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第四回戦 作戦会議①


蓮華さんの協力によって、一時的ではあるがショタ化の呪いが解けた俺はそのまま試合に向かうことにした。


 体を小さくする異能を持つ敵を倒すのに構っていて、本来の目的である大会に出場できなくなっていては意味がない。しかもタイミングが良くも悪くも、俺と如月の試合が刻一刻と差し迫っていたのだった。


 だからこそ、俺は試合が始まる前に如月と会って打ち合わせをしなくてはならなかった。


 前回の闘った花形の異能『共有(シェアリング)』のような不意打ち系統の相手だと、確実に不利な状況を強いられてしまう。だからこそ今回は慎重に慎重を重ねて、準備をしておく必要がある。


 それになんといっても、今回の相手が相手だけに――。


 遠くで歓声が響き渡る音が聞こえた気がした。


 一つ前の試合が終わったころだろうか。そのまま会場を盛り上げるために、あの司会がなにかやっているのだろう。


 そんなことを考えながら歩き続けていると、如月が既に待っているという控室に着く。一呼吸整えて、ドアノブを握りしめた。


 冷たい金属の感触が手のひらに伝わる。


 これも二回目の感覚だ。だが、それでもまだどこかで緊張している自分がいるのを感じる。


 闘うことにわくわくしているのも事実だが、負ければそれでオルガから俺の『具現化(オーバーキル)』を取り戻せなくなるという恐怖を感じているのも事実だ。


 だからこそ全力で勝ちに行かなくてはならない。一戦一戦を全力でだ。


「おっそいわよ、黒崎! 今までどこにいたのよ!」


 扉を開けた先にいたのは、いつも通りの勝気な表情を浮かべ少し棘のある口調で俺の名前を呼んでくる如月だった。


 小倉・花形戦の時のうなだれた悲しそうな顔はどこにもなかった。


 そのいつも通りの雰囲気を感じたことで、言い知れぬ嬉しさが心にしみわたる。そのテンションに触発されて、さっきまであった緊張が自分の中で薄れていくのを感じた。


「悪いな、ちょっと野暮用があってな。だけど、もう終わったからここからは全力で行くぜ!」


「そ、そうね。全力なのはいいことね!」


 如月の反応からして、俺がさっきまで敵の能力で小さくなっていたという事実を知らないのだろう。だが、それをわざわざ口にする必要もないと判断し、俺は伝えなかった。


 俺は近くにあったパイプ椅子に座り、如月に本題を促した。


「それで、今回の相手だが……」


「ええ。本気で対策を練らないと、確実に負けるわよ。なにせ今回の相手が」


「六魔の双子、だろ」


「なんだ、知ってたのね」


「ああ、来る前に大輝から少し情報をもらってきた」


 この学園で最強の能力を持つと言われている六人を集めた第六魔導生。その中でも第五位と第六位に双子の女の子がついているという。


 俺も一度だけ会議に参加した時に会ったが、そこまで関わっていないから覚えていない。


 大輝情報いわくになってしまうが、それでも情報は共有しておかないといけないということで如月に教えた。


 双子ならでは能力を有し、連携においては随一かもしれないと囁かれている。まさに今回の双方決闘祭ではうってつけのチームだ。気心知れてる味方なら、連携のミスなど起こりにくい。能力自体でぶつかるとなると、学園の最強に位置する相手にどれだけ闘えるか……。


 はっきりいって未知数だ。わからないことばかりで、気が滅入りそうになる。


「姉の桜城優(おうしろゆう)と、妹の桜城陽(おうしろよう)の双子ね。まだ一年生なのに六魔入りってのも恐ろしいわ……」


「姉の能力が『空嘘(ライアー)』で妹が『舞踏(ワルツ)』か……。名前だけだとどうにも推測できねぇな」


 嘘、というのは相手を騙す能力か。一方の舞踏ってのはなんなんだ? 踊るっていうのは攻撃の意味なのか? 


「あたしも彼女たちの能力を見た機会はあまりなかったけど、雨坂はどこで知ってくるのかしらね……」


 はぁ、となぜか如月は溜息を吐いた。


「同じ六魔なら異能を知る機会なんて、たくさんあるんじゃないのか?」


 序列はあっても、一応六魔の団体としてまとまらなくてはならないはずだ。味方なら能力くらいは開示していると思ったのだが、帰ってきた答えはそうでもなかった。


「残念ながら一枚岩じゃないのよね。機関としては味方だけど、実際は敵みたいなものよ」


「ん、どういうことだ?」


「そのまんまの意味よ。順位を争っている同士だから、異能を公開することは相手に自分の弱点を教えることになるのよ」


 なるほど。それなら自分から教えるメリットはないわけだ。


 

 


  


 

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