島に呼び寄せられた者達
無謀な連載・・・
不定期更新です。
「おい、ここは何処だよ…!?」
日本の平凡な男子高生、桑部正芳はいつものような日常から非日常的な空間へと放り込まれた。
辺りを見渡し、ここは何処なのか確認しようとする。
しかし、辺りは霧に包まれ、全く先が見えず、不気味な雰囲気が漂って恐怖心を煽り立てる。
「なんだよ…圏外かよ…」
スマホを取り出して居場所を確認しようにも、画面に表示された電波は圏外であり、自分が何処にいるのか分からない。
何故こんな不気味な所へこのような少年が来たのかは彼にも分かっていない。
ただ休日で暇なので浜辺を彷徨いていたら霧に飲まれ、気付いたらこの霧が漂う不気味な場所へと来ていたのだ。
「しゃあね、人探すか」
辺りに人が居ると思った正芳は、誰かに尋ねようと思ってその場を後にしようとした。
歩くこと三分で、霧の中に人影を見付ける事に成功する。
「おっ、人居るじゃん。すいませーん! ここ何処ですか?!」
霧の中に見える人影に、正芳は何の警戒心も無しに声を掛けた。
当然ながら、彼の国は平和な国「日本国」であり、周りには危険なことはコレと言って無かった為、警戒心は殆ど無いに等しい。
声を掛けられた人影は、正芳の存在に気付いたのか、彼の居る方向へと近付いてきた。
近付いてきた者の外見は以下にも日本のサラリーマンと言った人物であった。
「あぁ、済みません、ここどこだか分かります?」
徐に話し掛けたが、相手もここがどこだか分かって居らず、逆に問うてきた。
「き、君、この辺りの住民かね? 一体ここは何処なんだ・・・?」
「はぁ? おじさんここの人じゃないの? そんなの、俺にも分かんないよ」
そう返す正芳だったが、相手はその態度に苛ついたらしく、彼に怒りをぶつけようとして怒鳴り散らしてくる。
「それだと困るんだよ! 大事な会議に遅れてしまう! ここで遅れてしまっては私は…!!」
サラリーマンが怒鳴り散らしている最中に、近くの方から銃声が響いた。
テレビでしか聞かない大きな銃声を聞いたのか、反射神経で二人とも地面に顔を伏せる。
「ヒッ!?」
「銃声!?」
悲鳴を上げたサラリーマンを他所に、正芳は銃声が聞こえた方向を見た。
そこに居たのは、頭にバラクラバを被り、ベストを着けた男が何処かへ向けて突撃銃を撃っていた。
手に持っている突撃銃は、テレビでやるニュースで良く見られるAK47突撃銃だった。
AK47とは、ミハイル・カラシニコフがStG44の開発者であるヒューゴ・シュマイザーの助言を得て設計した突撃銃である。
極めて信頼性の高い銃であり、機関部に砂が入り込もうが泥に沈めようが問題なく作動し、教育を受けていない者でも数日の内に扱え、分解しても直ぐに組み立てることが出来る傑作突撃銃だ。
更にコストも安く、容易に製造が出来るのである。猿でも芸を仕込むように教え込めば、使いこなせるとまで言われている。
質が悪いとされる辺り、世界中で出回っている中国製のAK47である56式自動歩槍であろう。
そんな突撃銃を撃っている男は、正芳が良くニュース番組で見るイラクやシリアで勢力を拡大しているISISかISIL、イスラム国の戦闘員だ。
むやみやたら乱射している辺り、何かに追われているようだ。
自分等にも銃口が向けられるかも知れないと思った正芳とサラリーマンは、何処か身を隠せる場所へと移り、そこで様子を見ることにした。
「来るな! 来るなぁ!!」
英語で叫んでいる辺り、英語圏の国から志願した戦闘員だろう。
だが、彼が撃っている突撃銃は弾切れを起こし、何度引き金を引いてもカチカチとした音しか鳴らなくなった。
戦闘員は直ぐさまベストの腹にあるポーチから弾倉を取り出そうとするが、撃っていた何かに近付かれ、その命を奪われた。
撃っていた正体は、全身に致命傷なほどの外傷がある手に様々な凶器を持った女性達だ。着ているのが濃い緑色の動きやすい戦闘服である事から、何かしらの軍関係の者達であるとされている。その証拠に、腰に拳銃を収めるホルスターが吊されていた。
女性兵士達の目は黄色く不気味に光っており、肌の色は死人のように白い。
死んだ戦闘員を様々な凶器で滅多打ちにした女性兵士達は、既に動かなくなった男の衣服を強引に引き千切り、腹を抉って内臓を引き抜き始める。
「ひっ、ヒィィィィ!!」
「お、おい! おっさん!!」
それを見たサラリーマンは悲鳴を上げ、何処かへと逃げていった。
正芳はそれを止めようとしたが、会社員は聞く耳持たず、最終的に見失ってしまう。
当然ながら悲鳴は彼女等にも届いており、正芳に気付いた女性兵士等は彼が居る方向へと近付いてくる。
「おいおい、嘘だろ…!?」
生命の危機を感じた正芳は、直ぐさまそこを離れてその場から逃げ去った。
幸い、相手側はまるでゾンビのようにノロノロと向かってくるので、距離を離すことが出来た。
「ふぅ…これでぐらいで良いだろう…」
安心して額の汗を袖で拭う正芳であったが、一難去ってまた一難、今度は先程のゾンビのような女性兵士等と同じ格好の黒いバラクラバを被った三人の女性兵士が銃を撃ってきた。
「うわぁぁぁ! 撃たないでぇぇぇ!!」
必死に銃声に負けないほどの声量で叫ぶ正芳であるが、相手は正気を失っているのか、撃つのを止めない。
そればかりか正芳を殺そうと、ロシアのコブロス社で設計された突撃銃AEK-971をしっかりと構え、狙いを頭に定めて撃ってくる。
発射される5.45×39㎜弾は致命傷とまでは行かない物の、当てた標的に広い体積で損傷を与えるため、治療が難しく、ソ連侵攻時のアフガニスタンの抵抗勢力は、AK74とその5.45㎜弾を一番恐れた。
「うわぁぁぁぁ!!」
正芳は飛んでくる銃弾から逃げ、何処か安全とも言える場所を目指して必死に走る。
だが、相手は先のゾンビのような女兵士等と違って正常な人間、それに鍛え上げられた戦闘員だ。それに走りながらも反動を抑えながら銃を撃ってくる。
とても日本の平凡な高校生である正芳が逃げ切る物ではない。
もう駄目だ…!
そう思った矢先、銃を持って重装備とも言えるほどの装具を身に着け、ゴーグル付きのヘルメットを被った人影が、正芳を追ってくる女兵士達に向けて手に持った銃を撃った。
「こっちだ!」
声が男で発した言葉が英語であり、銃の扱いが長けているとすれば軍人なのだろう。
死の危機を救った恩人に言われたとおり、正芳は彼の側を通り過ぎ、コンクリートで出来た建造物の出入り口へと滑り込んだ。
「ダレン、早く入れ!」
正芳を小屋へ入れた長髪の男は、アメリカ軍の個人装具で身を包み、アメリカ軍の制式採用の騎兵銃であるM4カービン突撃銃を持つダレンと呼ばれる兵士に入るよう声を掛ける。
男も自動拳銃を持って援護し、ダレンが小屋に入ったのを確認すれば、厚い扉を閉めた。
安心しきった正芳は息を整えた後、辺りを見渡した。
そこに居るのは自分と同じ境遇の者達なのか、何が起こったのかを理解していない複数の老若男女が居た。
扉を閉めた男は、拳銃を仕舞ってから集められた者達の方へ視線を向ける。
「まぁ、これだけ生き残ったのなら、上出来か…」
そう呟くと男は椅子に腰掛け、意気揚々に彼等に告げた。
「ようこそ、女の恨みが渦巻く地獄の島へ!」
ドラゴンズドグマの黒呪島をイメージしております。