偽りの平和にサヨウナラ
街の光に照らせれ壁がなんともこの王都の強大さを物語る。
そんな壁の上で少年ルカは衝撃的な事実を知る。
先ほどまで街を探索していた少女が機械種、それもマスターだったのだ。
「別にキミに隠すつもりはなかった、といえば嘘になるんだけど……ちょっと話してみたくてね」
気まずそうな顔をちらつかせルカに話しかけたが返す言葉が中々見つからない。
「なんで俺と接触したんだよ。ただ話してみたくてこの街を案内したっての?」
マリは人差し指を口元にやり視線を空になげた。
「んー、実はね。お願いがあるんだな」
「お願い??」
機械種のマスター様がなんで俺に?そう思いつつもそのお願いがなんであるかに興味を示した。
「私がね、マスターとよばれ機械種を統べてこられた理由はわかる??」
その言葉にレディアは目を大きく見開き口をはさんだ。
「マリ様!それは!!」
そのレディアの口元に指をやり口を閉ざす。
単純に実力……いや、パッと見だが彼女に機械種全てをおさえこむ力があるとは思えない。
なら血筋?機械種に限ってそれはない……
あと考えられるとすると……
「機械種の思考データを変心、もしくはそれに似た機械種を操作する力がある……?」
レディアが少し驚いた顔ような顔を見せた。
「んーまあ一応正解ってことにしておこうかな。」
マリは人差し指と親指を合わせ、丸をつくってウインクする。
「ゲートで感じた違和感はそれが原因か?」
ゲートで機械種がいきなり態度が変わったこと。それと彼女の能力と関わりがあると考えれば納得だった。
しかしそれは少し違うということをルカは知ることになった。
「機械種には思念を送り行動を制御する力がありそれを私は思考の改革とよんでるの。
確かにあの時ゲートで思考の改革に似た出来事があったのは事実だよ。
だけどあれは私がやったんじゃない。」
似た出来事?マリがやったんじゃない?じゃあ誰が?
色々な疑問があったのだがマリは険しい顔をして話しを続けた。
「まずあれは思考の改革ではないんだよ。そもそも私は今その力を失っている。
あれは私ではない者による思考の改革で動かされている彼を誰かが解除したんだ。」
え、その思考の改革がない?結構問題発言を聞いたような気がしたがそこはとりあえず触れないでおく。
ややこしい内容だがおそらく彼女が言いたいのはこうだ。
ある人物によって機械種であるゲートの検問員が思考を改革されていた。
それであのような商人とのトラブルがおきた。
そしてその思考の改革を解除されたことによって検問員は正常に戻りトラブルが解決された、という事だろう。
ルカは頭をフル回転させ状況を把握する。
しかし、マリではないのなら誰が?レディアさんか?
「そしてその思想を解除した誰かっていうのがおそらくキミだよ。ルー君」
「?!」
ルカは驚愕した。いや、その場にいたレディアも同様に驚きを隠しきれていない。
「え?!いや俺なにもしてないよ?!勘違いだよ!」
そう、ルカは確かにそんな事した覚えはなかった。
「ううん、多分キミだよ。あの時キミはあのトラブルを止めようとしなかったかい?」
ルカはあの時トラブルを抑えようと動こうとしていたのほ事実だった。
「その時に脳裏でなんらかの異変を感じなかったかな?」
マリの言葉一つ一つはまるで自分の頭の中を覗いていたかのように的確にあの時のルカの状況を言い当てた。
「人間であるキミがなぜそんなことができたのかわからないんだけどあの時近くにいた私にも伝達が届いていたから間違いはないと思うよ」
そんな……そう言いたいルカだったのだがそれより早くレディアが口を開いた。
「それではマリ様の能力と似た力をこの人間がもっている。もしくは能力が変化して移ったということですか?にわかに信じられません。」
マリは目を瞑り答える。
「私が能力を失ってすぐに他の意識の改革が生まれたことから、私の能力を他の誰かが得ている可能性は確かに高いよ。
けどそれに対抗する能力、改革の解除をルー君はもっている。
その意味がわかるかな?」
「……どういう意味??」
「頭のいいキミならわかっているはずだよ。
今まで特に戦争に関わることのなかった機械種が魔種と共同して人間を制圧にかかった。
それがなぜか」
なにものかによって機械種を操っている。いや、魔種によってと言うことか。
「ここは私が管轄しているから今までとは変わらず被害も最小限に抑えられているけど他は違うよ。
ここだっていつまでこうしていられるかわからない。
」
陥落されたとはいえ王都は賑わい笑顔は絶えていなかった。
ルカはそんな王都の人々をみて心の中で現状を甘くみていたのだ。
「そんなこと聞かされても俺にどうしろって言うんだよ!」
マリは目を開きルカを見つめた。
「今私は各所に意識を改革されていない最も信頼できるコ達を潜伏させているの。
キミはそのコ達と協力しながら改革されてしまっている機械種の皆の制御を元に戻してほしいの。」
ルカは困惑した。
いきなり言われても困る、ただ王都にはロッカや村の皆もいる。
「けど俺1人じゃなにもできっこない……」
戦争の前線で戦ってきた猛者なわけでもないのだ。
それは不安でしかない。
「今王都にいて意識を改革されていないのはレディアを含めて数えれる人数しかいない。
その中からキミの護衛として同行させようと思ってる。
見た目はかわゆい双子ちゃんだけど戦闘になればキミ1人を守ることが簡単にできちゃう優等生だよ」
自分が意識の改革を解除できると口で言われてもどうやったのかもわかってない。
とりあえず今は頭がいっぱいだ、ルカは今だせる精一杯の答えをだした。
「……返事は後日でもいいかな」
答えというよりただ先伸ばしにしただけの言葉だったがマリに笑顔が戻る。
「勿論!そりゃいきなりこんなこと言われれば迷うのは当然だよね!
後日返事を聞きにいくことにするね」
街に灯り始めていた光だったが今は王都全体を包む大きな光と変化していた。
光に照らせれた三人の顔には
笑顔と困惑を優しくうつしだした。
こうしてルカにとって偽りの平和が終わりをつげようとしていたのだった。