四人の決意
神月の準備はあっという間だった。これから敵の本拠地に向かうということもあり、刀剣や銃火器の類を積んだチャーターまで案内される。
「ここは……?」
学園にこんな場所あったか? 小さめの倉庫のような場所だが、会場から五分ほど歩いた距離にある。今まで来たことがないだけか。
「ここは和葉様が生徒会の権限を使って、勝手に……いや、自主的に作られた倉庫だ。そこの管理を僕は任されている」
おい今、勝手にって言ったか? あの人どんだけ自由なんだよ!
「んんっ! ま、まぁ、とりあえずこのように……」
俺の視線から逃げるように、壁に取り付けられたボックスから鍵を取りチャーターのエンジンをかけた。ぶるぶると震えて、駆動音が鳴り始める。手入れはきちんとされていたのか、すぐに使える状態らしい。
「よし、いつでも行ける。大丈夫だろう!」
運転席に乗り込んだ神月はいろんなところを触って試していると、先ほど指示を受けて準備していた親衛隊の二人がやってきた。
「リーダーぁ、これってもう積んでいいでありますか?」
「重い! 重すぎる!」
アサルトライフルやショットガンのような銃が詰められた箱を抱えていた二人は、よほどの重さがあるのか、割と疲弊した様子で腰を下ろした。それをひょいと抱えて神月はチーャターの後方部に乗せた。
やっぱり体を鍛えているからか、二人がやっとかと持ってきたものを軽々しく持つのはさすがだ。無理しているようにも思えないしな。
「この銃はどこから……?」
「これも生徒会の方で申請したものをいくつかここに保管している。ちなみに全部実弾ではなく、睡眠弾に替えてある」
「どうして睡眠弾なんだ?」
「暴動の生徒を鎮圧するためさ。別に我々は攻撃したいわけじゃあないからね」
「なるほど」
「ああ、それと」
神月はなんでもない風に付け加えた。
「君はいつまで弟のフリをしているんだい、黒崎翔太」
「なっ!?」
どうして、わかったんだ。そう言おうとしたが、声にはならなかった。なぜだ、なぜバレた? というかいつからこいつは気付いていたんだ!?
「え、あ、……」
「安心しろ。あの二人にはまだ伝えていない。協力も断る気はない。君がどうして弟を語ったのかも興味はない」
ならどうして、わざわざそんなことを言うんだ。
「先ほど和葉様の状況を聞いたが不審な点はなかった。君が嘘をついている感じもしなかった。ならば、どうして弟がそれを知っている?」
「それは……」
「生徒会と六魔の方でつながりがあるのを踏まえて、和葉様が自ら特攻に行かれたことを知っているのは限られた人間だ。それを弟だけが知っているとは思えない。必ず上層部の関係者だ」
た、たしかに俺がいろいろとしゃべりすぎたこともあって、絞られたわけか。
くそ、今の俺の状態もあるから余計な詮索はさせたくなかったんだが……。
「なぜ俺と一致したんだ?」
「生徒会の人間や六魔の方々が我らに声をかけてくるはずがないからなッ!! そこから考えれば残りはお前しかおらんだろう!!」
「……。そ、そうか」
なんかちょっと悲しい理由で判断された気がする。
「だから黒崎翔太。君の状態は何があったのか知らないが、和葉様を助けたいという意思は我々と一致したので協力は惜しまない」
「そうか」
思わず笑みがこぼれる。本当に頼もしい協力者を得た気分だ。さっきまではお互いに不信感をもっていたせいか、どこかとげとげしい雰囲気はなくなっていた。
「さぁ、二人とも乗れ! 和葉様を助けに行くぞ!」
「了解であります!」
「いつでも戦えるぜぇ!!」
「「「行くぞ! 我ら親衛隊!」」」
オーっと元気良き拳を宙に突き出す三人。もちろん俺はしなかった。
全員の乗車を確認したチャーターは勢い良く倉庫を飛び出して行った。