第一章:錬金術師と錬金術師――2
◇ ◇ ◇
「いやぁ! 錬金領土が日本の一部で良かったよな、鳴宮!」
土曜半日授業という伝統的なカリキュラムを終え、帰路に就いていた道真は、友人のハイテンションな質問を聞いた。
質問というよりは、同意を求めた〝フリ〟に近い台詞だ。
彼の言いたいことは良く分かる。
本日、五月一日は土曜日で、順接的に明日は日曜日となるのだ。
そして、五月三日から五日までは祝日の連続であり、つまりはゴールデンウィークと名付けられた、大型連休がやって来る。
ここは、大西洋に位置するが、日本の一部であることに変わりなく、絶好のレジャー日和が幕を開けるのだ。
「四連休だぜ? 四連休! 今日の午後を入れれば、四・五連休だ! 当然、遊ぶよな?遊ぼうぜ? 遊ぼう!」
何だか、三段活用で盛り上がっているが、残念なことに誘われても断るしかない。
「悪いな。俺たちに取っちゃあ、連休はかき入れ時なんだ。依頼が増えるし、こっちにも時間がある。またとないビジネスチャンスなんだよ」
つうか、
「ウチの家計は火の車なんだ。のんびり休む暇も、パーっと遊ぶ資金もねえんだ」
「ああ。そう言えば鳴宮って、副業やってんだっけ?」
「武のポジションが、ギルド内では下の方でな、仕事があんまり舞い込まねえんだよ。結果、収入も低めだし……」
妹の武が務める〝システムギルド〟は、錬金領土内のネットワークを司る存在だ。
だが、とある理由から、武のランクは下の中程度となっている。所謂、ベンチメンバーに近い扱いであるため、思うように仕事がやってこない。
そのため、鳴宮家の台所事情は芳しくなく、副業として便利屋を営んでいる。いや、ぶっちゃけ、そっちが本業と言って構わないほどだ。
「まあ、あいつはあいつで家事とか頑張ってくれてるから、文句はねえけどな。今日も昼飯作ってくれてんだ。一緒に食べようってな」
そう告げたところ、友人は半眼をこちらに向ける。
「なあ、鳴宮? 前から聞こうと思ってたんだけどさ?」
「何だ?」
「お前、シスコン?」
「はあ? 何故そうなるんだよ。俺は、ありのままの事実を述べてるだけだろう」
「だってよぉ。わざわざ自分の〝ホムンクルス〟を女体化させるなんて、訳ありにしか思えねえよ。だとしたら、シスコンか。――考えたくはないが、あるいは…………」
「何だ、その間は!? 違えよ! 超違えよ!! 少なくとも、今、お前の脳内を巡ってる発禁妄想は、妄想に過ぎねえよ!!」
いくら何でもあんまりだ。
彼の考えでは、自分は性欲処理のために、己のパートナー〝ホムンクルス〟を女体化させた、ド変態となっているらしい。
だが、事実から言って、武が妹となったのは単なる偶然なのだ。
「〝マグヌス・オプス〟の結果。〝ゲノム編集〟の影響に過ぎねえんだからな」




