闘技場の捜索
倉庫への扉を開けた途端、俺と神崎を迎えたのは数十人の男子学生だった。まあ学生と言っても、真面目な方ではなく素行不良の方だったが。
真ん中で誰かと誰かが闘っているのを囲んでいるようだ。激突するたびに歓声が巻き起こる。もちろん能力者同士が戦闘を行っているのだから、なかなかの熱だ。
まるで闘技場だ。
そう思っていると、観客の一人にいた男が俺たちの方に気づいて声をかけてきた。ニヤニヤとした表情が特徴的だった。
「お、あんたらも参加するか? 今なら千円から賭けれるぞ」
「え、あ……」
「いったい何をしているんだ?」
言葉に詰まった俺の心象を代弁するかのように、神崎はその男に質問した。
「あー? 片内さんが闘っている間、暇だからそこの六魔とやってんだ」
六魔、だと……? 今確かに六魔といったような。
真ん中で闘っているやつが気になって、ジャンプして覗き込んだ。果たしてそこにいたのは――大輝だった。
「いや、お前かよっ!!」
思わず声を張り上げてツッコんでしまう。そんな俺の声に周囲の人間が一斉に注目をぶつけた。「誰だお前」と言わんばかりの顔だった。そして本人も俺の方を見る。
「おまっ! どうしてここに!?」
「こっちのセリフだわ!」
そもそもお前がここに敵がいると教えてくれたから来たんだ。さっき俺と神崎が闘っていたといっても、割と時間が経っていたろうに。どうして六魔がまだここにいる。
いや、状況を見ればなんとなく想像は着くが……。
大輝の足元には既に負けたのか、数人の男子が転がっていた。全員黒焦げの顔だ。明らかに大輝の『電撃』を受けた後だとわかる。
あいつまさか、楽しんでるんじゃないだろうな。和葉さんの救出を他の六魔に任せて、ここでたむろっている不良と闘っているとしか思えない。
さっき話した奴も賭けがどうとか言っていたしな。
「なあ、和葉さんは別の場所で闘っているって言ってたよな」
「ああ、そう聞いたな」
「大輝が闘っているうちに、先に見つけに行かないか?」
「それはいいが……」
俺の提案に神崎は答えを渋る。
どうした、何がそんなにひっかかっているんだ。気を引いているうちに探した方が……。
「果たしてどこにいるか、だな」
確かに、この乱闘の状態でどうやって探す? 和葉さんがどこにいるかがわからない。大輝が一人一人倒しているものの、見る限りまだ二十人位はいそうだ。
部外者の俺たちがこそこそ嗅ぎまわっていたらそれこそ怪しまれそうなものだ。この倉庫内で、うまく探すには――。
「いや、俺がやるよ」
「いや、私がやろう」
む。俺と神崎の声が重なる。
「いやいや、体の小さい俺の方が……」
「いやいや、機動力に優れた私の方が……」
むむ。くそ、なんでこんな時に張り合うんだ。
「「勝手にしろ」」
仕方ない。二手に分かれて探すとしよう。
大輝が闘っていることでみんなの気を引いているうちに、探すとしよう。