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回生のカルテジス  作者: 立草岩央
第一章-与えられし命,居場所なき理想-
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-5-




「痛いだろ? 自分のしたことが,どういうことか分かっただろ?」


路地裏に位置する裏手の通路で,黒髪の少年が倒れ伏す男を見下ろしていた。

怒りを堪えるような目をした少年の服装は,この世界で流通する服とは異なるものだった。

動きやすい運動用の衣服,所謂ジャージに該当する。

対して男の方は,先程肩にぶつかったとしてジェルフに絡んでいた人物だった。

去り際にエス達へ舌打ちをしていた彼だったが,今は身体から血を流しながら,恐怖した様子で少年に懇願していた。


「ゆ,許してくれ……! お願いだ……!」

「許すって……お前,何をしたのか分かっているのか?」


そう言って少年は男性から目を離し,地に落ちたナイフを見返す。

刃渡り20㎝はあるそれは鈍い光を放ち,人を簡単に傷つけることが出来る鋭利さを見せていた。

少年は大きく息を吐き,それに手を翳す。

するとナイフは操られたかのように宙を舞い,彼の手に収まった。


「このナイフで俺を脅して,どうするつもりだったんだ?」

「悪かった……。もう,こんなことはしないから……」

「謝ることしかできないのか!? 大人なんだろ!?」


少年が激高すると同時に,男から血が噴き出す。

まるで見えない力に押し潰されるかのように,その身体が異様な方向へ曲がり始める。

再度男の絶叫が響き渡り,遂にその声を頼りにやって来た人々が集まり始める。

異常な光景を目にして息を呑む人達に気付いた少年は,苛立たしく顔を顰めた。


「人が集まって来た……。お前のせいだ……」


痛みに悶える男を無視して,少年は距離を保ったままの人々に視線を向ける。

手にしたナイフを放り投げ,大袈裟な身振り手振りで話し始める。


「聞いてくれ,俺は何もしていないんだ。コイツが脅してきたんだ。あのナイフで,金目の物を出せって言って,だ。だから,これは正当防衛なんだ!」


独白する少年だったが,町の人々は顔を見合わせ小声で話し始める。


「お,おい,何て言ってるか分かるか?」

「訛りが強くて分からないよ。ただ,自分は被害者だって言いたいような……」

「どう見ても加害者だろ。それに,訛りって……。やっぱりこいつは……」


目の前の光景もあって容易に少年を信用できない。

思ったような反応が得られず,痺れを切らした少年は突然血塗れの男を蹴り上げた。

鈍い音と共に所々から小さな悲鳴が上がった。


「おい,お前も何か言えよ! このままじゃ,また俺は……!」

「ひ,ひぃぃ……!」


男は動く手足で少年から逃げようとするだけで,反論する気力は失われていた。

あのままでは彼の命が危ない。

しかし,息を荒げる少年に進んで近づこうとする者はいなかった。

あの男のように大怪我をすることを考えると,誰も足が動かない。

少年の凶行を黙って見ていることしか出来ない。


「自分がけしかけたことだって,答えるんだよ!」

「待てっ!」


少年が再び足を動かそうとした次の瞬間,頭上からそれを止める声が響く。

誰の声だ,と人々が町の天井を見渡す中,少年達のいる通路に一つの影が落ち,人が飛び降りてくる。

それは騒ぎを聞きつけてやって来たエスだった。

エスは少年と野次馬の間に立つように着地すると,その光景を見て思わず言葉を失った。

同様に,自分の行動を邪魔された少年は無表情で彼を見据えた。


「なんだいきなり」

「これは……お前がやったのか?」

「だから……正当防衛だって言ってるだろ。コイツが俺をナイフで脅してきたから,やり返しただけだ。それとも,黙って金を出して殺されれば良かった,とでも言うのかよ?」

「そうは言っていないけど,だとしても,やり過ぎだろう!? なにもここまでしなくても!」


始めて見る血濡れた光景に圧倒されながらも,エスは少年を止めようと説得を始める。

しかし,彼は聞く耳を持たず,当然のことをしたような態度だった。


「こういう奴はさ。身体で言って聞かせないと駄目なんだよ。悪いことは悪いって,学校で習わなかったんだ。だから,俺が一から教育してあげてるのさ」

「本気で言ってるのか……?」

「本気って……何なんだよお前。やっとまともに話せる奴が来たと思ったのに,いきなり現れて好き勝手言って,俺が誰か分かっているのか?」

「誰って……誰なんだ?」


エスにとって目の前の少年が誰であっても関係はないのだが,あまりに意味深な言い方をするので聞き返してしまう。

すると少年は彼だけでなく,周りの人々全員に聞こえるように声を張り上げた。


「俺はもう,今までとは違うんだ。これは努力に努力を重ねて,手に入れた力なんだ。やっと,やっと俺は報われたんだ! あの神様のお蔭で!」

「神!? まさか,あの……」

「いや,言わなくていいよ。意味が分からなくて混乱してるんだろう? 俺だってそうさ。この力でどこまでのことが出来るか,まだ正確には分かってないんだ」

「いや,そういうことじゃなく,あのデウスのことを……」

「おいィ,だから勝手に話に割り込むなよ。話してる途中だろ。人の話は最後まで聞けって,教わらなかったのか!?」


神に選ばれた,という言葉からデウスの存在を感じたエスは,その情報を聞き出そうとするが,逆に少年の怒りを買ってしまう。

話を遮られることが余程腹立たしかったらしく,自分の頭を音が出る程に掻き毟る。

その後,怒りから一転して無表情に変わった少年は,そのままエスを睨んだ。


「もういい。どうせ,お前だって俺の邪魔をするんだろう? だったら同じだ。俺をあの頃と同じだと思ったら大間違いだ」


最早説得は通用しない。

エスを完全に敵視した少年は,彼に向けて右手を翳す。

何かが来る。

五属性とは異なる力の源を感じたエスは即座に身構えた。


「吹き飛べ!」

「っ……!」


次の瞬間,少年の手から得体の知れない力が放たれる。

風よりも早い速度で空気をかき分け,エスに襲い掛かる。

そしてその力がエスに触れる直前,低い振動音と共に弾け飛んだ。

力の残骸が辺りに飛散し,何事もなかったかのように静寂が訪れる。

町の人々だけでなく,少年も何が起きたのか理解出来ていない様子だった。


だが,エスだけは心当たりがあった。

彼は反射的に手からあの波動を放出していたのだ。

能力を無効にする透明な波動が少年の力に触れた瞬間,それを完全に打ち消した。

波動はそのまま遠くへと飛び去り,先細りになって消えていったが,エスはようやくこの力の使い方を理解する。


「何ともない。これが,無効化の力……」


少年は呆然としながら,自分の力を打ち消して飛び去った波動を見返す。

敵意を向けてきた者全てを打ち倒してきた力。

それが効かない相手が現れた事実を知り,彼は思わず口元を震わせる。


「お,俺の力を……! お前,何をしたんだ!?」

「そこまでだ!」


直後,エス達に割って入るように別の声が響いた。

誰に対しての呼び声なのか分からず,エスも後方を振り返る。

そこには住民を避難させつつ臨戦態勢を整える者達がいた。

見た目は三十代前後の彼らは,統一された制服を着こなし,二人がいる通路を封鎖している。

自警団に近い印象を受け,その内の一人が声を上げて警告した。


「ハバグサ・マコト! 聞こえているな!? お前を暴行・傷害の罪で連行する!」

「は,はぁ? 何言ってんだお前ら,馬鹿じゃないのか!? 俺は何もしてない!」

「やはり訳の分からないことを……話は後で詳しく聞く! 大人しく来てもらうぞ!」


男たちが警棒らしきものを構え,距離を詰めてくる。

だがあの棒だけで彼を捕らえられるとは思えない。

相手の能力が分からない以上,下手に刺激すれば返り討ちにあうだけだ。

エスは皆を守るために再度波動を生み出そうと試みるも,少年は一瞬委縮した後,混乱するように譫言を繰り返すだけだった。


「な……なんでこんな……どいつもこいつも,話が通じないんだ! く……クソッ! なんで僕ばっかり……!」


これ以上,事を荒げるつもりはないようだ。

宙に浮き家屋の屋根を超えた少年は,空を飛ぶように彼方へと飛び去っていく。

軽い衝撃波と突風が巻き起こり,周囲の家々が音を立てる。


「追うな! それよりも人命の救出を!」


少年を追おうとする者達を止めつつ,自警団らしき人々は血を流す男の救命に取り掛かる。

彼らも少年と無理に相対するつもりはなかったらしい。

重傷の男に息があることを確認し,すぐさま応急処置が行われる。

どうなることかと思ったが,取りあえず一件落着だ。

エスはこの場の事態が収まったことに安心感を抱き,警戒心を解く。

しかし,そんな彼の元に近づく人物がいた。


「あの少年と会話をしていたな。一体何者だ?」

「名前,ですか? エスと言います。それ以外は何も思い出せなくて」

「エス。そうか,役所から報告のあった記憶喪失者か」


威圧とも警戒とも取れる態度で,自警団の一人がエスに問いかける。

それなりに屈強な身体をしており,この集団のリーダー的人物に見える。

エスは事情を聞かれるのだろうかと思い名前を明かすが,突然肩を掴まれる。

何かを言うよりも先に,自警団の一部の者達がエスを取り囲むように包囲し始める。

少年が飛び去った今も,人々の警戒はまだ解かれていなかったのだ。


「君を拘束する」

「い,一体何を……!」

「事件を起こした以上,転移者の疑いがある者を放っておく訳には行かない。話を聞かせてもらう」

「転移者だって!?」


突然のことで戸惑う中,転移者という言葉にエスは驚きの声を上げる。

転移者とは,間違いなく現実世界からの参入者を指している。

この世界の人々は,デウスによって転移された人間のことを知っており,同時に危険人物であることも認知しているのだ。

転移者の立ち位置を知ったエスを他所に,自警団の面々は彼の肩だけでなく両腕すらも掴みあげる。

誤解を招かないためにも下手に抵抗できず,彼はその言いなりになるしかなかった。


「待ってください!」


だが,聞き覚えのある声が彼らを呼び止める。

野次馬を押しのけてやって来たのは,巻き込まれるからとエスが置いてきた筈のハル・イースデイルだった。

ここまで走ってきたのか,肩を揺らしながら息をついている。

そんなハルの姿を見た人々は,驚きの声を上げながら距離を取っていく。

自警団の者達も彼女を目にして,臆したように一歩後ろに引き下がった。


「ハル!?」

「お願い! 私の話を聞いてください!」


事情を知っているかのような彼女の懸命な声が,辺りを静まり返らせた。







「連中も気が立っていたとはいえ,災難だったな。二人は巻き込まれた側だったんだろう?」

「確かにそうだけど,自分から関わりに行ったのは確かだよ。あのままだったら,今頃どうなっていたか」

「なるほどな。なら,嬢ちゃんには感謝だな」

「そんな,別に私は……」


日が落ち始めてきた頃。

ハルの説得によって自警団の拘束から逃れたエスは,再び役所へと戻り,応接間でジェルフに事情を説明していた。

ジェルフは食べ物を獲ってくると言ったまま戻ってこない彼を心配していたが,これまでの経緯を聞いて概ね納得したようだ。

その間にも職員たちがせわしなく動き回り,扉の向こうで話し声や足音が聞こえてくる。

恐らく先程の少年が現れたことと関係しているのだろう。

そんな者達の合間を縫って,書類を持ったセイディがエス達の元にやって来る。

今起きている事態を説明しに来たのだ。

セイディは彼らと向かい合う形で座席に座ると,重傷を負った男性に関して命に別状はないことを告げ,続けて例の少年に関する情報が明かした。


「彼の名前はハバグサ・マコト。一か月以上前にリオディス国に現れ,多くの暴行沙汰を繰り返している転移者です。何度か捕えようとは試みたそうですが,彼の強さは尋常ではなく,返り討ちに遭うだけだったそうです」

「その転移者,というのは?」

「属性とは違う恐ろしい力を持ち,私達では太刀打ちできないほどの身体能力がある。そんな人達を,私達は転移者と呼んでいます」


書類をめくる音が聞こえる中,エスはあの少年のことを思い返す。

今回の騒動の元凶だった彼は,一見ただの少年だったが底知れない強さを感じた。

男を嬲っていたあの力は,五属性とは一線を画した異質な力だった。

簡単に人を傷つけることができ,仮に無効化が発動していなければ,エス自身も危うかったに違いない。

するとジェルフが不意に掲示物を差し出してきた。

それは役所に初めて来たときに見た,転移者に対する警告文だった。


「転移者を見分ける方法は二つ。一つ目は属性の力を持っているか否か。でも,まぁこれは俺達の中でも属性を持たない無属性持ちがいるから,あまり参考にはならない。力が出せないって主張されると,確かめようがないからな。だからこそ,一番見分けるのに適するのは二つ目,俺たちと会話が成立するかどうかだ」

「会話?」

「転移者は俺たちの言葉が理解できるみたいだが,奴らが発する言葉には大小はあるが必ず訛りがある。あのハバグサ・マコトにも強い訛りがあるって話だ」

「そうだったのか。俺には何も感じなかったけど……」

「この世界の言語は一つだけ。だから,転移者の正体は,別の言語が発達している別世界から来た人間,とすら言われているな」


暫しの沈黙が流れる。

エスは現実世界で死亡し,この世界へ飛ばされた。

あの時の状況とジェルフが語る推測は合致する。

彼にも信じたくない気持ちはあったが,盃の間と呼ばれたあの空間を見せられては否定のしようがない。

この世界にとって危険と見なされる転移者であると確信を得ていく。

そして,皆が思っていながら,あえて言おうとしないことをエスは思い切って打ち明けた。


「俺も,その転移者に当てはまるのかもしれない」

「そんな……」


ハルが不安そうな声を出すが,それを振り切り彼は自身の両手を見つめる。


「この力は確かに異質なものだった。属性の力とは明らかに違う。セイディさん,あなたも気付いていたんですよね?」

「確かに,その可能性はありました。だからこそ,この町に留まってもらおうと……」

「でもなぁ。それだと,一つ腑に落ちない。エスにはちゃんと言葉が通じるし,何の問題もなく会話ができている。訛り一つない。これはどういうことだ?」

「記憶がないから,それは俺にも分からない。ただ,一つだけ言えることがある」


記憶がない中でも確かな真実。

それはエスに新たな力を与えた,神を名乗るデウスのことだった。

皆の視線を集める中,彼は躊躇しながらもその存在を明かす。


「こんなことを言って信じてもらえるか分からないけど,この力は与えられたものなんだ。自分を神と名乗る奴から」

「神……?」

「初めて目覚めた場所は,本当は森の中じゃなかった。俺にも説明できない,異常な空間だった。そこで奴は俺に力を与えて,次の瞬間には,森の中にいた」

「おいおい,いきなり神様の登場かよ。正直,頭を打ったか心配する所だが……確か,そんな話を何処かの本で読んだことがあるな」

「トラバイトの書,ですね。私も目を通したことはありますが……。まさか,本当にそんなことが?」


ジェルフ達は何かしらの情報を知っているようだ。

この世界で神が信仰されているのかは不明だったが,既に半信半疑ながら認知されているらしい。

ならば臆する必要はない。

神の名を聞いて拒絶の意志を感じなかったエスは,今抱いている心情をそのまま吐露する。


「俺には何も分からない。ここが何処で,自分がどんな人間なのか。でも,誰かを傷つけるつもりはない。それだけは,分かってほしいんだ」


目覚めた時からの記憶は全て明かした。

これ以上語ることは何もない。

転移者が危険視されているこの世界で,エスは身の潔白を訴え,彼らの目を真っすぐに見据えた。

無論この程度で信用を得ようとするなど,虫のいい話であることは自覚していた。

しかし,口を閉じていたハルが,ゆっくりと彼に視線を合わせた。


「私は,信じたい。本当に転移者だったとしても,そんな酷いことをする人には見えないよ」

「その意見に賛成だな。暴れる訳でもないし,悪意のある奴とは思えない」

「二人とも……ありがとう」


ハル達は,転移者の可能性があるエスを疑わなかった。

短い時間ではあるが,今まで行ってきた人助けが実を結んでいるのだろう。

彼は感謝すると同時に,胸中に温かさを感じる。

人から信用されることの実感を覚える。


「ただ,ハバグサ・マコトに関しては目を瞑れません。今は直接彼に絡んできた人物に対する過剰防衛だけで,死人も,無関係な人たちへの被害も出ていませんが,いつその矛先が変わるか……」


セイディも否定こそしなかったが,その表情は深刻なままだった。

幾らエスの潔白が証明されようと,マコトが暴れ続ける中では転移者への畏怖の念は消えない,ということだ。

あの少年がどんな理由で人を傷つけているのかは分からないが,放置していては被害が増える一方だ。

だとすれば,エスに出来ることは一つしかなかった。


「なら,俺が行きます」


エスがそう言うと,驚いたハルが身を乗り出した。


「そんな,危ないよ!」

「この力を過信しているわけじゃない。でも,今まで捕まえられなかったってことは,これからも難しい,と思う。なら,これ以上被害が大きくなる前に何とかしないと。それに彼は俺より年下だ。物事の分別が分かっていないだけで,事情を聞けばこっちの話を聞いてくれると思う」


帰る場所がないエスにとって,ここで出会った人々が今の彼を形作っている。

町で起きている事件を見過ごすことは出来ない。

加えて,相対できる力も無効化以外にないというのなら尚更だ。

危険であることも承知で,マコトと説得することを望む。

するとセイディは手元の資料から目を離し,曇りのない彼の目を見た。


「あなたは,あの少年の言葉が分かると言っていましたよね?」

「少なくとも,訛りは感じませんでした」

「そうですか……。私も彼らの言葉を理解するため,独学で学んだこともありましたが,ハバグサ・マコトの言葉は一際訛りが強くて分かりません。もしかしたら,彼は何かを訴えたいのかもしれません。本当にあなたが協力してくれるのなら,私から職員の皆に掛け合ってみます。勿論貴方を信用していない人もいますし,説得は難しいでしょうが,それだけの価値があるはずです」


医者という職業上,転移者が起こした被害を思い知っているのかもしれない。

それでも,彼らを理解したいという気持ちが伝わってくる。

どんな目的があったとしても。その思いは本物なのだ。

エスはセイディに対して二つ返事で引き受けた。

しかしその直後,部屋の外が徐々に騒がしくなっていく。

職員たちの声が響き渡り,足音がより一層大きくなる。

何か起きたのかと皆が辺りを見渡したと同時に,部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

ノックをすることなく入って来た男性職員は,息を切らして唾を飲み込み,絞り出すような声を上げる。


「大変です! 例の転移者が……!」


焦燥の限りを尽くした言葉によって,エス達は事態の悪化を悟るのだった。




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