教えて都市伝説
ここはとある町のとある喫茶店、普通のお店に普通の店主がいます。
でもこちらの店主少々変わり者でして、なんでも嘘か本当か微妙な話…都市伝説ってのに詳しいそうです、しかもオカルティックなやつほど詳しいとかなんとか…
そんなわけで今日も物好きな客が物好きな話を聞きに喫茶店にやって来た、今回来たのは普通の高校生… 学生服に黒い髪、変に乱れてもおらずまぁまぁ真面目ないかにも学生って感じの少年です。
店主が来店した少年に聞きます
「いらっしゃいませ、御注文はお決まりですか?」
少年は答えます
「アイスミルクティーと“奇妙な話”をひとつお願いします」
そこでニヤリと笑った店主は「いける口ですか…」とおもむろに紅茶の用意を始める
…
「“スレンダーマン”というのを知ってるかな?」
店主は慣れた動きで紅茶をを差し出しながら少年にそう聞く
「名前だけなら」少年は答えた…
今回の店主が話すのは… 「スレンダーマン」
ご存知だろうか?スレンダーマンとは子供拐う長身の男で、黒いスーツの紳士風な服装している。
長身と言うのも単なる長身ではなく噂のひとつでは2.4メートルはあるというものだ。
この怪人の発端はある図書館から発見された2枚の写真、それがネットに公開されたとこから始まる。
その写真には公園で遊ぶ子供たち… そしてそれを見つめる気味の悪い長身の男が写っていた。
しかもその写真に写る者全員が行方不明に、そしてその写真が見つかった図書館は火事で焼け落ちたという。
なにか裏があるのか?共通点は長身の男「スレンダーマン」が関係していることだ。
だがスレンダーマンの話には拍子抜けな事実がある。
その写真はただのでっちあげで、想像の世界の話でしかないと言うのだ…。
そんな事実があるにも関わらず都市伝説として有名になったのには理由がある。
現実の大きな誘拐事件や行方不明事件、その直前にスレンダーマンの目撃情報が相次いだからだ。
事件関係者は言った
「奴は霧が深い街路や森の中で、黙って子供たちをつけ回すんだ!子供たちには奴がよく見えていないようで、運良く帰ってこられた子供たちはみな口を揃えて、直前に“スレンダーマンの夢を見た”と言うんだ!奴は子供を拐う化け物だ!」
次第に噂が広まり、ネット上にスレンダーマンの目撃情報や画像が大量にアップされるようになった。
…
「空想上の怪人がなぜ?」
少年は胡散臭そうに店主に聞いた、もちろん店主にそんなことはわからない。 彼が語るのはどこかで知ったそういう話だけだ… 事の詳細なんて知るわけがない、知ってるのはそれこそスレンダーマン本人だけなのではないだろうか?
だが店主は言った。
「信仰心…というやつじゃないかなぁ?」
「信仰心?」
信仰心… 宗教などで主に使われるだろうか?「神様信じてます」「主は絶対です」「仏陀の教えが正しい」等が信仰心に当たるだろう。
神仏を崇めたてる気持ち、教えを受け入れ普段の生活にそれを取り入れていく… などの意味である。
ただスレンダーマンに対しては誉め称えているわけではない…。
始まりの物語を信じきった多くの人たち、その人たちの心にあったのは「恐怖」だ。
「こんな奴がいるのか!」「あの事件もこいつの仕業だ」などと理由がつき始め、やがて恐怖は伝染する。
すると恐怖で存在を信じることでそれがスレンダーマンに対する信仰心となった。
多くの信仰が集まりやがてその集合意識はスレンダーマンを具現化させた… のかもしれない…。
「おばけが怖いのはおばけを怖いと思うから、そこにいると思うから…」つまりこういうことだろう。
この場合で言う信仰心とは、日本の妖怪や怪談、海外ではクローゼットの中のモンスター、恐怖を象徴するものの一種。
あるいは、空想の友達イマジナリーフレンドや、「タルパ」というイメージが作り出したエネルギー体のような物もあげられる。
つまり店主の見解では
「スレンダーマンはみんなが恐怖で作り出した空想の友達」である。
皆が噂を聞きそれを流し、恐怖することでスレンダーマンが現れ子供を拐う。
…
「日本にもスレンダーマンみたいなやつの話が流行りましたね」
店主の言葉に少年はハッとした顔で答える
「“八尺様”でしたっけ?」
「そう、似てる… 長身で子供を拐うというところは特に」
違うのは女性である… というとこだろうか?
スレンダーマンに声がどうのという話は聞いたことがないが、八尺様は「ぽぽぽぽ」と低い声で言うらしい。
国が違って内容もやや異なるがよく似た話が全く別のところで話される…。
…
「どうです?スレンダーマン…あながち全てがウソっぱちというわけでもなさそうでしょう?もしかしたら知らないところでいろんなスレンダーマンの話があるのかもしれませんねぇ…」
店主が話終えるとちょうど別の客が入った。
「いらっしゃいませ」と店主が対応をして、少年も紅茶を飲むと会計の準備をした。
…
少年が店を出て家に帰る際、見上げるほど背の高い男が入れ違いで店に入っていった。
少年は振り向くことなく家まで走った。
終