短歌(雑然4)
指一つ触れないままの春が過ぎあなたが残した穴がつめたい
夢ならば迷わずキスをすり抜けてありがとうだけ言えたはずなの
もうすこしこのまま夢を見ていよう朝がぼくらを見落とすうちに
ピーチティーばかり目につくコンビニで四季を感じるOL(私)
ストロベリーフレグランスで春を知り、無香料から無を知った犬
今日もまた子供の話で盛り上がる 美容整形前提の恋
また恋が実らなかったぶどう園 信じられない度数のワイン
休日にうっかり自分を取り戻す すべて一から始めてしまう
かぐや姫みたいに月に帰りたい 竹の中から出てこられない
「こんにちは、わたしゴミです」正直に言えばすこしは許されるかな
黙々と日課をこなす 挫折したときのダメージ量が増えてく
透きとおる犬の香りに誘われてキャンディまみれホワイト通り
これ以上ないってくらいに恋してて、笑うあなたはプティ新世界
面白いゲームをやったよし明日学校サボろ学校がない
寂しさや不安、悲しさ混じらないぽわぽわしてる虚無もあります
天の星ばかり見ていた目の前のきみの名前も知らないわたし
うつくしいきみの名前もぼくの舌にかかれば鼻をすするそれです
そこにあるリセットボタン捨てといて 使わないから もう二度とやだ
風船はなにが不満できみの手を離れてそらへ 空いた手をいま
壁に水かける最後の日曜日 夏の代わりの硝子の破片
月行きのバスに乗り込む 重すぎる愛を抱えて生き行くために
春風が背中を押してニュートンが見たことのないわたしが走る
花を裂く指が綺麗なあなた今、夏の目をして命を灼いた
頭から臍を流れて足裏に潰される雨 ぼくの夢です
突然にガラスの靴を履いたってステップひとつ踏めないもんな
何も言うことはないのに死んでないからいつまでも考えている
ゼロで割り、エラーを出して誤魔化した 元の数字もゼロだったこと
永遠の友情は嘘だけど今このときくらい本物でいい
夢はいつ眠るのでしょう暗闇の中で瞼も瞑れないのに
ルービックキューブを一面揃えても指輪の出てくる気配はなくて
空気清浄機は静か 間違ったことはひとつもしていないのに
夕日から線香めいた香りしてにのうで撫でるやわらかい死の
天使ではないのにきみを好きになるねむるみたいに息をしてみて
「月ばかり綺麗ですね」と嘯いた瞼は赤く縫い合わされて
残酷な映画を見ながら笑ってる料理は全部薄味になる
海じゃないとこで生まれたこともある 人とは違う天国へ行く
就活をしてると笑うなんかこれ文学的な試練みたいで
左手の薬指だけ執拗に傷付いていく冬の清水
朝焼けは終わりみたいな色してる 失くす前から寂しくなってる
愛じゃないものから順に消していく 馬鹿みたいになれればいいのに
電波的曲に合わせて腰を振る この子はきっとアイドルになる
街灯と同じ近さで光る月 どこにでもいるみたいに笑う
怒るごとすべて醜くなっていく すべて醜くなっていきます
柔軟を毎晩してる 将来は人の正気を奪う気でいる
もう生きることに興味がありません 視界の端に月がちらつく
いつからか夢に似ていた僕と君の愛に似ていた静かな日々に
朝なのに青すぎる空 昔から生きてたような記憶があって
春の日に木々は萌えるし揺れている 死んでるみたいにきらきら光る
春近くなるほどこころ悪くする 冬の精だか雪だるまだか
くしゃみするたびに生きてる感じしてかわいいかもね うそ 花粉死ね