第五章:アルス・マグナが創りしもの――12
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――無駄なことだ――。
ウロボロスの感想は、その一言に尽きる。
水使いのアデプトが声を掛けたのは、錬金領土の住民だ。
彼らは、ホムンクルスとただの人間。錬金術は扱えるようだが、その威力はアデプトのそれには遠く及ばないだろう。
その、恐るるに足らない錬金術を、恐れる理由がどこにあるのか? 能力器官の一つを潰したくらいで何になるのか?
たとえ、こちらの手札を一つ落とそうと、それでもまだ一九九九九もの――
……そこで思った。
思いは、二つの疑問で、
――何故、無駄と分かっていながら、たった一つの能力器官を破壊した――?
そして、
――彼奴らは、どうやってここまで来た――?
このモニタールームは、厳重なセキュリティに守られている。
その内、三つはこちらのレーザーが破壊したのだが、それでも一つ、段に仕掛けられた電子錠があった筈だ。
つまり、問二の答えは、
――彼奴らは、発電系。それも、システム関連の錬金術の使い手――。
ならば、問一の答えは簡単だ。
彼らは、己の能力をこちらに通すために、全力で一つの能力器官を破壊した。
最後の疑問は、
――彼奴らは、何を狙っている――?
問三の解答は一瞬だ。
気付き、ウロボロスは地を蹴った。
「貴様ら! 我の〝真理節〟を狙っているのかっ!!」
ミオスタチン遺伝子を不活性にし、筋肉肥大となった、超人の脚力で。




