やっとタイトルらしい内容に入ったよね
※初のバトルシーンです!
作者の都合により、一つの話にまとめたかったので今回は非常に長めです。
どうぞ最後までお付き合い下さい。
武術なしで誰かと戦うなんて初めてか……。
ふとそんなことを考えた。
今更ながらかつて封印された武術に頼りすぎていた事を後悔する。……本当に今更だ。
「異能『凍結』発動!『氷魔双剣』を構築。二刀修羅より敵を穿つ!」
如月の声が俺の意識を再び現実に戻す。
異能を発動する際の呪文は別に言う必要はないが、言った方が自分の異能をイメージしやすい。武器を発動する異能は特に。
まあかく言う俺もだが。てなわけで……
「異能『具現化』発動。『七刀抜粋』の知識を入力。具現化せよっ!」
俺の知りうる最強の武器を具現化させる。
ゆーても和葉さんの入れ知恵だけど。
空中で微細な光の粒子が複雑に組み合わさり、七本の刀が生成されていく。
やがてキンッ、という音を立て刀は俺の手に降りてきた。あーー、重いっての。
**
「あんた馬鹿なの? 七本もの剣を同時に持てる訳ないじゃん? それとも何 ?口に咥えるの?」
アハハハッっと、高笑いする如月。
ク、クソ、この女。相手の実力を測るんじゃなかったのかよ……。
………だがまあ、言ってろよ。『具現化』の真骨頂はこれからだからな。
なにも言い返さなかった俺を、責め立てられて押し黙ったのだと思い込んだ如月は、
「一気に片をつけてあげるわっ!!」
そう言って、俺の懐に飛び込んでくる。
馬鹿めっ、見てろよ。
思わずほくそ笑んだ。
俺は二本の刀で如月の双剣を捉え、残りの浮遊させた五本の刀で如月を嬲りにかかる。
だかしかし、先にその動きを捉えていたのか、すんでの所で如月は全ての刀を交わしきった。
おっかしいなぁ? 死角狙ったはずなんだけどな。
武術を封印されても、相手の拍動や筋肉の弛緩を読み取ることで、次に相手がとる行動くらいは予測できるんだけどな。
さすが『六魔』か。身体能力までも常人を遙かに超えている。
「な、なっ! あんた……。なんで、け、剣が!」
動揺しているのか思うように言えてない如月が指を指したのは、俺の周りで浮いている刀。
そう、まさに、『具現化』の真骨頂こそがこれだ。
生成した武器を自在に操る。
それは触れなくても、水中でも、空中でも変わることはない。
生み出した無機物は全てが俺の意のままとなる。
「はああああ―――? そ、そんなのチートじゃないっ! ズルよズル!」
そう言われても。
これが(大輝曰く)最強の異能だしな……。だが、チートだと言われる筋合いなどどこにもない。
「んじぁ、行くぜ!」
今度は俺から踏み込む。
先程どうり、二本の刀で如月を牽制しつつ、残りの刀でスキを攻撃していく。…………のはずが、なかなか当たらない。
もともと武術をやっていたせいか、剣術には深く関わってこなかった。和葉は何度も薦めてくれたんだけど。
まあ今度教えてもらうかな……。
「『七刀抜粋』! 追撃の陣!!」
今度は全ての刀を如月に向けて放つ。
如月は双剣を巧みに使って刀を弾き返したり、自らの微妙な体重移動だけで避けていく。
だが、その攻防は終わることはない。
俺が放ったこの追撃は、俺自身の意識と連鎖しているからだ。
**
攻勢に出ようとしていた序盤とは打って変わって、如月は防戦過多になる。
かと言って、俺は致命傷を与えられるわけでもない。
チッ、まずいな……。
このまま時間だけが過ぎていくと、確実に俺の負けだ。
さっき如月は俺の異能をチートだと言ったがそんなことはない。
最強の異能にも代償がある。限界がある。
ぶっちゃけると俺は異能を使うことで、酷く体力を消耗するのだ。
ヤバい、ヤバいぞ……………。
そんな不安と焦りが俺の脳内を染め上げる。
「ああっ、もう!クッ……。このぉ!やぁ……」
既に時間の半分が経過しても、如月の体力に変化はない。絶えず動き回る如月。
声だけ聞くと、ちょっとあれなのは放っておいて。
「あ―――――! まどろっこしい。いい加減失せなさい! 『氷壁爆矢』!!」
そんな声と共に如月の能力は進化する。
投げた双剣が勢いよく膨らんで、巨大な氷壁を生む。
と、次の瞬間。
内部からの激しい爆発により、氷壁は数十発もの弾丸と化して、四方に飛び散った。
それは離れて回復を図っていた俺にも当然飛んでくるわけで――――――。
すんでの所で避け切れたものの、回避した先にも氷弾がッッ!!!
「いってええ!!」
思わずそのまま倒れ込んだ。
「もらったわ! 『氷鎖巻蛇』!!」
如月の手から小さな氷の粒が生まれたかと思うと、それは一つ一つの鎖となり、やがて長いチェーンを造る。
ビュン―――――。それは矢の如く俺の体に巻き付いてくる。名前さながら蛇の如く。
「グハァ………!」
クッソ。腹の奥から血が込み上げてくる。
それを飲み込んで我慢することもできず、俺はそのまま地面に吐いてしまった。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!
マズいマズいマズいマズいマズいマズいマズい!
「思ったより、手こずらせてくれたじゃない。これで終わりよ」
如月は再度氷剣を造り出して、悪役のような笑みを浮かべて近づいてくる。
俺の目の前まで来ると、刀を真一文字に構えた。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!!
マズいマズいマズいマズいマズいマズい!!!
――――――――――――――――――――あ。
「痛たああぁぁッッ!!!」
誰かの大きな声が戦闘場に響き渡った。
初の戦闘シーン、どうでしたでしょうか?
意見・感想頂けたら嬉しいです。