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ドラゴンとの死闘

今回はマリマリ視点で

 正芳達が山に登り始めた頃。ルリが自分の大隊に救出されたことを知らないマリは、アリスと共に山の山腹辺りまで来ていた。ここにルリが居ると思って赴いたようだが、知らせはまだ彼女には届いていないようだ。

 そして今の彼女等は、麓から正芳達が目撃したドラゴンに襲われていた。


「キャッ! 流石にドラゴン相手は無理なんじゃ!?」


 空を舞うドラゴンからの炎のブレスを避けたアリスは、空の敵に対する対抗手段を探すマリに対し、逃げる選択を提案したが、彼女はそれを無視して何処かへ向かっていた。

 どうやらドラゴンに対する手段である携帯式対空ミサイルを見付けたようだが、アリスにはそれが何処にあるのか分かっていない。


「聞いてますか!?」


 その存在を知らないアリスは、もう一度マリに大声で伝えるが、彼女は無視してそれがある方向へと向かう。ドラゴンのブレスを避けながら。

 そこで、ようやくアリスにも、携帯式対空ミサイルがある場所が分かった。


「あ、あそこにスティンガーが!!」


「馬鹿! あのデカイトカゲが知ったらどうすんのよ!!」


 携帯式対空ミサイル「スティンガー」を見付けた彼女は、大声で知らせたが、その位置を相手に知られたくなかったマリは、彼女の頭を左拳で殴る。


「痛っ!」


「言っちゃ駄目! 気付かれちゃうでしょ!?」


 指を差さないように注意したマリだが、幸運にも、ドラゴンは気付かず、ただ彼女等に向けてブレスを吐き続けるだけであった。それを確認したマリ達は急いでスティンガーを取りに行く。持ったまま死んでいる兵士から携帯式対空ミサイルを取れば、安全装置を外し、ドラゴンに向けて構える。

 だが、マリは撃つわけではなく、アリスに取らせていた。どうやら自ら囮になるようだ。


「私が惹き付けるから、あんたが撃ちなさい!」


「え、訓練の時以降、対空ミサイル(SAM)は撃ったことが無いんですが…」


「撃ち方を知ってるならやりなさい!!」


 相手の言い分も聞かず、マリは囮となるために、SG550突撃銃をドラゴンに向けて撃ち続けた。堅い鱗には小銃弾など全く通じないが、惹き付けるには十分な物である。ドラゴンがマリに気を取られている間に、アリスはスティンガーの照準器を覗き、しっかりとドラゴンの腹に照準を向ける。


「予備はない…あるのはこれ一本だけ…」


 そう自分にプレッシャーを掛け、アリスは絶対に外さないように心懸ける。

 息を止め、引き金に指をかけ、チャンスが来るのを待つ。


「今だ!!」


 到来したチャンスを逃さず、アリスはスティンガーの引き金を引いた。

 後部の排出口から勢い良く高圧ガスが吹き出し、砲口から地対空ミサイルが発射され、本隊のレーザーに当てられているドラゴンの腹に目掛けて飛んでいく。

 数秒後、ミサイルはドラゴンの腹に命中して爆発した。

 幾ら堅い鱗でも、地対空ミサイルの直撃を防げるわけが無く、爆発で裂かれた腹から腸を撒き散らしながら地面へと落下する。


「やった!!」


 ドラゴンを倒したことに、アリスは大いに喜ぶ。

 その後に地面に落ちた音を聞き、安堵するアリスであったが、自分に近寄ってくるマリは、安堵の表情すら浮かべてなど居らず、何かから逃げるように近付いてきた。


「もう一本、スティンガー無いの?」


「はい?」


「だからスティンガー!!」


「無いです…」


 どんな意味で、携帯式対空ミサイルがもう一本必要の意味が理解できなかったアリスであったが、大きな翼を羽ばたかせる音で、その意味を理解できた。


「嘘…当たったのに…」


 倒したと思ったドラゴンが、今度は腸を出しながら空を飛んで復讐に来た。死んだはずのドラゴンの目には生気が無く、まるで生者を襲う歩く屍のようだった。差し詰めアンデッドドラゴンと言ったところだろう。

 それを見たアリスは絶望して、空のスティンガーを地面に落とす。立ち直るには数秒も掛からず、マリと一緒にドラゴンから逃げ始める。

 ブレスは炎から木々を腐らせるような強烈な悪臭の物へと変わっている。腐竜と言っても過言ではないだろう。そんな腐竜に対し、マリは銃弾を当てた。だが、堅い鱗は死しても尚、健在のようで跳ね返してしまう。

 何か対戦車火器のような小火器は無いか?

 逃げ回りながらそれを探している間、新手の敵と遭遇する。


「う、うぅ…!」


「ぞ、ゾンビ!?」


 その新手はゾンビであるが、おかしな事に全て腐敗した女性の遺体だ。

 犯された挙げ句、山に生き埋めにされた非業の最期を遂げた女性達であろうか、悲痛や憎しみに満ちた言葉を口ずさみながらマリとアリスに襲い掛かってくる。


「ど、どうして…?」


「こんな目に…こんな目に…!」


「憎い…あの男が憎い…!!」


 同じ同性なら、同情するところだが、相手は見境無く襲ってくる化け物だ。直ぐに頂上を目指す方向へと進路変更する。上に行けば危険と思われるが、マリが山を登る前に、頂上当たりに対空砲らしき物が見えたので、それを使ってドラゴンを迎撃するようだ。口径は40㎜程度なら、航空機を撃ち落とす感じで墜とせるかも知れない。無論、それが対空砲であればのは無しだが。


「ようやく着いた…」


 腐竜に追われること数分、いつの間にか頂上へ来ていた。何かの入り口らしき神殿が建っているが、今はそんな事はどうでもいい。早く頂上にあったと思う対空砲を探し、それで腐竜を倒すのだ!

 何処か遮蔽物になりそうな所へ身を潜めたアリスとは違い、マリが直ぐにそれを探し始めた。


「対空砲、対空砲…あった!」


 やはり自分の目は正しかった。

 少し錆び付いているようだが、撃てれば問題はあるまい。

 その対空砲は、スイスのエリコンFF20㎜機関砲である。

 スイスの兵器メーカーであるエリコン社で開発され、その後はスイスが中立国なだけであって、大戦中の連合国、枢軸国の戦闘機の機銃や対空砲として採用されたベストセラーの機関砲だ。

 口径が20㎜ならドラゴンの鱗を貫通させることは用意であろう。なにせ対戦車銃の弾丸として使われた程でのあるのだから。

 直ぐに銃座に着いたマリは、上空より飛来してくる腐竜へ向けて対空射撃を行った。

 毎分450発分の20㎜弾が腐竜に向けて発射され、鱗を弾き、肉を抉っていく。空から地上へ叩き落とすためにマリは腐竜の翼を重点的に狙う。翼は直ぐに蜂の巣のように穴だらけになり、腐竜は地面へと落下した。


「やった! 今度こそやりました!?」


 物陰で震えていたアリスはそこから飛び出し、銃座に着いているマリに倒したかどうかを確認した。


「まだ倒したとは限らないわ。確認しましょ?」


「は、はい…」


 まだ倒したとは限らないので、トドメを刺しに向かうマリに、アリスは渋々その後へと続いた。

 物の数秒で腐竜が落下したポイントへ辿り着き、そこで飛び立とうとして蹲っている腐竜を発見する。


「ま、まだ生きてます!」


「ゾンビだからね。これ以上、私がやるのは面倒だわ。あんたがやりなさい。その剣で」


「え、私がですか…? 嫌ですよ…」


「今度はあんたの出番」


 蹲っている腐竜のトドメを命令されたアリスは拒否するが、マリは腕組みをしながら威圧的な態度で強制する。

 ここで怒らせれば、殺されるかも知れないので、アリスは左腰に差し込んであるクレイモアと呼ばれる剣を抜き、飛び立てない腐竜まで接近した。

 なんとか起き上がろうとする腐竜であるが、先程の対空射撃で前足を撃たれたのか上手く立ち上がれず、滑ってばかりで居る。

 そんな腐竜に対し、アリスは慈悲の心もなく近付き、頭に向けて刀身を強く突き刺した。

 何故頭なのかは、ゾンビの弱点が典型的に頭であったからであろう。大抵の生物は皆、頭部が弱点であるからである。腐竜が死んだのを確認したアリスは刀身を引き抜き、血を拭ってから鞘へ収めた。


「これで一安心…」


 腐竜が死んだのを確認した後、マリは先程の神殿へ向かおうとした。だが、その必要がない通信が、左耳に付けた超小型無線機に入ってくる。


「誰?」


『私です! 第1中隊のミホです!! 街灯の人物は保護しました! 直ぐに本部へご帰還下さい! 他の部隊も残存兵力も撤退ポイントまで集結中との事です!』


「良かった…分かったわ。直ぐに向かう」


 大隊本部に居るミホからのルリの安全の確保の知らせに安堵した後、直ぐに向かうと返し、通信を切った。

 それからアリスの方へ視線を向け、一緒に来るかどうかを問う。


「一緒に来る?」


「もちろん!」


 答えはもちろん「イエス」だ。こんな地獄には長くいたくない。直ぐにアリスはマリと共に、大隊本部がある場所へと向かった。

 山に捨てられ、非業の死を遂げた女達に関しては、ここから脱出を図ろうとする正芳達の方へ向かったのであろう。

 それから彼らに最後の洗礼が襲い掛かる。

これでマリマリとアリスの出番は終了。


えっ?活動報告通りにやってないって?そりゃ次回で…(PAM!

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