに勇敢に立ち向かって・・・さらには自分の身も省みずに、仲間とお婆さんの命まで助けてしまう。あれを見て私は思いました。ファウストさんは身も心もヒーローなんだって。それを知った時、私は恥ずかしくなりました。『こんなに格好良くて優しいヒーローを、私は独り占めしようとしてたなんて・・・』って思って・・・だから、ファウストさんのことはきっぱり諦めます!

私は私の手で、運命の人を探してみせます!だから、ファウストさんは気にせず、ずっとヒーローでいてください。ジェシカより」


「・・・嬉しいことを言ってくれるな。」


私は手紙を読んでフッと笑った。


「そういえば、手紙と一緒に封筒も入ってたよ。えーっと、『デートのお礼』だって。」

『まさか金一封か!?それなら発明費用になるぞ!』


私はゆっくりと封筒を空け、中を取りだした。


「これは・・・」


中に入っていたのは、映画の無料(タダ)券だった。その他にも飲食店の無料券、レンタルショップの無料券、遊園地の無料券・・・無料券の詰め合わせだった。


「無料券・・・だけ?」

『あ、あのクソビッチがぁぁぁぁ!!無料券より金よこせぇ!!開発費用~!!』

「はぁ・・・またお金での支払いじゃないわけね・・・」


ジェシカの報酬を見て、ルイスはため息をついた。


「まぁ、いいじゃないか!今日はこの無料券で遊び回ろう!」

「やった!仕事休める!」

「ステーキ屋の無料券もあるよな!?」

「仕方ないわね・・・全力で楽しみましょ!」


私達はメアリも加えて無料券を使って映画を見て、遊園地で遊び、美味しい食事を取って1日中楽しんだのだった。

素敵なプレゼントをありがとう、ジェシカ。君にもいい人が出来ますように!




余談

「・・・」

「おじさん、何ジッと鏡見つめてんの?」

「いや、私もまだまだモテるかなぁ・・・って。」

「バーカ。」



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