第四章:再会したアデプト――8
◇ ◇ ◇
学校長の話が終わる頃には、夜の帳が落ちていた。
彼女の計らいで学校長邸に泊まることとなり、道真はベッドの上で仰向けになりながら、天井を見上げている。
左斜め上にある窓からは、月の明かりが差していた。
先ほどまでの、リビングの静寂とは内容が異なる、優しく静かな夜だ。
「道兄、起きてる?」
夜の静けさを乱したのは、妹の声と、控えめなノック音だった。
道真は上体を起こし、
「起きてるよ。何だ? 眠れねえのか、武?」
取りあえず入れよ。と、入室を促す。
ドアを開けると、不安そうな顔の賢妹は、気もそぞろに視線を巡らせた。
もとから明確な理由がなく、尋ねてきたのだろう。だが、気持ちは分かる。あんな話の後では、不安に駆られないことは、難儀だ。
自分の右横。ベッドのシーツをポンポン叩くと、武はユックリと歩み寄り、座った。
しばしの沈黙の後、
「ねえ、道兄? これからどうなるかな?」
「……さあな」
「……これで、良いのかな?」
「…………」
少し硬い武の声を聞いて、道真は悟った。
――ボクにできることはないのかな? って、言いたいんだろうなあ……。
だが、簡単に答えることはできず、
「さあな」
と、答える。
「俺には答えは出せねえよ。学校長だって、迷っただろうし、葛藤もあっただろうしな。何しろこの都市は、言わば、学校長の頼みの綱だったんだ」
今の学校長の選択は、
「その命綱を手放したようなもんだ。さっき事実を知っただけの俺が、軽々しく口を挟めるもんじゃねえ。何より、あのヘルメスが無言だったんだぞ?」
バハムートの話を最後まで聞いて、それでもヘルメスは何も言わなかった。
それが同情の意味なのか、軽蔑の意味なのか、確かめる手段はない。
しかし、自分はこう思う。……ヘルメスは、何を言えば良いのか、分からなかったんじゃないかと。
「学校長と、一番近い位置にいるのがヘルメスだ。あいつが何も言えないなら、俺に言える筈がねえ」
言い切ると、武は静かに、悲しそうに。それでもハッキリと、首を縦に揺らす。
「そう、だね。――ボクも、そうだよ」




