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そのときに見た、先輩の演技は…すごかった。
俺が想像していた"演劇"を遥かに越えていた、、いや、俺はあのとき、演劇のことが何もわかっていなかったのかもしれないが。
そして、特に目が行ったのが…当時の部長、桜木先輩だった。
台詞から演技から何から何まで、劇部についての説明までも…とにかく先輩の動きの全てが輝いてみえた。
そして、俺は決めた。
―…演劇部に入って、桜木先輩のようになると。
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ポリ袋を用意し、散らかったゴミを片付ける。
「っはははっ!!それでさ、あれが…」
「あ、あれ?だよなだよなー」
部員の笑い声が聞こえる。
俺は、桜木先輩のようになれなかった。
あの、憧れていた…先輩のように。
あの、光輝く舞台。
俺は、演じたかった。
桜木先輩を、演じたかった。
片付け終えた部屋は、ゴミはなくなったものの埃っぽくて空気が悪い。
だから俺はいつも基礎練をするために、屋上に行く。
昨日のTVの話題で盛り上がる同級生を置いて。
「あ、え、い、う、え、お、あ、お!」
「か、け、き、く、け、こ、か、こ!」
「「さ、せ、し」」…え!?
後ろを振り替えると、そこには、見知らぬ女の子が一人。
年齢は…俺より上にも下にも見える。
とくはな高校の制服を着ているが、なんだか不思議なオーラをまとった女の子だった。
「えっと…だれ?」
「あなたは私が見えるのね?」
いきなりなんなんだろう。とりあえず首を縦に振る俺を満足そうに眺めている。
いや、普通に人間同士なんだから、見えるに決まって…あ!
もしかして、この子、幽霊なのか?俺は、亡霊を見てしまっているのか?うわ、うわあああ!!
「あの、、もしかして、私のこと怖がってる?やだなぁ、こんな可愛い魔女が助けに来てやったというのに。失礼しちゃう~」
「へ…?」ま、、魔女…?
漫画や小説の中でしか見たことないから、余計驚きだ。
「そう。私の名前はマラード。ここから斜め上の星のマホラル中等付属高等学校魔法科の学生。つまり、魔女見習いってこと!!」
話を聞くところによると、魔女になるためには、卒業試験に受からなければいけない。マラードは現在12年生、、毎年卒業試験魔法に失敗して留年を繰り返しているらしい。
今年の卒業試験材料に選ばれたのが…俺。
「ま、そういうことなんで、しばらくよろしくねっ‼」
い、いやいや待てよ…俺、こういうの理解するのに1週間はかかるんだよな…。
マラードはニタッと笑ってみせると、ふわーっと消えていった。
マラード。この子と出会ったこの日が、まさかあの始まりになるなんて、このときは知るよしもなかった。




