ようこそ、女呪島へ!
11日ぶりの更新だわい
ようこそ、女の恨みが渦めく地獄の島へ!
そう目の前の黒髪で長髪な男に告げられた桑部正芳を含める一行が鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべる。
先程の歩く死人や正気を失った女兵士等が呪いの一種だとでも言うのだろうか?
その疑問を問い掛けようとしたが、一行の前に立つ男はそれが分かっていたかのように答える。
「お前等、あれが呪いの一種だって顔、してるだろ? 言ってやるよ、あれは呪いの一種だ。正気を失ってるのは、頭ん中に聞こえてくる幻聴に支配されてる。ゾンビは…」
正気を失っている女兵士については頭に聞こえてくる幻聴に支配されていると聞いても居ないのに言った後、歩く死人については、少し頭を抱える。
数秒後には思い付いたのか、思ったことを口にした。
「あぁ、あれだ。魔法かウィルスかなんかだ」
「魔法にウィルスだぁ? てめぇ、フザけてんのかぁ!?」
男が思い付いた言葉に、柄の悪い金髪の青年が文句を付けたが、柄の悪い男に腹を立てたのか、男は腰に差し込んであるホルスターから拳銃を取り出し、その男を射殺した。
「キャァァァ!!?」
「う、うわぁぁぁ!!」
隣に立っていた女性の悲鳴が上がれば、忽ち数十人以上がパニックを起こし始める。
大柄でガッシリした体格を持つ男を含めた何名かは落ち着いていたが、正芳はパニックを起こす集団と同様、腰を抜かしていた。
目の前に立つ男は自分にとって余りにも騒がしかったのか、天上へ向けて数発以上発砲し、黙らせる。
「おい。俺の答えに文句付ける奴、他にいるか?」
皆を黙らせた男は、周囲に銃口を向けつつ、全員に問い回る。
全員は先程の金髪に染めた男と同様になりたくなかったのか、首を横に振った。
「よしよし、それで良い…目の前でアホが死んでビビらなかった奴、お前等肝が据わってんな。上出来だ、長生きできるぞ」
銃声で動じなかった者達に対し、男は褒め称えた後に、彼等に向けて拍手を送る。
数秒間拍手したところで、正芳達に簡単な事情説明を始める。
「さて、簡単に説明するぞ…ここで頼りになるのは、これとこれと、ここだ」
銃と腰に差し込んであるナイフを指差した後、指を自分の頭に突いて説明を行う。
何名かは理解が出来なかったようだが、銃声で動じない者達は直ぐに分かった。
銃に剣、そして頭を使って生き残れと。
意味を理解できなかった者達に、男は分かり易いように告げる。
「意味はこうだ。銃と刃物、頭を使えば大抵は生き残れる」
「そ、それだけかよ!?」
「救出は来ないのか?!」
男が言ったこの呪われた島での生き残り方に、何名かが異議を唱える。
それもその筈、正芳を含む大半は安全な場所に住んでおり、いきなり生き残るために戦うなど、並大抵に出来る者は殆ど居ない。
次々と飛んでくる罵声に、男は機嫌を損ねたのか、また天上へ向けて数発ほど拳銃を撃って黙らせた。
「そんなに他人に頼るのか…じゃあ、向こうに武器があるから、それ持って東に向かえ。お前等みたいな腰抜けを受け入れてくれる優しい優しい魔女さんが避難所がある。行けたらの話しだがな」
武器がある場所を指差しながら男は銃声で黙り込んだ者達に告げた。
「誰が腰抜けじゃコラぁ!!」
腰抜けと言われ、先程の男より柄の悪い男が突っ掛かってきたが、男に射殺される。
「おいおい、俺に銃を撃たせんなよ…全く、弾を調達すんのは結構苦労するんだぜ? 取り敢えずだ、そこの死んでる脳味噌が空っきしの馬鹿と同じようにならないようさっさっと行くんだな。それと銃は一人に一挺だぞ」
また一人殺した男の指示に従い、大半の者達は指示された場所へ向かった。
数分もすれば、正芳を含める数名の者達が部屋に残る。
残った者達を見た男は、顎に手を添えて数秒間見定めた後、口を開く。
「これくらい残ったか…お前等、行くなら今だぞ?」
大半の者達が向かった場所を指差しつつ問うが、誰も行こうとはしなかった。
ここに残ったのは、自分で帰る方法を探そうと決めた者達だ。正芳も自分の力だけで帰ろうと決意したようだ。
残っている者達の特徴は、武人のような風貌の男に以下にもオタクというような青年、それに大和撫子のような日本人女性に兄妹とも言える白人の少年少女、高貴な育ちの白人の少女にその護衛と思われる頭と首が見えないほどの服装をした長身な白人男性、ロシア人美女、平凡な韓国人男性、乗り越えた場数が凄そうな体格が大きい朝鮮人と個性的だ。
他はラテン系のボンクラそうな男に某SS長官に似ている年配の日本人男性だ。先程の正芳の避難を援護してくれたアレンと呼ばれるアメリカ軍の兵士も残っている。
「なんともまぁ、個性的だな…」
残った全員を見定めた後、感想を述べてから拍手を行った。
「おめでとう。お前達は今のところ正解だ、あそこに向かった連中は・・・死亡確定だな。よかったな」
「よかったって、テメェ! あいつ等はどうなるんだよ!?」
正芳と歳が近い白人の少年が、怒り心頭なドイツ語で安全地帯へ向かう者達が危機に晒されている事を教えなかった男に問う。
それに対し、男は少年に逆撫でするような態度で答える。
「あぁ? おま、あいつ等一々救うってのか? そんなもんめんどくせぇだろうがぁ。まぁ、安全地帯があるってことは本当だが、何人たどり着けるかなぁ?」
「てめぇ…!この人殺しが…!!」
「兄さん、止めて! 先程の日本人と一緒に殺されちゃう!」
殴りに行こうとする少年に対し、妹が彼を宥める。
それを見ていた武人のような日本人も、男に対して抗議する。
「危険を知らせずに向かわせるとは解せんな。何故篩いに掛けようとする? これはなんの選別だ?」
抗議してから目の前に立つ男が行った選別について問うた。
これに男は、腕組みした後で答える。
「まぁ、篩いに掛けた事は正解だが、なんの選別でもねぇよ。理由は簡単だ、弾が勿体ない」
そんな簡単な理由で斬り捨てたのか…!
答えを聞いた武人のような男は心の中で、目の前に立つ長髪の男を睨み付けた。
だが、あのような大人数では弾薬は長い間持ちはしないだろう。
それに戦えない者が居て弾の消費が抑えられるにしても、守るのに更に弾薬を消費することになる。
故に男の判断は正しいとも言える。
「まぁ、そう言うこった。お前等にはここで生存できる確率が高い。俺はそう言う連中を応援したくなる質なんだ。だから、俺が良い武器を渡してやるよ」
男はここに残った者達が生存率が高いと判断し、大半の者達が取りに向かった倉庫とは反対方向の場所へ、皆を案内した。
自己紹介を忘れていたのか、ようやく自分の名を名乗り始める。
「あぁ、忘れてた。俺はシャドウだ。まぁ偽名だが、そこんとこはよろしく頼むわ」
「は、はい…」
偽名ではあるが、名乗ったシャドウに正芳は閉じたままの口をようやく開いた。
一方、安全地帯へ向かった者達は生命の危機とも言える脅威が居るとは知らず、目的の場所へ向かって足を進めていた。
武器を持っていない者達が何名か居り、他人に守って貰おうとしている。
正芳と同様な高校生である宮川澄子もその一人であった。
「あんた、しっかりと守りなさいよ!」
「分かってるって。つうか、何度目だよ」
「煩いわね! あぁ、早く着かないかしら・・・」
不安げに男友達に守って貰いながら、早く安全地帯へ着かないかと口にしている。
そんな矢先、彼等に生命の危機である存在が近付いてきた。
それは上半身が女性で下半身は鳥の羽を持つ怪鳥、ハーピーだ。
「う、うわぁ! な、なんだこいつ等は!?」
「知らねぇよ! 兎に角撃て!!」
銃を持つ者達はハーピーが飛び回る空に向けて撃ち始めるが、殆どの者達は銃など撃ったこともないので外れていく。
「クソ、なんで当たらないんだよ!」
銃を撃ち続ける一人がそう叫ぶが、そんな下手な構えでは当たるはずもない。
そんな戦いの素人達に、更なる被害が訪れる。
「ど、ドラゴン!?」
澄子が空からやって来たハーピーとは比べ物にならないほどの脅威を見て叫んだ。
それは巨大なトカゲの身体にコウモリのような翼、カギ爪と尻尾を持つドラゴンと呼ばれる魔物だ。
「うわ、うわぁぁぁぁ!!!」
ドラゴンを見た銃を持つ一人は、AK47のコピーである56式歩槍を撃ちまくるが、堅い青色の鱗で弾かれ、ドラゴンは吐く炎に近くにいた者達と纏めて焼き払われる。
「ひ、ヒィィィ!! ママぁぁぁ!!」
「ちょ、ちょっと! に、逃げないと・・・!」
ドラゴンの恐ろしさを見て無様に逃げた男友達を見た澄子は、自分も逃げようとした。
だが、一人の下半身を失った血塗れの男が彼女の足を掴み、助けを求めてくる。
「お、俺も、連れて行ってくれ!」
「煩い!!」
助けを求める男の手を振り払った澄子は、行く宛先もなく森の中へと向かった。
悲鳴や銃声が聞こえてくるが、彼女は耳を塞いで聞こえないようにしている。
それが聞こえなくなった後、自分が逃げてきた方向を振り返り、そこで腰を下ろして息を整える。
「無事に逃げれた?」
逃げてきた方向を見て呟き、少し心を落ち着かせようと上を見上げる。
尤も、見上げる空は濃い霧に覆われて見えないのだが、今の澄子にはどうでも良い事だった。
「これ、夢だよね?」
先程のドラゴンが出て来たところで夢と思い、頬を抓ってみたが、痛覚を感じたことから夢でないことを理解する。
「夢じゃない…!」
そう絶望する澄子であったが、そんな彼女に再び危機が訪れた。
「ヒッ!?」
襲ってきたのはまず最初に一団を襲ったハーピーだ。爪を突き立て、今にも澄子を引き裂こうと空から急襲してくる。
もう駄目だ…!
そう思った矢先、一団が持っている銃とは違い銃声が鳴り響き、彼女に襲い掛かってきたハーピーが断末魔を上げて地面に倒れた。
「な、何!?」
辺りを見渡し、銃声がした方向を見れば、黒いバラクラバを被り、タクティカルベストを羽織った黒い服装の人物が近付いてきた。
手にはM4カービンの他社のクローンモデルであるM&P15自動小銃が握られており、自動小銃の照準器の近くには、ドットサイトと呼ばれるカスタムパーツが取り付けられている。
近付いてくる武装した黒い服装の人物に警戒したが、その人物が発した声に、拍子抜けする。
「大丈夫?」
「えっ? あっ、はい」
それは女性の声であり、澄子の警戒心は一瞬解けてしまう。
無事を確認した黒い服装の女性は、被っていたバラクラバを取り、素顔を澄子に晒した。
「あっ…」
その素顔とは、絵に描いたような王族の女性その物であった。
露わにされた髪の色は赤であり、腰に届かずとも十分美しいと思える。
そんな美人な兵士は混乱している澄子に、懐から取り出した写真を見せ、写真に写るブロンド髪の美少女が何処にいるのかを問う。
「ねぇ、この娘、何処に居るか知ってる?」
「い、いえ…知りません…」
写真に写る見たこともない美少女が何処にいるのかの問いに、澄子はそう答えるしかなかった。
魔物が出て来たけど、大丈夫だよね!?