狂人達
ごめん、カリバリズム入れられなかった。
ハンマー無双でご勘弁下さい
正芳は暫ししてこれからどう生き残るのかを苦悩している間、到底信じられない物が多すぎて睡魔が襲ってきたので、本能に従い、ソファーで仮眠を取ることにした。
ソファーの上で横になれば睡魔に勝てるはずもなく、そのまま夢の世界へと導かれた。
「お兄ちゃん! って、寝てる・・・疲れたのかな?」
十分に寝て起きたルリは声を掛けたが、ソファーに横になって居眠りしている正芳に悪いと思い、毛布を被せて書き置きを残した。
「これで良しと」
メモに何か正芳に対するメッセージを書けば、そのまま書き置きを目立つ場所に置く。
それから装備を身に着けてから出入り口のドアに近付き、ドアノブを握って正芳の方へ申し訳なさそうな視線を向ける。
「ごめん。私、行かなくちゃ」
そう聞こえない正芳に告げればドアを開け、彼を残してこの安全とも言える建造物を後にした。
一人取り残されていることも知らず、正芳はただ眠るだけであった。
それから本の数時間後、正芳は目を覚ました。
「あれ、ルリちゃんは・・・?」
ルリが出て行ったことを知らず、正芳は彼女を探したが、当然ながら見付かるはずもない。
探している間に、ルリが残した書き置きのメモを見付けた。
「出掛けるって・・・守ってくれるんじゃねぇのかよ・・・」
それを読んで甘ったれた言葉を漏らす正芳であったが、当然のことだと思い、その場に座り込む。
「当然だよな・・・こんな俺を守ってくれるなんて・・・漫画の中だけだよな・・・」
自虐感に浸りながら頭を抱え、意気消沈する。
そんな彼に更に落ち詰めるような事態が発生する。
『殺せぇ! 殺してやるぅぅぅ!!』
『ぶっ殺してやる!!』
『殺す、殺す、殺す! 殺すぅ!!』
外にいる男達が殺気をさらけ出し、それを声に出して叫んでいる。
屋内にいる正芳にも僅かながら聞こえたので、窓から外の様子を窺えば、今、自分が置かれている現状が嫌でも分かってしまう。
「ど、どうすれば・・・!?」
どうすべきか慌て始める正芳だが、生憎とルリはその手段を残しては居なかった。
更に悪いことに、外にいる狂人達は正芳が身を潜める建造物へ向かってくる。
「クッ、クソッ! なんで何にも残してないんだよ!!」
何も残さなかったルリに対して文句を付けるが、生憎と彼女には聞こえていない。
置かれている自分の相棒とも言えるAK47突撃銃を手に取り、ストックをちゃんと肩に付け、ドアの方に向けて構えた。
「なんだよ・・・どうしてこんなのばっかなんだよ・・・!!」
正芳はそう文句を垂れつつ、ドアに入ってきた瞬間をいつでも狙えるよう引き金を指を掛ける。しかし、銃を握るその手は震えており、一発でも撃てば離れてしまうほどだ。全身から汗が流れ出ており、尋常ではない量である。
それほど人を撃つことが恐く、何時殺されるか分からない恐怖に怯えきっている事なのだろう。
待ち構えている間に、狂人達はドアを破壊しようとハンマー等の凶器類で攻撃し始める。
外にいる人数の数からして、ドアが破られるのは時間の問題だ。
「誰か助けてくれよ・・・」
一人で戦うのは心細いと思ってか、失禁しながらも天に向けて誰か助けに来ないか悲願する。
だが、そんな彼の願いは届かなかったようだ。
「ひっ!?」
「殺してやるぅ・・・!」
「う、うわぁぁぁ!!」
ドアが破られ、斧を持った男が殺気を放ちながら正芳の方へ向かってきた。
直ぐに正芳はAK47の引き金を引き、最初に入ってきた男に7.62㎜弾を撃ち込んだ。強い反動が肩に来るが、殆どの弾は男に当たったらしく、口から吐血する。
「ぐぁ・・・!」
数十発の大口径のライフル弾を胸に受けて生きては居られないのか、床に両膝を付き、俯せになった状態で倒れ込む。
「肉だ・・・肉を食わせろぉぉぉ!!」
一人殺したくらいで狂人達が怯むはずもなく、死を恐れずに正芳を殺そうと建造物から続々と入ってくる。ドアばかりではなく、窓も突き破って入って来た。これでは幾ら銃を持つ正芳でも対処は不可能だろう。
「う、うわぁ・・・!」
数名ほどを撃ち殺すことに成功するが、弾倉の弾は尽きており、何度引き金を引いても弾は出ない。
新しい弾倉に取り替えようとするも、敵がそんな暇を待ってくれるはずもなく、狂気を振り翳そうと近付いてくる。
「ひっ、ひぃぃぃ!」
戦意を喪失した正芳は、銃を捨てて無様に後退りながら逃げる。
だが、袋の鼠同然であり、直ぐに壁まで追い込まれ、後は八つ裂きにされるのを待つだけである。
「も、もう駄目だ・・・! 母さん!!」
絶望の余り、母の名を叫ぶ正芳であったが、そんな無様な姿になった途端に彼の悲願は叶えられた。
その助けとは、正芳とはぐれた三輪田貞雄だ。
だが、同行している人数は増えており、その同行者達は、軍用銃や充実した装備を身に纏った兵士等が数名だ。兵士等の装備は澄子と合流したカレンと同じ装備をしていた。彼等はカレンと同じ部隊に属している兵士達なのだろう。
「人があんなに・・・誰かを包囲して居るみたいだ」
この部隊の長は、どう見ても隊長ではない風貌の若い青年の東方朱利だ。
彼は正芳が立て籠もっている家屋に狂人達が殺到しているのを見て、即座に殺そうとしているのを理解する。
「どうします中隊長、助けるんですか? 俺は嫌ですよ」
部下が嫌味を込めて長である朱利に問う。
無論、朱利はそうするつもりだが、若い男女ばかりの部下達は余り乗る気ではなく、大半の者達が見捨ててこの場から立ち去って欲しいと願っている。
朱利が前者を選ぼうと物なら、後者の選択を強制しようと銃を突き付ける準備をする。
だが、彼等が救出に向かう訳でもなく、貞雄がAK74突撃銃を握りながら一人で敵陣に突っ込んだ。
「あぁ、おい! 待てよ!!」
朱利の静止の声も聞かず、貞雄はAK74を撃ちながら狂人の群れに突っ込んでいく。
74は小口径だが、専用のライフル弾である5.45㎜弾は殺傷能力は高く、命中率も47とは偉い違いであり、現代のロシア軍でもAK74Nとマイナーチェンジをしながらもアメリカ軍のM16突撃銃並に長く使われている。
数名ほどを走りながら撃ち殺したところで、突撃銃から手を離して吊したままにすれば、背中に掛けてあるウォーハンマーを手に取る。
「殺してやる!!」
一人の狂人が鉈を振り下ろそうと貞雄に近付いてきたが、横に振られたハンマーを頭に叩き付けられ、頭蓋骨を砕かれ、血を吹き出しながら地面に倒れた。
「しゃあっ!」
「うわぁぁぁぁ!!」
「キエェェェェ!!」
一人を大振りのハンマーで殴り殺した貞雄は相手を挑発するように雄叫びを上げれば、自分を八つ裂きにしようと叫んだり奇声を発しながら近付いてくる狂人達に向け、ハンマーを振るい始めた。
向かってくる狂人達は一発叩き付けられただけで骨が砕けるか、口から吐血するか、頭を砕かれるかで死んでいく。
その光景はまさしく現実的ではないと思えるような光景だ。
かなりの重量があるハンマーを振り回せるのは、貞雄のような190㎝以上な大柄の男でしか出来ないであろう。
そのまま貞雄は勢いに任せて向かってくる狂人達をハンマーで薙ぎ払いつつ、返り血を浴びながら正芳が立て籠もる家屋へと向かった。
「イエェェェヤァァァ!!」
「アァァァァ!!」
向かっている最中にも狂人達は各々の得物を武器に向かってくるが、貞雄は躊躇いも無しにハンマーを振るい、行く道を塞ぐ敵を薙ぎ払っていく。
「ウギャァ!?」
頭にハンマーを叩き込まれた一人の狂人は目玉が飛び出し、頭がペシャンコになって息絶える。
直ぐにハンマーを上げ、次なる敵に振り下ろし、道を開こうとする。
「援護だ! 三輪田を援護しろ!」
「え、援護射撃ですか? 弾の無駄には・・・」
朱利は少しでも貞雄の前進を支援しようと部下達に援護射撃を命じるが、副官はこれに異議を申し立てる。
「あんな強い味方は放っておけないだろ!? 全ての責任は俺が持つから!」
「りょ、了解! 援護射撃開始!」
だが、朱利の強い剣幕に言い寄られ、拳銃でも向けられるのではないかと思って命令に従う。
副官の指示でM240機関銃やIMIゲネブ軽機関銃を持つ兵員は即座に配置に着き、貞雄の支援に回った。M21狙撃銃を持つ随伴狙撃手達も援護射撃を行い、貞雄の刺客から襲い掛かる狂人達を排除する。アサルトライフルを持つ朱利達も、援護射撃に参加した。
貞雄の同伴者達も援護射撃に参加する。その腕前は、訓練を受けた者達を除いて酷い物だが。
「よし! これでタッチダウンだ!!」
数名以上を纏めてハンマーで吹き飛ばせば、一気に正芳が立て籠もる建物まで距離を詰める。
「オラァ!」
雄叫びを上げて出入り口を塞ぐ狂人達を一掃すれば、まだ正芳が生きていることを確認しようと、屋内へ飛び込む。
「生きてたか・・・!」
「あ、あぁ・・・た、助かった・・・!」
正芳が生きていることを確認すれば、彼を殺そうとする狂人に向けてハンマーを振り下ろし、壁に叩き付けた。壁に叩き付けられた狂人はおぞましい肉塊へと姿に変えた。それから貞雄は、尻餅をついている正芳に手を伸ばす。
「あ、ありがと・・・」
貞雄から出された手を取り、正芳は彼に礼を言った。




