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異形の化け物

ちょっと問題ある回かな・・・?

「さっさと死ね! この売国奴共めぇ!! 貴様等の所為で日本が駄目になってるんだ!!」


「黙れ! お前等が死ね! この軍国主義者共!! 日本を駄目にしているのはお前等だ!!」


 一人の生存者が異形の巨人に踏み潰されている頃、近くの避難所にて、右翼系組織と左翼系組織の人間達による口喧嘩が起こっていた。暴力による殴り合いや、武器を使った殺し合いが起きないくらいマシな物だろう。お互いが退かずに強く罵倒し合い、一向に終わりが見えない膠着状態となっている。

 何故こうなったのかは、女達の怨念が漂う女呪島に突然連れてこられて皆苛立っているからだ。


「み、皆様・・・お、落ち着いてください・・・!」


 それを止めようと、バストが人並みよりも大きい童顔の女性兵士、アリス・チャーチルがオドオドしながらも宥めているが、双方は彼女の声を全く聞かず、未だに続けている。


「日本が再軍備化せねば、シナと半島を黙らせられんではないか!」


「黙れ! 人民義勇軍が日本に駐屯すれば、完全なる平和国家の誕生なんだ!!」


「こいつ等、本性を表したな!?」


「お前等こそ!!」


 お互いの本音が漏れれば、忽ち殴り合いが巻き起こる。脇で見ているアリスの同僚達は「また始まった」と頭を抱えた。見せしめのために、双方の政治組織の構成員を木に吊しているが、余り効果を成してない様子だ。

 仕方が無しに部隊長である下士官が、手に持っているAEK-971突撃銃の安全装置を外し、右翼か左翼のどちらかを見せしめに殺そうと向かう。

 だが、向かう最中で何かが飛来する音が彼女等の頭上を通り過ぎる。

 物の数秒で飛来した物は右翼のリーダーと取っ組み合いをしていた左翼のリーダーに当たり、おぞましい肉塊へと姿を変えた。


「う、うわあぁぁぁぁ!! お、俺の手が!?」


 右翼のリーダーは生きているようだが、先程の飛んできた物に両腕を巻き込まれたようで、叫び声を上げている。


「う、うわぁぁ!?」


「ひ、ひぃぃぃ!!」


 それを聞いてか、双方の者達は喧嘩を止め、顔を真っ青にして恐慌状態に陥り始める。先程好戦的に殴り合いをしていたのが、まるで嘘のように。幸いにもアリスは無事であり、顔と衣服に返り血が付着している程度で済む。


「うわぁぁぁ! わぁぁぁぁ!! わぁぁ・・・」


 未だに叫び続けている左翼のリーダーの男を、部隊長が頭に銃弾を撃ち込んで黙らせれば、部下達に周囲を警戒するよう命じた。

 双方の構成員等は怯えきり、情けない姿を晒している。


「ほら、あんたも!」


「さ、サー!」


 同僚からの声に、尻餅をついていたアリスは立ち上がり、スリリングに掛けていたドイツの銃器会社のヘッケラー&コッホ社のベストセラー製品であるMP5A5短機関銃を取り出す。安全装置を外し、縮小ストックを引き、右肩にしっかりと銃座を付ければ周囲に銃口を構える。他の同僚達も各々が持つ銃を周囲に構え、互いの死角を埋め合わせる。

 尚、右翼と左翼を含める避難民は度外視しており、完全に救う気すら感じられない。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


「な、なんだよ・・・!? 何が起きてんだよ・・・!」


 兵士等の荒い息遣いと避難民の怯えきった声が耳に入る中、敵らしき影がアリスが構える銃の小さい穴の照準器に写った。


「て、敵・・・!」


 言葉の後に引き金を引き、目標に向けて銃弾を撃ち込む。


「やった・・・?」


 照準器から目を離し、敵が居る方向を覗いてみたが、敵を仕留め損なう。


「なにか居たの!?」


「い、居ました・・・! 敵らしき物が・・・!」


 問い掛けてくる上官に対し、アリスは直ぐに答える。

 仕留めたような感覚がしなかったので、もう一度照準器を覗き、目の前から来るであろう敵に備える。


「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!」


「敵襲!!」


 後方の兵士が悲鳴が聞こえた方を見て、知らせてから銃を撃ち始めた。


「な、なによこいつ・・・!?」


 味方が撃っている兵士が撃っている物を見れば、そのおぞましい姿に驚愕した。

 不気味と言って良いほどの姿であり、ナメクジを巨大化させて食人鬼の化け物にしたような感じだ。

 気味が悪い職種が身体の両側面にあって、それで避難民を捕まえ、鋭利な歯が沢山ある口へ放り込み、噛み殺して食っている。

 必死に小銃弾や拳銃弾を当てているが、皮膚が硬いようで全く貫通していない。銃弾が通じないのを見た兵士等は驚き、思わずに声を上げる。


「じゅ、銃弾が!?」


「RPG! RPGを!!」


「りょ、了解!」


 部隊長が銃弾に負けないくらいの声量で言えば、アリスは撃つのを止めてロケットランチャーを取りに行く。


「うわぁぁぁ!!」


「た、助けてくれ!!」


「わ、わぁぁ・・・わぁぁぁぁぁ!!」


「なぁ、守ってくれるよな? なぁ?!」


 アリスがロケットランチャーを取りに行っている間、避難民は逃げ惑い、右翼の人間は戦いもせずに逃げ、左翼の人間は近くにいる女兵士に泣き付き、自分達を守ってくれるようせがむ。


「うっさい!」


 これが彼女等の怒りを買ったのか、泣き付いた左翼の人間は邪魔と判断されて撃ち殺された。

 一方、武器が保管されている集積所にたどり着いたアリスは、ロケットランチャーが入っている箱の蓋を取っ払うように開ければ、中に収まっている使い捨てのロケットランチャーであるM72LAWを取り出し、安全装置を外してから戦闘に戻る。

 しっかりと構えて照準を避難民を食い散らかす目の前の化け物に合わせれば、直ぐにでも本体上部にある発射ボタンを強く押した。

 本体後方の排出口からガスが吹き出し、ロケット弾が目標へ向けて勢い良く発射された。


「命中!」


 見事ナメクジの化け物に命中し、胴体に大穴を開けることに成功した。


『グォォォ・・・』


「やった!」


 空いた穴から血を大量に吹き出し、呻き声を上げて地面へ倒れ込んだ。

 生死を確認しようと三人ばかりの兵士が近付き、銃剣を付けた突撃銃を持つ兵士が倒れた化け物の死体を何回か突き刺し、生きているかどうかを確かめる。


「死んでます!」


「ふぅ・・・これで・・・」


 報告でホッとして額の汗を袖で拭う部隊長であったが、悲鳴は鳴り止まず、断末魔は未だに聞こえてくる。

 まだ何かあるのかと、アリスが双眼鏡で悲鳴や断末魔がする方向を覗けば、佐藤麻子(さとう・あさこ)を踏み潰した異形の巨人が避難民を襲っている光景が見えた。

 更には先程の巨大なナメクジのような化け物に似た生物が、多数確認できる。


「て、敵・・・更に増加・・・」


「嘘・・・嘘でしょ・・・なんでこうなるのよ・・・!?」


 顔を真っ青にしたアリスからの報告を聞き、部隊長は絶望しきった表情を浮かべ、地に膝を着いた。


「ど、どうするんですか・・・? 民間人の救助は・・・?」


 地に膝を着ける部隊長にどうするのかを問うたが、当の本人はそれを否定して自分達だけ逃げようとする。


「に、逃げるのよ・・・全員装備を纏めて安全地帯にまで撤退! 早くしなさい!!」


「そ、そんな! 民間人を見捨てるんですか!?」


「馬鹿! あんな連中助ける意味も無いでしょうが!」


 立ち上がって気を取り直したと思ったら避難民を見捨てて逃げようとする部隊長に対して抗議するアリスであったが、同僚は上官の意見に賛成であり、撤退の準備を始めた。

 撤退の準備は、巨人が避難民に気を取られている御陰で順調に進んでいる。一人反対するアリスは、避難民を助けようと単独で向かうが、同僚達に取り抑えられてしまう。


「な、なんでこんな事を・・・!?」


「煩いわね。あんたあいつ等救うとか馬鹿なこと思ってないでしょうね? あんなの守ってられないわよ」


 自分を抑え付ける一人の同僚に問えば、余りにも無責任な答えが返ってくる。

 それに怒りを覚えるアリスであったが、装備を調え置いた部隊長は、彼女を邪魔だと判断して"処分"を命ずる。


「あぁ邪魔ねこいつ。始末して」


「りょ、了解!」


 無慈悲にも部下の処分を同じ部下に命ずる部隊長。これにはややアリスを抑えている部下達が動揺を覚えるが、やらなければ自分が始末されると思い、その命を受諾した。

 一人が抵抗されないように抑え付け、もう一人が腰のホルスターからグロック17自動拳銃を取り出し、それをアリスの頭に銃口を向ける。


「一瞬で楽にしてあげるから・・・」


 優しく語る同僚の言葉に、一瞬死を覚悟するアリスであったが、彼女等の元にも化け物が現れ、十九名の内一人を食っていた。


「化け物よ!」


 その声に気を取られ、自分から目を逸らしたのを見逃さなかったアリスは、拘束を振り払って別の場所へと逃げた。


「待ちなさい!」


 逃げたのを見逃さなかった同僚達は手に持った銃で逃げるアリスを撃つが、激しく動く的に当てられない。数発ほど腕や脚に掠った程度で済み、遮蔽物まで逃げ切れた彼女は、装備があるかどうかを確認した後、戦友達が居た方向を覗いた。


「あぁ・・・」


 そこに広がる光景は、アリスが絶句するほどのおぞましい物であった。

 戦友達は多数の化け物に抵抗するが、銃弾でどうこう出来る相手ではなく、一人、また一人と無惨に喰い殺されていく。


「や、止めて! あぁぁぁぁ!!」


「た、助けて! ママぁー! 死にたくないよ!!」


 悲鳴を上げ、助けを請う声もアリスが身を隠している場所まで聞こえてくるが、今の彼女には、戦友達にしてやれる事は何もない。

 必死に声が漏れないように口を押さえ、ただ瞳から涙を流して泣くばかりである。


「ご免ね・・・みんなご免ね・・・!」


 骨や肉が砕ける音、悲鳴や断末魔が耳に入って地面が血で紅く染まる中、アリスはただ必死に死に行く彼女等へ向けて謝るだけであった。




「あぁ、嘘付いたわね。あの女」


 一方の麻子の嘘に従ってその方向へ来たマリは、人の肉を食い漁る食人鬼と遭遇した。

 彼女の目の前には、動物のように人間を食い漁る者達が居る。無論、その者達が食人鬼である。口元は肉を頬張っている所為で血塗れであり、手にはそれぞれ千切れて歯形が付いた腕や脚が握られている。


「お、女だ・・・!」


「軟らかい肉だ・・・それに美人だ・・・! グヒヒ・・・」


 マリの存在に気付いた食人鬼達は、手に持った人の肉を食いながら彼女の姿を見て、下品な笑みを浮かべた。


「犯してから食おう・・・」


「そうしよう、そうしよう・・・」


「良い感触がしそうだ・・・」


 自分を犯そうとするその目付きと言葉で、マリは全員を殺すことにした。まずは一番近い距離にいる食人鬼を手に持つSG550突撃銃で頭を狙い、撃ち殺す。血飛沫を上げて倒れるが、食人鬼達は死を恐れずに突っ込んでくる。


「肉だ!」


 銃声で他の食人鬼達が気付き、食事を止めてマリが居る方向へと向かって来た。

 敵を正確に撃ち殺して行くマリだが、一発必中で仕留めても、敵は数の多さを生かして突っ込み、彼女を消耗させようとする。

 だが、彼女は一切焦って居らず、作業のように食人鬼達を撃ち殺していく。

 敵を撃つその目付きは、まるで的でも撃っているような目だ。相手を人間だとでも思っていない。尤も、敵は人の肉を食って人の道から外れた外道だが。

 ワンマガジン分の弾薬を使い果たせば、後ろへ下がりながら空の弾倉を手早く外し、ポーチから取り出した新しい弾倉に取り替え、右側のボルトを引いて初弾を薬室へ送り込み、射撃を再開する。

 二つ目のマガジンを使い切る頃には食人鬼は残り少なくなり、戦意を無くし、逃げようとしている。


「ひっ、ひぃぃぃ!!」


「に、逃げろ!」


 マリの圧倒的な強さに逃げようとする残り少ない食人鬼達であったが、彼女は容赦なしに追撃を仕掛ける。

 スリリングでSG550を吊して背中に掛けてあるMSG90半自動式狙撃銃を取り出し、スコープを覗き、安全装置を外してから食人鬼達の背中を撃つ。

 視界で動いている物が全て消えれば、本体から弾倉を引き抜いて残弾を確認した後、それを差し込み、ルリを探そうと、そこを去ろうとした。


「銃声・・・あっちの方から・・・」


 銃声が耳に入ったマリはそちらの方向に視線を向け、双眼鏡でその方向を覗いた。

 映っていたのは、化け物や異形の巨人に襲われているアリスと避難民達だ。マリはあそこにルリが居るかも知れないと思い、地獄とも居る場所に自ら飛び込もうとする。

 足の速さはアスリート並であり、重い装備でありながらも速度はまるで落ちていないように見える。

 数分間走っていれば現場に到着。早速の歓迎なのか、生き残った避難民がマリに抱き付くように助けを請うてきた。彼女にとっては良い迷惑であり、直ぐにでも殺す気であったが、状況を聞き出すためにライフルの引き金から指を離し、訳を聞く。


「た、助けて! 私を助けてよ!!」


「話すこと話したら助けるからさ。教えてよ」


「良いから俺達を助けろよ! お前兵隊なんだろ!? 何処の国だか知らないけどよ!!」


 もう一人生き残りが居たのか、無償でマリに助けるよう命じる。

 それに苛立ったマリは、腰のホルスターからP228自動拳銃を素早く引き抜き、自分に責任感を押し付ける男の避難民の頭を正確に撃ち抜いてから再度目の前にいる女の避難民に問う。


「もう一度聞くけど、何起こってるのか教えてよ」


「は、はいぃぃぃ!! ば、化け物と巨人が出て来てもう絶望的です!!」


「うん、化け物と巨人ね。行って良し!」


「え! 助けてくれないの!?」


 化け物と巨人が出て来て絶望的。

 それである程度分かったマリは、狙撃銃から突撃銃へ切り替え、先の避難民を助けもせず、地獄の釜のような場所へ乗り込んだ。


「うわぁ・・・この島やばいわね・・・」


 神すら絶句するほどの光景を自分の碧い目で見たマリは、周囲にいる異形の化け物と、転がる無惨な死体を見て軽く手で口を押さえる。

 彼女は戦場で酷く損壊した死体は見慣れているが、これ程酷く損壊した死体は見たことがない。

 そればかりでは無く、転がっている死体等は起き上がり、マリに向けて呻き声を上げながら近付いてくる。

 その起き上がった死体の外見は、頭が割れて目玉が飛び出している物、顎が抉れた物、杭が頭に串刺しになっている物、内臓を垂れている物等が居る。


「ゾンビは知ってるけど・・・こんなにグロイのは初めてよ」


 初めて見る種類に感心しつつ、直ぐに突撃銃を向かってくるゾンビの弱点とも言える場所へ撃ち込み、元の死体へ戻す。その弱点は典型的の頭であり、マリの射撃力の高さもあって狙いは正確である。周りにいたゾンビが全て片付けば、次は化け物の出番である。


「さーて、お次はデカイのね・・・」


 周りを囲むように出て来る異形の化け物等に、マリは臆することもなく立ち向かった。

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