第二章:二人の少女の対人事情――10
◇ ◇ ◇
その夜。
道真は、玄関からメインルームまでの間。つまり、廊下で就寝した。
彼が、己のベッドをヘルメスに貸したのが原因だ。
やはり道真も男であって、女の子に、地べたで寝ろなどとはいえない……と言うのは、本音であり建て前だろう。
彼としては、一瞬だったが妹の全裸を目にし、さらに、背中越しに彼女の柔肌を――不本意ながら――体感してしまったのだ。
いくら、ダブルベッドでないとはいえ、隣に当の本人がいるのである。
意識し過ぎて寝られないどころか、及んでしまうかもしれない。
そんな訳で、ヘルメスをつまみ出したい気持ちを抑えつつ、彼女にベッドを貸したのだった。
主に二名が過ごしにくかった夜を越え、朝が来た頃には、何とか武もニュートラルに戻れたようだ。
ただし、朝食時。道真と目が合うたびに、爆発音が聞こえるくらい赤くなっていたが。
そして、その後。
ノート型パソコンの画面と睨めっこする道真は、唸っていた。
「全滅かよ……。どんだけ強敵なんだ、バハムートって奴は」
その理由は、クラスメートから届いた、〝見付からなかったメール〟の大群だ。
「システム科の情報網にも引っ掛からないなんて、忍者かステルス機かニュートリノか? 隠密性高過ぎだろう」
苛立たしげに後頭部を掻きむしる道真に、ようやく、普通に会話できるまで頭の冷えた武が、提案する。
「道兄、ここまで来たら仕方ないよ。京司さんに頼ろうよ」
「ああ、気は乗らねえが、行くか」
「行くって、どこへ?」
見るからに渋面な道真に、ヘルメスが尋ねた。
「錬金領土、情報の中心地〝ライブラリー〟。――俺たちの上司の仕事場だ」




