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うさぎと不死魔法と説明

 気づけば、森のようなところにいた。どうやら、違う世界に来たらしいというのは動物たちを見て分かった。どこの森かは知らないが、現実世界の森に、宝石のようなものが額にはまっているリスなどはいない。

 

 「ここはどこだ?」


 俺は、隣にいるでかい二足歩行ウサギに聞く。


 「貴様の感覚で言うと異世界ということになろうな。その異世界の…う~ん、この辺りはカイルの森のあたりだな。リーナス王国の近くだ」

 「リーナス王国っていわれてもなあ。俺はこれからどうすればいいんだ?」

 「自由に生きればいい。なあに、なにがあっても死んだりはせん。なにせ、不死だからな」

 「まあ、そりゃそうだろうけど。ちょっと、その不死のこととか、どうすればいいかとかさ、ちょっと教えてくれよ」

 「ふむ。まあ、仕方がないか。まずは不死の説明をしよう…」

 

 ウサギはそういうと、俺の左手を掴んだ。そして、無造作にそのまま手を引っ張り上げた。すると、俺の腕が割けるチーズみたいに自然に体から取れた。「え、引きちぎられた」と理解すると同時に、激痛が走る。あたりは鮮血で染まっていく。


 「ぎゃあああああああああ」

 

 俺の声とは思えなかった。が、俺から発せられている。嘘みたいな状況だ。不死だって言ったそばから、この始末。もしかして、手を引きちぎられても、頭だけになっても死ねないとかそんな感じなのか。じゃあ、そんなは地獄だ。願い下げだ。


 「時間(カウンタークロック)逆行(ワイズ)

 

 ウサギが魔法を使ったようだった。なぜか自分の中の魔法陣が起動したのが分かった。ウサギがくれた時計型の魔法陣が自分の中でチクタク言っている。


〚演算が完了しました。左手の状態を10秒前の状態に戻します。〛


 そう聞こえたかと思うと、ちぎれていた方の腕がフッと消え俺の体に戻った。


 「お主はそうとう頭が悪そうだからな。実際に見せた。これが不死、そして不老の種明かしだ。他者の体を時間を巻き戻し、正常な状態に戻す。これを定期的に行うことで老化にも対抗できるというわけだ」

 「いや、よくわかったけど。まあ、説明されてもよく理解できなかったかもしれないけど。怪我させるにしても、軽い切り傷でもよかったんじゃないのか」

 「まあ、細かいことは気にするな。もう少し説明を聞け。ここで一つ重要なのは、この魔法は自分にはかけられんということだ。つまり、我自身は我を不死にすることは叶わん」

 「ああ、なるほど、それで俺が必要ってわけか」

 「そういうことだ。お主の中にある魔法陣は、我の中に魔法陣と空間を超えて繋がっておる。そして、自動的に、お主の魔力を使って我の時間を戻し、逆に、我の魔力を使ってお主の時間を戻す。こうして互いに時間逆行の魔法を使い合うことで、互いに不死になれるというわけだ」

 「俺が自分の魔力を使う権利を放棄しなきゃならないのも、そのへんが理由か」

 「その通りだ。お主が考えなしに魔力を使って大事な時に時間逆行を使えないなどというのは困るからな。制限することにした」

 「信用ないな~」

 「信用などない」

 「……」

 「……」

 

 ウサギと見つめ合ったまま沈黙する。沈黙していると、さっき疑問に思ったことを思い出した。


 「定期的に時間逆行をして老化を防ぐってことは、成長とかレベルアップもリセットされるってことか?」

 「ぬふふ。お主ひょっとして思っていたよりも阿呆ではないのか。そこが私の時間逆行の自慢なのだ。魔法陣が演算を行い、選択的に時間逆行を行う。細胞の老化は老化する前に戻るが、筋力の増強などのプラスの結果だけは前に戻らず残る」

 「なんと、ご都合主義な」

 「ぬふふ。研究の成果だ」


 なるほど、すごい魔法だな。俺では何百年かかっても一人で使えたりはしななさそうだ。これなら、魔力の権利を譲渡してもおつりがきそうだ。


 「で、俺はこれからどうすればいい?」

 「お主はもう子どもではあるまい。自分で決めろ。剣術を習い騎士になるのもいいだろう。不死であることを買われて相当の地位を得ることもできよう。不死ということを活かし、人脈を作り、王や大商人をめざすのもよかろう。あるいは我のように世界の真理を探究するの…はお主は阿呆だからだめか」

 「いや、頭はよくはないけどさ。初対面のウサギに阿呆阿呆って言われるのは…いや、いいや、とにかくさ、しばらく俺と旅をして俺がこの世界に慣れるまでサポートしてくれてたりは…?」

 「?」

 「?」


 また、ウサギと見つめあう。オスのウサギと。いや、オスでもメスでもいいけど。


 「我がそれをする義理はないだろう?契約は対等だ。貸し借りはない。それに我も忙しい身でな。いまから、世界を回って大規模魔法のための魔法陣を書かねばならんのだ」

 「へえ。何のために?」

 「ぬふふ。それは、後のお楽しみというやつだ。なんにせよ、そろそろ我は行くぞ」


 そういうとウサギは両足に少し力を入れると、ぴょーんと、空に向かって跳んで行った、そんな殺生な、と思ったが、あっという間にウサギは見えなくなった。

 ええ、どうしよう。王国はどっちなの。自慢じゃないが、俺は3人姉弟の末っ子で、2人の姉と両親の愛情を一身に受けて育ったんだぞ。依存する対象なしにどうやって生きてゆけというんだ…


 





 






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