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この島の主の元へ

グダグタになってませんかね?

「クソッタレ!」


 マリとアリスが、ルリの保護の知らせを受け、山を下りている間、正芳達は地面から続々と這い出てくるゾンビと死闘を演じていた。

 数は圧倒的であるが、ここを突破しなければ頂上まで辿り着けない。


「おし! 突っ込むぞ!!」


 ある程度倒した後、貞雄は全員に突っ込むと告げた。

 それを聞いて足を痛めているシュタイナーは、ダレンに肩を貸して貰う。


「う、嘘!? あの集団に突っ込んだら…」


「迷ってる暇はないよ! ここで死ぬまで戦っているよりはマシだ!! それにあいつ等は鈍い!」


 ゾンビの集団に突っ込むことで澄子は弱気になったが、真に激励され、ヨンの後ろからついていく。

 ここでも彼女は一切戦わず、ただ人に戦わせるだけであった。


「うわぁ!?」


 集団を突破したが、地中から這い出てきたゾンビの手が真の足を掴み、彼を地面へ這い蹲らせた。


「灰川さん!?」


 真の悲鳴を聞いて振り替える正芳であったが、ヨンに肩を掴まれ、無理矢理連れて行かれる。


「何するんです!?」


「あれだけの数、もう助からん! 二の舞にならんように逃げろ!!」


「で、でも…!」


「喧しい! お前も置いて行かれたいのか!?」


 そう引っ張られながら正芳は真を見捨てるしかなかった。

 置いて行かれた真は足を掴んでいたゾンビを撃ち殺した後、必死で一向に追い付こうとしたが、多数のゾンビに包囲され、孤軍奮闘を余儀なくされる。

 これでまた一人と脱落者が増えた。この犠牲を無駄にしないために、一行は女呪島の主が居るとされる頂上を目指さなければならない。

 安全とされる場所まで辿り着けば、リーダーである貞雄が何人生き残ってるか確認を取る。


「はぁ、はぁ…何人犠牲になった?」


「一人だ、灰川真。一人だけでも幸いだ」


「クソ! 一人でも大損だぜ!」


 ヨンから真が犠牲になった事を知らされた貞雄は、自分の判断で死なせてしまったことを悔やんだ。

 それから、少し休憩してから頂上を目指そうとしたが、この島の主は一行に休ます暇を与えず、次の一手を差し向けてきた。


「泣き声?」


「赤ん坊がこんな所に?」


 先に耳を入れた者達が言えば、貞雄とヨンは次の脅威が来ることを予見する。


「次は赤ん坊か? クソ、今度はあれか?」


 クモンがそう言えば、彼が言ったことが現実に起きてしまった。

 動く赤ん坊の死体が地中から続々と這い出てきて、泣き声を上げながら一行へ襲い掛かってきた。


「マジかよ!?」


 自分が言ったことが本当に起きたことに驚いたクモンは、直ぐに持っている銃で赤ん坊を撃ち始めた。

 例え赤ん坊とで、動く死体ならゾンビであることは変わりない。

 そう良心を捨ててつつ、一行は自分等を殺そうとしてくる赤ん坊のゾンビに向けて銃を撃つ。

 放った銃弾は猟用のライフル弾。大型の動物に撃つための物であり、対人を目的とした軍用のライフル弾ではないため、人に向けて撃てば、恐ろしいことになる。

 現にその銃弾を受けた動く屍となった赤ん坊の頭部は、木っ端微塵に吹き飛ぶ。


「お前もやれ!」


「ちょ、ちょっと!」


「良いから取れ! 死にたいのか!?」


 赤ん坊の頭が吹き飛ぶ光景を見て、怖じ気付いた澄子は、ただ震えるばかりであったが、貞雄が少しでも頭数を増やそうと、比較的反動の少ない小口径の弾を使用する自動拳銃を無理矢理手渡し、共に脅威を排除させようとする。

 銃を撃つ練習をしたが、こうやって敵を撃つのは初めてである。澄子は教えられたとおり、しっかりと反動を吸収する姿勢で拳銃を構え、照準器に赤ん坊の頭を合わせたところで引き金を引き、拳銃を撃つ。反動で少し蹌踉けそうになるが、銃弾は見事、標的にした赤ん坊の頭に命中した。


「やった!」


 そう敵を倒して喜ぶ澄子であったが、誰かの断末魔で戦意を削がれる。


「ぐわぁぁぁ…!」


「マイジンガーが…!?」


 やられたのは、心強い士官であるマイジンガーであった。

 大量の赤ん坊の死体の波に呑まれ、全身を食い千切られながら死んだ。


「く、クソ! ここから出るぞ!」


 仲間の一人がまた死んで混乱状態に陥る前に、貞雄は皆に突破を命じた。

 言い出しっぺの貞雄が殿を務め、先陣はダレンがする。破片手榴弾を投げ込み、突破口を開こうとする。数秒後、手榴弾は破片を撒き散らしながら爆発し、突破口が開かれる。そこへ一行は銃を撃ちながら傾れ込んだ。


「生きてるな!」


 殿をつとめていた貞雄は全員が生きていることに安堵した後、マイジンガーの遺体から回収したジャガイモ潰し器のような形をしているM24柄付手榴弾を追ってくる赤ん坊の大群へ投げ込み、一行に追い付こうと走る。

 この手榴弾は破片を撒き散らすタイプではなく、爆発するタイプであり、より一掃の被害をゾンビに与えた。


「今度は…来ないよね…?」


「おい、言うなよ…! ハァ、またなんか来るぞ…」


 ノンナが後ろを振り向きながら言えば、貞雄はそれを言えば、何か来るかと思って口を閉じるよう告げる。


「ご、ごめん…だって、終わったと思うじゃない」


「口は災いの元だ。誰も、終わったと思ってそれを口にするなよ?」


 これ以上、面倒ごとはご免なのか、ヨンは皆に安心して口に出さないよう皆に告げた。

 だが運命は彼らを休ませることなく、次なる試練を送り込む。


「嘘…だろ…!?」


 異変にいち早く気付いた正芳が見上げた先には、異様な風貌の巨人が姿を晒していた。

 その大きさは5m弱。良く見れば、多数の人間の死体が繋ぎ合って出来ており、凄まじく醜い化け物であった。


「ひっ、な、何あれ…!?」


「あれだろ…化け物だ…!!」


 澄子からの質問に対し、近くにいた貞雄はありのままの事を伝える。

 正芳の知らせで醜い巨人を目にしたエリナは、兄であるエレンの近くに寄り添い、シュタイナーは守るべきアドルフィーネの前に出て、自分を盾にする。

 他の者達も銃口を向け、引き金に指を掛け、弱点と各々が思う場所へ照準器を合わせる。

 者の数秒ほどで、ヨンが化け物の頭部に向けて撃てば、それを合図に一同は化け物に銃弾を浴びせ始めた。

 銃弾は目標に当たるが、折り重なった死体で出来た肉の壁で余り効果が無く、化け物は怯まず一行に向かってくる。


「離れろ!」


 化け物が近付いたところで、貞雄は銃声に負けないくらいの声量で距離を取るように命じる。

 これに応じて一同は化け物から距離を取り、一定の距離まで下がったところで再び銃撃を再開する。

 ヨンが数十発ほどを頭に叩き込んだが、化け物は依然として健在であり、銃弾を物ともせずに近付いてくるばかりだ。更には近くにある大きな岩を持ち上げ、それを投げてくる。


「あっ…」


 岩を投げる素振りを見せたので、一行は直ぐに銃を撃つのを止めて逃げるも、ノンナは投げられた岩を避けきれず、その下敷きとなってしまった。


「た、助けて…!」


 岩の下敷きとなって、内臓や骨が潰れながらもまだ息のあったノンナは助けを求めたが、もう既に助からないほどの瀕死の状態であった。

 せめて直ぐに楽にしてやろうと、シュタイナーが彼女の頭に向けて自動拳銃を撃ち、ノンナを楽にする。

 またも仲間が一人倒れてしまったが、悲しんでいる暇もなく、化け物は岩を投げたり、巨木の様な手を振り翳してくる。


「援護してくれ! 手榴弾をあいつの隙間に!」


 数百発ほど撃ち込んだところで、胸の辺りに小さい手榴弾一つ入るほどの穴を見逃さなかったダレンは、入るであろうM67破片手榴弾を投げ込もうと、専用のポーチからそれを取り出したが、思わぬ速度でやって来た化け物の不利払いを諸に受け、吹き飛ばされてしまう。


「ジェームスさん!」


「畜生!」


 吹き飛ばされるのを見た正芳は、銃を撃つのを止めてダレンを助けに行く。

 同じく見ていたクモンは、ダレンの代わりに手榴弾を投げようと、それを拾いに行こうとするも、走ってきた化け物に踏み潰されしまう。

 そうしている間に動かないダレンの元へ駆け付けた正芳であったが、首があり得ない方向へ向けて折れており、既に死亡している状態であった。

 これでクモンに続けてダレンも死んでしまった。真、マイジンガー、ノンナを合わせて五人も死なせてしまった。これには流石の貞雄も戦意を失いつつある。

 澄子に至っては、この場から逃げ出そうと、逃げるタイミングを計っている始末で、正芳は頭を抱えて震えている。

 何とかこの状況を打破するため、貞雄は震えている正芳に手榴弾を投げ込むよう怒鳴り付けた。


「おい! そいつの死体から手榴弾を取り出して、あの化け物の投げ付けろ!!」


「で、でも…!」


「煩い! さっさとやれぇ!! 殺すぞ!!」


「は、はい!」


 嫌がる正芳に対し、貞雄は凄い剣幕で銃口を向けながら怒鳴り付ければ、相手は直ぐに従った。


「おい! こっちだ化け物!!」


 援護してくれないと思っていたが、ヨンが軽機関銃で化け物の注意を引いてくれた。化け物は機関銃の銃弾を受けながら、ヨンの元へと向かっていく。もし正芳が失敗すれば、ヨンが死んでしまうだろう。他の者達もヨンの元へ向かい、彼と共に化け物へ向けて銃を撃つ。

 これで失敗は許されない。

 正芳は勇気を振り絞り、足を止めるタイミングを見計らい、ダレンの遺体から回収した手榴弾を抱き抱えながら化け物に近付く。


「(大丈夫だ…手榴弾の投げ方は分かってる。要はゴミ箱にゴミを入れるのと一緒。俺なら出来る…! いや、絶対に出来るんだ!)」


 そう自分に言い聞かせながら、化け物が足を止めるタイミングを見計らった。幸いにも、化け物は横にいる正芳の存在に気付かず、ずっとヨン達の方へ向かっている。これ程までに運が良かったことは、彼の人生で一度と無かった物だ。


「今だ! 投げ込め!!」


 化け物が足を止めた瞬間、貞雄の声が銃声に混じって聞こえた。

 それを聞き逃さなかった正芳は化け物の前に出て、安全ピンと安全装置を外した手榴弾を胸の方へ投げ込んだ。手榴弾に当たる可能性がある為か、皆は一斉に銃を撃つのを止め、その瞬間を見届ける。

 投げ込まれた手榴弾は胸の穴へ何処へも当たることなくすんなりと入り、化け物の体内へと入った。

 M67破片手榴弾の信管点火後の爆発は五秒。僅か三秒の辺りで体内深くに入り込む。四秒の辺りで底へ落ち、残り一秒となったところで爆発した。

 半径5m内の相手に致命傷を負わせることが出来る手榴弾が体内で爆発した化け物は、苦しみの余り、地面に膝を突き、倒れようとしている。


「うわぁ!?」


 化け物にこのまま潰される位置に居た正芳は、直ぐにその場から離れた。

 そして地面に倒れた化け物は、体内で手榴弾が爆発したのにも関わらず、まだ息があるようだった。

 投げ込んだのが破片タイプであったのが不味かったのであろう。

 ここぞとばかりにダイナマイトを持っていたヨンは、それを取り出して導火線に火を付け、倒れ込んだ化け物に近付き、正芳が投げた胸の穴にダイナマイトを放り込み、飛んでくる肉片に巻き込まれないよう離れる。


「来い!」


「え!? は、はい!」


 このチャンスを作った功労者である正芳も共に連れて行くことを忘れずに、無理矢理引っ張るように離れた。


「全員伏せろ!!」


 貞雄が叫けべば、一同は全員爆発による衝撃を避けるべく、地面へ伏せる。それから数秒後、化け物の体内に入ったダイナマイトは爆発し、衝撃で肉片が周辺へと飛び散った。流石の化け物も火薬による内部爆発には弱かったらしく、上半身と下半身が千切れた状態で力尽きる。

 化け物が力尽きたのを確認した正芳は立ち上がり、その場で尻餅をつく。


「か、勝った…」


「あぁ、でも、まだ終わっちゃいねぇ…」


 貞雄の言うとおり、まだこの悪夢は終わってなどいない。

 悪夢を終わらせるには、山の頂上に住んでいるとされている女呪島の主を倒さねばならんのだ。

 一行は休む暇もなく、山の頂上を目指して山を登った。

次回で最終回でドスエ

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