表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
洋上のアルス・マグナ  作者: kitaro-
第三章:バハムート
29/61

第三章:バハムート――1


          ◇  ◇  ◇


「余り目立たねえが、〝システムギルド〟は、〝錬金領土〟の運航に欠かせない存在なんだよ」


 道真は、ヘルメスに説明しながら、〝五番船〟を歩んでいた。


〝学級区画〟に属する五番船は、他の学級区画と同様の姿をしている。

 大型船の上に建設されたビル群。密集する無機質な建造物は、見るからに都会で、狭苦しいジャングルにも似た景観を形作っていた。

 五番船では〝形式科学〟が専攻され、通信などに用いるアンテナが、ビルと共存している。


「システムギルドってのは、通信を用いるホムンクルス。〝システムパーソン〟の共同体だ」


 その建造物の間。

 道のりを縫うように、二人の美女と進みながら、部外者であるヘルメスに話し続けた。


「脳波を変調できるシステムパーソンは、他のシステムパーソンと同期して、ネットワークを築いている。そのネットワークは黒子でありながら、必須でもあるんだ」


 例えば。と道真は、二つの職種を例としてあげる。


「この、九艘連結っていう、あり得ない構造の船上都市。その操船を務めている〝九人の道標(ナインローダー)〟はシステムギルドのメンバーだ。――加えて、船大工である〝海上妖精シーフェアリー〟の補助も、重要な仕事だな」


 そもそも、錬金領土の船は、全長九〇〇メートル・全幅二〇〇メートル級という、アホほどデカい船だ。一艘操舵するだけでも相当苦労する。

 それが、牽引橋けんいんきょうによって九艘ドッキングしているのだから、恐らく普通の人間では扱い切れないだろう。


〝九人の道標〟が、錬金領土というじゃじゃ馬を手懐けることができるのは、仲間との完璧な意思疎通がこなせるからだ。


 また、船体に使用されている、炭素繊維複合材〝CFRP〟の管理や、船に働く摩擦抵抗の軽減、剥離渦はくりうず対策を行う〝海上妖精〟が、スムーズに作業を行えるのも、システムギルドの補助あってのもの。


「その統括者。実質的なシステムギルドの〝長〟が、〝知倉京司ともくらけいし〟さん。今向かってんのは、彼女の仕事場〝ライブラリー〟だ」


 ライブラリーとは、読んで字の如く図書館のことだ。

 小説、文庫、料理本から古書まで取り揃えられ、当然ながら錬金術関連の書籍も存在。それどころか、ワンフロアを独占している。

 規模としては、国立図書館を二で割ったくらいで、望みの書物を探すだけで一苦労するほどだ。


 その書物の数ゆえ、システムパーソンが司書として働いている。

 京司さんは、その一員だ。


「言うなれば、情報の中心地。錬金領土中の知識と情報が集ってんだよ」

「だったら、何で始めから頼らなかったんだい?」


 不思議そうにヘルメスが柳眉を歪める。


 正論だ。最初から京司さんに頼めば、一発で〝バハムート〟と〝アルス・マグナ〟の所在を突き止められただろう。

 だが、


「み、道、道兄ぃ……」


 武が、カタカタと震えているのがヒントだ。

 正直に言ってしまえば、頼りたくなかった。


「大丈夫だ、武。俺が着いている。お前は一人じゃねえ。俺も耐えるから」


 完全に瞳孔が開いている武と、青ざめた顔をする自分を見ながら、ヘルメスが疑念と心配が混じった顔をする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ