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洋上のアルス・マグナ  作者: kitaro-
第五章:アルス・マグナが創りしもの
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第五章:アルス・マグナが創りしもの――9


          ◇  ◇  ◇


「動きがないのう……」


 ウロボロスは、氷の壁に隠れる四人を、腕組みしながら傍観する。

 恐らく、策を練っているのだろう。


 邪魔をするのは簡単だ。しかし、それでは面白みに欠ける。己の手に入れた能力。その実験台として彼女たちを利用するなら、待っていた方が面白い。


 ――まあ、どちらにせよ無意味であるがの――。


 どんな策を弄しようと、自分に適わないのは分かっている。

 何しろこちらは、膨大な能力データを内包した、完全なる存在だ。その件数は、単純計算で二〇〇〇〇人分を凌駕する。


 二〇〇〇〇対四。どちらが勝つか? 賭け事としても不成立だろう。


 ……しかし、時間が勿体ない――。


 既に、待ち始めてから一分を越えた。この一分があれば、新たな発見もあるだろうし、新しい理論を文体に起こすことも可能だ。

 自分は死を超越しているが、時間は大切にしなくてはなるまい。彼女たちにも、十分な時間は与えた。


「では、そろそろこちらも動こうかの?」


 ウロボロスは、胸筋を強調するように左右の腕を開く。


 彼女たちを守る氷の壁は、推定だが氷点下一二〇℃と言ったところだろう。屈強にして、極寒。だが、破る術などいくらでもある。


 右手に大気を集め、左手の酸素を励起れいきさせた。

 動きがあったのは、直後のことだ。生体系のアデプトと水使いのアデプトが、氷の塹壕から飛び出した。


 ――三つに別れたか……。


 血染めの衣装を纏った、生体系アデプトは左側。全身を青で彩った水使いは右側。そして、特に記憶に残っていない二人は、依然、氷の裏にいる。

 言動から察するに、あの二人は錬金領土の住民だろう。ここまで戦闘にも加入していない。


 ……ならば、数に数える必要はないよの――。


 錬金領土の住民と言うことは、片方がホムンクルスで、もう片方はただの人間だ。つまり、アデプトを模倣した失敗作。戦力になる理由はないし、数えるだけ無意味だろう。


 だとしたら、


「お前たちに集中するのが、有意義というものよ」


 アデプト二人の排除を優先すべきだ。


 蜘蛛の糸と過冷却水かれいきゃくすいが、左右からそれぞれ放たれた。

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