-プロローグ-
「…っ!!お前ら!!いい加減にっ…」
―時は、9月24日。秋風が吹きわたる、心地よい日の放課後。
「ったく、何回言えばわかるんだよっ!!!!!」
―俺は何故怒っているのだろう
「おい!!お前もお前もお前も!さっさと片付けろ!!!!!」
―はぁ…俺は…何がしたくてこの部活に…
「あぁもう!お前らは…お前らは、何がしたくてこの部活に入ったんだよ!!」
俺の視線の先にあるのは、お菓子のごみや、空いたペットボトル、空き缶、さらには食べこぼしなどによって荒れに荒れた教室。
ここは…かつて全国大会出場で有名だった、徳野花高等学校演劇部の部室なのである。
かつて。その3文字が表す意味とは、とても深刻なものであった。
俺、秋森琴羽は1年と少し前の春にこの高校に入った。
文武両道を謳う徳野花高等学校(通称とくはな)は毎年受験倍率が他の学校より高く、合格は狭き門であった。
そんなとくはな高校に入り、最初に目に入ったのが演劇部の功績を讃えるトロフィーの数々。
その日の放課後、俺の足は自然と演劇部へと向かっていた。
そして、新入生歓迎公演で見た先輩の演劇が、俺と演劇部の最初の出会いだった。