表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

川と王国と語学の必要性

 崖下は谷底で、結構な水量の川が流れていた。

 水面にたたきつけられた時はそれなりに痛かったが、心臓を貫かれた時ほどではなかった。

 つらかったのは、水中に入ってからだ。流れは思ったよりも早く、もがいても水面に上がることができなかった。定期的に時間逆行がかかり、息苦しさもなくなるが、もう一度挑戦しても水面までは上がれず、また結局はまた息苦しくなる。まあ、なんでこんなに沈むかと言えば、もったいなくて騎士団長の剣を腰に着けたままだからなんだけど。

 そんな風に七転八倒していると、ずっと忘れていたことがふっと思い出されるように、一つの言葉が浮かんだ。

 

 「無我の境地」


 俺がそれを口にすると、俺の感覚は電源を無理やり抜いたパソコンみたいにぷつりと途絶えた。

 俺が再起動したときはどうやら川の下流の川辺に流れ着いたという状況だった。


 むくりと起き上がり、周辺を確認する。ちょっと先に街道のようなものが見えた。周辺に人影はないが、道がある以上周辺に町か何かがあるだろう。


 それにしても、無我の境地か。どうやら、俺が覚えているスキルみたいだな。効果は、俺が困難な状況から抜け出すまで感覚を遮断するって感じだな。まあ、大体のことは時間が解決してくれるから、不死だしこれがあれば切り抜けられないことはほとんどないんじゃないだろうか。モンスターに襲われても、モンスターがどっかいくまで感覚を遮断していればいいわけだし。

 俺は街道に向かって足を進めた。騎士団長の剣を地面の上に立てて倒す。

 

 「あっちか…」


 俺は騎士団長の剣が倒れた方向を進む。しばらくは、その方向に川沿いに進んだ。

 手入れのしていないセイタカアワダチソウみたいな草がぼうぼうと生えている道が続いたが、何分か歩くと、段々と手入れされているような印象を覚える道になってきた。平原に大規模な畑も見えてきた。


 そろそろ人もいそうだと思っていると、野良仕事をしている人が遠目に見えた。

 のどかな風景だな。


 歩きながら、殺してしまったかもしれない兵士のことを考える。あーあ、やっちゃたな~。

 まあ、この世界で生きていくためにはきっとこういうことはこれからもある気がする。しかも、状況から見て、彼らが善行を行っているようには見えなかったし。まあ、これも言い訳かな。


 でも、一人は風で上空高く舞い上げられたのに生きてたわけだから、まだ生きているという可能性もなくはないか。とりあえずは、そう考えることが精神衛生上いい気がする。死んだと分かったら、一応、お墓で手を合わせるくらいはしよう。


 そんなことを考えながら、さらにずっと進むと、大きな城みたいなものとその城下町が見えてきた。リーナス王国ってやつか。


 「よし見つけた」


 俺はこういうときだいたい道を外すのに、今回は大当たりだ。俺は駆け足で城に向かった。

 城の門が見えてきて、門番らしき人が3人いるのに気づいた。門番たちもこちらに気づく。そこで、この世界の言葉を話せないことを思い出す。ああ、だめだこれで門番に話しかけられたら怪しまれる。


 と、ここで踵を返し、ちょっと道を戻ることにした。ちょっと、戻って落ち着いて考えよう。そう思って、何歩か引き返したところで、後ろからガシャンガシャンという音が聞こえる。振り返ると、さっきの門番のうち2人がこっちに向かってきていた。そっか、目が合っていきなり引き返すやつも怪しい。

 どうしようどうしようと思い迷っているうちに、すっかり門番たちが互いに会話できる位置にまで近づいて来ていた。まずいな…


 「$%〇▽◇#*■□?」


 わかんない。でも、向こうはまだ高圧的じゃないな。まだ、大丈夫かな。俺は、笑顔で若干首を傾げながらうなずく。そうこうしているうちにもう一人の門番の方も話しかけてきた。


 「◇#$%*〇▽□!!」


 こっちはずいぶん高圧的だな。みると、俺が腰にぶらさげている剣を指さしていた。「騎士団長の剣」だ。

 高圧的な男が剣を抜く。もう一人の方の男は俺の手を掴み、羽交い絞めにしようとする。

 「舐めるな!俺は、不死だぞ!」と思ったけど、腕力は人並みかそれ以下だ。あっさりと羽交い絞めにされる。高圧的な男の方が、おれをぶんなぐってくる。俺はすっかりすかさず「無我の境地」を発動。「無我の境地」を発動したことで、そこで俺の意識は途絶えた。


――――――――――――――――――――――――




 意識が戻ると、法廷のようなところにいた。というか、裁判長風の人もいるし間違いなく法廷だ。よくドラマとかで被告人が発言をしてる法廷の真ん中のお立ち台みたいなところにいるみたいだな。そこに、縄でぐるぐる巻きに縛り上げられて椅子に座らされている。

 

 「▽%*〇▽#$□!!」


 裁判長らしき人物が叫ぶ。きっと判決を言い渡したのだろう。

 おれは、背後から目隠しをされ、そのまま椅子ごとどこかに連れていかれた。


――――――――――――――――――――――――


 

 目隠しをされたままどこかに放り込まれた。縄は解かれたが代わりに手枷と足枷を付けられたみたいだ。

 とはいえ、不自由だがある程度手足は動かせるので、目隠しを取り周りを見渡す。

 この鉄格子…牢屋だな。下は石造りの冷たい床だ。薄暗いし、地下牢かな。

 鉄格子の向こう側にもう一つの牢が見える。

 あれ?人が見えるな。そっぽを向いて横になっている。

 話を聞こうと、声を掛けようとしたが言葉が通じないことをまた思い出す。だが、その瞬間、神々しい光を放って、俺の目の前にコンビニのおでんとかを入れる容器が出現し、ゆっくりと俺の足元まで下りてきた。

 なんだこれは?


 

 





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ