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小さな暗号


 俺は体が小さいことを利用して隅々まで探すことにした。見つからないように静かに見回っていく。


「うおおお!!」

「これで十三人抜きだぞ!」

「あいつ、どんだけ強いんだ!」


 大輝が戦闘で敵を倒すたびに、そんな声が聞こえてくる。


 その方に一瞬気を取られてしまった。それと同時に、足元にあった何かに躓いて転んでしまった。


「いって……」


 なんだこれ、鉄のパイプ? いや、扉の取っ手か。よく見るとダイヤル式錠がついたマンホールのようなものだった。人ひとりくらいは入れそうな大きさだろう。


 これはまさか、地下に続く通路か!? これを伝って行けば、和葉さんが闘っている場所に繋がるかもしれない。だが、このロックをどうやって解除するんだ。


 俺が悩んでいると、扉に大きな影が差した。


「なにしてんだ、おまえ」


「いっ!?」


 振り向くと、そこにいたのは一番最初に俺たちに声をかけてきた賭け子のやつだった。


「いや、えっと……」


「それが気になるのか? それは俺達でもわからんやつだ」


 てっきり怪しまれて声をかけられたのかと思った。あぶない、あぶない。


「片内さんいわく、『右に三回、南に五歩』つーんだが。よくわからないんだよな」


「へえ……」


 それにしても、片内さんって誰なんだ。その片内さんが言ったのはどうもヒントにしか思えない。右に三回……ダイヤルの事か? 試しにダイヤルに手を伸ばしてみる。だが、それは全く動かなかった。


 硬すぎる。まったくもって動かなかった。そんな俺の反応を予想していたのか、賭け子は鼻を鳴らす。


「だろー? 俺たちも回してみたんだが、びくりともしないんだ。おかしいよなあ」


 確かに変だ。


 右に三回というのはまだわかる。だが、南に五歩っていうのは妙だな。どういう意味だ? ダイヤルに方向が必要というのは、よくわからない。南を下に置き換えるとか……?


 いや、ダメだ。ダイヤル自体が堅くて回らないというのに、方向を変えても結局同じだ。


「うおおお!! 『来電(スマッシュ)』! 『来電(スマッシュ)』」


「ぎゃっ」

「いったあ!!」

「ぐはっ」


 大輝が能力を使うたびにそんな悲鳴が聞こえてきて、どうもこの謎に集中できない。


 くっそ、考える時間が欲しい。だが悠長にしているほど余裕はない。どこかで和葉さんが闘っているならば、すぐにでも助けに行きたい。それに俺に呪いをかけた敵を早く見つけて解きに行かないと。


 賭け子と共にマンホールを見つめながら考えていると、再び俺たちの視界が暗くなる。顔を上げたと思ったら、いきなり脳天にダメージを喰らった。


「げふっ!」

「いったあ……なに、しやがる」


「なに敵と仲良くしゃべっているんだ。そんな余裕があると思っているのか、黒崎」


 いつの間にか後ろに立っていた神崎は鞘に入った刀で俺たちの頭を打つ。なぜか賭け子の方はその攻撃で気を失ってしまったのか、ばたりと倒れた。


「加減はしたぞ」


「加減って俺の方かよ……」


 抜いた刀を腰に戻しながら、神崎はしかめ面を見せた。


 まあ、さっき少し口げんかして別れたきりだからな。俺も顔を見たくなかったといえば、見たくなかったが。


「そこで何しているんだ」


「いや、ちょうどこの床にある扉を見つけてな。暗号も聞いたし、もしかしたら地下に繋がる通路かと」


「ほう。暗号か」


「そうなんだよ、『右に三回、南に五歩』ってな? よくわからないんだ」


「ダイヤル式か……」


 神崎はしゃがみこんで、俺が指さしたマンホールを覗き込んだ。


 一通り俺が試したことを伝えると、神崎は少し考える素振りを見せた。いや、まあ能力を使えばもしかしたら開くのかもしれないが、あんまり派手なことはしたくない。


 そんなことを言うと、神崎は大きなため息をついた。


「そういえばだが」


「なんだよ? これどうやって開けるか思いついたのか?」


「あっちにドアがあった」


「早く言えよ!!」


 なぜか沈黙を見せていた神崎がそう静かに言うのに対し、俺はツッコまずにはいられなかった。


「そのドアは普通に開いたのだ。どうも見る限り、他の部屋の方に繋がっているのだが、一応お前に声をかけておこうと思ってな」


「そうですか、わざわざありがとな!」


「なんだ、何を怒っている」


 俺がこんなに苦労してダイヤルを回そうとしていたのに、こいつはあっさり別の入り口を見つけていたとは……。べ、別にいいんだが。なんかしっくりこないな。


 とりあえず、謎に包まれたマンホールを置いておくことにし、俺と神崎はその扉の方に向かった。


 あ、ちなみに大輝は二十人抜きまでいったようだった。


 


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